博多まちづくりミートアップ

〜憩いの場所が街を活かす!〜 これからの博多の公園活用〜ミートアップvol6レポート第2話〜

黒松祐紀さんに聞く、福岡の公園事情

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橋口本日は公園とまちづくりの関係性をテーマにお話して頂いています。前半には、小西龍人さん(株式会社船場)に、全国の公園が現在どのような状況にあるのか。その背景にある都市公園法の改正と共にご紹介頂きました。
後半では、福岡市内の公園および商業施設でのイベント企画に携わる黒松祐紀さんに、公園をどのように活用するのか、という中身の部分ついてお話し頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

黒松さん(以下、黒松)みなさん、こんばんは。エフ・ジェイエンターテインメントワークスの黒松と申します。弊社はキャナルシティ博多の運営および広告・プロモーション、イベントの企画などをやっています。そのほか福岡では、マリノアシティ福岡木の葉モール橋本などの商業施設の運営、イベント企画なども手がけております。

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黒松さん

私自身は、福岡市内の各施設のプロモーションや、福岡市のイベント企画・運営などを担当しています。最近は特に自治体と一緒に仕事をすることが多いのですが、そのなかでも都心部の公園を会場としたイベントに関わることが特に多い。僕が公園が好きだからというわけではなく、すべてたまたまでございます(笑)。そういったご縁もあり、本日はこういう場所でお話をさせていただくことになったというわけです。
「どんな公園にするか」というよりも、「公園を使ってどうするか」という、コンテンツ面に関わってきたこともあり、これまで公園を舞台に色々なイベントを仕掛けてきました。その一部をご紹介していきたいと思います。

“規制”ではなく
自然に市民がマナーを学べる空間づくりを

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黒松福岡市の中心部にある舞鶴公園が花見の名所だということは周知の事実ですね。以前はあまりマナーの良い公園ではなく、福岡城跡という重要文化財区域内でバーベキューをする人たちや、酔っぱらいが騒いでいるような光景も珍しくはなかったと思います。
そんな中、この公園のイメージ向上を図れるような手段はないかと、福岡市から相談を頂きました。アイデアとして生まれたのは、城壁のライトアップや文化財の特別解放など公園の文化的・歴史的資産を活用したイベントです。これが現在の「福岡城さくらまつり」の原型です。でも来てもらう人に「あれもだめ、これもだめ」じゃマナーはなかなか改善されません。そこで僕らが提案したのは、“規制”ではなく自然に市民がマナーを学べるような空間づくりでした。例えばバーベキューも闇雲に禁止するのではなく、期間限定で許可を出す。あるいは飲食物を持ち込まなくてもいいように、飲食機能を充実させる。しかしいざ飲食店を誘致しようと思っても、「こんな真っ暗な場所に出店しても誰も来ないでしょう」と、最初は見向きもされなくて。地元の飲食店に頼み込んでようやく5〜6店舗の方が出店してくださった。そこから徐々に出店者が増えて、今では90店ほどになって、35万人のお客さんが来るお祭りに成長しました。
このイベントをはじめた結果、来場者のマナーは本当に良くなったと思います。ゴミも、園内で火を扱う人たちも減り、雰囲気もかなり変わりました。やはり環境づくりは大切だということを実感しています。

自治体との交渉は、さまざまなアプローチで乗り切る

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黒松次にご紹介するのは、ホームセンター「グッデイ」主催の「FUKUOKA MACHI CAMP PARTY」。こちらも会場は舞鶴公園です。福岡市のど真ん中、かつ広大な敷地なので、まだまだやれることがあるだろうと、挙がったのが「キャンプやりたい」でした(笑)。このイベントは、芝生にテントを設置することや、宿泊、期間中のバーベキュー、水道使用など、許可が必要な項目が多く調整も大変でした。でも公園のルールを理解してきちんと手続きをとれば、基本的には許可していただけます。ただキャンプファイヤーだけはさすがにダメでしたが(笑)。

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イベント期間中は、朝ヨガやカブトムシ採集、木工WS、夜間の屋外映画上映など、公園ならではの催し物が目白押し。ランニング中の人が立ち止まって映画鑑賞をするなど、まさに地域参加型のイベントだったようだ。

特に調整が大変だったことのひとつに、公園の占有料があります。これだけ広大なエリアをイベントスペースとして使用するわけですから、普通に計算するとものすごい金額なんです。でもここは解釈の問題。例えばテントを張っているスペースは占有ですが、それ以外は誰でも歩けるし占有ではない。そういう解釈に基づいて細かく計算し、占有料をなるべく低く抑えることができました。
こういった交渉がうまくいった背景には、福岡県・市では現在「セントラルパーク構想」を推進しているということがありました。この構想の中で、舞鶴公園や大濠公園のバーベキューや宿泊施設としての利用の可能性についても触れられているんです。行政側から出ている資料にも、たくさんのヒントがある。仮に交渉がうまくいかなくても、インバウンド政策、地域コミュニティ政策など、違うポイントからアタックしながらイベントを仕掛けていきます。一度計画が頓挫しそうになっても、探せば別の道が意外と見つかります。

