ReTHINK FUKUOKA PROJECT レポートvol.16
アナバナではReTHINK FUKUOKA PROJECTの取材と発信をお手伝いしています。
「大金持ちになって、豪邸に住んで贅沢に暮らす」。今まで追い求めてられていた幸せのビジョンが、全く逆の価値観によって大きく変わろうとしています。これからは、広い家や大金を稼ぐなんて“big”な成功とは真逆の“small”が本当の幸せを見つけるキーワードになるかも。
そんな“small”な価値観がもたらす未来について教えてくれるのは、世界中の小さな家やミニマルライフを紹介し、自らも250万円のスモールハウスを販売する「YADOKARI」の代表・さわだいっせいさんとウエスギセイタさん。そして、未来の発明家・ふくおか小商い部部長として清川リトル商店街などのプロジェクトを手がける下野弘樹さん。“small”な住まいと職に興味津々の「TABI LABO」代表・久志尚太郎さんと「福岡テンジン大学」の副理事長・山路祐一郎さんと一緒にReTHINKします。
家族と一緒に住んで、自分の居場所がある幸せ
スモールハウスで住まいの次の可能性が見えてきた
山路 最初のテーマは「small、ミニマルのここが良か!」です。YADOKARIのお二人は住宅をダウンサイジングすると未来が変わるとおっしゃっていますが、このメリットって何ですか?
さわだ きっかけは東日本大震災の時。坂茂さんが作ったコンテナの仮設住宅を見て、スモールハウスのアイデアが生まれました。コンテナだから一つ一つ外せて、電車や飛行機、船にも乗るんです。この住まいなら旅をしながら暮らせるんじゃないかとピンときて。
ウエスギ コンテナは工期が短縮できるし、メリットも多い。住まいの次の可能性が見えた気がしました。今の家庭って、1人や2人住まいの世帯が全体の60%を占めているんです。何十年もローンを組んで、広い戸建てを建てても、ライフステージには合っていない。住宅にかかるコストをダウンサイジングすればいろんな事が変わってくるんじゃないかと。
さわだ 海外では、若者がカッコよくおしゃれにスモールハウスに住んでいるんですよ。しかも買うのではなく、自分たちで楽しみながら作っていて。スモールハウスが暮らしを考えるツールになっている。例えば、北欧だと別荘が組み立て式の別荘が150万円くらいで買えて、自分達で組み立てて夏の間住むんですよ。人生の幸福度を充実させるために、今の日本にもそんなステイタスが必然なんじゃないかと思って、まずは250万でシャワー、キッチン、トイレ付き、トラックでも運べる家を作りました。でも、これは完売したけど売れば売るほど赤字だったなあ(笑)
ウエスギ 2つ目のスモールハウスを制作した時は、問い合わせ1200件のうち、約6割が高齢者の方でした。今住んでいる家を子どもに譲って、自分は庭に小屋を建てて、皆で暮らしたいそうです。一緒に暮らす誰かがいて、自分の居場所がある事が一番幸せなんだって。スモールハウスはライフストーリーに合わせての自分なりの使い方ができるんです。
小さな仕事を組み合わせて、新しい価値を作る。
クリエイティブでクールな小商いのススメ
山路 下野さんはリトル商店街を手がけられたんですよね。
下野 はい。僕は「仕事を小さく作る」、いわば小商いという発想から始めました。リトル商店街は400㎡の何もないスペースに、広さ一坪の車輪の付いた小屋を作ってそこを店舗にしているんです。
久志 すごくかっこいい!商店街っぽくないですよね。どんな人がいるの?
下野 ハンドメイドの作家さんが作品を販売したり、デザイナーさんがオフィスとして使ったり、マッサージやカラーセラピーのサロンだったり、多種多様ですよ。小屋はスケルトン状態でお渡しして、あとはDIYで自由に作り込んでもらってます。
山路 入居する人はどんなきっかけで入られたのでしょうか? 下野 お店をやってみたいけど、お店を持つのはちょっと予算が…という方がほとんどです。イベント出店と店舗の中間みたいな。
山路 いわゆる期間限定のポップアップショップみたいな感じですね。
下野 そうですね。お店兼アトリエや作業場として使って。あと、ここで知り合って受注が発生することもあるので、ショールームとしての役割も大きいです。費用は初期費用5万と月々1万5千円くらい。
久志 つまり6万5千円握りしめてれば、自分がやりたいことを実現できると。企業のハードルをグッと下げていますよね。
山路 下野さんも駄菓子屋やってましたもんね。お店でパソコン広げて仕事しながら(笑)
下野 駄菓子屋だったら子どもから大人まで反応してくれますから。でも駄菓子で食べていくわけではなく、あくまで副業なんです。儲からないけど、ネタみたいな感じですね。
久志 スモールハウスもリトル商店街もすごく敷居を下げているじゃないですか。でも儲からないってワードが気になる。どんなメリットがあるの?
