博多まちづくりミートアップ

話題のゲストハウスに聞く、博多の旅行者との関係づくり〜ミートアップvol1レポート前編〜

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ゲストハウスと旅行者の関係づくり

博多でさまざまな事業を行う方をゲストに招き、その取り組みを通じて“博多のまち”について議論をしていただくことで、「これからの博多のまちづくり」を考えるトークイベント「博多まちづくりミートアップ」第1弾が開催されました。会場となったのは、昨年12月に博多区にオープンしたばかりの、日本最大級のシェアオフィス&コワーキングスペース「The Company」。平日の18時という時間にかかわらず、29名の参加者に来場いただきました。

第1回目のテーマは、「ゲストハウスと旅行者の関係づくり」。冒頭には、主催の「博多まちづくり推進協議会」開発部会下田氏により、博多まちづくり推進協議会についての説明や現在の取り組みについての話がありました。その後、ゲストに博多区でゲストハウスを運営する若きお二方をお招きし、運営スタイルやコンセプト、博多のまちならではの取り組みやエピソードなど、ゲストハウスを軸に縦横無尽にお話いただきました。

現在、全国的に見ても盛り上がりを見せているゲストハウス。シティホテルをはじめとした従来の宿泊施設と違うその魅力とは? メリット、デメリットは? そしてゲストハウスのあり方を超えていく新しいゲストハウスのかたちとは? 今後の博多のまちづくりにおいても看過できない示唆に富んだ当日のイベントの様子をお届けします。

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安河内浩之 Hiroyuki Yasukouchi

&AND HOSTEL オーナー
1985年2月生まれ。福岡県出身。少年期より世界中を旅し、立命館アジア太平洋大学在学中からフェスなどのイベント企画や飲食、旅行などさまざまな形で事業化。2016年8月中洲川端商店街にオープンさせた「&AND HOSTEL」は3年前から資金調達や物件探しを始めた同氏の20代の経験の集大成ともいえる空間なっている。アジア展開を視野に、若き経営者として活躍を続ける。

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石井康平 Kouhei Ishii

TONAGI Hostel & Cafe マネージャー
福祉関連職、不動産業を経て現職へ。自身旅行好きであり、福岡で開業を企画していたTONAGI Hostel & Cafeに店長として開業準備から参画。オープン後は日々の業務のかたわら、ゲストハウスと町の関わり方やゲストハウス同士の関わり方をも模索中。


そもそもゲストハウスって?

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白石さん(以下、白石)みなさん、こんばんは。本日司会進行を務めさせていただきます、ダイスプロジェクトの白石です。まず最初に「ゲストハウスってそもそも何ぞや?」ということを簡単にご説明したいと思います。

〈ゲストハウスの定義〉
1)宿泊費やホテルが旅館よりも格安
2)ゲストハウス内で交流が生まれやすい
3)同じ部屋に複数人が寝泊まりする(ドミトリー)
4)多国籍の空間

〈世界におけるゲストハウスの名称〉
「ゲストハウス guest house」=アジア(比較的部屋数が少ない)
「バックパッカーズ back packers」=オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)
「ホステル hostel」=アメリカ・ヨーロッパ(比較的部屋数が多い)

日本では、オーナーがどこの国に滞在経験があるかということが、ゲストハウスの名称に影響している気がしますね。今回のゲストは、お二人とも「ホステル」ですね。ではゲストのご紹介です。

ハブとしてのゲストハウス、TONAGI

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石井さん(以下、石井)私は現在、博多区の千代でゲストハウス「TONAGI」を運営しています。もともと1階がコンビニ、2、3階が住居だったビルを改装して、カフェ兼ゲストハウスとして、2016年5月にオープンしました。

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TONAGIという名称には、「泊まる」×「学ぶ」×「つなぐ」という3つのコンセプトを掛け合わせています。「泊まる」は分かりやすいですね。では「学ぶ」は何かというと、例えば本を多く取り揃えていることや、カフェで木工のワークショップを開催して、「学び」の場としての機能を兼ね備えているということ。また「つなぐ」は、宿泊客どうしはもちろんなのですが、宿泊者とカフェ利用者、そしてこの千代という場所も含めて、世界中の人や場所がつながるハブとなれるようにという思いを込めています。
ゲストハウスの広さは、3フロアで約321平米、48人収容できます。特徴としては、リビングスペースを広めにとって、長期滞在の方のためにキッチンスペースを充実させています。また多言語アナウンスも心がけており、現在は4カ国語を取り入れています。

