博多まちづくりミートアップ

博多に来たら泊まりたい!話題の施設に聞くこれからの宿泊体験とは〜ミートアップvol15レポート前編〜

二枝 たかはる Takaharu Futaeda

Anny Group_KFT株式会社 代表取締役
二枝 たかはる Takaharu Futaeda

1959年、福岡出身。1986年、アニーグループを設立し「Annyのお気に入り」を経て、2018年11月、次世代型冷暖房「光冷暖」を全館・全室に使用したホテル「グレートモーニング」を開業。全国100店舗を目指す。

谷 弥壽彦 Yasuhiko Tani

株式会社谷弥 代表取締役
谷 弥壽彦 Yasuhiko Tani

1957年、直方生まれ。福岡大学工学部卒。創業154年を迎える不動産商社「株式会社 谷弥」代表取締役。コンセプト「ひと息つけるひとときを」を具現化すべく、どこにもないモダンステイ「宿屋ひととき」を2018年にオープン。


第15回目となる博多まちづくりミートアップのテーマは「博多×宿泊施設」。宿泊施設が不足していると言われている福岡市では、今たくさんのホテルが生まれています。その中でもこれまでとは少し異なる魅力を持った新たな施設が博多のまちに登場しています。冬の乾燥・夏の冷えから解放されるエアコン・ゼロの快適な空気環境、寝具やアメニティなど最高の朝のために細部にまでこだわったホテル「グレート・モーニング」。1日2組限定で大人数での利用もでき、「ひと息つけるひとときを」がコンセプトの「宿屋ひととき」。今回は二つの宿泊施設の方をゲストに迎え、博多の新たな宿泊体験について考えます。


増加し続ける福岡の宿泊施設

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白石さん(以下、白石)みなさんこんばんは。本日モデレーターを務めさせていただく株式会社ダイスプロジェクトの白石です。この博多まちづくりミートアップは今回で15回目を迎えます。テーマは「宿泊施設」。実は第1回目でも簡易宿泊所「ゲストハウス」をテーマに開催いたしました。この業界は日進月歩、ものすごいスピードで変化しています。

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モデレーターの白石氏

白石観光庁の統計資料によると、2014〜2017年の三大都市圏(埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・京都・大阪・兵庫)と地方部(三大都市圏以外)の外国人述べ宿泊者数を比較しますと、三大都市圏が1.59倍に増えているのに対して、地方部は2倍増。その中でも、福岡市の外国人述べ宿泊者数(推計)の2014〜2016年の推移は約2.3倍と、かなりの勢いで増えています。さらに福岡市の旅館・ホテルの客室数も2016〜2017年で急増しており、客室の稼働率も4年連続80%以上という高い水準を保っています。博多駅前の開発も進んでいますし、とにかく福岡市の宿泊施設はものすごい勢いで増え、変化をしています。その中でも今回は「博多に来たら泊まりたい話題の施設に聞くこれからの宿泊体験」という点から2名の方をゲストに迎え、お話を伺います。

エアコン・ゼロのホテルが博多に登場!

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白石ではさっそくゲストのご紹介です。ホテル「グレートモーニング」を運営されているアニーグループの二枝社長、よろしくおねがいいたします。

二枝氏(以下、二枝)みなさん、こんばんは。私たちは昨年11月に「グレートモーニング」というホテルをオープンしました。コンセプトは、名前のとおり「偉大なる朝」「偉大なる目覚め」です。「グッドモーニング」ではなく「グレート」なんです。

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Anny Group_KFT株式会社 代表取締役の二枝たかはる氏

二枝ホテルの一番の売りは、次世代型のシステム『光冷暖』を取り入れたことです。アニーグループではこれまでセラミックを使った健康商品を色々なかたちで開発してきました。光冷暖はその一つで、冷暖房システムの新商品です。エアコンとはまったく異なるもので、温風や冷風で温度調整をしないので、乾燥もしませんし、埃もありません。開発後、徐々に銀行や小学校、マンションなどに設置する機会も増えましたが、当時ホテルはありませんでした。そんな時、我が社の建物が古くなって雨漏りするようになったので、建て替えることになりました。それまで光冷暖を取り入れたホテルを作りたいと思ってはいましたが、前例がなく実現していませんでした。だったらこれを機に、自分たちで作ってしまおうじゃないか。そこで、ロビーも含めて9階25部屋全室に、エアコン・ゼロのホテル「グレートモーニング」を作りました。スタッフが仕事をするバックヤードもです。冷暖房以外にもいたるところにこだわりましたので、とにかくコストはかかりましたが、その結果「グレートな目覚め」ができるホテルになったと自負しております。

白石「グッド」ではなく「グレート」。そこからこだわりが感じられますね。

二枝今後全国展開も視野にいれておりますが、第1店舗目は博多のまちですので、せっかくならば博多らしいおもてなしをしたいと考えました。ホテルでは、ロビーのドアの取っ手には博多献上柄を施し、ロビーの椅子の布には博多織、スタッフの制服には久留米絣を使用しています。

白石ターゲット層は?