ウエスギ 僕はもともと80㎡くらいの部屋に住んでたんですけど、ある時嫁が「スモールハウスの会社の社長が広い部屋に住んでいるなんておかしい!実際にやってみなさいよ」と尻を叩かれて、一人暮らし用の25㎡の部屋に引っ越したんです。そうしたら、コストが下がったのはもちろん、小さなケンカがすっごい増えた(笑)。でも、それって、コミュニケーションの回数が増えたって事なんです。仕事も家事も食事も同じ空間ですから。
久志 暮らしが小さくなって、コミュニケーションが増える。そして幸福度が増したと。駄菓子屋はどう? 下野 僕自身は、駄菓子屋を通じて本業の仕事が増えました。
ウエハラ 海外では、クリエイティブな人たちが週末に自分のスキルを使って、小商いをやっている。それが仕事につながっているんですよね。
久志 駄菓子屋だけでは儲からないけど、企画を組み合わせて仕事になる。家も同じで、小さい家ってストレスになるけど、その分、庭が広いとか、周辺の景色がものすごくいいとか、小さいことを組み合わせていくと、新しい価値が生まれる。それが“small”の本質だと思う。
小さいからこそ自由がある!
自分らしい“small”から革命を起こそう!
休憩を挟んで、質疑応答タイム。高校生の女の子・アヤカさんから「ものの捉え方、ムーブメントの起こし方を教えて欲しい」との質問が飛び出し、ゲストも参加者も一緒になって考えます。会場内がひとしきり温まったところで後半スタートです。
ウエスギ スモールハウスに住む人に共通していたのが、皆さん社会性を持っていて、その土地のお祭りに参加したり、家に呼んだり、地域の人とのつながりを大事にしている人が多かったって事。自分の居場所を探すには、移動できるスモールハウスが便利なんです。
下野 僕が住んでいる清川も住人同士の付き合いが希薄でした。そこで、街になじみのお店が増えれば、街とつながるのかなと思って「清川ブラリーズ」というグループを作って、周辺のお店のマップを作ったんです。そうしたら流れが変わりましたね。
山路 地域のコミュニティとの関わりも大事ですよね。そこで、福岡といえば屋台文化の街。実は屋台って、元祖ミニマルな物件だと思うのですが、皆さんに、福岡の屋台が面白くなるアイデアを聞きたいです。
さわだ 大工さんと一緒に屋台を作ってみてはどう?実は今、小屋を作る「小屋部」を結成して地域の人と一緒に小屋を作る活動をしています。部員は女性が7割で、基本は初心者。
久志 いいね!福岡でもやりたい!
ウエスギ 小屋を作るコンパもいいよね!ペンキの塗り方一つでその人がどんな人か大体わかるから。結婚する前に二人で小屋を建ててみましょう(笑)
山路 そこから考えたいのが3つ目のテーマ「僕らにもできるsmallな革命って何だろう?」。smallな革命って、例えば こんな風に地域コミュニティに飛び込んでいくって事だと思うのですが。
ここで質疑応答の時に質問してくれた高校生のアヤカさんが、再び手をあげてくれました。
アヤカ 私は、一番身近で一番小さいコミュニティって、「家族」じゃないかと思うんです。飛び込むと言うよりは、まず属しているコミュニティを大事にしていけば関わる人の人数って徐々に増えていくんじゃないでしょうか。
久志 身近なコミュニティに向き合うと、新しい自分の世界が開けるって事だよね。皆さんは、どう思います?
下野 リトル商店街について言うと、一坪の店舗は想像力を引き出すトリガーだと思ってます。サイズは小さいけれど、そこから広がる世界がある。
さわだ 僕が求めているのは自由ですね。小さいからこそ自由。お金にも場所にも時間にも縛られない暮らし方ができる。
ウエスギ ミニマリストってストイックなイメージですけど、実際に取材すると、「モノとコトとの距離を再編集している人達」なんです。どんな距離感だと私は幸せなんだろうって向き合う。僕らは住まいというポジションで、住宅を小さくする事で距離感を変えてみたんですよ。
久志 目の前にある価値にどう向き合って、そこに自分たちだけの価値や素晴らしさを見つけられるか。普段見落としているような些細な事に向き合って、いかに面白さを見出せるか。そこが“small”な革命の第一歩になるんじゃないでしょうか。
スモールハウスやリトル商店街をきっかけに、住まいと仕事、そしてその向こうにある幸せについて掘り下げた今回。参加者の皆さんも一緒になって考え、熱い議論が時間一杯まで交わされました。
家も、仕事もただ小さくする事が良いわけではなく、“small”という視点から自分のライフスタイルに見合ったサイズを見つける事が大切。手の届く距離にある小さな幸せを積み重ねていくと、未来はきっと素敵なものに変わるはず。まずは住まいや仕事について、皆さんもReTHINKしてみませんか?
ReTHINK FUKUOKA PROJECTについて
コミュニケーションや働き方、ライフスタイルに大きな変化をもたらしている福岡。新しい産業やコミュニティ、文化が生まれるイノベーティブでエネルギッシュな街となっています。
そのチカラの根底には、この街に魅力を感じて、自らが発信源となっている企業や人がいます。
ReTHINK FUKUOKA PROJECTは、「ReTHINK FUKUOKA」をテーマに、まったく異なるジャンルで活躍する企業や人々が集い、有機的につながることで新しいこと・ものを生み出すプロジェクトです。