博多まちづくりミートアップ

路地からまちを元気に。レストランとコーヒー屋が取り組むまちづくりのかたち〜ミートアップvol3レポート後編〜

イベントを通して発信し続ける

main

白石マヌコーヒーさん、ガーブリーブスさん、ともに飲食店である一方で、さまざまなイベントを通して情報を発信されています。どのようなイベントをされているのか、またその仕掛けや意識されていることなどをお聞きしたいと思います。

本多ガーブリーブスでは、他の事業者さんやゲストの方とタッグを組んでのパーティープランなどが多いのですが、最近初めて自分たちだけでイベントを企画したりもしています。企画の際は、変に集客のことを考えて細かいことを詰めていこうとしても大抵はコケちゃう。それよりもまず、スタッフがどんなイベントをしてみたいのかということを聞き出すところからはじめますね。そのアイデアのなかに「お、それはやってみたら面白いかもしれないね」とピンとくるものがあれば進めていくといった感じでしょうか。

イベントの詳細はガーブリーブスのWEBサイトをご覧ください。

白石オープンして10ヶ月ほど経って、周囲の反応はいかがですか?

本多他にはない空間をつくりたいという気持ちを常に大切にしています。今1階のテラスにコタツを出しているんですが、これも前日ギリギリまで考えて決めました。お客さまも、びっくりしながらも喜んでくれていますし、結果的には出して良かったですね。

img01

ガーブリーブスでは、テラス席のコタツで鍋をつつくこともできる

白石博多のまちの印象はいかがですか?

本多博多のまちは東京の感覚と近い気がしますね。飲食も、帰る時間がそんなに遅くなくて。それに比べると「アンティーカ ピッツェリア ダ ミケーレ」がある大名地区は東京とぜんぜん違うんです。例えば大名は小箱が多いので、2、3、4軒目……と、次々にハシゴするんですよ。最初に福岡の方と大名で一緒に飲んだ日は、一体何時まで、いや、何軒まで行くんだ……!?と正直焦りました(笑)。
ガーブリーブスも、気分やシチュエーションに合った使い方をしていただきたいですね。ランチ、カフェ、ディナーとオープンしていますし、少人数での打ち合わせ、大人数でのパーティー、飲食後の〆の2、3軒目などなど、いろんなかたちでお役に立てると嬉しい。そのなかで、博多のまちらしく様々な方や店とつながっていきたいと思っています。福岡に来て思うのは、情報に敏感な方が多く、壁をつくらない。だからこそ、何か一つとっかかりがあるだけで情報がどんどんひろがっていくということです。そこにあるのは、人と人のつながり、店と店とのつながりだと思うんです。だから僕たちも、この店だけで盛り上げていくのではなく、そのつながりのなかに入って一緒に盛り上がりをつくっていきたいですね。

白石確かに福岡は人と人とのつながりが強い気がしますね。というよりもコミュニティが狭いのかもしれません。“知り合いの知り合い”を6人たどれば世界中の人とつながるとう言葉がありますが、福岡は3人でつながりますから(笑)。そういった意味では地縁が強い。まさに今朝も「これからマヌコーヒーさんに行く」という人と会いましたし。

松尾博多は歴史のある土地ですよね。そこで新しい店が根付くことのできる可能性があると思います。大変ありがたいですね。

福岡をコーヒーのまちに

img02

白石地元でのつながりという観点から話を進めますと、マヌコーヒーさんはローカルのアーティストの方々とコラボレートして色々な試みをされています。

松尾もともと地元にこだわってきたわけではないのですが、ちょっとずつ地元のつながりが広がってきたことで、身近な人と色んなことがやれる環境が整ったという感じでしょうか。例えば、イベントのたびに、ローカルなアーティストにグッズを作っていただいたり、ワークショップを店で開催したりしています。

白石本当に色々と仕掛けていますよね。最近ではどんなワークショップに人気があります?

