担当者が考える博多がにぎわう鍵とは?
2回目を迎える博多まちづくりミートアップ。今回は、「3大商業施設が語るこれからの博多の楽しみづくり」をテーマにゲストを迎えてトークを展開しました。昨年のKITTE博多、博多マルイのオープンで、さらに盛り上がりを見せている博多エリア。その博多駅周辺のにぎわいの鍵となる3つの商業施設の方々に、施設利用者層について、博多の魅力、そして博多を盛り上げる秘策など幅広く伺いました。
寒さ厳しい冬の夜にもかかわらず、当日は30名を超える参加者にお集まりいただきました。MUJIキャナルシティ博多内にあるイベントスペース「Open MUJI」を会場に繰り広げられた当日のイベントのレポートを抜粋してお届けします。
キャナルシティ博多
支配人
宮崎喜彦氏
JR博多シティ
営業部販売促進課課長
上野晶子氏
博多マルイ
店次長
石岡治郎氏
白石さん(以下、白石)みなさん、こんばんは。本日司会進行を務めさせていただくダイスプロジェクトの白石と申します。本日は博多×商業施設というテーマで、3つの商業施設の方々をお招きしました。まずはゲストのみなさん、各施設の紹介をお願いします。
キャナルシティ博多
〜都市のなかの都市〜
宮崎さん(以下、宮崎)キャナルシティ博多(以下、キャナルシティ)の支配人をしている宮崎と申します。キャナルシティは博多と天神の真ん中、それぞれ歩いて10分くらいの場所に位置しています。以前はカネボウさんの工場があった場所です。運営している「福岡地所株式会社」は不動産会社ですので、土地を買い取って開発されたんです。5年前には既存の場所に新たに増床するかたちで、イーストビルをオープンしました。キャナルシティの店舗数は約250店舗、専門店や飲食店もあれば、ラグジュアリーなホテルからビジネスホテル、劇場、映画館まで、さまざまな種類の店舗や施設で構成されています。敷地面積は43500平米。駐車台数は1300台。とくにこの駐車台数は、福岡の都心部においては強みだと思っています。
商業には適さない立地でいかに施設を盛り上げるのか
実はこの立地、まったく商業に適していないんですね。正直申しますと、JR博多シティさんと博多マルイさんがうらやましい。どうしても駅立地にはかないません。ではこの状況でいかに盛り上げていくかというと、やはりキャナルシティの強みをつくっていく必要があった。そこで、「体験価値・感動消費」「インターナショナルSC(ショッピングセンター)」というキーワードで取り組みをしているところです。
キャナルシティには運河があり、公園があり、大道芸人のパフォーマンスを見ることができるんです。つまり、買い物が目的じゃなくても楽しめる空間づくり、「体験価値」を目指しています。本屋を併設した無印良品「MUJI BOOKS」や、本日の会場「Open MUJI」もそのひとつです。昨年にはユナイテッド・シネマに4DXシートとともに、食事を楽しみながら映画を鑑賞できるプレムアムダイニングシネマを導入。こうした店舗ごとの「感動消費」と併せ、プロジェクションマッピングを取り入れた噴水へとリニューアルも行いました。
こうした「体験価値」が「キャナルシティで味わった感動を何らかの形でお土産として持ち帰りたい」という「感動消費」につながっていきます。分かりやすい例を出すと、東京ディズニーランドもそうですね。商品を買いに来るのが目的ではなくて、入園して遊んで滞在することによって消費につながっていく。
キャナルシティの施設内は、劇場や映画館などエンタテインメント性が強い施設をそれぞれ南北に配置し、中間に広場を設けつつ専門店でつなぐ構成によって、横方向の回遊を強化しています。またエンタテインメント性のある施設はすべて5階以上に配置することで、シャワー効果も狙っています。
インバウンドの波に乗る
