ReTHINK FUKUOKA PROJECT レポートvol.32
アナバナではReTHINK FUKUOKA PROJECTの取材と発信をお手伝いしています。
毎日のようにどこかでイベントが行われ、たくさんの人でにぎわうまち・福岡。コンサートに映画にトークイベントにと、私たちをワクワクさせる人やモノ、コト、そしてエンタメと呼ばれるものにはどのような本質があるのでしょうか。
「ReTHINK FUKUOKA PROJECT」第32回目は、11月に開催された福岡の名物イベント・クリエイティブとテクノロジーの祭典「明星和楽」に登壇した3人をお招きして、「ワクワク」と「エンターテイメント」についてRethinkしました。
ゲストは「九州最強前説系アーティスト」星屑ロンリネスのMCはなさんとはじさん、そして編集者の桜井佑さん。現場で観客を沸かせるアーティストのお二人と、媒体を通して私たちをワクワクさせてくれる編集者桜井さんとのトークには、様々な発見がありました。株式会社SAINOの松口健司さんと、学生団体AWESOME代表の吉田優哉さんが斬り込みます。
文脈を読み取ることができれば
お金を払わなくてもワクワクできる
松口 今日はゲストの三人の活動の、根本的な思いに迫りたいと思っています。まず、今どういう活動をされているのか教えていただけますか?
はな 僕らは福岡を拠点にアーティスト活動をやっています「九州最強前説系アーティスト・星屑ロンリネス」といいます。私が皆さんのハートに咲き誇りたい“はな”と言いまして、
はじ 右にいても真ん中にいても左にいても“ハジ”!はじちゃんと申します。よろしくお願いします。
桜井 僕は編集者で、雑誌つくったり本つくったり、最近はその編集の対象が空間であったりイベントであったりと、とにかくいろんなものを編集してます。
松口 ありがとうございます。今日もいつものようにテーマを持ってきたんですが、まず「ワクワクって何?」というテーマです。桜井さんはワクワクってなんだと思いますか?
桜井 これ考えてきたんですよ。編集者として、例えばひとつ本を作るにしても、人に「これおもろいな」って思って読んでもらわなあかんでしょ。その「おもろい」ってなんなんやろうって考えることが最近多いんです。1つエピソードがあるんですけど、サッカー好きな人の話聞いてたらすごくおもしろくて。例えば誰々がここでパスしましたとか、この監督がここで誰々を起用して、そいつがここでパスしてここでゴールを決めたとか、そういう話に対して、サッカー好きな人って必然性を感じるんですよ。「ここにこういうストーリーがあるんや!」って。ただサッカー知らん人からしたら全部偶然に見えるんです。「それはたまたまやろ」って。
松口 ああ、それわかります。
桜井 要するに知らん人からみたらその情報って単なることやのに、知ってる人は情報の連続性の間にストーリーを見いだしておもしろがれるっていうのがすごい興味深い。それがワクワクっていうのにつながるんやないかなって。そういうのってお金に頼らない面白さというか。面白いことをするにはその分お金がかかるとか、ゲームの面白さをお金で買うみたいな印象があるけど、実はお金をかけずとも、状況に意味を見出して文脈を読み取ることができれば、人はワクワクすることができるんじゃないかなと思う。そういう演出をするのが編集者としての仕事なんじゃないかなと最近は思ってます。
因数分解することで「ワクワク」の秘密が見えてくる
松口 僕の印象なんですけど、桜井さんはアイデアを創り出す人。そしてその原点を探せる人で、星屑ロンリネスさんはネタというか、人を面白がらせるものを発掘する人っていうイメージがあります。
桜井 アイデアの原点っていうと難しいですけど、基本的に編集者がなにかおもろい企画を考える時に大事なのは「ネタ×切り口」なんですよ。どちらかというと星屑さんは素材やネタを創り出すほうやと思ってて。編集者っていうのは究極言うとクリエイターじゃなくて、どっかにある素材と切り口を掛け合わせて新しい価値を紹介する仕事やと思います。大事なのは因数分解することなんですよ。例えば「Rethink Books」を因数分解すると、本屋×たばこみたいなものをかけあわせてる。因数分解することによって何でこれがおもろいのかっていうのが見えてくるんです。(会場のRethink Booksではたばこベイパー「ploomTECH」で喫煙ができる)
はな うちの相方がここにきたときに、早速因数分解してたんですよ。本屋って普段は静かにしないといけない所で、飲食もできないでしょ?でもRethink Booksはそういうものが掛け合わされてるっていう、この背徳心にワクワクするんだって。
桜井 そうそう、そういうのやと思うんです。
はな 因数分解っていいですね。因数分解することによってビジネスチャンスも見えたりしますよね。編集者って面白い仕事やなと思いました。
桜井 うん。そこって掛け合わせの妙やなと思いますよ。
松口 掛け合わせが尽きちゃったと感じる瞬間はありますか?