松尾最近人気なのは、「糸かけ曼荼羅」ワークショップです。大名店でも使用している「ひょうたんランプ」や「ひょうたんスピーカー」を作っているカラヴィンカの龍石さんという方がいまして。糸島に暮らしているのですが、ワークショップの講師をしていただきました。すぐに満席になるほど人気なんですよ。
あとは、お酒ならぬ“コーヒーを片手に”音楽を楽しんで欲しいと企画したライブイベントをやりまして。福岡のアーティストNONCHELEEE(ノンチェリー)さんにデザインしていただいたTシャツを販売したりもしています。

img03

直感で色を選び規則的に糸をかけていくことで美しい幾何学模様が浮かび上がる「糸かけ曼荼羅」ワークショップ。制作時間は3〜4時間ほど

img04

松尾さんがこの日着ていた「NONCHELEEE(ノンチェリー)さん」とコラボしたTシャツ。manucoffeeが発信する情報や商品の高いデザイン性が根強いファンを育む要因のひとつではないだろうか

白石その中でも地縁から生まれた最たるイベントが、福岡コーヒーフェスティバル「A VIEW INTO THE CUP “COFFEE” FESTIVAL」ですよね。

松尾はい。昨年初めて開催したイベントです。10月1日が(全日本コーヒー協会より)コーヒーの日と定められているので、じゃあせっかくだしこの日にコーヒーのイベントをしようと、6年間くらい構想を練ってきたものです。これまで築いてきた飲食店さんやアーティストの方などにご参加いただき、ローカル感あふれるイベントになりました。開催してみるまではちゃんとお客さんが来るか心配だったのですが、ふたを開けてみると千人くらい来てくださった。しかもコーヒーを買うのに長蛇の列ができるという奇跡の現象が起きました(笑)。今年も開催予定なので、さらにアップデートしたイベントにしたいと思っています。

img05

天候にも恵まれ盛況を博したコーヒーフェスティバルについて話す松尾さん

白石店舗でコーヒーを提供するだけではなくて、どうしてこのような試みをしようと思ったのですか?

松尾福岡をコーヒーのまちにしたいということは、前々からスタッフ全員が考えていたことでもありました。このようなさまざまな試みを通してコーヒーの文化を盛り上げていくことで、将来的にはナショナルチェーン店が展開しにくいまちにしたい。まあ、とてつもなく大きな目標ですが(笑)。

白石福岡って結構コーヒー文化が盛んだと思うのですが、ライバル店、あるいは店同士の交流はあるんですか?

松尾ライバルというよりも刺激を与えてくれる良き“仲間”という感じですね。焙煎の大会では地元のコーヒー屋どうしでチームを組んだりもします。

白石ちなみに新しい店舗が近々オープンする予定だそうですね。

松尾はい。6月に白金店がオープンします。

白石あのエリアもコーヒー屋さんが多いようですが、立地のポイントはありますか?

松尾最初から白金で探していたわけではないんですね。ただ、次の新しくつくる店舗では焙煎と店舗を併設しようと思っていましたので、ある程度の広さがあることや、煙突の問題をクリアできるような物件であることなどを条件に1年くらい探していたところ、すごく良い物件を白金に見つけたという感じです。

白石お聞きしていると、良い物件との出会いが大きいようですね。

松尾本当にそうです。我々の手にかかると面白い空間になりそうだと思えるポテンシャルがあるかどうか。あとは、その土地に良い雰囲気があると感じるのも大切なポイントです。

白石ありがとうございます。

小さな仕掛けがまち全体を楽しく、元気に

img06
img07

マヌコーヒー代表の西岡氏(左より2人目)も、この日は聴講者の一人として参加。松尾さんを見守りながら、お二人の話に真剣に耳を傾けておられました。

白石裏通りに一歩踏み込んだところに魅力的な店が入ってくることによって、まち全体が盛り上がる。そういう事例が増えていますね。博多のエリアもそんな感じでプチブレイクしていくと面白いのになあと思いますね。

