RethinkFUKUOKAProject

お気に入りの一冊が導く新たな出会い 小さな図書館で社会をもっとユニークに!

ReTHINK FUKUOKA PROJECT レポートvol.15

アナバナではReTHINK FUKUOKA PROJECTの取材と発信をお手伝いしています。

 

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一人黙々とページをめくり、紙の上に繰り広げられる世界にどっぷり浸る。
読書とは、他者とのつながりを絶って、一冊の本と向き合う孤独な時間を持つ事でもあります。
でも、最後のページを読み終えて胸がいっぱいになった後、この感動を誰かと分かち合いたい、そんな思いがよぎった事はありませんか?
本来は孤独な行為であった「本を読む行為」をReTHINKしてみると、一冊の本がコミュニケーションの入り口になる、そんな視点で新たな本の可能性を提案する人々をお招きしました。

全国津々浦々のまちで、本を通じて人とつながる小さな本棚「まちライブラリー」を提唱している礒井純充さん。クラウドファウンディングで「泊まれる図書館」を実現した白石隆義さん。モデレーターには福岡初の「まちライブラリー」を開設するスペースRデザインの牛島光さん。生粋の本好きであるお三方だからこそのアイデア、一体どんな世界が待っているのでしょうか?

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本をきっかけに鍋の食材のように、人間的に“発酵”する。
そんな人同士がつながってムーブメントを起こせば世の中が変わる。

(開始直後、ご挨拶もそこそこに、以下のアナウンスからスタート)
牛島 今日は参加者の皆さんに「心がこもった本」を1冊お持ちくださいとお伝えしていました。せっかくなので席の周辺の方へ自己紹介がてら本の紹介をしてみてください。
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この後、参加者の皆さんは、5人1組のグループを作り、それぞれ本のタイトルと好きなところなどの感想を発表し合いました。小説を始め、幼い頃に読んだ児童書、仕事を通じて知ったビジネス本、ガイドブックや図鑑などまで、さまざまなジャンルが勢ぞろい。皆さんほぼ初対面ながら会話が弾んでいる様子で、時にはゲストのお三方も交わりながら、しばし本好き談義に花を咲かせていました。
(20分ほどの自己紹介タイムの後、トークが再開)

牛島 まずは「まちライブラリー」の提唱者である礒井さんにお話していただきます。

礒井 「まちライブラリー」って、実は今、皆さんにやって頂いた事なんです。「本を通じて
人とつながる」を合言葉に、本の向こうにあるもの、読んだ人、書いた人の思いを共有する事でつながっていくという試みです。本にはメッセージカードを付けていて、寄贈した人が本についての感想を書き込む、それを読んだ人がまたメッセージを残す、という具合で、一冊の本で見ず知らずの人がつながるんですね。本を通じて小さな学び合いの場を作ろうと、カフェや病院、お寺、公園など、様々な場所で「まちライブラリー」を開催しています。
本をきっかけにさまざまな人の考えに触れて、まるで鍋の中の食材のように人間的に“発酵”する事。そんな人同士がつながってムーブメントを起こす事。それがつながっていけば世の中が変わるのではないかと思います。

牛島 僕も発酵中の一人です。「まちライブラリー」はやりたいと思ったら簡単にやれるのが面白い。先日は福岡で「ピクニック」をテーマに開催しました。ご飯一品と「ご飯が美味しくなる本」を持ってくるというお題でしたが、料理の本だったり、食べ物をテーマにした小説だったり、アプローチが異なって面白かったです。

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温泉宿を図書館にして街全体を盛り上げたい。
古湯温泉愛で実現した“泊まれる図書館”

牛島 次は白石さんの「泊まれる図書館」について、教えていただこうと思います。

白石 まずは、図書館に泊まれたら楽しいというアイデアがあったんです。ブログで紹介すると、「イイね」が10倍くらい、ツイッターでも200リツート獲得して勘違いしちゃいましたね(笑)。開設場所に選んだ古湯温泉は、隠れ家的な雰囲気がある通好みの温泉です。現地の方はイキイキと働いていて、よそ者の僕にも優しくて。でも、廃旅館が増加していたり、シャッター街になっていたりと元気が無いのが気になって、「ここを盛り上げたい」という愛が芽生えて決定しました。「泊まれる図書館」は築110年の古民家を改築して、昼間は図書館として解放し、夜は1日1組限定で宿泊できるよう考えています。ゆくゆくは、古湯温泉の空き家にジャンルの違う図書館を開設して、街全体が図書館になれば。そして、旅先でゆっくり時間を過ごす、スローツーリズムという新しい観光のあり方を提案していきたいですね。まずは、「泊まれる図書館」が2016年8月開設予定ですが、まだオープンできていないので…。少しでも早く進めます。

牛島 一刻も早く進めてください(笑)。本への愛情はもちろん、古湯への愛情もすごいですね(笑)。礒井さんは昨日現地に行かれたんですよね?

