博多まちづくりミートアップ

〜憩いの場所が街を活かす!〜 これからの博多の公園活用〜ミートアップvol6レポート第1話〜

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株式会社船場
CD統括部
プロジェクトマネージャー
小西龍人
Tatsuhito Konishi
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株式会社エフ・ジェイ
エンターテインメントワークス
企画開発本部 部長
黒松祐紀
Yuki Kuromatsu

2017年8月7日、約5ヶ月ぶりとなる博多まちづくりミートアップを開催しました。6回目となる今回のテーマは「〜憩いの場所が街を活かす!〜 これからの博多の公園活用」。全国でも注目度の高い東京都豊島区の南池袋公園の再整備に携わった小西龍人さんと、福岡市内の公園および商業施設でのイベント企画に携わる黒松祐紀さんをゲストにお迎えし、様々な視点から博多のまちと公園との関わりについてお話しいただきました。そのトークの様子を、3回に分けてお伝えします。


博多区の公園が、今、アツい!?

橋口さん(以下、橋口)みなさんこんばんは。本日モデレーターを務めさせて頂く、ダイスプロジェクトの橋口です。実は今、博多区の公園がアツいんです。今年(2017年現在)都市公園法が改正され、公園という空間でできることが大きく変化してきている。そういうこともあり「公園とは何か?」ということを改めて考え直す時期に来ていると思います。博多区、福岡市、ひいては日本全国の公園が今後どうなっていくのか。この非常に興味深いテーマについて、お二人のゲストにお話し頂きます。まずは小西龍人さんです。

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この日のモデレーター、橋口さん

小西さんに聞く、全国の公園事情

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小西さん

小西さん(以下、小西)みなさんこんばんは。株式会社船場(以下、船場)の小西と申します。大阪の船場という地で設立された弊社は、現在東京に本社を構え、福岡を含む5都市に事業所を持っております。主な事業は、商業施設から専門店、病院、図書館、公園などの公共施設にいたるまで、さまざまな分野での空間創造です。「空間創造」とは、企画から設計、施行、メンテナンスまで、コンセプトを的確に捉えながら、トータルな商業施設づくりを目指すこと。福岡でも、KITTE博多のマーケティングやコンセプト立案、内装デザインをはじめ、マリノアシティ福岡のフードコートリニューアルなど、色々な施設でお手伝いさせていただいています。

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福岡で手がけてきた船場の実績は、福岡市民に馴染みのある施設も多い

今、公園がアツい。その背景にあるのは?

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小西今年5月、都市緑地法等の一部を改正する法律案が成立しました。その中でも注目すべきは、都市公園の再生・活性化につながる「都市公園法」の改正。特に事業者に対するインセンティブとして、いくつかの規制緩和がなされました。

(1)設置管理許可期間・・・10年→20年に延伸

通常の商業施設に出店する場合、出店側が手がけるのは内装だけなので6〜9年が一般的な契約期間ですが、公園は出店側が外装=建物もつくらなくてはなりません。償却期間まで含めると10年じゃ短すぎる。20年に延伸されたことで、多少出店しやすくなったかと思います。

(2)設置できる施設の建ぺい率・・・2%を上限12%まで緩和

公園とは本来屋外活動を行う場所ですから、緑地を確保しなければなりません。そのため建築物が占める面積に制限があるわけですが、この「建ぺい率」が12%まで緩和されることになりました。

(3)利便増進施設(占用物件)・・・駐輪場、看板等が追加

店舗などの商業施設だけではなく、駐輪場や看板なども公園に設置しても良いことになりました、これをビジネスに結びつけていくような動きも生まれはじめています。

上述のように、民間が出店しやすい仕組みづくりが全国的に始まっています。これが「今、公園がアツい」と言われている背景にあります。都市・地域・市民のために、公園のポテンシャルを出来る限り引き出そうというステージに来ている。
ではどうして都市公園法が改正されたのでしょうか。その理由には、公園の新規整備や適切な施設更新の際に、財政・人材面の限界が出つつあり、民間と協同していきたいというひとつの流れ=「PFI」(※)が生まれているためです。経済成長や人口増加に頼っていた時代はまだ良かった。しかし今の人口減少社会では財政面は当然厳しくなってくるわけです。そこで民間の力をうまく取り入れながら、資産運用から商業サービス面までを考える時代になってきています。

※PFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)・・・公共施設の設計、建設、管理、運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図るという考え方。

公園にもトレンドがある?
〜全国の公園の事例を基に〜

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小西公園のトレンドについて、全国の主要都市からメジャーな公園をセレクトして紹介します。

(1)富山市・環水公園

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この公園にあるスターバックスは、「世界で一番美しいスターバックス」(2008)に選ばれました。夜間も美しくライトアップされ、店舗が景観から浮かび上がるような演出が見事です。建築を含め、「場をリノベーションする力」に取り組む公園も増えています。

(2)福岡市・大濠公園

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福岡の方にはお馴染みの公園です。花の木などの商業施設をはじめ、福岡市美術館などの公共施設も併設されています。またスターバックスが公園の中心部に設置されたことで、これまで比較的少なかった若い女性の客層も来訪されるようになったそうで、地域との結びつきも強くなっている事例のひとつです。

(3)大阪市・中之島公園

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大阪の中之島公園は、堂島川と土佐掘川に挟まれた約1.5kmの長さの中洲です。近年では公園内に期間限定でビアガーデンをオープンするなどの取り組みが盛んで、水辺の公園としてはポピュラーな公園です。

(4)福岡市・水上公園

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公園内にあるレストラン「SHIP’S GARDEN」は、「飲食施設」ではなく「休憩施設」という位置づけになっていることで、建ぺい率が緩和されています。博多祇園山笠や博多どんたくを“休憩”しながら見物できる、そんな憩いの場所になっています。

(5)大阪市・天王寺公園

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近鉄が運営している商業施設「てんしば」には、飲食店、おもちゃ屋、子どもの遊び場、フットサル、そしてゲストハウスまで入っていて、ショッピングモールのような規模でびっくりします。近隣には天王寺動物園やアベノハルカスがあるこの一帯は治安が危ぶまれている地域でもありましたが、再整備を経てずいぶんと雰囲気に変化が生まれたようです。

(6)東京都・上野公園

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上野公園(正式名称:上野恩賜公園)には明治期創業の老舗料理店があるのですが、これにはもともと、お寺だった場所を公園にする際に商業施設をつくり売上げの一部を政府に治める、という目的がありました。そのような歴史がこの環境を培ってきたんですね。公園内、西郷隆盛のお墓の近くには「西郷さん」にちなんで、商業施設「UENO3153(上野サイゴウサン)」が2012年にオープンしています。

(7)大阪市・大阪城公園

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今年6月に公園内にオープンした商業施設「JO-TERRACE」には、飲食店から忍者グッズ店まで入っています。夏の期間には、ウォータースライダーも設置されています。

このように、民間の商業施設と協同するケースが非常に増えてきています。全国的に見ても、公園そのものが変わりつつある現在の状況がお分かり頂けたのではないでしょうか。

池袋は滅びゆくまちだった!?

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小西最後に、東京都豊島区の南池袋公園の事例についてご紹介します。
南池袋公園があるのは、池袋駅から徒歩約5分の目と鼻の先。「グリーン大通り」という目抜き通りから数十メートルで結ばれたビル街の中です。実はこの通り、金融を中心としたオフィス街で、午後3時以降はシャッターが下りてしまうような地域。一方の池袋駅は、JRの中でも3本の指に入るターミナル駅ですが、駅が充実しすぎてそこだけで完結してしまっていたんですね。さらにこのエリアは脱法ハーブ事件や通り魔のイメージなどがあり暗くて近寄りがたく、一般的にもあまり良いイメージを持たれてこなかった。長い間いろいろな要素が重なってきたことで、こんなに都心で、かつ毎日大勢の人が利用する駅周辺の立地なのにうまく活用できていないということが、南池袋公園の最大の課題でした。
そんな折、2015年に豊島区庁舎が現在地に移転することになりました。それをきっかけに、駅と庁舎を結ぶグリーン大通りを整備するという計画が立ち上がったんですね。公園リニューアルの契機となったのは2007年。公園の地下に東京電力の変電所を設置する計画がスタート。この工事に伴い2009年から6年半にわたり公園を閉鎖し、大々的な再整備を経て2016年4月に全面開園しました。

