博多まちづくりミートアップ

博多をもっとにぎやかに! 3大商業施設が語るこれからの博多の楽しみづくり〜ミートアップvol2レポート後編〜

キャナルシティにはなぜ外国人が多いのか?

main_22

白石各施設の概要をお聞きしたところで、さらに疑問をぶつけていきたいと思います。
まず宮崎さん。キャナルシティに来るたびに驚くのは、圧倒的な外国人の多さです。どうしてこんなに海外からのお客さんが多いのでしょうか。

宮崎それは我々も逆に聞きたいくらです(笑)。おそらく大型客船などのツアーで海外から来られている方々は、朝にクルーズ船が到着して夜に出航するまでの制限された滞在時間の中で、いかに効率よく福岡を回るか、とされていることが結構大きいと思います。観光は、まず太宰府天満宮に行かれて、その次に買い物ということでキャナルシティという流れで来ていただくことが多いようです。専門店をはじめ、エンタテインメント性の強いショップや飲食店、スペースなど施設内で楽しめますし、中国では有名な免税店のラオックスさんも1400坪とかなり大きく商品も揃っています。私たちも近年ではインバウンドに対応するかたちで、免税カンターや館内表示の他言語化を進めるなど、外国の方々が来やすい環境を整備することにも取り組んでいるので、そういった効果もあるかもしれません。
あとは、キャナルシティがアメリカ人建築家のジョン・ジャーディによる建物であることや、韓国人アーティスト、ナム・ジュン・パイクの大きな作品が設置されているので、施設自体を目的に来店する方もいらっしゃるようです。

白石一つの決定要因というよりも、さまざまな要素が絡みあって集客につながっている印象ですね。海外からのお客さまが増えることで、周辺に変化はありましたか?

宮崎活気が出るという点では大変嬉しいのですが、ツアーバスが増えすぎると渋滞につながりかねませんので、車や地元のバスでお越しになるお客さまとの交通の関係性についてもきちんと考えていく必要があると思っています。

白石ありがとうございます。

屋上で年間180本のイベントを開催する理由とは?

img01_2

屋上で開催されているイベント「子どもCITY HAKATA」の様子

白石次に上野さん。JR博多シティさんの屋上「つばめの杜ひろば」について少し詳しくお聞かせいただけますか。

上野屋上は南北に横長で、北側には交通の神さまを祀った「鉄道神社」などがあり、外国の方や比較的大人向け。反対側はファミリー向けにつくられていて、三輪車やミニ列車などがあります。

白石この屋上で行われるイベントの数が、なんと年間180本。どうしてこんなに多くのイベントを開催されているのですか?

上野まず何より、お母さんにゆっくり買い物して欲しかったんですね。お母さんの買い物って時間がかかるでしょう(笑)。だったらお父さんや子どもたちは屋上で遊びながら待っていられるような環境を整えたい。これが、毎週イベントを仕込むようになった最初の理由です。少しでも快適に過ごしていただけるように、お酒を販売している時期もあります。

白石それにしても年間180本は本当にすごい数だと思います。博多駅前広場などのイベントも合わせるとさらに増えるわけですが、どこまでご自分たちで企画されているのでしょうか。

上野JR博多シティが持っているイベントスペースは、屋上、博多駅前広場、ホールの3つ。そのうち屋上に関してはほぼ100%自分たちで企画しています。博多駅前広場は多くのご協力を得て開催することが多く、ホールも半分は自分たちで企画しています。

img02_2

白石先ほど博多駅前広場にトム・クルーズを招聘したとおっしゃっていましたが、これは警備面でも大変だったのではないですか?

上野そうですね。本当に大変でした。社員のほぼ全員を含めた100人近くのスタッフを導入しましたが、車を追いかけていくファンの方を止めるのに、スタッフが轢かれそうになったりして……。

白石それは大変ですね……。イベントの告知などに対してはどのように意識されていますか?

上野告知の仕方もイベントによってバラバラです。劇場やホールだと、数ヶ月前から告知してチケットを販売するという流れが一般的ですが、博多駅前広場の場合、イベント目的で来るというより、仕事帰りあるいは買い物ついでというお客さまが多い。つまり、たまたま“通りかかった”方が多いんです。しかも毎日42万人の方が利用している駅ですから、事前告知をしっかりやらないとお客さんが集まらないということはありません。私たちも、そういった方々がふらっと立ち寄れるようなマルシェやフェスティバルのようなイベントをと、意識しながら企画しています。

白石SNSやチラシなど、情報発信はどのように使い分けられていますか?

上野従来は、新聞告知、ダイレクトメール、フリーペーパーの広告などが中心でしたが、紙媒体は印刷の都合上早めに原稿を仕上げる必要があって、情報が固まらずに発表してお客さまに詳細をお届けする手段がなかったんです。現在はやはりSNSが主流になってきています。これからは情報をお客さまにいかにシェアしていただけるか、いかに発信していただけるかという点が、強化していくべき課題だと思っています。

白石ありがとうございます。

企業と一般の人が一緒に店を創るってやっぱり大変?

img03_2

白石博多マルイの石岡さん。「共創」とは言えど、言うは易し。やはり大変なこともあったのではないかと思いますが、共創を盛り上げていくのに工夫、あるいは苦労はありましたか?