桜井 いや、ないね。世の中いろんなもんがめっちゃあるやん。例えば、そこの本に「鬱病」って書いてあるけど、「鬱病×笑い」だったらどうなるやろ、とか考えられるわけですよ。何でも掛け合わせられるわけです。掛け合わせってシンプルに言ってるけど、それをどうアウトプットするかだと思う。このイベントみたいにステージでするやり方もあるかもしれんし、本にするってやり方も、空間で表現するっていうやり方もある。掛け合わせは無限大にあるから、そのアイデアに枯渇することはないと思う。
はじ なるほど。「プリン×しょうゆ=ウニ」とかね!
はな いや、それ聞いたことある!(笑)
人はエンタメを欲する動物だ!
松口 最後に「エンタメの本質って?」というテーマで語っていただきたいと思います。
はな 僕は心に届くものというか、五感を通して心が受ける影響の部分をエンターテイメントと呼ぶのかなと思ってます。エンタメっていうと、テーマパークとかゲームセンターとかがイメージされることが多いけど、楽しいことだけがエンターテイメントじゃないと思うんです。たくさん笑う映画とたくさん泣く映画も、どちらも変わらないくらいすばらしい映画でしょ。エンターテイメント性が高いか低いかって、ハートがどれだけ影響を受けるかなんです。だからね、例えば、職場とか学校で嫌な人がいて、その人に何か嫌なことを言われたとしますよ。視覚や聴覚で痛い思いをして、ハートが影響を受けるじゃないですか。そしたらですね、給湯室やトイレで言ってください、「アイツまじエンターテイメント性たけえわ」って。
会場 笑
桜井 それすごい大事よ、超いい話。
松口 桜井さんはどうですか?
桜井 人間を人間たらしめる第4の欲やと思います僕は。三大欲ってあるじゃないですか、食欲・睡眠欲・性欲って。これって動物も一緒なんですけど、人間と動物を分ける性質の1つがエンタメ欲やと思うんですよ。給湯室の話みたいに「こいつほんまむかつくわ」ってことを「こいつまじエンタメ性高いわ」っておもしろがれるのもそう。これめっちゃおもろいやんって思えるのは人間っぽい行動やなって思います。
はじ 二人の話を聞いて思ったのは、「共感」ですよね。映画でもアクションとかSFで派手なシーンを見た時に、「それ俺が好きな部分や」ってなれば楽しいなって思えるけど、それをおじいちゃんとかおばあちゃんが見て楽しいって思えるかっていうとまた別ですよね。
はな それ自体のエンタメ性が高い低いじゃなくて、受け手側が高さを決めるんだ。
はじ そう。3大欲の次に高いのが人に“共感されたい”っていう欲らしいですね。それがやっぱりエンターテイメント性につながるのかなと。なのでね、エンターテイメントはみんなの心の中にあるんじゃないかと。
桜井 それ誰も反論できひんやん(笑)
はな お前用意しとったやろ!家でてくるときから一番最後の言葉決めてたやろ!(笑)
まるで漫才のように繰り広げられる星屑ロンリネスさんのトークに、終始笑いの絶えなかった会場。一方で桜井さんの本質的な言葉にもなるほどと考えさせられ、多くの人がうなずいていました。せっかく会場が本屋なのだからオススメの本をと、星屑ロンリネスさんからは水野敬也氏、小林昌平氏、山本周嗣氏による『ウケる技術』、桜井さんからは写真家・名越啓介氏による『Familia 保見団地』とをご紹介いただきました。本も人の心を動かす一つのエンターテイメント。ビールや焼酎を片手に、本に囲まれながらゲストの話を聞けるこのイベントにも、ぜひワクワクを感じに遊びにいらしてくださいね。
ReTHINK FUKUOKA PROJECTについて
コミュニケーションや働き方、ライフスタイルに大きな変化をもたらしている福岡。新しい産業やコミュニティ、文化が生まれるイノベーティブでエネルギッシュな街となっています。
そのチカラの根底には、この街に魅力を感じて、自らが発信源となっている企業や人がいます。
ReTHINK FUKUOKA PROJECTは、「ReTHINK FUKUOKA」をテーマに、まったく異なるジャンルで活躍する企業や人々が集い、有機的につながることで新しいこと・ものを生み出すプロジェクトです。