礒井 はい。夜、温泉に入ってたら、隣のおっさんが「あそこは出るで」と(笑)。結局気づきませんでしたけど。

白石 そこは大丈夫です(笑)。僕も「人を通じて本を出会う」というコミュニケーションのあり方を意識しています。昨日は参加者の皆さんに読んで欲しい本を持ち寄って頂いて設置しました。

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現実逃避したい!癒されたい!人とつながりたい!
個人的な思いから生まれたアイデアが社会を変える

牛島 ここからお二人とのトークセッションを始めたいと思います。

礒井 皆さんが今日持ってこられた本を見てわかると思いますが、全然かぶってないでしょ。東京では100人が持ってきたけれど一冊もかぶりませんでした。そのくらい人の興味は多岐に渡っているんですよ。「まちライブラリー」は、多様な考えの人が参加できるんですね。奥多摩の泊まれる図書館でも、野菜を育てたり、宇宙について語ったり、とっても自由です(笑)。古湯温泉でもこんな活動が起こるようになりますよ。そういえば、白石さん、先ほど古湯温泉に癒されたと言ってましたけど、まだ本音を語ってないよね?本当は何でやりたいの?僕は実の所、寂しくて始めたんですよ。

牛島 礒井さん個人が寂しくて、ですか?
礒井 そう。ずっと東京で会社員として働いてきて、周囲にいた人も何もかも全てのものを失ったと思った瞬間があったんですよ。もうとにかく寂しくて、大好きな本も読めなくなって。そんな時に、都会から逃げて、自然豊かな奥多摩あたりでなんとか暮らせないかと考えたのが「泊まれる図書館」なんです。

牛島 先ほどの白石さんの古湯温泉と同じく、癒しを求める気持ちがきっかけなんですね。白石さんは本音の所どうですか?
白石 ホントは僕も一緒です(笑)。仕事で思ったように動けなくなって、自分のアイデンティティを確立しようと古本屋を始めたんです。

牛島 お二人とも個人的な問題を解消するツールとして本を使われたのかなと。

礒井 そうなんです。今日も隣の人がなんでその本を持ってきたのか、そこに聞き耳を立ててみると、急激にその人との関係が深まる。相手との関係性で大事なのは自分の声を聞いてくれる事。今は、多様な人が多様な考え方を持っているのに、そこが無視されている事が多いですよね。隣の人がどんな本を読んでいるか、その人の心の声を知ると、社会での関係性がもっともっと面白い方向に変わっていくんじゃないかと思うんです。「まちライブラリー」はそのために作ったようなものです。

牛島 一人一人が社会を変える可能性を持っていると。「まちライブラリー」では必ずコミュニケーションが生まれるんですよね。「泊まれる図書館」にも同じことが言えると思うんですけど。今日も皆さんが盛り上がっていて、本好きという共通のアイコンがあるから、本をテーマに話すとどこまでも話せてしまうんですね。

礒井 本の紹介を通して、自分の話にもなってくる。

牛島 礒井さんは「まちライブラリー」の域を超えて、マイクロライブラリーの活動にも取り組んでいらっしゃいますが。

礒井 全然知られていないんですが、全国には小さな図書館がたくさんあります。なんなら家の前に本棚と本を置くだけで図書館は始められます。そんな小さな図書館が身近にあれば、本に触れる機会も増えるんです。読書人口が年々減ってきている中、特に子どもにとっては大事な問題です。

牛島 一人一人、何ができるかの道筋が見えてきたようですね。本を通じて人とつながるし、人を通じて本と出会う。双方が加速して、新たな動きが生まれる。皆さんの中にもそれぞれ小さな図書館ができるといいですね。

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トークの後は、会場内に設置された本棚に皆さんが持ってきた本を並べて、「天神まちライブラリー」を開設。本をはさんで、ゲストと参加者の皆さんの間にさまざまな会話が生まれ、最後まで盛り上がっていました。
コミュニケーションの場であり、地域活性化の鍵にもなりそうな「まちライブラリー」と「泊まれる図書館」。本好きの個人的な思いから生まれたこのユニークなアイデアは、利用する人が増えていくことで、さらに発展する可能性を秘めています。あなたの一冊も、見知らぬ誰かとつながるきっかけになるかも。小さな小さな図書館、初めてみませんか?

 

ReTHINK FUKUOKA PROJECTについて
コミュニケーションや働き方、ライフスタイルに大きな変化をもたらしている福岡。新しい産業やコミュニティ、文化が生まれるイノベーティブでエネルギッシュな街となっています。
そのチカラの根底には、この街に魅力を感じて、自らが発信源となっている企業や人がいます。
ReTHINK FUKUOKA PROJECTは、「ReTHINK FUKUOKA」をテーマに、まったく異なるジャンルで活躍する企業や人々が集い、有機的につながることで新しいこと・ものを生み出すプロジェクトです。


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