博多まちづくりミートアップ

音楽産業都市=福岡 音楽を通じた“福岡”らしいまちづくり〜ミートアップvol9レポート前編〜

fukamachi

有限会社Free Style 代表取締役
深町健二郎 Kenjiro Fukamachi

1961年福岡市生まれ。糸島市で毎年開催される「SunSetLive」の共同プロデュース・MCを担当。そのほか、執筆活動やTVやラジオ番組などにも多数出演。現在は「福岡ミュージックマンス総合プロデューサー、日本経済大学経営学部芸能ビジネスコース教授としても活動中。

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株式会社エフ・ジェイ エンターテインメントワークス 商業運営本部/企画開発本部
松本一晃 Kazuaki Matsumoto

1982年北九州市生まれ。キャナルシティ博多のイベント企画制作担当として、サーカスや音楽ライブなど、各種音楽イベントをプロデュース。2010年に福岡音楽産業活性化プロジェクト「FUKUOKA MUSIC FACTORY」を立ち上げ、新人発掘オーディションやアジアアーティストを招いたライブショーケース等を展開


博多まちづくりミートアップ9回目を2018年1月31日に開催しました。今回のテーマは「音楽を通じた“福岡”らしいまちづくり」です。音楽産業都市としてのビジョンを打ち出す福岡市では、9月を「福岡ミュージックマンス」と銘打って、まちを音楽で盛り上げる1ヶ月としています。その仕掛け人である深町健二郎さんと、福岡の新人アーティスト発掘などの取り組みを行う松本一晃さんをゲストに、音楽を通して見る福岡のまちづくりについて考えます。


音楽産業都市としての福岡のまち

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本日のモデレーター、白石さん

白石さん(以下、白石)みなさんこんばんは。本日モデレーターを務めさせていただく白石です。本日のテーマは「音楽を通じた福岡らしいまちづくり」ということで、このまちにおいて音楽とはどのような役割を担っているか、ひいては“福岡らしいまち”とは一体どのようなものなのか、ということにも踏み込んでいきたいと思います。
みなさん、「音楽産業都市」という言葉を聞いたことがありますか? 福岡は2002年より、次世代の都市産業のひとつとして、音楽関連産業の振興(※)を目指しています。そんな音楽産業都市としての福岡が一年を通してもっとも盛り上がる時期といえば、9月。「福岡ミュージックマンス」と呼ばれる期間です。その総合ディレクターを務めるのが、今回のゲストである深町健二郎さんです。まずは深町さんに、この「福岡ミュージックマンス」について、自己紹介を兼ねてお話いただきたいと思います。
※音楽関連産業の振興においては、(1)「ミュージックシティ天神」への参画、(2)「福岡音楽ポータルサイト」の運営、(3)「音楽産業振興基金」の設置、(4)「ストリートパフォーマンス支援事業」の4つが主な施策として挙げられている。(2006年2月福岡市データより)

5つの音楽イベントが一斉に開催される理由は、たまたま…!?

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「福岡ミュージックマンス」の総合プロデューサーを務める深町さん

白石まずこの「福岡ミュージックマンス」が生まれた経緯について教えてください。

深町さん(以下、深町)これはですね、ぶっちゃけると偶然の産物なんですよ。もともと私が関わっていたのは「サンセットライブ」というイベントなんですが、それに加えて「中洲ジャズ」、キャナルシティ博多の「FUKUOKA ASIAN PICKS」、博多駅の「九州ゴスペルフェスティバル」、そして「ミュージックシティ天神」の5つすべてのイベントが、たまたま9月に集中していたんです。音楽が福岡にとってのまちづくりコンテンツだとするならば、そのコンテンツが同じタイミングに集中しているなんて機運の高まりを感じざるを得ないじゃないですか。だったらそれらに横串を指すことで、音楽文化の発信にとどまらず、福岡そのものを盛り上げていけるんじゃないかと思ったんですね。そこでさっそく私のほうから主催者側に提案したところ、みなさん二つ返事でご協力いただけることになりました。それぞれ趣旨もスポンサーも違いますから、本来はそう簡単にはいかないはずなんですが、福岡が盛り上がるのであればやろうじゃないかと。そして福岡市にもサポートいただく形で5年前に立ち上がったのが、この「福岡ミュージックマンス」です。

白石5つもの音楽イベントが、すべて9月に集中して開催されていたというのはすごい偶然ですね。それぞれのイベントの特徴を教えてください。

福岡でもっとも歴史のある音楽イベント「サンセットライブ」

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深町「サンセットライブ」は、福岡でももっとも長く続く音楽イベントです。今でこそ全国的に注目されている糸島エリアですが、この場所にまだ何もなかった25年前に、「音楽をツールに糸島の魅力を伝えたい」という趣旨でスタートしました。オーガナイザーは、糸島半島の海沿いにあるカフェレストラン「サンセット」のオーナーです。当初フェスはほとんど手作りで、500人のお客さんからスタートしたというイベントだったんですよ。まだ人々の意識は都市のほうばかりに向いていたような時代ですので、革新的なイベントだったと思います。僕もこのフェスを通して、福岡の魅力はまちだけではなくて、自然や田舎と融合した場所にこそあるということに気づきました。

