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オランダ アムステルダム研修レポート 後編

こんにちは、アナバナ編集部の江口です。前編・後編にわたってお伝えしている、アムステルダム研修レポート。今日は後編をお伝えします。
前編はこちら

実験するスーパー EKO PLAZA

環境意識が根付いたオランダ。その日々のくらしがどのように構成されているのか、とっても気になります。そして向かった先は、スーパーEKO PLAZA(以下、スーパー)。国内に74店舗をもつ、オーガニック・スーパーチェーンです。「オーガニック」というだけあって、店内には体が喜びそうな食材や日用品がたくさんあります。ただ、それなら国内でも体験できそうかな、というかんじ。
このスーパーのスゴイところ。それは、店舗をまるまる1つ使って、お店の存在価値とこれからの可能性を実験したところにあります。その名も「EKO PLAZA LAB」。ある特徴をもった店舗を試験的に運営した取り組みだったんですが、何かわかりますか?なんとこのスーパー、商品包装、ディスプレイ棚、通路など、店舗を構成するすべてのものにプラスチックが使われていないんです。一見するとプラスチック?と思うような包装材なんですが、実は植物からうまれたセルロース繊維が原料。家庭用のコンポストBOXで、12週間寝かせれば自然分解する素材です。什器には、アルミ、ガラス、金属など循環利用できる素材を使用。惜しくもこのEKO PLAZA LAB、わたし達が研修に行くまでに閉店してしまったんですが、2018年度末までにすべての店舗でプラスチックフリーの売場が設置されることになっているようです。
もっとも、この取り組みは社会的な動きを見越した取り組みだともいえます。EUが2018年5月に使い捨てプラスチック製品の禁止法案を制定したため、プラスチック製の容器、食器、を含む10品目が禁止、または削減対象になっています。この動きは、今後の禁止品目の拡大を見越した取り組みともいえそうです。

 お客「様」になれないスーパーマーケット

わたし達がスーパーへ向かったのは、15時ごろ。バスケットを手に売場へ向かおうとすると、入口にはオレンジジュースの製造機があります。機械上部には皮付きのオレンジが20個ほどスタインバイ。親切なお姉さんに手伝ってもらい、生絞り100%の果汁を、500mlのペットボトルに注いでもらいます。ほか、ナッツペースト製造機に、オリーブオイル抽出機なんていうのもありました。

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入口横に設置されたオレンジジュース製造機。お客さんが1つの商品を製造する、逆転の発想が楽しい。

入口を右に曲がれば青果コーナー。このスーパーは野菜が常温で陳列されていて、大きな野菜から、インゲン・ミニトマトなどの小さな野菜まで、ほぼ量り売り。そんな中、1人の女性がミニトマトの前にやってきました。じっとトマトを見つめています・・・・。「量り売り」とはお客さんで値付けをする行為。いつ、何の献立に使うのか、思いを馳せていたのかもしれません。その後考えがまとまったようで、ミニトマトを袋に詰め、次は別の野菜の前で立ち止まっていました。この量り売りはお菓子コーナーにもあり、チョコ・ナッツ菓子を20種類ほどがずらり。量り売り機は、プラスチックボールが飛び出すガチャ機に似ています。この「お菓子ガチャ」、他系列のスーパーでも見かけたぐらいなので、この国では販売方法の1つとして定着している様子。野菜の量り売りといい、まさに「考える消費」です。

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青果コーナーにて。大きい野菜から小さい野菜まで、お客さんが値付け。値段も量もお客さんが積極的に関与します。

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他系列のスーパーでも見つけた「お菓子ガチャ」。ナッツやチョコボールが並んでいました。

いよいよ最後はレジで精算・・なのですが、整列ラインに平行して、なぜかベルトコンベアがあります。かごを片手に順番を待っていると、前に並ぶお客さんが、かごからごそごそと商品を取り出し、ベルトコンベアの上に並べ始めました。終わったら、他のお客さんの商品と混じらないよう目印をおきます。レジのお兄さんは、バーコードを通すだけ。袋詰めもかご整理もなしです。
えぇ~、せっかくかごにいれたのにまた出すの?こっちはお客様だぞ~!お客様なんだから、お店の人がもっとサービスしてくださいよ。それが当たり前じゃないの??