石岡一番大変だったのは、お客さまとマルイとの意見をまとめることでしょうか。たくさんのお客さまの声ってまとまらないことが多いですよね。でもきちんと精査すると、本質的な点が含まれていたり共通していたりするんです。その本質をしっかり理解して持ち帰り、整理し、またお客さまに返して確認し、再度持ち帰る……という作業を延々と繰り返しました。店のコンセプトを決定するのに約4ヶ月かかった理由はここにあります。でもこの作業はやはり大事。きちんとしとかないと、どこかでズレていっちゃうから。

白石一般のお客さんから鋭い意見が出る一方、無邪気な意見もあると思いますが、それに対してマルイさんは店づくりプロとしてどのような対応をされるのでしょうか? 一般の方と企業としての意見とのバランスの取り方のコツはありますか?

石岡マルイ側としても「うちは企業なので、儲からないとやれません」と正直にお伝えすることもありました。何度もディスカッション重ねるうちに、理解し合えるというか。「これだと儲からないのでダメですね」なんて逆に言われたこともありました(笑)。確信しているのは、収益第一で考えず、お客さまの声を何度もすり合わせながら具現化した結果、多くのお客さまにご利用いただけるお店になった、という表現のほうが近いということですね。

白石その意見を反映させてオープン1年ですね。共創に参加された方の反応はどうですか?

石岡大変嬉しい反応をいただいています。参加いただいた方の中には、博多マルイに来たら必ず兵四郎様でだし(共創の取り組みから生まれた商品)を買って帰られる方もいらっしゃるぐらい思い入れが強いようです。もちろんリピーターも多いです。現在も引き続き共創関係を継続することで、反映できなかったところ、反映されたけど改善できるところなどを一緒に考えていく機会を設けています。

img04_2

白石九州では初の店舗ということですが、有楽町をはじめ関東圏内と比べて福岡の人の気質はどのようにお感じになりましたか?

石岡とにかく地元が大好きということを強く感じますね。「九州の良いものを置いてください」という声をよく聞いたのですが、東京の人は「東京の良いものを置いてください」とは言いませんから(笑)。実はこれは私にとって初めての経験だったので、「地元の良いものをたくさん紹介する」ということがピンとこなかったんですね。明太子のような有名土産ばかりを思い浮かべてしまっていました。でも違った。

この「表にはまだ出ていないけれど、本当に良いものを発信する」というところで、福岡の商工会連合会様と意気投合したんです。商工会連合会様にとっても、まだ知られていないけれど良いものをつくっているお取引先様を独り立ちさせたいわけです。そこで一緒に何かできないだろうかと、すでに何度かイベントを開きました。これがまた盛況なんです。共創のお客さまからいただいた、一聞して個人的な声というのは、実は多くの方の声なのだということに気付かされました。

白石ありがとうございます。

img05_2

商業施設が手を取り合って博多のまちを盛り上げる

img06_2

白石今回のトークは博多のまちづくりが主軸にあるということで、今後、商業施設が共同でまちを盛り上げていくとすれば「こういうことがあったらいいな」「こういうことをしていきたい」というご意見をお聞きしたいと思います。

宮崎キャナルシティからすると、博多マルイさんのオープンには非常に興味がありました。隣には、あれだけのアパレルやショップを一堂に集めて、またイベントでも高い集客率を誇るJR博多シティさんが構えておられる。そんな立地でマルイさんは一体どのような態勢で臨んで来られるのだろう。そのコンセプトや店内構成はどんなものだろう。そしていざ蓋を開けると、従来の商業施設のフロア構成とはがらりと違うもので驚くと同時に、それを見て勝手に「ああ、JR博多シティさんとの相乗効果が生まれるだろうな」と直感した。棲み分けができていて、買い回りできる環境が整えられている。

石岡博多マルイの出店が決まったときにはアミュプラザさんを視察させていただきましたが、私たちも正直何もできないと思ったんです。でもお客さま会議で話を聞いていくうちに、色々な意見が出てきた。例えば天神は、地下街を通して色んな場所で買い回りができる。一方の博多は一カ所で何でもそろうのが魅力。そういう意味では、アミュさんや阪急さんで買い物をしていただいたあとにマルイに来ていただくという流れは、確かに一種の相乗効果なのかなとも思っています。

上野博多マルイさんのオープンは、私たちJR博多シティにとっても敵になるのか味方になるのかということで議論を重ねました(笑)。そして私たちの5周年にあたる昨年4月、博多マルイさん・KITTEさんのオープン時に、「ようこそKITTEさん」と花束を持った五郎丸さんがマルイさんたちを歓迎する広告を打ちました。それに対しては「先輩、ついていきます!」と、マルイさんもなんと広告で応えてくださった。その後も初売りの際に一緒に告知したりと、仲良くさせていただいています。こうして博多駅前の商業施設どうしで良い関係を築くと同時に、今後はやはり目と鼻の先にあるキャナルさんとも連携していきたいということですね。

