博多まちづくりミートアップ

【何かお困りですか? 街の案内人事情】〜ミートアップvol4レポート前編〜

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九州旅客鉄道株式会社
サービス部サービス課サブチーフ
福田良子氏
Ryoko Fukuda
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株式会社西鉄シティホテル
ソラリア宿泊担当主任
山口陽子氏
Yoko Yamaguchi
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フクオカ・ナウ
ジェネラルマネージャー
サーズ恵美子氏
Emiko Szasz

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2017年3月13日、博多まちづくりミートアップVol.4を開催しました。今回は、国内外から多数の旅行者が訪れる福岡で、旅行者の案内・おもてなしに尽力している、ホテルコンシェルジュや案内所サービススタッフのお二人がゲスト。モデレーターに、主要宿泊施設のコンシェルジュや案内サービス担当者が集まる会合“コンシェルジュミーティング”を主宰するとともに、外国人や国際人に必要な情報をタイムリーに発信し続けている、サーズ恵美子さんを迎え、そのお仕事柄ならではの視点からトークセッションが繰り広げられました。会場となったの、はかた駅前通りに期間限定で出没したハカタ・ストリートバルです。

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サーズさん(以下、サーズ)今日はお寒い中お集まりいただきありがとうございます。まずは本日のゲストをご紹介します。

福田さん(以下、福田)みなさん、こんばんは。博多駅構内の「博多駅総合案内所」に勤務している福田と申します。今日はよろしくお願い致します。

山口さん(以下、山口)こんばんは。ソラリア西鉄ホテル6階のロビーで、フロント兼インフォメーションをしています山口です。私たちはソラリア西鉄ホテルと、西鉄グランドホテルという2軒のホテルを天神地区に構えていまして、私はどちらにも10年ほどにわたってお客さまの対応をさせていただいてきました。今日はその経験の中からお話をできたらと思っております。よろしくお願致します。

「まちの案内人」どうしでつながっていきたい

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左より、博多駅総合案内所の福田さん、ソラリア西鉄ホテルの山口さん、司会のサーズさん

サーズまず、私たち3人が今日なぜこの場に集まっているのか、その経緯からご説明します。私は「フクオカ・ナウ」というフリーペーパーや、彼女たちにも使っていただいている「ナウ・マップ」という外国人向けの観光地図を作っています。その関係上、外国人や福岡を知らない方に、このまちを案内する機会が多い。彼女たちも同じです。でもこれまでは、横のネットワークがほとんどありませんでした。そこで、彼女たちのような人材をつないで情報提供や交換をできる場が設けられないだろうかと思っていたら、彼女たちも同じことを感じていてご賛同いただいたんですね。それがご縁で、不定期ながらホテルのコンシェルジュやフロントスタッフの集う会「コンシェルジュミーティング」が実現できるようになりました。

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旦那さんが社長を務める会社でマネージャーとして様々なインバウンド活動に関わるサーズさん。定期刊行している『フクオカ・ナウ』は、地元で知らない人はいないほど。
※フクオカナウウェブサイトより https://issuu.com/fukuokanow/docs

とはいえ、彼女たちに今日この場に来ていただくことは、そんなに簡単なことではありませんでした。私のように自営業に近い会社で働いている人間はいいんですが、彼女たちは、職場の時間を使って、職場の制服を着て人前に出るなんて、そうそうできない。コンシェルジュミーティングもそうです。最初は彼女たちが集まる時間を確保することすら難しく、仮に昼間の1時間参加できても、参加費用はすべて自腹だったんですね。

今は会社側の意識も変化してきて、ほとんどの会社が職場の活動として認識してくれるようになったので、それだけでも大きな実績を感じています。でもやはり、窓口で働いている人たちの苦しい状況も、看過できません。私は、いわば「まちの顔」とも呼べる彼女たちが幸せな気持ちでまちを案内できれば、福岡を好きになってくれる人が増えると思うんですね。そのためにはどんどんステップアップして、様々な自由が利くポジションになれば本当に最高。今日はそんな彼女たちにとって、そのひとつのステップにもなればと思います。

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コンシェルジュミーティングが果たす役割

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サーズコンシェルジュミーティングを立ち上げる際に賛同してくださったおひとりが、ゲストの山口さんです。彼女はホテルのコンシェルジュとして、毎日窓口でお客さまのご案内をされていますね。今回コンシェルジュ同士のネットワークを広げていくことをどうお感じになりました?

山口ホテル同士の横のつながりはすでにあるんですが、宿泊部門や経営部門など、役職を持っている方々の会合が多く、私たちのように現場レベルの人間が顔を合わせる機会はほとんどありませんでした。一方、この仕事を続ける中で「まちの案内人」として横のつながりを持つ事がいかに大切なのかを肌で感じてきました。そんなときサーズさんとコンシェルジュの会をつくる機会を得ることができて、本当に嬉しく思っています。

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サーズ福岡にはコンシェルジュを持っているホテルが6軒あるんですよね?