二枝観光で来られた方はもちろんですが、一方で地元の方が自分や家族へのご褒美にと宿泊し、リラックスして疲れを取って頂くという使い方も目指しているところです。

「グレートモーニング」のための7つの約束

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白石グレートモーニングをご提供するための「7つの約束」というものについて教えていただけますか?

〈01.澄み切った空気、エアコンの風も音もない部屋を〉

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二枝次世代型冷暖システム「光冷暖」の中でも、このホテルのために開発した最上級の『HIKARI FIRST』を採用しています。まず、エアコンは1台もありません。宿泊された方からよく「静かですね」と言われますが、音が一切しないんです。そのため、冷蔵庫もできるだけ音が出にくいものを選んでいます。風が出ないので埃もありません。温度にもムラがなく、床と天井の温度もほとんど同じで、足元だけが寒いということもありません。湿度は約45〜55%を毎日コンピューターで管理し、全室快適に保っています。もちろん、部屋での温度コントロールは可能。光冷暖については九州大学と共同研究を重ねてきましたが、エアコンと比べるとリラックス度や集中力が格段に高いことが科学的にも証明されていて、機能的には世界の最先端だと思います。

〈02. 自然素材を追求した体と心にやさしい空間〉

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二枝ホテルのいたるところに天然素材を用いています。例えば、壁や天井には漆喰や珪藻土を使用していますので、室内の余分な水分を吸収し、湿度を最適な状態に調節してくれます。珪藻土の細かい無数の孔は呼吸をしていて、においを吸着し、清浄にして戻してくれます。またロビーのカウンターや室内のデスクなどに、竹を用いています。

〈03. 最高級のミネラルウォーターを贅沢に使う〉

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二枝どこをひねってもミネラルウォーターが出ます。特にシャワーはコンディショナーがいらないと言われるほど。お風呂上がりの肌触りはもちろん、保温力や保湿力もすごいです。置いてあるミネラルウォーターは、佐賀県の美しい天然水をベースに、世界から厳選した14種類の石(岩盤)を活用し、最高のミネラルバランスを実現した最高級の水「PROBODY」です。一流のアスリートにも愛飲者が多いことでも知られています。

〈04. 竹の美点を表現した癒しの家具と極上タオル〉

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二枝客室の家具は、竹素材の家具「バンブーファニチャー」で名高い岡山県倉敷市で製造された家具を使用しています。また備え付けのタオルはすべて、愛媛県今治市のタオルメーカーと共同開発した竹製のタオルです。シルクのような触り心地にコットンのような吸水性の良さで、宿泊されたお客様の中には、何万円分もこのタオルを買って行かれた方もいるほどです。

〈05. 最上質の眠りを提供するデザイナーズベッドと寝具〉

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二枝「最高の朝」のために絶対に妥協できないものが、ベッドでした。ベッドフレームは1台80万円。かのスティーブ・ジョブズから認められ、アップルストアのショップデザインを任された八木保さんにデザインしていただきました。こちらも竹素材を用いています。羽毛布団とマットレスは京都の老舗寝具メーカーと共同開発し、羽毛の量は1グラム単位で調整しています。

〈06. 翌朝を美しくする夜食と唯一無二の朝食〉

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二枝朝食は福岡の老舗洋菓子店「チョコレートショップ」のクロワッサンをお出ししています。オーナーの佐野さんと打ち合わせした時に、彼がクロワッサン食べながら「これ自分の昼食のためだけに焼きよるっちゃんね」って。「じゃあついでにうちの分も焼いて」っていうのが始まりです(笑)。ですので他では決して味わえない逸品。また朝食は全室ルームサービスです。実はグレートモーニングにはレストランがないんですね。なので当初、朝食は取りに来てもらっていたんです。そしたら女性のお客さんから「朝ごはん取りに行くときにお化粧していかなくちゃいけないのがちょっと…」と言われて。25部屋すべてに朝食を届けるのは結構大変なことなのですが、我々は素人でしたから大変さを知らなかった(笑)。でもとても喜ばれています。

夜食にもこだわっています。お好きな時間に、ご自由に発酵玄米のおにぎりを召し上がっていただけます。実は横綱の白鵬さんがよく泊まりに来てくださるんですが、このおにぎりを1日10個くらい食べられて、それから食事に行かれるんですよ。すごくハマっていただいて、光栄です。

〈07. 爽やかな目覚めをもたらすトゥースペイスト〉

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二枝グレートモーニングのためには、最高級の歯磨き粉も重要です。こちらも自然素材で高品質の製品を製造しているメーカーとコラボしています。研磨剤は一切使用せず、水は最高級のミネラルウォーター、さらに熊本県天草市の天然塩やノニジュースを加えています。アメニティにも力を入れていて、カミソリひとつとっても驚かれます。

白石以上7つが、25部屋すべてに用意されているのですか?

