RethinkFUKUOKAProject

知られざる酒蔵王国・福岡の未来を担う 二大ブランドの魅力に酔いしれて

ReTHINK FUKUOKA PROJECT レポートvol.44

アナバナではReTHINK FUKUOKA PROJECTの取材と発信をお手伝いしています。

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 週末の賑わいと春の陽気にどこかソワソワしてしまう金曜の宵の口。こんな日には、うまい酒を一杯、ゆるりと楽しみたいものです。
そう、今夜の「Rethink FUKUOKA PROJECT」は、初めての試みとなる「お酒」をテーマにした回なのです。コーディネーターは、全国の名だたる蔵を巡り、新たな味を発掘し続けるチャレンジングな酒店「とどろき酒店」の轟木渡さん。そして、轟木さんがレコメンドする「お酒を造る人」として、「杜の蔵(もりのくら)久留米」の森永一弘さんと「若波酒造(わかなみしゅぞう)大川」の今村友香さんが駆けつけました。お三方のお酒にかける思いや蔵にまつわるエピソード、お酒を楽しむポイントなどをお聞きしながら、計6種類のおすすめを飲み比べて味わいます。

会場には、お酒の登場を待ち受ける参加者の皆さんがずらりと勢揃い。知識も豊富なシブメンと、はんなりとした日本酒美人が和気あいあいとテーブルを囲みます。しかも、今回は、お酒のテイストに合わせたおつまみもサービス。これでは、酔わない方が無理ってもんです。
さあ、味わいながら学び、酔いと会話を楽しむ1日限りの角打教室がスタートです!

 

歴史ある酒蔵で活躍する
新しい世代の造り手たちが登場!

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轟木 今日のテーマでもある「福岡の日本酒」ですが、実は福岡って約60もの蔵があって、その数は全国でも5位を誇る酒蔵王国なんですよ。さらに日本酒を造るのに最高峰の米と言われる「山田錦(やまだにしき)」の原産量も全国5位くらいで、酒造りに有利な場所でもあるんです。その中でも、福岡のこれからを担う「お酒をつくる人」をお呼びしました。それでは、まず「杜の蔵」さんからご紹介しましょう。森永さん、どうぞ!

森永 こんばんは! 私は、明治の終わりに創業した「杜の蔵」の5代目にあたります。とは言っても、若い頃は本当にお酒が苦手で、東京でサラリーマンをやっていましたが、そのうちにモノ作りに魅力を感じて、家を継ぐために福岡に戻って参りました。我が子のように愛情をかけて造ったお酒を皆さんに美味しく飲んでもらいたいと考えて日々努めています。

轟木 ありがとうございます。こちらの「杜の蔵」さんは、全国でも数少ない燗酒や熟成酒に力を入れている、際立った個性の持ち主なんです。僕は酒屋に戻ってきて20年になりますが、当時、日本酒といえば東北。福岡のお酒は今では考えられないほど売れていなかったんですね。そんな中で数少ない同世代として支えてくれたのが森永さんなんです。今日は、一押しの熟成酒「独楽蔵(こまぐら)」を味わってください。
次に「若波酒造」の今村さん、自己紹介をお願いします。

今村 「若波酒造」は、家具で有名な大川市で大正11年から日本酒を造っております。うちのお酒のコンセプトは「味の押し波、余韻の引き波」。まるで波のように味がグッと押し寄せてくるんだけれども、後味は爽やかにすっと消えていく。そんな波を表現できればと思っています。

轟木 今村さんは全国でも珍しい女性の杜氏(とうじ)さんなんですよね?

今村 そうですね。今は八代目の杜氏並びに製造統括という役目に付いております。酒蔵の娘ではありますが、蔵は弟が継ぐものと思っていて、大学まで全く畑違いの方に進んでおりました。そんな私が日本酒にハマったのは、他でもない酒造りの風景です。蔵人さんの真摯な眼差しや働く姿に感動して、この風景の中に私も混ざって酒造りがしたいと思ったのがきっかけです。最近は、お酒を通して大川を発信したいという思いから蔵の中に利き酒所を設けました。大川の家具屋さんや畳屋さんにご協力いただいて、インテリアも大川一色なんですよ。

轟木 ありがとうございます! 「若波酒造」さんは、福岡というよりも、全国の最先端、今の日本酒を体現した蔵だと思っています。ここ数年で実力も伸びて、今や福岡を代表する存在になりつつある。現在進行形の酒蔵です。

今村 私にとって「とどろき酒店」さんのお名前は憧れの存在で、いつかは置いてもらいたいと思っていたんですが、中々納得いくものが造れなくて。5年ほど前、今の「若波」ができた時に意を決してご挨拶しました。