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レジに続く通路横にはベルトコンベアが。カゴの商品を並べ清算を待ちます。

能動的な消費スタイル

確かに、急いで買い物をすませたいと考えている人にとって、量り売りやレジ準備は手間でしかありません。でも、いいこともあります。考えながら食材を買うことで、その食材が食卓に並ぶ可能性はかなり高くなるはずです。だって、袋詰めするとき、何に使うかシミュレーションしてるはずですから。
そう考えてみると、日本の消費スタイルは受動的であるように感じます。自分に適した量や個数でなくとも、選択肢がなければ買うほかありません。その結果の1つとして、食材を使い切れず捨ててしまう循環が生まれるんじゃないか?とも思いました。
本当なら、たくさん食材を売りたいはずのスーパーなのに、お客さんの身の丈に合う消費を応援しているなんて「大人」な国だなあと思います。もしかすると「消費に参加する」行為そのものが、消費者としての主体性を育てているのかもしれません。

シェフが発信するレスキュー・レストラン

次はスーパーと異なる消費、体験する消費として、外食業界をみてみたいと思います。飲食業界で、お店のウリになるポイントってどこでしょう?やはり旬の食材、新鮮な食材を使ってお客さんを楽しませるところでしょうか。ただ、今回訪ねたレストランはそれがまったくの逆。鮮度を過ぎた食材、捨てられる食材を使ってお客さんにお料理を提供するんです。それが、オランダに3店舗をもつ創作レストラン INSTOCK。

内観

オランダに3店舗をもつレストランINSTOCK。壁にかけられた札(461,359)はこれまで訪れたお客さんの数を表しています。

レストランの前には木箱を積んだ自転車が横づけされているんですが、木箱のコピーはちょっと挑戦的。「Instock turns food surplus into delicious meals(Instockは食材の余剰をおいしい料理にします)」と書かれていました。ちなみに、食材の余剰とは、近い将来処分されてしまう食材のことです。

 「食べられない」食材。どうする?

とはいっても、ちまたでは「食べられない」食材。どんな姿で出てくるんでしょうか?
今回注文した料理は、Shef’s Special。前菜とメインのサーモンに加え、生クリームが添えられたデザートまで盛り付けられた「ワンプレート・コース」です。前菜のイタリアなすはマリネに、恐らく大量にストックされた赤ビーツは、スパイシーで色鮮やかなスープとなって現れました。たとえ鮮度の旬を過ぎた食材であったとしても、料理人さんの「ひと手間」が感じられ、美味しくいただく工夫が随所に感じられたお料理たち。よくよく店内を見渡すと、瓶詰めされた玉ねぎの酢漬けや、乾燥オレンジがちらほら。仕込みの時点で、食材をより長く、美味しく食べる工夫がなされていました。業界の慣習と真逆のコンセプトを貫くINSTOCK、とても勇気があると思います。

オーダー品

左から、ワッフル、ナッツケーキ、赤ビーツのジンジャースープ、バゲット、キャベツとミニトマトのマリネ、ひよこ豆のコロッケ、イタリアなす(マリネ風)のマスタードのせ -Shef’s Sprcial

干しオレンジ

バーカウンターで見つけたドライオレンジ。旬とはまた違う、果物の楽しみを発見しました。

誰と組む?-毎日のくらしのこと

飛行機にゆられ、往復32時間。旅テーマの「エシカル」の素、少しだけ発見できた気がします。オーガニック・スーパーとレストランには、ある共通点があったかと思いますが、気づいてもらえました?どちらのお店も、これまでの慣習では考えられなかったコンセプトを打ち出しています。挑戦的で、これまでの慣習にならって活動していた業界からは反発をうけそうなものもありました。しかし、社会全体の困りごとと向き合おうとする姿勢は、すでにお客さんの共感を集めています。大衆的な立場ではなく、一個人としての立場で判断ができるお客さんがいるからこそ、お店とお客さんがタッグを組んで自分達の消費スタイルを主張できるのではないでしょうか。
そんなコンセプトでお客さんをリードしてくれるお店が、わたしのまちにもできれば、何気ない毎日が少しだけ楽しくなるのかなあ?
以上、アムステルダム研修レポートでした。

(編集部 江口)


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