なによりワクワクする遊びが「農業」だった少年時代。メロン栽培のエキスパート山内栄八さんをご紹介

軒下マルシェ特別編「栄八さんのメロンと小値賀島のうまいもの」の主役となるメロンを栽培する農家の山内栄八さん。今回は、「なによりワクワクする遊びが農業だった」と語るほどに、農業を愛する栄八さんが、自営農家としてスタートするまでのストーリーをお届けします。お話しを伺うほどに農業への愛が溢れ出てくる栄八さんのつくるメロンが待ち遠しくなるエピソードです。

ばあちゃんと畑の世話をするのが大好きな少年時代

長崎県五島列島の北端にある人口約2200人の小値賀島で、農業を営む山内栄八さんのメロンハウスを訪ねました。ハウスに入ると、空に向かってツルを伸ばすメロンの苗に黄色のかわいらしい花が咲き、ミツバチがとび、さながら花畑のような美しさです。

そんな美しい畑でメロン農家を営む山内栄八さんは、小値賀町育ち。幼い頃から田畑を耕す祖母についてまわり畑の作物の世話をするのが大好きな少年だったそう。

「小学2年生のときに、柿の接ぎ木に成功したとよ。ばあちゃんと一緒に接ぎ木にチャレンジして、ばあちゃんの苗はうまくいかんかったけどオイの苗はうまく行ったとさね。ばあちゃんはそれが嬉しかったごたって、みんなに言ってまわりよったよ。」

驚くべきことに、少年時代の作物を育てた時のことを鮮明に覚えておられる山内さん。聞くと子どもの頃から毎日、野菜の生育日記をつけスケッチをとり、生育状況を研究していたからとのこと。

小学4年生になると胡瓜、レタス、びわ、西瓜を自分で育て、それを島の旅館などに営業に行って販売。農業雑誌で見た外国の野菜はお年玉などを貯金して購入、島の高校に通いながら通信教育で東京農大の園芸科を卒業。栄八少年にとってなによりわくわくする面白い遊びが「農業」でした。

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念願の自営農家!のはずが指導員に。

高校卒業後、長崎県農業経営大学校に進学。本格的に農業の勉強に没頭する日々を過ごし、卒業後はいよいよ実家の農業を継ぐぞ!! と意気込んでいた栄八青年。自営農業について徹底的に学び、卒業論文でも自営農業をテーマにするなど準備は万端。ところが卒業間近の学校での三者面談で父親から「農業は絶対に継がせない。安定した企業に就職しなさい」と告げられます。

自営業をする自分しか想定していなかった栄八青年は、父親の強い反対に途方に暮れます。そんな栄八青年に、学校の先生から長崎県農業総合試験場で農業指導者として本格的に学ぶ道を進められ、「試験場?研究?研究は結構好きばい!」とその道に進むことを決意します。

半年間、農業総合試験場で学んだ栄八青年は、21才で佐世保市農業共同組合に入組。佐世保市で農業指導員、農業改良普及員として、農家の経営や栽培指導の業務に携わります。

農協に勤めた初日、担当する農家さんへの挨拶まわりで「こんな若造が俺たちに何の指導が出来る!」と怒られつつも、一緒に酒を飲めば関係は一変。翌日朝ごはんをごちそうになって、そこから仕事場へ行ったこともあるそう。「可愛がってくれたけど、年齢を理由に信頼されんとは腹のたったけん、猛勉強したよ。3年で一人前になれって言われたけん『1年で一人前になります』って啖呵きって頑張ったとよ」と、負けず嫌いな一面を覗かせる栄八青年です。

消費者に喜んでいただける野菜をつくり、適正な価格で市場に流通させること。きちんと利益のでる農業を農家さんと一緒につくりあげることを第一に取り組んできたと栄八さんは自身の農業への哲学に誇りをもっておられます。

買取価格が安すぎる市場では価格の交渉をし値段を上げてもらう。作物をないがしろにする市場とは自己判断で契約を終了。野菜の価格が大暴落したときには、農協が受け取るはずの手数料も農家さんに振り込んだという破天荒すぎる農協職員でしたが、担当した地区の出荷農家数、売上ともに大きく増加するという結果を残します。農作物の栽培指導だけでなく、地域の農家さんが正当な利益を得ることができる農業を守るため、農協職員として全力で働いてきました。

島の土と再び出会う。

そんな中、故郷の小値賀島に戻る転機が訪れたのは、栄八さんが33才の時でした。

小値賀の農業の未来を支えるため、小値賀町で新しく新設された農業振興財団「(一財)小値賀町担い手公社」に、新規就農を目標とし「Iターン」「Uターン」で島に移り住んだ農業研修生を教育する指導者として着任してほしいという、小値賀島役場からの誘いでした。

これまで培ってきたノウハウを小値賀町の為に活かしたい。その思いを胸に農協を退職。まっさらなところから研修制度をつくりあげ、小さな離島で適した野菜として、トマト等の栽培の指導にあたります。栄八さんが指導した沢山のトマト農家さんが今も小値賀島で活躍されています。

そして2014年、46才の春、栄八さんは、指導者としてではなく、自分もひとりの農家として毎日じっくり野菜と向き合いたいという思いから、小値賀町担い手公社を退職。かつて栄八少年が、大好きなばあちゃんと作物をつくった畑で、かつて夢見た自営農家として作物と向き合う人生を選び、今に至ります。

一日のほとんどの時間をメロンのハウスで過ごす栄八さん。初夏と秋に収穫するメロンのために1年を通して土作りから収穫までをほぼお一人でこなしています。

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次回はそんな栄八さんのメロンづくりについて、ご紹介します。

アナバナ軒下マルシェ特別編 栄八さんのメロンと小値賀のおいしいもの

[開催概要]
⚪日時:2023年6月17日(土)10:00-15:00
⚪場所:アナバナ編集部(福岡県福岡市博多区千代1-20-14)
⚪参加費 無料
※当日の状況により、人数制限をする場合がございます
※イートインコーナーもあります

(取材/文 編集部・しまうま商会 小高陽子)

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