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整備の背景には、豊島区が東京23区で唯一「消滅可能性都市」と位置づけられた自治体だったということがあります。「消滅可能性都市」とは、少子化や人口移動など何らかの理由で、将来行政サービスが成り立たなくなり、消滅する可能性がある自治体のことです。これに危機感を持った豊島区が重点的に取り組むことにした事業のうち2つが、「託児」と「公園」。人口流出を抑えるためには、若い子育て世代に安心して住んでもらう環境を整える必要があったんですね。そういう意味でも、この「託児」と「公園」の2事業は、切っても切り離せない関係でした。

池袋の新しい“顔” 南池袋公園の誕生

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小西ではどういうコンセプトで公園を整備するのか。募集要項で打ち出したのは「コモン・パーク」。地域住民の誰もが安心して集うことのできる、まちのオアシスとしての公園でした。そのためには、これまでの公園のイメージを刷新する必要があります。そこで考えたのは、地域貢献型の施設の運用。具体的には、公園内にカフェ・レストランを設置したのですが、注目すべきポイントは、レストランが「飲食施設」ではなく「教養施設」という位置づけになっていること。つまりこの解釈のシフトにより建ぺい率が緩和されるんですね。福岡市の水上公園内のレストランが「休憩施設」になっているのと同じです。

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公園内に設置されたカフェレストラン「RACINES FARM to PARK」。建物2階部分はライブラリーで、その隣には「地域貢献ルーム」がありワークショップなどが開催されている。まさに「教養施設」だ。

このように、都市公園法の解釈に基づき、民間事業者を利活用しながら再整備にあたったのが、南池袋公園の事例だと考えております。以下、そのポイントです。

(1)防災拠点であること
(2)使用料に歩合制を導入する
(3)民間事業者から地域貢献費を徴収する
(4)レストランを「教養施設」とすることにより、建蔽率を緩和
(5)南池袋公園をよくする会(任意団体)を設置
(6)指定管理者制度ではない

公園の使い方を、みんなが理解することの大切さ

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小西公園は“つくる”だけじゃなくて、その後の管理と運営も非常に重要です。芝生ひとつとっても、大切に使っていくことを理解していただくんです。芝生を維持して、誰もが気持ちのよい空間を保っていくのにも、みなさんの協力と理解が必要です。理解を深めて頂くためには、目に見えるかたちでの情報共有も大切ですので、ワークショプや掲示物などを通して情報発信をしています。南池袋公園の芝生がきれいに保たれているのは、そういった地域住民の方のご理解に加え、造園業者の方が早朝から清掃してくださっている努力の賜物でもあります。
最後に、グリーン大通りについても少し。南池袋公園と数十メートルで接続するこの通りは、2016年4月に国家戦略特別区域法に基づく計画が承認されたことで、これまで実施できなかった道路空間の活用が期待されています。すでに、毎月第3週の週末にはマルシェが開催されています。駅と公園を結ぶ大通りに賑わいをつくるという点においては、はかた駅前通りと同じですね。
全国の公園の利活用はとどまることを知りません。南池袋公園を含む事例をなんらかのヒントに、博多エリアでも今後の公園活用を考えていければと思います。

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グリーン大通りで定期的に実施されているマルシェの様子。駅だけ、あるいは公園だけではなくて、それをつなぐ“間”も賑やかにしていくことが、地域の活性化につながる

橋口ありがとうございました。非常に示唆に富んだお話でした。以上、小西さんからは公園のハード面でのお話を中心にお聞きしました。後半では、その中身、コンテンツについて、エフ・ジェイエンタテインメントワークスの黒松さんにお話をうかがいたいと思います。

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