土を育て、土にまかせる。小さな島で極上メロンが育つ理由。【長崎県小値賀島のメロンと島のうまいもの6/17開催!】

軒下マルシェ特別編の主役となるメロンを栽培する農家の山内栄八さん。育てているのは「タカミメロン」という品種です。百貨店などで贈答品として売られている高価な品種でなく、どちらかというと親しみやすく、毎日の暮らしの中でささやかな贅沢として楽しめる価格で流通している品種です。
とはいえ美味しさは全く引けをとりません。甘さ濃厚、果肉は比較的しっかりしていて、さっぱり爽やか、ジューシーな美味しさです。今回は、メロン栽培のプロフェッショナルである栄八さんのタカミメロンづくりについてご紹介します。

■栄八さんの紹介記事「なによりワクワクする遊びが農業だった」はこちら

潮風、赤土、太陽の恵を浴びて育つ

長崎県の小値賀島は太古の昔に火山の噴火で出来た島です。海底火山の溶岩が流れて作り出したなだらかな島の地形は比較的平坦なため、古代から人々が住む事が出来たとも言われています。豊富な海の幸はもちろん、起伏の少ない赤土の大地に恵まれた小値賀。稲作をはじめ様々な作物を作ることができる風土の中で、島民たちは自然を敬い自然と共に暮らしてきました。

鉄分を多く含む赤土の土壌と、海からのミネラルを含んだ潮風、遮るもののない広々とした大地にふりそそぐ日光という、小値賀島ならではの大自然の恵みを受けながら、栄八さんのメロンは力強く育ちます。
「島の作物が美味しかとは、この島に代々暮らしてきた人たちの貯蓄が土にあるけん。オイたちはその土ば使わせてもらいよるとよ」。ふわふわの土を撫でながら、栄八さんが教えてくれました。

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小値賀島は本土から遠く離れた小さな島。流通が発達するまでは、本土から肥料を買うことも容易ではありませんでした。この島で暮らしてきた人々は自然の力を借りて土作りをしてきました。草や堆肥、磯場で獲った海藻やウニの殻が肥料の代わり。干して雨に当て、塩分を抜いたものを土にすき込み大地を育ててきました。今でもその暮らしの知恵は島に残っており、ウニ獲り解禁の初夏には島の各家庭の庭先にウニの殻が干されている光景を見ることができます。小値賀メロンが特段と美味しく育つのは、島の大地を守ってきた先人たちと、栄八さんの叡智をあわせた土にも理由があるようです。
栄八さんのつくるタカミメロンは、肉厚で濃厚な甘みと旨味、そして華やかな香りがあります。それでいて後口が爽やかでハツラツと瑞々しい。「どこを探しても、こんなよいタカミメロンはない」と専門家に驚かれたこともあるほどの品質の高さ。その美味しさの理由は、小値賀島の大自然が育む恵みと先人の知恵、栄八さんが培った技術が生み出した結晶でした。

土を消毒せず、良質な土壌微生物を育てる。

一般的なメロン栽培では、土作りの際に農薬で土壌を消毒しますが、栄八さんの栽培ではその消毒薬を使用しません。メロンは数回つくると連作障害(同じ畑で繰り返しつくると、前年に与えた肥料や育てた野菜の影響で土壌中の成分バランスの崩壊や病害虫の発生により生育が悪くなって枯れてしまうこと)が起こります。それを防ぐために消毒をしたり、地面から離れたベッド型の栽培の場合は毎年土を新しい土に入れ替えたりします。

ところが栄八さんは2004年から同じ土を、消毒をせず、入れ替えをせず使い続けています。これは栄八さんの土作りの技術の為せる技。土の消毒をしない代わりに、長年研究してきた独自の配合で藁や茅、ぼかし、貝の化石など様々な有機物をすき込みます。微生物の住処となるための炭などを配合し、じっくり良性の土壌微生物を育てることで、病気の出ない健康で強い土に育ちます。消毒薬を使えば10日ほどで終わる土作りを、栄八さんは3ヶ月かけてじっくり行います。経験と技術とともに、大変な手間と時間のかかる作業です。

「土が元気ならどんな野菜もその中で美味しく育つとよ。とにかく土ば健康な状態にしてやる。良質な微生物を増やしてあげる。そうすれば土たちは自分たちで良い状態に育ってくれるとよ」

土を育て、土にまかせる。栄八さんの土作りは連綿と続いた島の土作りを継承しています。

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温度、湿度、水分、太陽。すべてを瞬時に見極める力。

水分を徹底的に管理する為に、地面から離したベッド型の土壌で栽培される栄八さんのメロン。栽培の最大の肝は水分コントロールです。ほんのわずかなタイミングや水分量の違いでメロンの味、形、大きさ、全てが大きく変わるのだそうです。見誤れば果実の割れにつながることも。メロンにとって心地よい環境をつくるため、細かくハウス内の温度調整にも気を配ります。天候の変化や大気中の湿度、太陽の位置などを見極めながら、適した位置のハウスの開閉を行い室内の状態をコントロールします。数分の違いで葉の生育にも差が出る重要な作業です。
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我が子のように、かわいいこ。みじょっ子。

「毎日ハウスに入ったら、メロンと話ばするとよ。沢山話しかけてきてくれるけんね。今日は顔色がよかね、お腹すいとるね、具合の悪かね、って全部わかる。みじょかよ。オイはそれに答えて、喜んでくれるごと、毎日お世話するだけ」
「みじょか」とは、小値賀弁で「かわいい」という意味。かわいい我が子のように育てたメロンへの愛を込めて、栄八さんはつくったメロンに「みじょっ子」という愛称をつけました。
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少年の頃から作物の研究を続けてきた栄八さん。今もハウスには生育状況や気付きを書き留めるためのノートが置いてあります。「野菜づくりにゴールも完璧もないとよ。今日より明日、美味しいもんばつくれるように勉強して試して失敗したり成功したりしながら学んでいく。それの繰り返し」と笑う栄八さん。土を作り種を撒き収穫まで、その作業を栄八さんはひとりで行います。すべての工程に、長年研究してきた独自の生育法を用いながら、ひとつひとつの苗と向き合い愛情を注ぎます。今まで学んできた経験と愛情すべてを注ぎ込んだ、我が子のようにかわいいこ。栄八さんのみじょっ子メロンです。

アナバナ軒下マルシェ特別編<栄八さんのメロンと小値賀のおいしいもの>

[開催概要]
⚪日時:2023年6月17日(土)10:00-15:00
⚪場所:アナバナ編集部(福岡県福岡市博多区千代1-20-14)
⚪参加費 無料
※小値賀サンドプレート、メロンサンドは予約優先にてご提供いたします。予約方法は準備が出来次第ご案内します。

(取材/文 編集部・しまうま商会 小高陽子)

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