博多まちづくりミートアップ

【何かお困りですか? 街の案内人事情】〜ミートアップvol4レポート後編〜

究極の世話好きを目指せ

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サーズ今、福岡市が目指している都市像は「住みたい、行きたい、働きたい」というものなんですけど、その中で福岡の人の気質が「おもてなし」という言葉で言及されています。巷でも「おもてなし」って流行ってるよね。二人にとっての「おもてなし」って何ですか? ご案内の際に意識していることはありますか?

福田私たちは毎日同じ場所にいて、同じことを尋ねられて、同じことをお答えしますけれども、お客さまにとっては初めて。決してマンネリな対応にならないようにしています。

サーズなるほど。博多駅総合案内所には、ご案内に関する「三か条」があるとお聞きしたのですが、ご紹介いただけますか?

福田はい。「おもてなし三か条」です。「1.お客さまの存在にすぐに気付ける姿勢でいよう。2.気持ちのよい挨拶と、もう一度会いたくなるような笑顔で話をしよう。3.お客さまはみんなのお客さま。全員でお迎えお見送りをしよう」これを案内所の目に入るところに貼っています。

会場(拍手)

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総合案内所から社外秘?の「おもてなし三か条」を持ってきてくださった福田さん

サーズ素敵ですね。彼女たちが独自につくった秘密の三か条ですよ(笑)。博多駅総合案内所は「神対応」だと、良い評判をよく耳にしますが、その裏には三か条があったのね(笑)。ソラリア西鉄ホテルのほうは、掲げているモットーみたいなものはありますか?

山口西鉄の企業理念に「”あんしん”と”かいてき”と”ときめき”」という言葉が入っているんですが、私たちの事業所はその理念にぴったりだと思います。ちなみに私個人がご案内の際に意識しているのは、「気が付く、気が利く、気が回る」。気が付けば、お客さまとのコミュニケーションのきっかけづくりになる。気が利けば、お客さまが感動してくださる。気が回れば、お客さまの心をぐっと引き寄せられる。これはスタッフに常々伝えています。

サーズ具体的にサービスにどんなかたちで反映されているの?

山口ホテルは案内所よりも滞在時間が長いので、ある種“家”のような迎え方が必要です。例えば、雨で濡れたスーツケースを引いたチェックインのお客様がいたら、後ろからそっとタオルで拭いてあげる。また雨の日には玄関に「傘ガール」が待機し、お客さまが手を濡らさず済むように、傘を袋に入れて差し上げます。

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サーズ案内所とはまた違った、施設としてのサービスですね。素晴らしいです。サービスって、案内所だけではなくて社内外で常に皆さんがされていることでもありますよね。でもなかなかパッと気が利く対応ができなかったりします。こういうとき、博多駅案内所の「お客さまはみんなのお客さま」という言葉って本当に意味がある。自分の客じゃないと思ってしまった瞬間に、その方への対応がどこかでおろそかになると思うの。でも「自分のお客さま」と意識することで、「気が付く、気が利く、気が回る」にもつながる。またそれが身に付けば、公私関係なくみんなに優しくなれる。海外に行ったときに知らない人から助けてもらったりすると、そのまちが好きになりますよね。そういうまちに、福岡がなっていけばいいなと思います。

福田本当にそう思います。

山口みんなに優しくなれるというのは、コンシェルジュとして重要。案内人はどうあるべきかと聞かれたら、究極の世話好きを目指すことだと思います。

情報収集・共有はアナログ? それともデジタル?

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サーズ二人とも、まちのネタは何かしらポケットにストックしておく必要があると思うんだけど、どうやって仕入れていますか? 新聞、テレビ、ネット、SNS、市政だより、フリーペーパー、口コミ……色んな媒体がありますよね。

福田今おっしゃられたもの全部ですね。あとは、お客さまから情報をいただくこともあります。私たち以上に知っていたりしますので。

山口ただ、どの媒体も良くも悪くも情報が偏っているから、読みあさらなければいけないんですよね。ローカルテレビのニュースなんてほとんど過去形だから、「えっ、そんなイベントやってたの!?」みたいになっちゃいます(笑)

サーズなるなる(笑)

山口ひとつ残念なのが、天神地区の福岡市役所前広場ってとっても魅力的なイベントが多いのに、その情報を一覧できるツールがない。博多駅前広場もイベントが多いですが、総合案内所ではどうですか?