ここ2年ほど前から取り組んでいるのが「インターナショナルSC」です。海外の方が増えてきたのはここ3〜4年ですが、今やキャナルシティのお客さまの10〜15%は外国人です。そういった変化にも対応するかたちで、大型免税店や免税一括カウンターンの導入。2016年にはツーリストラウンジを開設し、館内インフォメーションや観光案内はもちろん、和文化体験案内、通訳サービスなど、サービス機能を強化しています。ラウンジのスタッフはほぼ全員が他言語に対応可能ですし、迷子になったらもちろん、福岡に来た海外の方はまずここに立ち寄れるような場所にしていきたいと思っています。また中国からのお客さまは50~100台のバスで来ますのでバス専用駐車場を完備したり、店内の表記を4カ国語(日・英・韓・中)にするなど、来店しやすい環境を作っています。告知についてもSNSでどんどん情報を発信しています。
このように、「体験価値・感動消費」「インターナショナルSC」の取り組みを通して、決して立地が良いとは言えないけれど多くのお客さまに「キャナルシティに行きたいね」と言っていただけるような施設づくりを目指しています。
JR博多シティ
〜博多駅で5つの商業施設を運営〜
上野さん(以下、上野)私たちJR博多シティはデベロッパーの会社として、博多駅にある5つの施設を管理・運営しています。(1)幅広いお客さまにお楽しみいただくアミュプラザ博多。(2)大学生〜20代前半の女性をターゲットにしたアミュエスト。(3)百貨店の博多阪急。(4)お土産と飲食がメインの博多デイトス。(5)そして飲食と駐車場が入っているデイトスアネックスです。本日は私たちJR博多シティのこれまでと今後の取り組みについてご説明します。
店舗、広告、イベント、すべてにおいて話題づくりを目指す
まず取り組みの一例として、九州初の店舗や話題の店舗にご入居いただくなど、JR博多シティ発の話題づくりができるようなリーシングを行っています。昨年の5周年時には、アミュプラザ博多内の約220店舗のうち約30店舗をリニューアル。今年の3月には6周年を迎えることもあり、JR博多シティ全体で約50店舗を超えるリニューアルを予定しています。
話題創出のための広告展開にも力を入れております。3周年の際にはウルトラの母を起用。昨年5周年時には五郎丸さんを起用しました。話題性のある広告というのは、イベントの集客力とはまた違って、SNSの情報拡散などを通して「アミュプラザって何だろう?」「JR博多シティに行ってみようかな」という行動につながっていくんですね。
集客面では、数千人から一万人規模のお客さまを呼び込めるような単発のイベントを企画しています。博多駅前広場で開催するのは「九州酒蔵びらき」や「博多ファーマーズマーケット」など比較的大きいイベント。また過去には、映画の公開に合わせてももいろクローバーZさんやトム・クルーズさんなどを招聘したイベントなども行いました。
CSR活動(社会における企業活動)にも力を入れています。子どもたちに夏休みの思い出づくりを提供する「JR博多シティ学校」では、JR博多シティの社員が担任となり一日授業を行います。ファミリー向けの「こどもCITY HAKATA」では、田植え、ダンス、シャボン玉など、年間180本のイベントやワークショップなどを屋上で開催しています。子どもがフックとなり家族でご来店いただけるきっかけづくりの一環です。
JR博多シティは今年の3月で6周年。毎年成長と進化を続けて、お客さまの期待に応えられるような施設をつくっていきたいと思っています。
博多マルイ
〜店名からフロア構成までお客さまと共に創る〜
石岡さん(以下、石岡)博多マルイはオープンしてまだ1年も満たない施設なのですが、マルイそのものは1931年に創業ということで、かれこれ80年を超える歴史を持っています。関東圏を中心に静岡や関西を含め24店舗があり、博多マルイは25店舗目、九州で初の店舗となります。
KITTE博多さんの1〜7階に入居させていただいていおり、フロアは性別・年齢問わず、誰もが楽しめる構成を重視しています。1、2階に飲食系、また1~6各階にカフェが入っていまして、テナント数は約135。アパレル3割、雑貨/サービス/食・カフェ7割です。関東圏のマルイはアパレル系が6割強なので、比較するとライフスタイル型のカテゴリの多さが博多マルイの特徴でもあります。
脱ヤングファッションの行く先は?