白石実は僕は、オフィスからも近いので、ランチに行ったり仕事をしに行ったり結構使わせてもらってます! カフェスペース気持ちいいですよね。

石井いつもありがとうございます。「TONAGIからよそへ、よそからTONAGIへ」というお客さんも多いので、ビールを一杯飲みながら「次はどこに行こうか?」とゆっくり考えていただけるように、観光資料も充実させています。絵本や写真集など目で見て楽しめる本も多く揃えています。日本語が分からなくてもゆっくり過ごしてほしいという思いからですね。
まだ半年ほどしか経っておりませんが、まずは千代に根付くことからしっかりとTONAGIの認知を図っていきたいと思っています。よろしくお願いします。

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TONAGIの室内。ベッドの半分を目透かし板で囲み、敢えてカーテンは設置せずに自然なコミュニケーションを促す造りとなっている

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長期滞在者のためにキッチンスペースも充実

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見やすさや読みやすさなど、改善点があればそのつど新しくする

日本初! IoTを体験できるゲストハウス、&AND HOSTEL

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白石では安河内さんのゲストハウスについてご紹介お願いします。

安河内さん(以下、安河内)はじめまして。同じく博多区でゲストハウス「&AND HOSTEL」を運営しています安河内です。博多区と言ってもTONAGIさんとは少し離れていまして、中洲川端商店街のど真ん中なので、割と繁華街に位置しています。

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&AND HOSTELの一番の特徴は、スマートホステルという点です。11種類のIoT(Internet of Thing=モノのインターネット)(※)を取り入れていまして、チェックイン後にお渡しするスマートフォンひとつで、ルームキー、照明、空調、空気洗浄機、ルームサービスなどを管理できるシステムになっています。
床数はTONAGIさんと同じで最大48名。部屋数は11部屋、床数が多い部屋で10人ドミトリーがあります。
スタッフ10人全員が英語を話すことができて。もちろん中国や韓国からの宿泊の方も多いのですが、もっと色んな地域から色んな顔ぶれが集まることによって、より重力のある空間になっていくのではないかと考えているんですね。
今検討しているのは、壁一面のデジタルウィンドウです。4Kで撮影された世界中の景色を映し出してくれるほか、カレンダー、時計、天気といった情報も表示してくれます。
全体的に高いデザイン性を打ち出すことで、そういうことにも共感して宿泊してくれるような方々を迎えられる空間づくりを目指しています。

※IoT・・・コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在する様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。

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様々な会社のサービスと連携して、日本初IoT体験ができるスマートホテルが誕生した

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宿泊料金がもっとも高いIotキングルーム。広々としたキングサイズのベッドは、家族3人での宿泊もOK。室料はハイシーズンで12800円(一室)

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2500円から宿泊可能なドミトリーは、ベッドのサイズがやや広めになっている。女性専用ドミトリーには水回りも完備

白石今後新たな計画があるとお聞きしたんですが、それについても少しご紹介いただけますか?

安河内ええ。2017年3月に、2号店をオープン予定なんです。ロケーションは、実はこの会場とつながっています。
この2号店も、デザイン重視の造りになっていまして。これまでのゲストハウスといえば「安かろう悪かろう」が主流でした。でもそのカテゴリーをブレイクする必要がある。そのためには、デザイン性を無視することはできないんですね。とはいえゲストハウスはそもそも単価が安いので、あまりコストがかけられない。なので既存の素材を活かし、それがむしろデザイン性の向上につながるような方法を取り入れています。宿泊者が自由に使用できるコミュニティスペースでは、お客さんどうしの交流が生まれることも期待しています。相互に人が入れ替わりながらともに価値を高めていきたいですね。
ちなみに、僕もバックパッカーだったんですが、言葉もルールも違うポーカーをみんなでやって楽しいのか、と。いや、むちゃくちゃ楽しいんですよ、これが(笑)img12

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2号店では個室にもシャワールームを完備

ゲストハウスの中身 〜床数、稼働率、料金など〜

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白石お二人とも博多地区でゲストハウスを運営されていますが、&AND HOSTELは繁華街にあり、TONAGIは少し離れているわけですね。

石井そうですね。海外の人にとっては、地下鉄の駅から徒歩圏内であるか、空港から近いかということが結構重要なんです。福岡に住んでいる方からすると千代って中心地から離れているように見えるんですが、海外の方とか東京経由できた方なんかからすると、立地的には実はそんなに問題ないんですね。

白石どの地域からのお客さんが多いですか?