轟木 その時に飲んだ「若波」はそれまでとは全く違う味わいで、新しい時代が始まったなあと思いました。今日はぜひ皆さんも味わってみてください。

自己紹介の後、いよいよ、試飲がスタートです! まずは轟木さんからお酒を飲むコツをレクチャーしていただきました。

轟木 僕もけっこうお酒を飲むんですけど、二日酔いしにくい方法は、お水を飲みながら飲むこと。この水を「和らぎ水(やわらぎみず)」と呼ぶのですが、お酒と同じ量飲めば次の日もかなり楽ですよ。今日は森永さんにお水をご準備いただきました。

◎和らぎ水 杜の蔵 「仕込み水(しこみみず)」
森永 これはお酒を仕込む時の水で、高良山から流れてくる伏流水(ふくりゅうすい)を使っています。販売しているものではないのですが。飲んでいただければその違いに気づいて…、いただけるかどうかは皆様のお酒の進み具合によりますね(笑)

轟木 水の味って、お酒の味にダイレクトに出ますよね。そこにお米のエッセンスが加わって蔵の個性になるんですね。

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まろやかな飲み口で、口の中を爽やかに洗い流してくれる「和らぎ水」と一緒に、第一のお酒が各テーブルに配られます。ほのかなピンク色がかわいらしいお酒に身を乗り出して写真を撮る皆さん。

轟木 まず第一弾、乾杯のお酒は「若波酒造」さんからお願いします。

自由な発想から生み出される
福岡の地酒のポテンシャルを感じる2本


◎第一の杯 若波酒造 「ももいろにごり」
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今村 自然に発色した「赤色酵母」の赤とお米の白を合わせて淡い桃色に仕上げた発泡性のお酒です。口に含んだ時に軽めの微発泡を感じるでしょう。これはシャンパンと同じ製法で、瓶の中で2次発酵を促しております。日本酒としては珍しい色合いとスパークリングの喉ごし、日本酒の幅広さを感じていただければと思います。ぜひ桜を思いながらチビチビとお試しください。ちなみに、微発泡タイプは一気に開けると栓を開けた瞬間に吹きこぼれてしまうので、ゆっくりとひっくり返して、静かに栓を開けてガスを抜くのがコツです。

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◎第二の杯 杜の蔵 「独楽蔵 無農薬山田錦六十  特別純米」
http://www.morinokura.co.jp/products/sake/brands_kom.html

森永 まず、このお酒についてはお米作りから説明させていただきます。「杜の蔵」では、地元福岡のお米だけしか使わないと決めているのですが、その中の一つに「山田錦」という米があります。これは糸島で5月に種を蒔いて契約農家さんと一緒に苗作り、田植え、収穫まで携わっています。実は、この山田錦、全てではないのですが、無農薬で育てているんですよ。そして、その無農薬米を使ったのが2杯目のお酒です。
私どもは「農薬に頼らない元気なお米」を使いたいと考えているので、なるべくお米作りにも関わっているんですね。ちなみに、この山田錦の酒粕を使って焼酎を造り、その焼酎で出た粕を田んぼに戻して循環させているんです。
このお酒は2年ほど寝かせております。できたてのお酒に比べますと、味わいもしっかりしているので、チーズやお肉のおつまみが合いますね。
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二蔵を代表する真打ち登場!
多彩な飲み方でさらなる深みを学ぶ


◎第三の杯 若波酒造「若波 純米吟醸」
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今村 こちらが弊社の主力商品です。「吟醸」と付いておりますので、ちょっと香りに特徴を持たせております。例えるならばバナナのような丸くて優しく包み込んでくれるような香り。私は「バナナのような」と表現いたしましたが、自分の物差しの中で例えてみるのも楽しみの一つです。ラベルは、昔の酒蔵でよく使われていた「髭文字(ひげもじ)」という書体で記した「若波」に、吉祥柄の青海波(せいがいは)を合わせて、「和」を示す○で囲んでいます。
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◎第四の杯 若波酒造「若波 純米」
https://wakanami.jimdo.com

今村 こちらは「純米酒」で、香りよりもお米の旨味を凝縮したタイプです。グッと押し寄せる味わいが特徴で、弊社のコンセプト「味の押し波、余韻の引き波」を一番体現しているお酒と言えます。お料理との相性も良いんですよ。青地に青の箔でロゴマークを入れたラベルは遠目には青一色なのですが、手に取ってもらえるとキラリと光るという仕掛け。写真が非常に撮りづらいと酒屋さんに評判です(笑)。月夜の海に輝く波のように、しっとりと飲みたい時にどうぞ。

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◎第五の杯 杜の蔵 「杜の蔵 採れたて純米 一の矢(いちのや)」
http://www.morinokura.co.jp/products/sake/brands_kom.html

