博多まちづくりミートアップ

路地からまちを元気に。レストランとコーヒー屋が取り組むまちづくりのかたち〜ミートアップvol3レポート前編〜

路地からはじまる
地元に根付く店づくり

去る2月20日、博多でさまざまな事業を行う方をゲストに招き、その取組を通じて”博多のまち”について考え議論する「博多まちづくりミートアップ」Vol.3を開催しました。今回のテーマは「お店が博多をもりあげる。一杯から始まるまちの魅力づくり。オフィス街のイメージが強い博多のまちですが、博多駅前の大型施設オープンや周囲の店舗の増加などで、昨今ますます盛り上がりを見せています。そんな博多駅前のエリアより、この日は飲食店に携わる2名のゲストが登壇。地元に根付くための工夫や取り組みなど、さまざまなお話が飛び出しました。当日の様子をダイジェストでお届けします。

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マヌ・コーヒー
店舗管理・広報
松尾敬介氏
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ガーブリーブス
店舗責任者
本多威悠氏

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白石さん(以下、白石)みなさん、こんばんは。本日の司会・進行を務める、ダイスプロジェクトの白石と申します。本日は博多エリアの飲食店より2名の方をお迎えしました。まずはゲストの方々のお店についてお聞きしたいと思います。


まちに合わせてコンセプトを考えるまちのコーヒー屋さん

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松尾さん(以下、松尾)みなさん、本日はお越しいただきありがとうございます。マヌコーヒーの店舗管理・広報を担当している松尾です。福岡市内にある4店舗のうちのひとつが博多駅前の承天寺さんのそばにあるということもあり、本日はお声をかけていただきました。

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マヌコーヒーでは、コーヒー豆の焙煎、販売をはじめ、エスプレッソやフレンチプレスコーヒーを基本に提供しています。はじまりは春吉店です。アメリカの方が経営されていたコーヒー屋さんを今のオーナーが引き継ぐかたちでスタートしました。当時の内装が割と活かされていて、アメリカンな雰囲気で10坪ほどのこじんまりした店内になっています。

大名店はマヌコーヒーのなかでは一番の大箱で、20坪ほどの広さがあります。天神の中心地にあるということもあり、若年層や観光客の方が多い店舗です。また薬院にある蘭販売店「プラセールワークショップ」さんとの提携で、蘭の販売や、オーナーの方のアート作品なども販売もしています。

柳橋店は「博多の台所」とも呼ばれる柳橋連合市場のそばにあることもあり、市場らしく豆売りを強化した店舗になっています。那珂川にかかる柳橋のたもとに佇む2階建て店舗で、個人的には本当にオススメの店舗。この気持ちよさを一度味わっていただきたいです。

そして最後が、昨年オープンしたばかりの承天寺店。物件に一目惚れして出店が決まりました。承天寺のご住職にご挨拶にいった際、景観を保つために扉を縦格子にしてほしいというご要望がありましたので、扉をそのまま譲り受けて改装しています。お寺のそばで、かつオフィス関係の方が多いということもあり、落ち着きのある店舗となっています。

また店舗とは別に、焙煎工場「オオカミコーヒーロースターズ」が春吉にあります。焙煎は1秒が勝負の世界なので、作業に集中できるように焙煎に特化した工場になっています。ちなみにマヌコーヒーでは、焙煎から1週間以上経った豆は販売していません。

以上、4店舗それぞれの立地によって店内やコンセプトが異なるのも、マヌコーヒーの特徴です。

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第1号の春吉店。もともとコーヒー屋だった店を引き継ぐかたちでスタートした

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博多駅前の承天寺店。古い寺院が多いエリアなだけに、引き戸の扉や色合いなどに気を配ったデザインに

白石ありがとうございます。4つの店舗の雰囲気やコンセプトも異なるということですが、営業時間もまったく違うようですね。春吉店はなんと夜中の3時までだとか。

松尾はい。春吉は夜中の3時くらいまで実際に来てくれるお客さんがいるんですね。営業時間というのは、そのまちに住む人の層によっても変わってきますので、考えながら設定しています。例えば柳橋店は、市場が日曜定休なので合わせて日曜日はお休みにしています。最近実験的にオープンにしているんですけれど、また普段とは違ったお客さんが来られたりして面白いです。

白石新しい動きやトピックなどはありますか?