石井海外のお客さんが8割を占めています。アジアが6割、欧米が2割、残りの2割が日本といった感じです。相撲のシーズンには欧米の方が増えたり、コンサートの時期にはアジアの方が増えたりします。

安河内&AND HOSTELは、国別で見ると韓国が多いんですが、エリア別で見ると欧米が多いですね。7割が海外の方です。

白石日本の方は少ないんですね。

安河内&AND HOSTELの場合、日本初のスマートホステルでIoTが体験できるということもあって、そういうことに興味を持たれている方が国内から来ることはありますね。

白石確かにIoTは普通のホテルとは違う面白さが伝わってきます。

安河内近未来の生活を再現しようということがコンセプトにあるんです。IoTという言葉は耳にするようになりましたけど、いざ一般の方が使うかというと、高いし、そう簡単には買えないのが現状。でも安宿で体験できるんであれば一泊くらいしてみるかと思ってもらえるかもしれません。それと、実は世界のシティホテルではもうすでに取り入れているんです。たとえばアムステルダムの大きなホテルでは4000室全室のルームキーをスマホで管理している。こういうシステムは今度安宿にも広がるに違いないし、じゃあもうやってしまおうという感じでした。

白石お客さんの反応はどうですか?

安河内例えば&AND HOSTELはスマホの画面の色が変わるようになっているんですが、そういうところが日本っぽいのか、欧米の方は「ワーオ!!!!!」とリアクションが面白いですね(笑)

白石なるほど(笑)。こういったテクノロジーも今後のゲストハウスのひとつのアイコンになっていきそうですね。

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白石宿泊料金に関してはいかがですか?
さきほど&AND HOSTELさんのケースでは、2,500〜12,800円というお値段でした。

石井ゲストハウスは安価だということが魅力でもありますので、TONAGIは宿泊料金をコンスタントに3,000円を切るくらいの料金に設定しています。ただ宿泊料金に関してはベッド数や運営環境にも影響されますので、一概には言えないと思いますね。あとは安河内さんもおっしゃったように、宿泊料金を抑えるなかでいかに高いデザイン性を保つかということは非常に重要だと思いますね。

白石ベッド数というところでいくと、お二人とも48床という数ですが、これは一般的な数なんでしょうか?

石井・安河内たまたまです(笑)

石井これまでのゲストハウスのスケール感だと20床以下というのが一般的だったんじゃないでしょうか。従業員の数にもよりますが、昔ながらのゲストハウスなんかは家族経営が多かったですよね。宿泊者を把握したりコミュニケーションを円滑にとったりする上では、そのくらいじゃないと回していけないという現状もあったのかもしれません。TONAGIはそのくらいの規模とシティホテルの中間くらいのスケールということで設定しました。

安河内&AND HOSTELは48床でも少ないと思っているんですね。50〜60は欲しい。でもまずは、ゲストハウスの「安かろう、悪かろう」のイメージを拭う必要があると判断したんです。数を増やすのもいいけど、まずは中身をしっかり整えよう、と。

白石&AND HOSTELさんがオープンしたのが2016年の8月ですが、この4ヶ月ほどの稼働率はどうでしょう?

安河内最初はスタッフの対応が追いつかないので稼働率を抑えていたんですが、最近では88%まで上がりました。

白石この数字は一般的に見るとどうですか? 福岡の宿は8割くらい稼働しているとも聞きますし、ゲストハウスの一般的な稼働率もそのくらいのイメージですが。

石井それはイメージですね(笑)。福岡でも簡易縮小型の宿泊施設だと、繁忙期でも4割ほどだというデータも上がってきています。

白石TONAGIさんの稼働状況はいかがですか?
実は僕、何度か残業後に利用しようと思ったことがあるんですが、いっぱいで予約できませんでした(笑)

石井ありがとうございます(笑)。週末は割と稼働率が高いんです。時期によっては空いていることもありますが、閑散期でも6割、繁忙期は9割ほど埋まっています。従業員と私の給料を回せるくらいは稼働していると思います。ありがたいですね。

白石なるほど。やはり交通の便も良いですし、近くに大型のライブ会場などがあることも大きいのでしょうね。
ちなみにゲストハウスって最近すごく増えていますよね。川端商店街周辺だけでも4軒ほどあると思います。

安河内僕は、これはいいことだと思っています。タイのカオサンストリートやインドのサダルストリートのように、特定のエリアに安宿が軒を連ねているという認知が進めば、夜まで賑わいをつくっていける。

石井千代近郊にもゲストハウスは数軒ありますね。新しくできるという話も聞いています。強豪がくるのが怖くないと言えば嘘になりますが、人や場をつないでいくというTOMAGIのコンセプトからすると面白い動きだと思います。ゲストハウスが増えていく過程で、今度の展開を見ていきたいですね。

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