福田私たちの手元には届きますが、お客さまにお渡しできるようなペーパーなどはご用意してないです。

サーズ私自身、イベントを配信する立場でもあり、主催する立場でもあるから、告知に手間取っちゃうという彼らの苦しみもよくわかります(笑)。でも、タイトル、概要、日時、場所だけでも出しちゃわないとダメな時代ですね。
情報共有についてはどうしてる?

福田案内所に共有ノートがあって、「JR、JR博多シティ、宿泊、その他」など、ジャンルごとにその都度収集した情報をそこに記しています。それを勤務前や空いた時間に確認する感じです。早急に知っておく必要があるものは、メールで共有しています。

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サーズホテルではどうしていますか?

山口私たちはノートじゃなくてファイルを使っています。例えば電話を受けたときって、手元にある紙に走り書きしちゃうじゃないですか。それをノートに転記するのは手間がかかるから、その紙片をファイルにどんどん入れていくんです。

サーズハガキ入れみたいになってるの?

山口そうです。解決した内容や不要になったメモは、その都度廃棄。「博多人形はどこどこで買える」といったような普遍的な内容のものについては、エクセルファイルでデータベース化します。

サーズ普遍的な情報を、ほかの案内所と共有するようなことはありますか?

山口はい、例えば年末年始の観光施設や飲食店の営業有無は、案内所にとってものすごく重要ですが、すごい情報量だから、私たちが飲食店、天神のインフォメーションさんに観光施設をお願いして、お互い共有し合っています。 このときデジタルで共有データベース化していると楽なんです。だから私たちの案内所では、紙媒体からデジタルに移行しつつありますが、それは三者三様で。デジタルは分かりにくいから紙のほうがいいというスタッフも、もちろんいます。

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外国の人に日本語を使うとき

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サーズ「やさしい日本語」って知っていますか? 阪神淡路大震災をきっかけに考案された政策で、要は災害時などの緊急事態のときに、分かりやすい日本語を使って外国人ともコミュニケーションを取りやすくしようというものなんです。今は旅行者など日常的なコミュニケーションでも取り入れるところが増えているようですが、要は日本語を勉強していることが前提になっているから、日本語に関心のない旅行者からすると、いくら“やさし”くても通じない。安直に「やさしい日本語を使おう」と言う前に、誰を対象に、どういった状況で使うべきなのかを考えていく必要があると思うんです。
二人は海外からのお客さまに対してどうしていますか? 日本語? 英語? “やさしい”日本語?

山口海外のお客さまにはまず英語でお話しするんですが、「日本語でいいよ」と言ってくれる方が多くてびっくりします。特に韓国のお客さまは、日本語が通じる方が増えていらっしゃる。複雑な内容はもちろん英語ですけど、シンプルで基本的なことは日本語で充分です。

サーズそういうときには「やさしい日本語」が役立ちますね。博多駅総合案内所はどうですか?

福田基本的にスタッフはみな英語ができますので、状況を見て必要であれば英語を使います。日本語の場合は、ゆっくり話すことはもちろん、できるだけ難しい表現は使わないようにしています。

山口余談ですが「博多弁で案内してください」というリクエストもあります(笑)

サーズへ〜、ちょっと聞いてみたい。ホテルから太宰府天満宮までの行き方を博多弁で、お願いします!

山口はい、では(笑)
「やっぱり西鉄電車が一番よかもんね。エスカレーターで2階に下りてから、中央改札口のほうから特急に乗りいね。これがまた、特急代がかからんとよ。二日市で下りたらアナウンスばよーと聞いとってね。そしたら迷うことはなかけんね」

サーズ・福田・会場(拍手)

山口ありがとうございます(笑)

サーズ博多弁を心地いいと言ってくれる人って多いみたいだから、武器にしてもいいかもね。

福田客室乗務員としては間違いなく怒られちゃいます(笑)

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笑いも含め、だんだん熱気を帯びてくる会場

オススメの情報にストーリーを添える

サーズよくオススメのお土産を聞かれるんだけど、欧米の方にあんこのお菓子勧めても苦手な人が多いんです。でもそこにプラスαで面白エピソードを紹介できれば、案外喜んでもらえる。このお菓子はこういう出来事があったときに誰と誰がコラボレートして作った、とかね。

福田観光施設にまつわるエピソードは色んなところで紹介されているんですけど、確かにお菓子にまつわるエピソードって珍しい。知っておくと違った伝え方ができていいかもしれません。