松尾最近カッピングの教室をはじめました。カッピングというのは、ワインでいうテイスティング。カッピングの仕方を学んで色々なコーヒーをテイスティングすることで、コーヒーの風味を知りお好みの味を見つけていただければと開いています。

白石最後に、マヌコーヒーさん全体のコンセプト、こだわりについて教えて下さい。

松尾何よりもまず、美味しいコーヒーに触れていただける環境づくりですね。美味しいコーヒーを提供する。それが、マヌコーヒーが目指しているところです。

白石ありがとうございます。

博多の真ん中にできた、新しいオアシス

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白石お次に本多さん、お願いします。

本多さん(以下、本多)みなさん、本日は(会場の)ガーブリーブスにお越しいただきありがとうございます。店舗責任者の本多です。ガーブリーブスは、全国で74の飲食店を運営しているバルニバービという会社が運営しています。そのうちの2店舗が、福岡は大名のピザ屋「アンティーカ ピッツェリア ダ ミケーレ」とガーブリーブスです。ガーブリーブスは1〜3階の大型店で、全226席。1、2階はレストランフロアになっていまして、3階は本日のようなイベントやパーティー、会議などに使用できるようなスペースになっています。

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白石立地ですが、大通りに面しているわけではなく、一歩入り込んだところにある。これには意図したことがあったのでしょうか?

本多バックストリート、つまり裏路地戦略です。大通りじゃなくて、あえて裏路地に出店するというコンセプトがもともとバルニバービの原点にありました。裏路地に魅力的な空間が生まれることで、大通りはもちろん小さな通りにも人の賑わいをつくることができないだろうか。そういう試みをずっと続けてきたんですね。

白石場所はどのように探したのですか?

本多バルニバービの代表が歩いて見つけたんです。もともとコインパーキングがあるような冴えない雰囲気だったと思いますが、「ここに緑があったら気持ちいいよね」と、まちなかのオアシスのような空間を掻き立てられたようです。でも僕なんかからすると、突然オアシスを想像するのってちょっと難しい。緑を植えてみるまで正直イメージが湧かないんですね。でも緑をちょっとずつ増やしていくうちに、「ああ、なるほど」と。代表の頭のなかでは、完全にイメージできているのですごいなと思います。オープン前には、土地のことを身をもって知ることが大切だということから、代表と2人で博多と天神のまちを自分たちの足で巡りました。トータルで5キロほどですが、調査会社などには一切依頼せずに、人の流れや駅からの時間なども代表自らが計ったりして。そういう姿を見ること自体も、僕にとって非常に刺激的で勉強になりました。

白石なるほど。ちなみに東京のバルニバービさんには私もお邪魔させていただいたことがあるんですが、非常に独特なスペースでした。

本多ありがとうございます。ビル一棟まるまる使って、1階に店舗、上階にはバルニバービ本社が入っています。

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ガーブリーブスを運営する株式会社バルニバービの東京本社。1Fにレストラン、上階にオフィスが入る

アパレル業界を辞めてコーヒー屋へ

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白石さきほどガーブリーブスさんの立地についてお話がありましたが、マヌコーヒーさんもどちらかというと独特な立地に店舗がありますよね。どのようなご縁でその場所を選ばれているのでしょうか?

松尾大通りに出店したい気持ちはあるんですが、お金の問題もありますから(笑)。そういう問題をクリアできずに色々な場所を見て回るなかで、光る物件を見つけて惚れて、店舗を出すというかたちで展開してきました。もともとマヌコーヒーの代表が、まちの歴史を掘り下げるのが大好きで、その土地のことを深く知っていくうちに「ここにお店をつくりたい」という気持ちが生まれてくるということもあると思います。

白石だからでしょうか。その土地の魅力があってこその店舗のつくりになっていますよね。内装も独特だと思います。

松尾僕も、その独特さに惹かれた一人です(笑)

白石なるほど。松尾さんとマヌコーヒーさんとのそもそもの出会いを教えていただけますか?