本多マヌコーヒーさんは僕らにとって理想的なかたちですね。つまり、一歩入った小さな通りに店を出すことによって、最終的に地元の方々に「ガーブリーブスができて良かったね」と言われるような存在になりたい。それが僕らのフィロソフィーなんです。東京のような大都市でも、「えっ、こんなところにレストランがあるの?」という店を目にすることがあるんですが、不便な場所にあっても魅力的だから客足が途切れないし、常にその一帯が賑わっている。こんなふうに、その店が起爆剤となって周囲に魅力的な飲食店や店舗が増えていくことが、都市のまちづくりなんじゃないかと感じています。ちなみにピザ屋「アンティーカ ピッツェリア ダ ミケーレ」があるのは大名の一角ですが、勝手に「奧大名」と名づけて、奧大名を流行らせようとしています(笑)

白石「奧大名」、いいですね(笑)。本多さんがおっしゃられるように、「周りを巻き込んでいくこと」がまちづくりでは非常に重要だと思います。最後に、博多のまちに対して「こういうことができたらいいなあ」とか「もっとこうしてほしい」というご要望などがありましたら、ご意見をお願いします。

松尾昨年は博多駅前広場でのイベントなどにも出店させていただいたのですが、予想以上にお客さんにきていただき、店舗じゃなくても売り上げを実感できました。3月にもはかた駅前通りのイベントにお誘い頂き出店予定ですが、そういった取り組みは店舗側としても非常に有り難く嬉しいです。

白石マヌコーヒー承天寺店さん独自の取り組みなどはありますか?

松尾あのエリアは古い寺院が多くもオフィス街の一角なので、サラリーマンの方が割と多いんです。なので早朝からコーヒーが飲めるように、オープンの7:30から午前中いっぱい、その月の旬の豆をフレンチプレスで抽出した「グッドタイムコーヒー」を200円で販売しています。おかげさまで午前中のお客さんは増えてきたのですが、夕方6時以降ピタリと来ない(笑)

白石退社と同時に帰宅されるんですね(笑)

松尾博多の駅前でも落ち着いた雰囲気の場所ですし、仕事帰りの息抜き、〆のコーヒーなどなど、色々な使い方をしていただきたいですね。あとはお店のまわりが少し暗めなので、もう少し明るくなると人通りが増えるんじゃないかなと思います。まずは、歴史のある落ち着いた場所ならではの魅力をどう伝えていくかが、課題のひとつですね。小さな取り組みを通じて、少しずつ盛り上げていきたいです。

白石ありがとうございます。本多さんはいかがでしょうか?

本多松尾さんが言われるように、通りが暗いよりも明るいほうが人が集まりますから、明るくて楽しいイメージをつくっていくことが必要だと思います。加えて、祭のように参加したくなるようなワクワク感のような仕掛けを増やしていくことが、「あの場所に行けば何か楽しいことがあるよね」というイメージにつながっていくのではないかと思います。東京の人間からすると、博多のまちは本当に九州の玄関口なんです。そして無限のパワーがある。そのパワーを、より多くの方々に伝えていきたいですね。そのためのイベントなど、お話があればガーブリーブスとしてはもちろん積極的に参加させていただきたいです。

白石ありがとうございます。お二人がおっしゃる通り、小さな取り組みがスパイスとなって、まち全体の活性化につながっていけばと思います。本日のイベントの主催「まちづくり推進協議会」でも、朝カフェ、映画館、ストリートマーケットなど、地元の事業者さんとともに様々な取り組みをしてきましたし、今後も続けていく予定です。その一環として、3月には「HAKATA STREET Bar(ハカタストリートバル)」というイベントが開催されます。本日お話しいただいたマヌコーヒーさんとガーブリーブスさんにもご出店いただきますので、どうぞ足をお運びいただけたらと思います。

***トーク終了後も、会場から質問が飛び出しました。***

img08

参加者1マヌコーヒーさん、ガーブリーブスさんともに、ちょっと入った裏通りにお店がありますが、オープン当時、認知を図るための工夫や取り組みなどはありましたか?

