博多まちづくりミートアップ

“ハカタストリートバル”これからのはかたのまちづくり〜ミートアップvol5レポート前編〜

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株式会社ダイスプロジェクト
代表取締役
橋爪大輔
Daisuke Hshizume
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博多まちづくり推進協議会
事務局長
中嶋敬介
Keisuke Nakajima

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2017年3月15日、博多まちづくりミートアップVol.5を開催しました。今回のテーマは、「エリアマネジメント団体と民間企業、それぞれの立場からこれからの博多のまちづくりとその取り組みについて語る」。ゲストに、博多まちづくり推進協議会 事務局長の中嶋敬介さんと、株式会社ダイスプロジェクト 代表取締役の橋爪大輔さんのお二人をお招きし、様々な視点からその取り組みについてお話ししていただきました。会場は、はかた駅前通りに期間限定でオープンしたハカタストリートバルです。


博多駅周辺には居酒屋もコンビニもなかった!?

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白石さん(以下、白石)今日はお寒い中お集まりいただきましてありがとうございます。司会の白石です。さっそくゲストのご紹介をしていきましょう。まずは「博多まちづくり推進協議会(以下、まち協)」の事務局長・中嶋さんです。

中嶋さん(以下、中嶋)みなさん、こんばんは。まち協とは、博多駅周辺の企業や団体などで構成されたまちづくりの団体です。私はJR九州に所属しながら、まち協の事務局長を務めさせていただいています。

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まち協の活動をかいつまんで紹介しますと、博多の歴史や食を学べる「はかた大学」講座の開講、「博多朝カフェ・夜バル」の開催、空き家をリノベーションした「ハカタリノベーションカフェ」、そして本日の会場でもある「ハカタストリートバル」など、多岐にわたります。活動を支えているのは、「歩いて楽しいまちづくり」「美しく安心なまちづくり」という二本柱。言い換えれば、すべて「まちの賑わいを創出する」というひとつの目的に向けた取り組みというわけです。

実はこの博多駅周辺、特に博多口は、20年ほど前までは夜になると人気が少なく閑散とした地域でした。食事ができるところや居酒屋も少なく、コンビニすらまともになかった。今では考えられません。この時代のいわゆる“オフィス街”というものは、全国どこも同じような光景だったんですね。そして今、この“オフィス街”に賑わいをつくる取り組みが、東京をはじめ全国各地ではじまっています。ここ、博多駅周辺も、そのひとつです。この博多駅前のプロジェクトがゆくゆくはまち全体の活性化につながり、「博多エリアに住みたい、働きたい、訪れてみたい」と思ってもらえるようなまちに育っていくことを願っています。

“作らずに、創る”まちづくり

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白石お次は、事業計画や空間設計などの視点から博多のまちづくりに携わっておられる株式会社ダイスプロジェクト(以下、ダイスプロジェクト)の代表取締役、橋爪さんです。

橋爪さん(以下、橋爪)みなさん、こんばんは。ダイスプロジェクトは、まち協のメンバーとして、また一民間企業として、博多のまちづくりに関わっています

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私たちの会社は「まちをデザインするクリエイティブチーム」というビジョンを掲げて、大きく5つのサービスに取り組んでいます。

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1、プロジェクトの企画運営やブランディングをお手伝いする「事業企画、商品企画」

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2、廃校になった小学校跡地や、UR団地の活用を立案・計画する「開発・都市デザイン」

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3、居住空間や商業施設の「建築・空間デザイン」

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5、ファッションやライフスタイルをテーマとした「イベント・セールスプロモーション」

現在まち協が取り組んでいる博多駅前プロジェクトは、主に2の「開発・都市デザイン」に当たります。
以上5つの業務領域をクロスする事業に、「アナバ・プロジェクト」とウェブマガジン「アナバナ」、また福祉の領域と横断的に関わりながら展開中の「ふくしごと」などがあります。

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「障害のある人と社会との心地よい循環をつくる」をテーマ展開中の「ふくしごと」。「ハカタストリートバル」では、ふくしごとの「日々のてまひま」より、米粉あんぱんが販売されていました

こうしたすべての取り組みをひっくるめた根底にあるのは、「まちの新たな状況をつくり出すデザイン」という考え方です。それが博多のまちづくりに少しでも寄与できればと思います。どうぞよろしくお願いします。

博多駅前プロジェクトって、そもそも何?