二枝もちろんです。

白石素晴らしいこだわりです。ありがとうございます。

ワンフロアに1室だけ。2組限定の贅沢な宿

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白石続いて「宿屋ひととき」の谷社長にお話を伺いたいと思います。

谷社長(以下、谷)みなさん、こんばんは。株式会社谷弥の谷と申します。よろしくお願いします。 我々は、昨年の12月1日に、2部屋しかない宿泊施設「宿屋ひととき」をオープンいたしました。場所は、大博通りから櫛田表参道の鳥居をくぐって頂き、櫛田神社のちょっと手前になります。

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株式会社谷弥 代表取締役の谷弥壽彦氏

この建物を取得したのは3年前。うちは不動産もやってますが、それまで目的がなく物件を買ったことはありませんでした。ですがこの物件は、いざ取得後に「さてどうしようか……」と(笑)。それから1年半ほどの試行錯誤を経て、ようやく宿屋にたどり着きました。「宿屋ひととき」は、1階が「ポークたまごおにぎり本店」という沖縄のソウルフードの飲食店。2と3階が宿になっております。朝食では、このポークたまごおにぎりをご提供しております。

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沖縄でも人気の「ポークたまごおにぎり本店」が1階に入る。宿泊客には朝食として提供

この宿の特徴は、なんといっても各フロアに1室ずつしか客室がないことです。それぞれの部屋を紹介します。

〈博(BAKU)〉

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3階の部屋は、博多の「博」の字をとって「BAKU」と名付けました。この部屋はどちらかといえば女性好みの仕上がりになっています。ゆったりとした檜風呂が備わっていて、リビングも広く、広めのシンク付き。飲み物や食べ物を持ち込んでみんなでワイワイ楽しめるような空間を演出しました。最大6名までお泊まりいただけます。

〈多(KAZU)〉

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一方の2階は、「博多」の「多」から「KAZU」と名付けました。こちらはどちらかというと男性好みでしょうか。スタイリッシュな家具を配置してあるリビング奥の畳のスペースは、最大5名までくつろいで頂けます。

「一息つけるひととき」の具現化が宿屋

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白石1フロアに1室というのは、なんとも贅沢な作りだと思いますが、どうしてこのような作りにしようと思われたのですか?

当初は6部屋くらい作ろうと思ったのですが、いや4部屋にしよう。いや、2部屋にしよう。と、徐々に減りました。理由には、特徴のないホテルじゃ面白くないだろうという気持ちがありました。

白石それが結果として、特別な「ひととき」を過ごせる空間作りになったと。

私たちの会社は創業154年目にあたるのですが、ちょうど150周年の時に、ブランドコンセプト「ひと息つけるひとときを」を打ち出しました。もともとフランチャイズを中心に色々なお店を展開しておりますので、「ひと息つけるひとときを」の提供をそれぞれの業界でも実践してやっていこうと。実はそのタイミングで、記念事業として何かできればと思ったのですが、その時はまだ宿泊施設を作ろうとは考えておりませんでした。たまたまその翌年にこの物件が手に入り、うちのブランドコンセプトを具現化できるようなことができないかと考えるうちに行き着いたのが、宿泊の提供だったんですね。我々にとっては初めての宿泊施設で、右も左もわからないというのが正直なところです。まだオープンして2ヶ月ですが、今後ともよろしくお願いいたします。

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白石宿屋のロゴにも入っていますが、「櫛田表参道」という名前のつけ方が非常にインパクトがあります。地元の人たちはこの通りのことをよく「参道」とは呼ぶものの、「表参道」と呼ぶ人はあまりいないと思います。そのあたりはどう意識されていたのですか?

地図にはきちんと「表参道」と書いてあるんですよ。ただ確かに、櫛田神社って川端方面やキャナルシティの方向から行くものだという意識が強いんじゃないでしょうか。でも「表参道」という名前の通り、大博通り方面が本来の「表」なんですね。それもあり、「櫛田表参道」をイメージしてロゴを作ってもらいました。このマークには僕も惚れこみましてね。このロゴをはじめ調度品やコンセプトなど、「株式会社永島ブランディングファーム」の永島隆一さんにブランディングチームを作ってもらって進めてきました。

白石今日はその永島さまも来ていらっしゃいます。せっかくですので一言お話をお聞かせください。

永島さん(以下、永島)みなさん、こんばんは。谷さんがこの物件を手に入れられ、2年前にコンセプトを作ったわけです。宿泊施設とはいえ、ほかとは違うものでないと人には選ばれません。となると、価格競争に陥らないような付加価値戦略というものが必要になってきます。ブランディングチームには、インテリアデザイナー、建築家、プロダクトデザイナーなどの面々を集め、メンバーの知恵を絞りました。結果、自分たちが泊まりたいと思う場所、自分たちが楽しいだろうと思える場所が一番だということになりました。

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ブランディングディレクターの永島氏

永島また近年は民泊やゲストハウスも含めて福岡でも宿泊施設が増えてきていますが、案外5〜6人で泊まれる宿って少ない。「宿屋ひととき」は、贅沢な作りにはしていますが、みんなで気兼ねなくワイワイ泊まれます。観光で来られた方にはもちろんですが、地元の方が博多のまちで飲んだあとに、ここに泊まってワイワイするという使い方も面白いだろうと思います。今後の動きにも期待しています。

白石ありがとうございます。


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