宮崎ありがとうございます。私たちキャナルシティは、エンタテインメント性を旗振って参りましたので、まずは博多駅前のJR博多シティやマルイさんで買い物を楽しんでいただき、その足でこちらまで来てもらえるような関係になれると嬉しいですね。

石岡はい。そう思います。ただ、博多駅前通りの課題もあると思います。先ほど紹介した「共創」の取り組みの際も、お客さまからキャナルシティさんの話題をたびたびお聞きしたのですが、マルイや博多シティとキャナルシティをつなぐ駅前通りの行き来はたった10分ほどなのですが、その通りが「つまらない」とおっしゃるわけです。

宮崎キャナルシティでも博多駅前通りをもっと活用できるような取り組みは何度か試みてきました。例えば昨年のキャナルシティ20周年の際には、キャナルシティと博多駅間を行き来するベロタクシー(自転車タクシー)の運行を8日間にわたり実施し、計5台で3500名の方にご乗車いただきました。

上野イベント際など折に触れ、三社で告知や宣伝においても連携していけたら面白いだろうなと思いますね。

石岡今後は歩道が拡張されるというお話も聞いてますし、通り沿いに魅力的な店舗が増えていくことで、楽しく歩けるエリアに進化していってほしいですね。点と点ではなく面でもっとこの地域を盛り上げていくことができるんじゃないかと思っています。

宮崎トライアルでいいので、博多駅前通りを歩行者天国にするといったような試みもしてみたいですね。みんなで盛り上げられることを考えていきたい。

白石はかた駅前通りは国家戦略特区ということで、歩行者天国も可能なエリアですし、通り沿いにイベントスペースを設けるような取り組みも出てきています。今後そういった活発な動きが出てくるとますます盛り上がるのではないかと期待しています。

***トーク終了後には、さまざまな質問が飛び出しました。***

img07_2

参加者1一見すると博多と天神は、商業のエリアとしては完全に分かれていますが、その2者間で連携するような動きなどはあるのでしょうか。

宮崎キャナルシティを運営している不動産会社「福岡地所株式会社」は、博多だけじゃなく福岡全体を盛り上げることが理念です。当然天神地区にも色々な側面で携わっていますが、商業施設というよりもオフォスがメインですね。福岡地所としては、商業のキャナルシティ/オフィスの天神、で盛り上げていきたいです。

上野天神といえば、路面店が多くて楽しいけれど雨が降ったら傘をさして回らなければいけないとか、路面店には若い人、百貨店には比較的高い年齢の方が集まるという印象があるのに対して、博多は一カ所で見て回れたり、百貨店には若い方が多かったりと、やはり少しずつ良さが違う。きっと双方も、博多VS天神という構図を敢えて押し出しているつもりはまったくないんですね。JR博多シティを含むJR九州グループも、会社としては福岡のまち全体、ひいては九州のまち全体を元気にしていけるまちづくりを推進していきたいと思っています。

石岡今上野さんもおっしゃいましたが、天神は施設や店舗が散在していますから、色々見て回りたいという心理が働くようです。それに比べて博多は一カ所で済むのが魅力。ようは商品の棲み分けというより、使い方の棲み分けができているんですね。だから、天神に行ってその足で博多に行くということはしない。天神にあるものは、博多にあってもいいんですね。そういう意味では、博多と天神は強豪にはならないんじゃないでしょうか。博多は博多、天神は天神で切磋琢磨することで、その関係性が結果的に福岡全体を盛り上げることにつながるという気がしています。ちなみに、天神と博多の買い回りはしないけど、キャナルシティさんには行くそうですよ(笑)。

img08_2

参加者2広告宣伝や集客にはSNSにもかなり力を入れておられるようですが、集客後のフォローなどはどのようにしていますか?

上野JR博多シティは、イベントに参加する際にLINEのお友達になってくれた方には、事前にお得な情報をお伝えしています。やはりSNSのつながりを意識してやっていますね。参加できなかった方に関しては、アフターレポートでお伝えするようにしていますが、これはかなか追いついていないのが現状です。

参加者3バス路線探検家というものをやっており、近年では連節バスで天神IMSさん地下の化石など、街中にある隠れおもしろスポットを紹介しています。みなさんの施設で、そのようなスポットなどがあればぜひ教えていただけませんか。

宮崎キャナルシティには、イーストビルの石畳にハート型の石が2つ隠されています。

上野博多駅前広場の柱に金色のカエルがよじ登っているのと、屋上「つばめの杜ひろば」の鉄道神社のなかに鉄のツバメが2匹いますので、ぜひ見つけてみてください。

白石本日は本当にありがとうございました。

img09_2

POPULARITY 人気の記事

PAGE TOP