松尾僕はもともとアパレル関係で働いていたんですが、あるときふらりと大名店に行った時に衝撃を受けたんです。この店はいったい何なんだ、と(笑)。ちょうどその頃、アパレルの世界で何も身に付けていないことへの不安感というか、焦燥感のようなものが自分のなかにあった。もし何かを極めるとすれば、飲食だったらコーヒーが好きだしコーヒー豆の世界も面白そうだなあという気持ちが生まれて、ここで働いてみたいと思うようになったんです。偶然知り合いのツテでマヌコーヒーを紹介してもらえる機会に恵まれ、幸運なことにスタッフのひとりになれました。そんな経緯でコーヒーの世界に惹かれたものの、コーヒーは奥が深すぎて極めるなんて到底無理だなと今になって分かりました(笑)

白石どのような衝撃だったのでしょうか?

松尾大名店には「五感を刺激する」というコンセプトがあるんですね。コーヒーの味はもちろん、店の佇まい、壁の色、音楽の音、置いてあるものなど、すべてが刺激的でした。

白石確かにマヌコーヒーさんといえば、店内や外装の「色」がまた独特ですね。個人的にはその「色」の持つ他にはないインパクトが好きです。

松尾ありがとうございます。「色」にはこだわりを持って店を作っている感じはありますね。例えば柳橋店のブルーは、もともとのお土産屋さんの色を残して市場っぽさを出していますし、大名店内の黄色い壁は、焙煎前のコーヒー豆を表現しています。

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中央区大名にあるマヌコーヒー大名店は、立地上、若者や観光客が比較的多い。特徴的な黄色壁は、焙煎前のコーヒー豆の自然な色を表現

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マヌコーヒー柳橋店は柳橋連合市場のちょうど入り口にあり、市場という立地を活かしてテイクアウト用のおみやげコーヒーも充実。青い外装に「博多おみやげ」の字がひときわ目を惹く

アスリートから一転、飲食の世界へ

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白石ガーブリーブスの本多さんもまた、飲食業会とは違う世界の方だったと伺いました。経歴を教えていただけますか?

本多はい。僕はもともとプロのスノーボーダーでした。

会場(驚きの声)

本多27歳までスノーボードの世界にいまして、さあ次の夢を……と考えたときに、僕自身食べることが大好きだというところに行き着いたんですね。特にピザが大好きだったこともあって、ちょうど「ダ ミケーレ」というナポリで1870年から続くピザ屋が東京に進出することを知り、タイミングよくそこに入ることができました。

白石アスリートから飲食業界とは心機一転ですね。世界が変わることへの抵抗はなかったのでしょうか?

本多若い頃から海外に行っていたので、知らない世界に飛び込むことへの抵抗はあまりありませんでした。スノーボードは個人競技である一方、飲食業界は仲間と一緒につくりあげていく世界のようですが、スポーツの世界でも飲み食いを通して仲間ができるんですね。大会でも飲食を共にすれば仲も良くなる。家族のような関係になっていくんです。全然違う世界に身を投じていますが、食を通じて素晴らしい関係性を築いていけるようなリーダーになりたいと考えています。

白石現在は店長として新しいスタッフ採用にも関わっておられるようですが、採用のポイントなどはありますか?

本多話してみたときの顔の表情は大きなポイントですね。楽しみをつくるのが飲食業だと思いますので、自然に笑いが出るかというところは見ています。

白石マヌコーヒーの松尾さんはスタッフのケアや面接などで大切にしていることはありますか?

松尾面接で必ず質問するのは「なぜマヌコーヒーに入りたいと思ったのか?」ということと、やはり笑顔ですね。あとは協調性というか、仲良くやっていけるかどうかというところも大事だと思うのですが、そこを精査するのはなかなか難しいですよね。

白石ありがとうございます。

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イベントの途中には、参加者どうしの談話タイムも。登壇者の話をさらに膨らませて後半戦へ。


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