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白石本日の会場となっているハカタストリートバルは、博多駅周辺のまちづくりの一環として行われています。では、その博多駅前プロジェクトとは一体どのようなものなのか。今日に至るまでの経緯とその狙いについて、プロジェクトを振り返りながらお話を聞いていきましょう。

中嶋そもそも博多駅前プロジェクトとは、博多駅とキャナルシティ博多(以下、キャナルシティ)を結ぶ「はかた駅前通り」を活性化しようというものです。この通りは、一日約35万人の方が利用する博多駅と、そこから目と鼻の先にある九州最大規模の商業施設キャナルシティを結ぶ目抜き通り。にも関わらず、正直、賑わいに欠けるのが現状です。オフィス街として成熟したまちであるが故に、商業ベースの店舗が少ないんですね。そこで、このエリアに少しずつ魅力的なイベントを仕掛けながら、ゆくゆくは博多のまち全体を元気にしようというのが、このプロジェクトの目的です。

橋爪博多のまちを元気にするためにまち協が位置づけたコンセプトは、「歩いて楽しいまちにしよう」というものでした。そのためには何が必要かというと、魅力的な店舗や佇めるような憩いの空間が一番だと考えてきました。であれば、それを実際につくってみようじゃないか。それが、この、プロジェクトという名の社会実験でもあるわけです。そして2014年、空きビルを改装して期間限定の「ハカタリノベーションカフェ」をオープンしたのが、プロジェクトのはじまりです。

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コンビニ跡地に突如登場した、5日間限定のハカタリノベーションカフェ。エリアに招聘したい飲食や物販等の事業者を入れ、まち協の取り組みを紹介するブースを設置した

白石翌年の「ハカタリノベーションカフェ2015」は一ヶ月の期間限定でしたが、その間に開催したイベントは実に40。

橋爪まちづくりに関わる人たちを多方面からお呼びしてのトークイベントや、専門学校生のまちづくりプレゼンテーション、博多大学のヨガワークショップ、週末にはマルシェ……と、常に何かイベントを仕掛けていましたね。

お金をかけない、廃棄もしない

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白石初回のハカタリノベーションカフェと、翌年に続くハカタリノベーションカフェ2015、「ハカタストリートコンテナ」「はかたストリートマルシェ」、そして今回の「はかたまちづくりミートアップ」と、次々にイベントを継続してきたわけですが、共通のキーワードとして「リノベーション」という言葉があると思います。

橋爪「すでにあるものを活かす」ということは、大きなコンセプトに位置づけて進めてきました。例えばハカタリノベーションカフェ2015では、輸送用の木製パレットを300枚購入して、店内の壁やテーブルや椅子を自分たちで作ったり、壁を塗ったりしました。リノベーションには一般の方にも参加したもらったほか、麻生建築デザイン専門学校が授業のカリキュラムに取り入れてくれたので、学生も加わってくれました。またカフェが終了したあとは、使い終わったパレットを欲しいという人に引き取ってもらって、なるべく廃棄しないということも含めての取り組みでした。

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レンタカー屋が入っていた空きビルをリノベーションした「ハカタリノベーションカフェ」第2弾。木製パレットを積んで留めただけのテーブルと椅子でくつろぎの空間を創出。なるべくお金をかけないように、300枚の木製パレットはスタッフが北九州の港までトラックで取りに行った

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中庭にもパレットで憩いの空間。朝はスタッフの朝食会、夜は道行く人のバーラウンジへと変身

中嶋ハカタストリートコンテナでは、JR九州住宅からコンテナを無償で借りて設置しました。かかったのは、運搬費用のみ。ちなみに今でも「コンテナ置く場所ないので借りてくれ〜」って言われます(笑)

一歩入ったところに魅力的な“点”をつくる

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白石出店いただいた事業者さんも、地元の方でしたね。

橋爪ローカルな飲食店や物販の方に出店していただきました。ハカタストリートコンテナの時は2週間前にならないと実施が決まらないというギリギリの状況で出店を引き受けてくださったので、本当に感謝しています。普通はそんな不安定な状況ではお願いできないですから。もう仲間みたいなもんです(笑)