白石今ではかなり有名な音楽フェスになりましたね。行ってみて思ったのは、子連れのお客さんがとにかく多いことでした。

深町ライブだと子連れで行きにくいと感じる方もいらっしゃると思いますが、糸島は自然も豊かだし子連れでも楽しめるので、そういうところも意識しています。当時来てくれていたお客さんが親になって、2世代で来る方もいます。「福岡ミュージックマンス」のなかでも唯一入場券が必要なフェスでもありますが、近年はトータルで約15000人のお客さんに来ていただいています。

交番前にステージ設置は全国でもここだけ「中洲ジャズ」

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深町かつては西日本随一の歓楽街だった中洲に、再び音楽を通して活気を取り戻そうという趣旨に賛同した地元の商工会、企業、個人の方々などがスポンサーになり開催されているのが、「中洲ジャズ」です。今年で10周年を迎えるイベントで、ここ数年は2日間で延べ8万人の方々に来ていただいています。ありとあらゆるストリートフェスのなかでもこのイベントは唯一無二だなと思うところは、なんと交番前の交差点までステージになっていることです。こんなことしているのは全国的に見てもここだけですよ(笑)。通常は、警察署の前に物を設置するということ自体、仮に歩行者天国であってもだめ。ましてやそこに人がたむろするなんて絶対NGですよ。もうね、このあたりは博多どんたくとか博多祇園山笠のザ・祭エリアですから、祭り事に寛容で、長年の経験値から対応力が非常に高くなっているとしか言いようがない(笑)。機会があればぜひ足を運んでいただきたいイベントです。念のため言っておきますが。もちろん安全は確保していただいていますのでご心配なく(笑)。

1000人の歌声が駅前に響き渡る「九州ゴスペルフェスティバル」

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深町博多駅商店連合会さん、JR博多シティさん、エフエム福岡さんが主催となって開催されています。駅前の広場に千人単位のシンガーを集めようという目論みですから、これはなかなかのイベントですよ。ゴスペルの良さって、なんといっても“生声”でしょう。しかも千人規模ですから、これはもう鳥肌もの。基本的に自由参加型のイベントでもありますので、観に来てくださった方も一緒に歌うという瞬間もあって圧巻です。

まち全体がフリーのライブ会場に「ミュージックシティ天神」

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深町スタートして10年以上になりますので、地元でも馴染みがあるイベントに成長してきていると思います。福岡市役所前の広場をメインステージに、近年は大名エリアまで広がりを見せています。「このミュージシャンが無料で観れるの?」という名だたるアーティストが出演している一方で、地元のミュージシャンたちも登竜門的に登場していて、まちなかを歩くだけで音楽体験ができることが特徴です。ライブハウスでも同時多発的にやっていますから、マップ見ないとわからなくらいの拡散具合です(笑)。

イベントどうしの新しい動きが生まれる

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白石もうひとつ、「FUKUOKA ASIAN PICKS」というイベントも含めると、全部で5つありますね。

深町ほとんどまちなかで、しかも無料のイベントですから、この時期に福岡を訪れた方はだいたい驚かれますよね。福岡=音楽産業都市としてPRできている期間だと思います。

白石深町さんはイベントを取りまとめてらっしゃる総合ディレクターとして5年間やってこられて、福岡が音楽産業都市として芽吹いてきているという実感はありますか?

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深町産業化してきているかは別として、お互いのフェスが拡散することによってより認知されていっているという意味では、相乗効果は生まれてきていると思います。とはいえ、同じ時期に開催しているだけではもったいないですから、連携して共同できることも模索しています。試みとしては、九州出身のアーティストのCDジャケットをあつらえた「ミュージックバス」や、北部九州豪雨の際に立ち上がったチャリティーライブなどがあります。

白石少しずつ横の連携も生まれてきているというわけですね。ありがとうございます。今深町さんからご紹介があった4イベントは、お客さんを集めて音楽を発信するいわゆるフェス形式ですが、残りの1つはちょっと異なる趣旨の音楽イベントとなっています。

深町このイベントが音楽産業にももう少し深く関わってくるかもしれません。

白石ミートアップ後半には、もうひとつのイベント「Fukuoka Asian picks」について、もうひと方のゲストにご紹介いただきたいと思います。

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「福岡ミュージックマンス」では、北部九州豪雨の際に「ONE KYUSYU」と称したチャリティープロジェクトを展開。天神地区の旧大名小学校もステージとなった

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「ONE KYUSYU」では、安齋肇氏デザインのTシャツなどグッズ販売の収益金を被災地へ寄付するなどの取り組みも


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