このフロア構成ですが、実はお客さまと一緒に創ってきたものなんです。マルイグループのコンセプトに「お客さまのしあわせを“共に創る”」というものがあるのですが、この「共創価値」経営が原点になっているんですね。
この共創のきっかけとなったのが、2007年にオープンした有楽町マルイです。私自身この有楽町マルイの開店に携わってきました。
どうして共創に至ったのかというと、従来マルイには「若い」という強いイメージがありました。当時新宿、渋谷等の店舗はその「若さ」をターゲットにしていましたが、有楽町や銀座となると、想定されるお客さまの年齢層が30代くらいに上がります。つまりマルイをすでに卒業した方々の地に進出することになったというわけです。そもそも30代をターゲットに店づくりをした経験がなかったマルイですから、「さて、どうしよう」と。そのときに、思い込みでつくるよりも街の人に直接聞くということが初めて行われたんです。これが共創のはじまりです。
一例を挙げると、「お買い物の合間にほっと一息つける空間が欲しい」というお客さまからの声に答えるかたちで、緑ある癒しのパブリックスペースを設置。また「時にはひとりでもゆっくり時間を過ごせる場所が欲しい」という声により、当時はまだ珍しかったブックカフェを導入しました。
「売れるものは何でも売る」といった具合で、トイレの横にもショップを設置していたような時期もありましたが、この共創によって「お買い物とは“楽しめる空間”である」ことが非常に大事なんだということに気付いたんですね。
15,000人の客が店づくりに関わった
こうした共創の取り組みを、博多マルイではさらに進化させました。私たち社員との企画会議にお客さまにご参加いただき、会議を重ねながら、店名、コンセプト、フロア構成にいたるまで共に創ったんですね。時には出店者の方にもご参加いただき議論しながら、新しい商品も開発したんです。例えば「だし処 兵四郎」様には、博多マルイオープンに合わせて新しいサイズ・新らしいパッケージのだしを開発していただきました。
コミュニティサイトも新しい試みでした。「遠くて会議には参加できない」とか「ちょっとした意見でもウェブなら気軽に言うことができる」というお声が結構あったんですね。実際たくさんのお客さまにサイトを通してお声をいただきました。その結果、オープンにいたるまでの2年間で、延べ15,000人以上の方にご参加いただきました。会議だけでも約6,000会合おこない、述べ4,000人のお客さまが参加。これまでにない規模での共創でした。
では15,000人のお客さまと、実際に何をかたちにしたのかを簡単にご説明します。
(1)お店のコンセプト「自分に合う。自分にぴったり」
(2)店名「博多マルイ」
(3)ショップカテゴリー(どのようなカテゴリ、どのような店を入れるかを、フロアごと、また全体的に)
(4)店内環境。お店のデザインや休憩スペースなど
(5)博多発モノづくり(一例に、らくちんキレイシューズという靴を開発)
(6)クレジットカードのデザイン(KITTE博多エポスカード)
お店のコンセプト「自分に合う、自分にぴったり」は、決めるのに一番時間がかかりました。客観的に突き詰めると、さまざまな「ぴったり」が出てくるんですね。例えば靴や服の「豊富なサイズ」、たい焼きの「自分好みのサイズ」、「気分に合わせて選べるカフェ」などがコンセプトの具体的要素として挙がってきました。1〜6各階にカフェが散りばめられているという特徴的なフロア構成も、「気分に合わせて選べるカフェ」をお客さまと具現化する過程で決められていったんですね。また「地元のならではの心地よさ」ということで、九州大学さんや地元企業の方にもご協力いただき、大宰府観世音寺の鐘の音、志賀島の波の音などを実際に採取・加工したものを店内の各パブリックスペースで流しています。
共創にご参加いただいたお客さまからは、「自分たちの意見をお店に反映できるってすてきなこと」といったご意見や、「一緒に店を作っている実感がある」「何でも言える」などといった嬉しいお言葉もいただきました。共創はオープン後の今も継続中で、実際に来てもらって、見てもらって、食べてもらった上で、色々とご意見をいただいております。当たり前なのですが、共創がすべてかたちになったわけではないんです。でも、この事によって、今までにないマルイを創ることができた。その結果、既存のマルイと比較してもトップ5に入る集客率を誇っています。今後も共創の取り組みは、地元のお客さま、事業者さん、パートナーさんと続けていきたいと思っています。