博多湾に浮かぶ陸続きの島、志賀島へ行ったことはありますか?
国宝の金印「漢委奴国王」が発見された、古くからの歴史を物語る島です。
今回、島内のカフェで歴史とジャズを楽しむイベントが行われるということで、博多から船に揺られ、志賀島へとお邪魔してきました。
「博多湾岸《金印ロード》プロジェクト」という取り組みの一環で行われたこのイベントは、プロジェクトをすすめる事務局であり、金印を展示している福岡市博物館が主催しています。
今回は、博物館が館を飛び出して島を舞台にイベントを行う理由や、福岡市の興味深い歴史について、福岡市博物館の杉山未菜子さんにお話をうかがいました。まずは当日の様子からお届けします。
福岡の文化を築いた島の歴史と
ジャズに酔いしれる夜
会場は港から歩いて5分ほどのところにある『和(なごみ)カフェ』さん。
志賀島は歴史を感じられる島でもありますが、レンタサイクル兼カフェの『シカシマサイクル』やカレー屋『MEGANE CURRY』、そして今回の会場となった和カフェがここ数年で次々にオープンし、志賀島の新たな魅力として、島を訪れるお客さんを出迎えてくれています。
今回カフェで行われたのは、史跡・鴻臚館跡の整備に携わる菅波さんによる歴史のレクチャーと、『ダーリン須藤と命のハハハ』によるジャズライブ。菅波さんは島に多く設置されている万葉歌碑と、志賀島と同じく福岡の古代の外交の拠点となっていた鴻臚館を話題に、福岡市の歴史をひも解いてくださいました。
志賀島は博多湾の玄関口であり、その昔、海を行き来する人たちにとっての要所となっていました。そして、海を渡って訪れる遣新羅使などの官人は、筑紫館(のちに鴻臚館と呼ばれる)へ滞在をしていたそう。
なんと、その際に官人が志賀島のことなどを詠んだ歌から、不明となっていた鴻臚館の場所は推定され、発見されたと言います。歌を手がかりに歴史が紐解かれるなんて、なんともドラマチック。
身近な場所の歴史をたどる菅波さんのお話は、参加されていた地元の方にとっても新鮮な驚きを与えてくれたようでした。
そして、満を持して始まったジャズライブに、会場の雰囲気はガラリと一転。
島の古民家でジャズを聞くなんて、なかなか粋な体験です。ゆったりと流れる優しい音楽と歌声に、みなさん酔いしれておりました。
25年間で蓄積した情報を、地域とともに磨いていく
”博物館の再編集”
和やかな雰囲気に包まれた今回のイベント。
主催の杉山さんは、イベントの目的の1つを”博物館の再編集”とおっしゃいます。
一昨年、開館25周年を迎えた福岡市博物館。それまで地域に住む方々が先祖から受け継いできた文化財や、文化材に関わる情報を多く蓄積してきました。その一方、文化財を見たり文化財が語ってくれる歴史に触れるためには、博物館に足を運んでもらうことが前提でした。
「博物館のネクストステージ」として、今度は地域の方々ともっと一体となって歴史や文化の魅力を磨き上げて行くことをねらいとして始まったのが、今回のイベントもその一環である「博多湾岸《金印ロード》プロジェクト」です。
「博物館が開館して25年以上が経ちます。その間に地域に住む方も代替わりするし、コミュニティのあり方も新しくなります。そうすると、常に博物館と地域が絆を確かめ合っていかないと、館にある地域の歴史の情報と、地域に住むみなさんとの間にどんどん谷ができてしまう。情報を館で展示するだけではない、博物館の再編集が必要なのかな」と杉山さん。
もしかすると、博物館で金印が見れることもあまり知られていないかもしれない。外に出てイベントを行うことで、もっと市の歴史の魅力を伝えたいと、思いを語ってくださいました。
時代の流れとともに紡がれてきた地域の歴史は、身近にあるほど知らないこともあるように思います。今回初めて志賀島や鴻臚館のお話を聞けたことで、今まで知らなかったまちの面白がり方を教えていただくことができました。
「実は知らなかった」福岡市の歴史や文化をひも解きに、皆さまも福岡市博物館へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
【施設情報】
■「福岡市博物館」
住所:福岡市早良区百道浜3丁目1−1
開館時間:9:30−17:30(入館は17:00まで)
TEL:092-845-5011
WEBサイト:http://museum.city.fukuoka.jp
■「和(なごみ)カフェ」
住所:福岡市東区志賀島523
同じく福岡市博物館が主催で行った、貝をキーワードに日本文化を掘り起こしたツアーレポートもあわせてどうぞ!
▽「貝」から日本の歴史文化がわかる!?博多湾岸で福岡市博物館の学芸員さんと掘りおこす、日本の歴史と食文化
https://anaba-na.com/19379.html