森永 弊社が造っている中で、酒蔵名の「杜の蔵」の名前が付くのは、できあがって比較的早めに飲んでいただくお酒なのですが、これはその中でもできたてのフレッシュな飲み口が楽しめます。少し冷やした状態でスッキリと飲んでください。
名前の由来は、弓道で言う「一番最初に放った矢」です。うちの酒蔵の敷地内にある弓道場に因んでいますが、弓道の的と利き猪口の模様が似ているのでこんなラベルにしました。

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◎第六の杯 杜の蔵 「独楽蔵 玄(げん) 円熟純米吟醸」
http://www.morinokura.co.jp/products/sake/brands_kom.html

森永 今度は、先ほどの「一の矢」とは正反対で、5年寝かせたお酒です。落ち着きのある丸みを帯びた味わいが特徴。この「独楽蔵」というシリーズは、できたての頃は少し荒いんです。少し渋みがあったり、刺激があったり、ちょっとやんちゃボーズな所を少し寝かせてあげることでなめらかになる。そうすると現代の幅広い料理にも合う。コマって、回すとぐらんぐらん揺れていますよね。そのうちに揺れが収まってピタッと軸が定まる。このお酒も造った後に少し寝かせることで味がピタッと決まる。そんなイメージで名付けました。これは冷やすともったいないので、お燗か常温がおすすめです。今日はお燗で飲んでください。

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轟木 新酒と熟成するものはどう違うのですか?

森永 最初からスマートな味のものは、時間を置くとその魅力が無くなっていくので、そういったものは早めに飲んだ方がいいんです。「独楽蔵」の場合は、時間を置くほどにまろやかになっていく。若いお酒は冷たく冷やすと美味しいのですが、寝かせたお酒は常温で飲む場合は少し大きめのグラスに入れて空気に触れさせる、あるいは少し温めた状態で飲む方が美味しいです。

轟木 燗酒もいいですね。適温があるのでしょうか?

森永 お酒によって変わるんですが、品のいい優しいお酒は比較的ぬるめにしてあげた方がいいですね。そうすると柔らかいほっこりした味になります。しっかりしたタイプのお酒は少し熱めにすることでキレが出ます。同じお酒でも温度によって感じ方が変わってくるのが面白いところです。昔、お酒を出すお店には「お燗番」という役目の人がいて、店によっては料理長と同じくらい偉い方だったそうです。お客さんの好みや料理を見ながら、見事にバチッと合ったお燗を出してくれる。能力はもちろんホスピタリティが必要な仕事で、機械にはできない事ですよね。もしみなさんが、美味しいお燗のお店に巡り合ったなら、ぜひ褒めてあげてください。冷たいのは誰でもできるんです。温めるのは腕が必要なんですね。

轟木 私の年になると、燗酒に目が無くて。今日は森永さんが「独楽蔵」の燗を付けてくださっていますので、味わってみてくださいね。

さて、そろそろお時間になってきました。今回は、僕が好きな日本酒のジャンルから、いつもと違う形の「福岡のお酒」を知って欲しいと思いまして、二つの蔵を紹介しました。「お酒を造る人」のお話を聞いてみると、また美味しさも格別です。「とどろき酒店」では、酒蔵巡りなどのイベント(※1)も開催しているので、ぜひ参加してみてください。

(※1)とどろき酒店のイベントはこちらから
http://todoroki-saketen.com
(※2)杜の蔵HP
http://www.morinokura.co.jp
(※3)若波酒造HP
https://wakanami.jimdo.com

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この後、趣向を凝らした「ReTHINK Cafe」の特別メニューに舌鼓を打ちながら、自分のペースで差しつ差されつ。初対面のお客さん同士もすっかり打ち解けて、会場のあちこちでお酒トークに華が咲いていました。
 轟木さん、森永さん、今村さんの思いや情熱を聞きながら味わう今宵のお酒は、頰ばかりでは無く、胸がポッと熱くなるよう。いつもよりも美味しく感じるのは、福岡の酒蔵の実力と未来への可能性にすっかり酔ってしまったからでしょうか。
春の宵にふさわしい大人の学び場、次回もご期待ください。

 

ReTHINK FUKUOKA PROJECTについて
コミュニケーションや働き方、ライフスタイルに大きな変化をもたらしている福岡。新しい産業やコミュニティ、文化が生まれるイノベーティブでエネルギッシュな街となっています。
そのチカラの根底には、この街に魅力を感じて、自らが発信源となっている企業や人がいます。
ReTHINK FUKUOKA PROJECTは、「ReTHINK FUKUOKA」をテーマに、まったく異なるジャンルで活躍する企業や人々が集い、有機的につながることで新しいこと・ものを生み出すプロジェクトです。


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