“誰もが楽しめる場所”という公園の役割を提示する

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黒松天神の警固公園で今年の3月に開催した「URBAN OASIS PARK」は、天神のど真ん中という立地を活かし、警固公園なりの憩いの場づくりをしようという試みでした。実はこの公園、改修前は治安がそれほど良くなくて、改修にあたっては地域の方々から懸念の声も結構あった。イベント自体は中央区からの依頼です。当初は、カフェとベンチを設置して利用者の反応を調査する業務だったんですが、それだけじゃ面白くない。なので卓球台を置いたり、本を貸し出すライブラリーを設置したり、その隣にハンモックを吊るしたり、週末には子どもたちも遊べるアクティビティを設置しました。
なぜそこまで色んなことを試したのかというと、本来公園とは、誰でも利用できる場所であり、かつ誰でも楽しみをつくれる場所であるはずなんです。だからとにかく色んな楽しみ方を提示した。実際に蓋を開けてみると、中高大学生から、若いカップル、ご家族、高齢者の方まで、本当に色んな方に来ていただき、公園としての機能を改めて実感できるイベントになりました。

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URBAN OASIS PARKの一風景

同じく警固公園でのイベント「福博花しるべ ガーデニングショー」は、花と緑で公園を飾り付け、憩いの空間をつくろうというのが趣旨。やってみて思ったのは、緑や花ってやっぱり大事です。緑があるだけで、人が寄ってきますから。緑を通してまちづくりをやっている団体、企業って結構いらっしゃるので、こういう方々を巻き込んでいくと、親和性の高いイベントになっていくんじゃないかと思います。

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福博花しるべ ガーデニングショーの一風景

イベントが、エリアとエリアをつなぐ“入り口”になる

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清流公園をステージに開催された「中洲JAZZ」

黒松「中洲JAZZ」は2009年にスタートした音楽のイベントです。今は中洲界隈のあちこちにステージを構えて盛り上がっていますが、1年目は中洲の大通りが唯一の会場でした。もっと広げていきたいということで、2年目に主催の中洲町連合会から「キャナルシティでもやってください」という打診が来たんです。当時私はキャナルシティのイベントを担当していて、個人的にも何かしなければと思っていた。というのは、キャナルシティと博多駅を結ぶはかた駅前通りはいろんな仕掛けをやっているのに、反対側にあたる天神ーキャナル間って、面白いと思えるポイントがあんまりなかったんです。それで、天神側にある清流公園でやりましょうと逆に提案させてもらいました。
最近は来場者の数もすごくて、警察や地域の方から叱られることもあります。でも今思えば、この公園でこのイベントを仕掛けられて良かった。天神側にも入り口/出口をつくることで、このまち全体の賑わいづくりにも貢献できていると思います。

公園でイベントを開催するにあたってのポイントとは?

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黒松行政や地域と恊働していくポイントをまとめました。

(1)公園に対しての価値観の共有すること

公共空間の在り方や考え方を共有することが大切です。「公園なんだから、イベントやったり飲食してもいいよね」と一方的に考えていると、行政側から突っぱねられます(笑)。

(2)課題の整理

何かしら、それぞれの公園に課題があるはずです。舞鶴公園であれば、歴史的・文化的資産があるのにみんながマナーを守っていないとか、警固公園であれば、街の中心地にあるのに地域とのコミュニケーションがとれておらず憩いの場になっていないとか。そういった課題を把握して抽出します。

(3)社会課題のデザイン化

課題を把握したら、では実際にどのように解決に導いていくのかをデザイン化します。例えば僕らは、イベントを通して環境をつくる、あるいはイベントを仕掛けることで、歴史的・文化的資産をより認識してもらい、利用者のマナー向上を図る、といった感じです。

(4)未来のビジョン共有

このイベントを5年間続けると、この公園はこうなるだろうという、課題解決の方向性をビジョンとしてストーリー化します。

まちの観光資源になるような公園づくりを目指す

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黒松公園は、公園として利用するだけでは何も生まれません。維持管理費がかかるばかりで、単なる公園なんです。地域の人が集まるコミュニティの場、あるいはまちの観光資源になるような場を目指すということが大切なんじゃないでしょうか。南池袋公園もそうですが、NYのセントラルパーク、札幌の大通公園、横浜の山下公園、東京の上野公園などは、もはや公園じゃなくて観光地になっています。博多地区にもあるべきですし、つくるべきです。これから博多地区の公園も整備されていきますし、今後は博多の観光名所になるような公園づくりを目指していければと思っております。

橋口ありがとうございました。お二人のお話を聞いて、全国的に公園がどういう流れの中にあるのかということがだいたいお分かり頂けたかと思います、そして公園の活用と運用、そのなかでどのようなコンテンツが必要になってくるのかということの視野も広がりました。

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