山口はい。 「ヒルトン福岡シーホーク」、「ホテル日航福岡」、「ハイアットリージェンシー福岡」、「ホテルオークラ福岡」、「ホテルニューオータニ博多」、そして、私たち「西鉄グランドホテル」や、コンシェルジュがないホテルのフロントの方々にも集まっていただけるようになりました。

サーズこれまでのミーティングが役に立った事例を紹介していただけますか?

山口昨年福岡市で開催されたライオンズクラブ国際大会時の会ですね。

サーズそう、大会の準備はどんどん進んでいるのに、現場の人たちは何も知らないという状況だったんですよね。

山口どの国からどういったゲストがどこのホテルに来るのか、そういった基本的な情報すら直前までシェアされていませんでしたので、漠然とした不安の中で準備を進めていました。そこで大会の主催者や受託している業者の方をお呼びして、ひとつのテーブルを囲んで直に話を聞く場を設けられたことは、ホテルごとに段取りをつけて準備する過程で非常に役立ちました。

サーズ今後も不定期ながらミーティングを設けていく予定ですので、博多駅の福田さんも次回はぜひいらしてくださいね。

福田はい、ありがとうございます!

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まちの案内人の一日

サーズさて、博多駅構内の「博多駅総合案内所」でご案内されているのが福田さんです。案内所での一日を教えて頂けますか?

福田インフォメーションの営業時間は朝8時〜21時まで、1日8名体制で出勤時間をずらしながら対応をしています。案内所に入る前には必ずその日のイベント情報を再確認し、案内所に入ってすぐもレンタカー関係の情報を確認します。中には確認する暇がないくらい忙しい日もありますが。

サーズ1日でどれくらいのお客さんの対応をするの?

福田平日の平均が1,000人です。

サーズ・山口すごい人数ですね……!

福田今は春休みシーズンなので、平日でも1,200人くらい。休日は1,500人、列車の異常時には3,000人を超える方が来たこともありました。

サーズへとへとになるでしょうね。

福田へとへとになっている自覚はないんですが、対応中はやはり緊張状態にありますね。

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サーズ山口さんの一日について教えてください。

山口ホテルは24時間365日なので休みがないのですが、私は朝8時に出勤することが多いです。まずは夜間スタッフから前の晩にトラブルなどがなかったかを確認して、その日のホテルの催し物を確認します。VIPの来館がある日は、その方々の顔写真を揃えます。

サーズ名前を間違えないように顔を覚えておくの?

山口お名前もありますが、宿泊されるのか否か、あるいはその方の車両情報などを把握します。大きなイベント時は50名ほど、中には100名ほど覚えることもありますね。ちなみに、その日一番のVIPは待ち受け画面になります(笑)

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日々変化する旅行客のニーズを先取りする

サーズお二人ともどんなことを聞かれることが多いですか?

福田お手洗い、コインロッカー、乗り場関係など、駅構内のことが圧倒的に多いです。次に交通案内。そして観光案内と続く感じです。観光では、太宰府天満宮は本当によく聞かれます。

サーズ色々な国籍の方が来られると思うんですが、どのように対応するんですか?

福田日英韓中4カ国語で書いた紙をお配りして、3パターンの行き方から選んでいただいています。太宰府のようにお尋ねが多い質問に関しては、そういった独自のツールをご用意していますね。

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サーズ山口さん、天神のホテルはどうですか?

山口太宰府や柳川はよく尋ねられますね。傾向としては、あらかじめ決められたプランに沿ったご質問を受けることが多いです。昔のようなノープランはほとんどなくて、インフォメーションをしっかり調べて来られているなという印象。中には「どうしてそんなお店を知ってるの?」と聞きたくなるようなスポットもあるんですが、どうやらウェブのブログ経由のようです。なのでそこを戦略的に利用して、私たちのホテル滞在を含めた天神の楽しい記事を、ブロガーさんにお願いして書いていただいたりもしています。

サーズ突拍子もないようなことを聞かれることはありますか?

山口過去には、小学校のグラウンドを見学したいと言われたこともあります。もちろん、無理だと答えました(笑)。折り紙とか習字とか、日本人が考えるザ・日本文化というよりも、地元の関心ごとのほうが多いようですね。

サーズホテルでも、博多駅のように決まったお尋ねに対してお配りするツールがあるの?