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ハカタストリートコンテナ2015秋

白石地元の事業者さんを巻き込みながらイベントを開いてきましたが、昨年は東京から来られたガーブリーブスさんがこのエリアにオープンされました。

中嶋敢えて目抜き通りではなく、ちょっと一歩入り込んだところに出店されたガーブリーブスさんの存在は、非常に有り難いですね。というのも我々のまちづくりは、まさしく点から線へ、線から面へと、賑わいを広げていくことを目的としているからです。そのためにはまず、一歩入ったところに点を増やして充実させていくことが非常に大切なんですね。お眼鏡にかなって嬉しいです(笑)

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白石一歩入ったところをどう“リノベーション”して活用していくかという意味では、理想的な形だと思います。

橋爪ここで言う“リノベーション”とは、単にハードを改鋳するという意味ではなく、良い事業プレイヤー、まちを一緒につくっていく仲間、そういう人たちを増やしていくということです。なぜなら、“人”こそがまちの表情を形づくっているわけですから。

はかた駅前通りは、今後どうなっていく?

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白石今まさに、はかた駅前通りの再整備が行われています。具体的にどのように変わるのでしょうか?

中嶋まず、車線が減って歩道が広くなるので、歩く人にとってやさしい通りになります。イベントスペースがより大きくなるので、賑わいをつくりやすくなりますし、これまで実験的に実践してきたコンテナの活用も検討しています。植栽や花壇の管理はもちろん、年配の方や来訪者の方々が増えつつあるので、200メートル間隔でベンチもすでに設置しています。ベンチに関しては、昨年になってようやく設置に踏み切ることができました。結果、ご年配の方のご利用も多く、適した場所に置けば利活用してもらえるということを強く感じております。

白石歩道が拡張される上で、「よりこうなったら」と思われることはありますか?

橋爪中嶋さんがおっしゃった通り、みんなが使いやすく、安心・安全の通りであることは絶対条件です。その上で、まちの回遊性や賑わいをつくるということが、まち協に求められています。例えば、国内外から訪れた人たちが九州の玄関口である博多駅を出て、このまちを目の当たりにしたとき、どう感じるか。この視点で、はかた駅前通りを積極的に「もてなしの空間」にしていくことが重要になってくると考えています。

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白石整備された上で、「どう活用していけるか」が焦点となりそうですね。

橋爪その通りです。ここ数年まち協で協議してきたのは、まちづくりの取り組み自体を評価してもらうことはもちろんですが、もうひとつ、この通りが整備された後、いかに僕たち市民のものとして活用できるようになるかということでした。そのためには、行政や警察との間に発生する課題を今のうちに整理すること。そして運営上の課題を整理することが大切です。そういった様々な課題がいざ実践に移しても解決できる、そのトライアルとしての機能がこのプロジェクトにはあるわけです。

中嶋例えばハカタストリートコンテナで使用したコンテナは、“建築物”ですから、イベントで使用するためには建築確認申請を出して許可してもらう必要があります。この時は福岡市にもご協力していただき、どうやったらスムーズに申請が通るのかということを、丁寧に協議した上で実現しました。

橋爪そのおかげで、まち協は道路に建築物を建ててもいいという既成事実をつくる事ができましたね(笑)

中嶋ハカタストリートバルがあるこの場所にはもともと電話ボックスがあったのですが、規制や景観形成を考慮しながら移動させていただきました。

きちんとお金をかせぐ仕組みも考える

白石橋爪さんが先ほど「運営上の課題」とおっしゃいましたが、具体的にはどのような課題があるとお考えですか?

橋爪こういったプロジェクトを継続していくためには、民間企業がパブリックの要素を併せ持ちながら収益を自律的に回収していく必要があります。その時、まち協は任意団体ですので、収益をどう経理的に処理するかという問題が発生するわけです。

中嶋そこは本当に重要ですね。継続するためには、人とお金が非常に大事。だからといって民間がやればいいじゃないかという単純な問題ではないんです。今は手弁当でやっておられる方々も大勢いらっしゃいますので、安定的にお金を稼ぐ方法を模索しています。

白石本日はまち協の下田部会長もおいでになっていますので、部会長のお考えもお聞きしてみましょう。

(下田さんにマイクを渡す)

下田さん(以下、下田)その通りだと思います。例えば協賛を募って開催しているイベントもありますが、本来は我々まち協の活動で得た収益をイベントに再投資することが、まちにとってもベストなんです。そのためには、このようなイベントの価値を上げていく必要もありますね。

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まち協の下田部会長


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