松尾代表から口酸っぱく言われているのは、「美味しいコーヒーをつくり続ければお客さんは来る」ということです。それすらも難しい世界ですが、その美味しさを先輩方が積み上げてきたおかげで、今のマヌコーヒーがあると思います。この気持ちを、ブレることなくもち続けて頑張っていきたいですね。

本多ガーブリーブスを運営しているバルニバービでは、オープン時はまずプレスチームと連動して動きます。例えば新聞に数万部折り込みで告知したり、駅前の店舗さんに置かせていただいたりですね。ちなみに、ガーブリーブスの開店時には、この界隈の企業の方々にはご挨拶に伺いました。

松尾僕からも、本多さんに質問していいですか? マヌコーヒー春吉店に毎朝新聞が届くのを手にとりながら、新聞にカッコいい折り込みチラシを入れたらどうかな……とちょうど考えていたんです。(折り込み告知をした時の)実際の反応はどうでしたか?

本多ウェブやSNSとは違う反応ですよね。どのくらい来客に結びついているのかというデータは分からないですが、「僕らはこういう考えでこの店をここに出しました」という、本当に伝えたいコンセプトを文字で伝えられたことと、かたちとして残っていくのが紙媒体の良さでもあると思います。

白石そうですね。SNSと新聞折り込みは客層が違うと感じますね。

img09

参加者2飲食店で働くことは、体力もいるしキツい仕事だというイメージがあるのですが、スタッフの確保や、モチベーションを保つための取り組みがあれば教えて下さい。

松尾忙しい飲食店さんと比べると、コーヒー屋さんって比較的のんびりしているなあと思います(笑)。料理を提供するわけでもないし、その分作業も限られますから。それでもスタッフの確保には苦しんでいるのが現状です。コーヒーが大好きで長続きするかというシンプルなポイントなんですが、これがまた難しい。

本多スタッフを育成する上で、僕は基本的に自分がやりたくないことはさせていません。やっぱり自分でも、得意なことややりたいことをしたいじゃないですか。だからそれぞれが得意なこと、興味があることを見つけて、背中をポンと押してあげる。あとは、大きな求人媒体で募集かけても結局はあんまり来ないんです。今ガーブリーブスで働いているスタッフは、自ら「働きたい」という意志を持って来てくれた子たちばかりです。この「働きたい」と思ってもらえるようなエネルギーをお店がつくって発信することで、スタッフも自然に持ってくるし、モチベーションも保たれるような気がしますね。

松尾そうですね。そのエネルギーと言うか店の魅力に惹かれてスタッフになるというケースがやっぱり多いですね。

img10

参加者3地元で展開されているマヌコーヒーの松尾さん、外から博多に来られたガーブリーブスさん、それぞれの立場がまた違ったお話が聞けて非常に興味深かったです。そんなお二人に、博多で出会った人や店で印象に残った方々がいらっしゃればお聞きしたいです。

本多僕が九州に来たとき、知り合いが誰一人いないなかで唯一世話になったのが、イタリアンレストラン「COMATSU」店主の松村さんでした。人と人をつなげる才能が半端ないんです。色んな方とつないでいただいたことがガーブリーブスでも生きていますので、感謝しています。

松尾すぐ頭に浮かぶのは、マヌコーヒーの代表の西岡ですね。素直に、すごいなあと思います。情熱が変わらないすごさ。そしてそれをストレートにやり続けることのすごさ。だからこんなお店がつくれるんだと、身をもって体感しています。

白石ありがとうございました。

img11

POPULARITY 人気の記事

PAGE TOP