山口いえ、ないので、ツールはいいアイデアだなと思いました。ただうちの場合、質問の内容が結構変化するんですね。ですので、ツールをつくる手間、更新する手間、管理する手間を考えると、結構大変かもしれません。今はPCやタブレットを使って口頭アテンドしたあとに、ペーパーを出力してお渡ししていますね。

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サーズツールをつくるって本当に大変なんですよね。例えば福岡のまちって今ホテルラッシュでしょ。新しいホテルも増えていて、かと思えば前からあったホテルの名前が変わっていたりして。そのアップデートが本当に大変。気の利いたホテルは、更新してくださいという連絡をくれるんですけど、ほとんどそうじゃないですからね。

まちを知ってもらうには、歩いてもらうのが一番

サーズ観光に来て、敢えてビルの中でショッピングをしたいという人はそんなにいませんよね。でも歩いて楽しいルートを教えるためには、私たちがまずは知っておかなくては。お二人は歩くのが好きですか?

山口実は私はあんまり好きじゃないんです(笑)。だから旅行者の方にもお勧めしにくいと感じていました。でもサーズさんが作ってくださっている「ナウ・マップ」は、博多駅〜天神〜大濠公園が1枚の地図に収まっている。それがまちをコンパクトで歩きやすい印象にしてくれて。最近は大濠公園まで徒歩でお勧めできるようになりました。

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フクオカ・ナウ作の「ナウマップ」は、旅行者の目線からみた“便利さ”がいたるところに取り入れられた名マップ

サーズ天神〜大濠公園って徒歩圏内ですものね。旅行者は歩くのが大好きだから、ご案内してもクレームなんてきませんよ(笑)。ほかにオススメルートありますか? 天神ー博多間に歩いて楽しい道があるといいなと思うんですけれど。

山口天神ー博多間に関しては自分なりのゴールデンルートがあって、それをご紹介しています。

サーズゴールデンルートと言えば、大名から警固に抜ける「酔いどれゴールデンルート」は知ってますか?

福田ぜひあとで詳しく教えてください(笑)。ゴールデンルートに関しては、私はまだまだ勉強不足なので、色々と調べていきたいと思います。

旅行者から見た、福岡のまちに足りないもの

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サーズ福岡のまちが、もっとこうだったら楽しいのにと思うことはある?

福田福岡のまちってコンパクトで歩きやすいんですが、レンタサイクルがあればと感じることが多いですね。かなり行動範囲が広がると思います。駅周辺にはレンタルできる場所がほとんどないので、とてももったいないんです。

サーズそれは大きいですね。博多界隈のゲストハウスの動きなんかを見ても、みんな必要性は感じているんだよね。ただ自転車を運転する人にとって安全とは言いがたい道もあるから、そのあたりも改善していかなくちゃいけないポイントですね。逆に、これをもっと活用してほしいというものはある?

山口オープントップバスや100円バス(天神〜博多駅間)ですね。「パリでメトロに乗ればパリジェンヌ」のように、「福岡でバスに乗れば博多っ子」(笑)。バスは本当の意味で福岡のまちを楽しんでいただけると思います。

福田はとバスのような定期観光バスは、お尋ねが非常に多いのですがほとんどないので、もったいないですね。また、着物の着付けや伝統工芸体験も人気ですが、基本的に予約制。当日飛び込みで参加できるものがもう少しあれば嬉しいですが。

サーズそうだね、尋ねてくる人は空いている時間を楽しく使いたくて来るんだから。

山口観光ツールの点から言うと、県立・私立の美術館・博物館の各企画展を一覧できるリストがないんです。自分たちの手作業じゃ到底無理。ずっとコンシェルジュの間では大きな課題なんですが、未だに解決していません。

サーズ自分で調べてくださいという姿勢だものね。そういうのって、旅行者にもしっかり伝わっているんですよ。最近、グローバルシティのランキングデータ(森ビルの財団法人)を見たんです。福岡は「居住(住み易さ)」分野で一番スコアが高くて、調査対象全46都市中、世界レベルで9位。それに比べて、「文化・交流」は最下位だったの。それまで、福岡のまちには何かが足りないとうすうす感じていたものが、世界から見てもそうだったんだとショックを受けると同時に、テコ入れをする時期に来ていると感じました。

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山口ショックですね。でも分かります。美術館・博物館もご紹介したいんだけど、そこに行って欲しいと思えるプラスαがないんです。

サーズ欧米のミュージアムショップやカフェって魅力的だから行きたくなるでしょう。旅行者が求めているのは、ここですよね。福岡らしくて素敵なものに出会えるかどうか。飲食店でもそう。海外から来て関東資本のレストランに入りたいなんて誰も思わないんです。福岡のご飯を食べたい、福岡のクリエイターがつくったものを見たい、買いたい。そこがまだうまくリンクしてない気がします

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