サーズお土産ってお財布の紐をゆるめてくれるから、事業者もウェルカムなんです。旅行者のマナーの悪さばかりを指摘するんじゃなくて、彼らを歓迎する仕組みもこちら側が作っておかないといけませんよね。

山口福岡はアジアのゲートウェイなんて言われながら、実は市民のほうが冷めているんじゃないかと思うことはありますね。ようやく最近、自分たちもアジアの一員だということを意識しはじめる店も出てきましたが、そういった動きがまち全体に広がっていくといいなと思います。

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彼女たちを支える人たちの声

サーズ本日は福田さんの教育係だったという方が来られていますので、ちょっとお尋ねしてみましょう。サービス上もっとも大事なことなどがあればお聞かせ下さい。後輩たちにどういうことを教えていますか?

参加者こんにちは。福田さんには、JR客室乗務員時代に少しですが教育をさせていただいて、その後同じタイミングで案内所に入ったので、案内人としてはむしろ同僚のような存在になるのですが、サービスで大事なことは、やはりお客さまの気持ちになって接するということだと思います。自分が初めてその場に行ったとき、案内所の人がどういう対応だったら嬉しいかということを想像することでしょうか。

サーズ本当にサービスの原点ですね。そういう気持ちが、先ほどの「お客さまはみんなのお客さま」や「気が付く、気が利く、気が回る」ということなのだと思います。山口さんにとってサービスとは何でしょう?

山口仕事以外でも困っている人を見ると放っておけなくてついついお世話しちゃうんですが、私にとって案内人はどうあるべきかと聞かれると、究極の世話好きだと思います(笑)

サーズそれはもう気質だと思いますよ(笑)。そういう人がもっともっと増えていくといいなと思います。

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サーズもうお一方、福田さんの上司・谷口さんも来てくださっています。彼は案内人の女性たちを束ねる立場の方です。どういうことに気をつけて彼女たちと接していますか?

谷口さん(以下、谷口)彼女たちは、自分の経験も含めて築き上げてきたことをサービスに活かしながら、それを次に伝えていっています。ですので、私は一切口出ししていないんです。敢えて言うなら、彼女たちが働きやすい環境、目的を持って楽しく仕事をしてもらう環境を整えることでしょうか。

サーズありがとうございます。今後もどんどん彼女たちをこういう場に出していっていただきたいと思います。

谷口彼女たちにとってもいい経験になりますし、ぜひよろしくお願いします。

さらなる「まちの顔」として

サーズ「女性“活用”」なんて言葉を聞くと、まだ“活用”の対象なんだと思っちゃいますけど、と同時に、使ってもらいたくなるアピール材料を女性たちも備える必要がある。向こうから“使ってもらう”じゃなくて、自分たちで武器を揃えておくのが大切ですよね。そのためには、今日のように横のつながりを強めることが必要になってくると思います。それがゆくゆくは、彼女たちのお給料を上げることにつながって、自分たちの生活そのものを楽しめるようになれば最高。今は全国から色んな資本の会社が福岡に来ていて、いいポジションの職業っていっぱいあるの。それを自分で選んで取っていけるようになれば、さらに面白いと思います。
では最後に、ひと言ずつメッセージをお願いします。

山口福岡は海外の方も含め旅行者を受け入れるまちとして随分成長してきたと感じています。特に海外のお客さまに対してはインバウンド=言語じゃなくて、そこで発生する想定外の出来事も含めて対処していく必要があると思います。今後はインバウンドのケア面も充実させていくことが、福岡のまちにとって非常に重要なことになると思いますし、私たちも努力して改善につなげていきたいと思います。本日はありがとうございました。

福田本日はありがとうございました。今回のような横のつながりの大切さを改めて感じました。連携を図ることで、自分たちだけじゃなかなか気付きにくい課題や改善しづらいことを認識できる。最近は私も社内の会議にも出させていただく機会が増えてきたので、今後は現場の声を上に届けることで、お客さまの気持ちを受け止めるとともに、福岡のまちをより楽しんでいただけることにつながればと思います。個人的には、今後様々な案内所で経験を積んで、ゆくゆくは私たちのような案内人をサポートできるような存在になれたら嬉しいです。

サーズこういう柔軟な考え方ができる彼女たちのような方こそ、海外からのお客さんなど、新しい環境で働いていける人材だと思います。そのためには、自分の会社に閉じこもっていてはダメで、今日のようにどんどん外に出ていくことが大切。そういう意味では、今日は福田さんと山口さんをお呼びでできたことには、とても意義がありました。ありがとうございました。

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