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「古民家は日本の未来をつくる資産だ」 NIPPONIA、上毛町デザインビルド、福岡移住計画に携わる3人が語る 地域の資産を活かす未来のしかけ

ReTHINK FUKUOKA PROJECT レポートvol.14

アナバナではReTHINK FUKUOKA PROJECTの取材と発信をお手伝いしています。

 


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古民家の改修をきっかけにまちが活性化する。限界集落と呼ばれる地域で、そんなまちの再生ストーリーが実際に起きている場所があります。

「ReTHINK FUKUOKA PROJECT」第14回目は、「古民家・空き家・空き地はまちのお宝だ!」をテーマに、あたらしいまちづくりをReTHINKする続編企画です。シリーズ2回目の今回も、豪華なゲストが並びます。
一人目は株式会社NOTEの星野新治さん。兵庫県は丹波篠山の城下町全体をホテルに見立て、リノベーションした古民家を軸にまちを再生するプロジェクト「NIPPONIA」をしかける人物です。
そして二人目は福岡から、古民家を再生する教育プログラム「上毛町デザインビルド」などをしかけ、地域の風景を作るプロジェクトマネージャー西塔大海(さいとうもとみ)さんと、福岡移住計画のディレクター鎌苅竜也さん。「古民家は地域のお荷物じゃなくて、日本の未来をつくる資産だ」と、アツい3人のトークを福岡移住計画の須賀大介さんが進行します。

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まち全体をホテルに見立てる。
広域観光圏をつくる「NIPPONIA」は地方産業の可能性の1つ


須賀 ちょうど昨日、「ガイアの夜明け」(テレビ東京の制作番組)で「NIPPONIA」が取り上げられていたんですけど、今日はテレビには映らなかったような裏話なんかを聞けたらいいなと思ってます。

星野 はい。最初に少し説明をすると、我々は古民家再生から地域をつくるというのをやっていまして。「NIPPONIA」の場所は兵庫県のど真ん中にある篠山市です。そこの歴史的な古民家なんかを買い取ったり借りたりして、融資を受けて事業者に貸すという、一般的なディベロッパーと同じことを古民家で、かつ歴史的地区でやるというのが我々のミッションです。篠山城下町では、4棟の空き家を宿泊施設にしました。

須賀 改修といっても綺麗にしすぎず、その建物を元の状態に戻す再生を行っているんですよね。

星野 そうですね。基本的なコンセプトとして歴史的な建物を活用して残していこうという考えがあります。ホテルのメイン棟はもともとおじいちゃんが一人で住んでいて、ここを売ってくれという話はいろんな不動産業者からあったそうなんですけど、大体はここを潰して宅地造成(※もとあった土地を整地して住宅用地にしたり、道路を新設したりすること)をとか、老人福祉施設を建てましょうとかいう話だったそうです。

須賀 それはもったいない。

星野 そうなんですよ。建物を活かせる形でとお話をしたら、それならばということで改修をしました。初めはみなさんそちらのメイン棟に来ていただいてチェックインをしまして、「それではあなたの今日のお部屋は2キロ先のこちらです」とか言われるんです。

西塔 部屋まではどうやって行くんですか?

星野 宿が送迎をしますし、ここは歴史地区なので散歩しながらまちをまわっていただくことも可能です。NIPPONIAはまち全体をホテルに見立て、宿やいろいろな施設を点在させているんですが、我々はそんな風にまち全体で魅力ある歴史地区をつくり、それらを広域でつなげて周遊してもらうような広域観光圏をつくっていきたいなと思っているんです。「ガイアの夜明け」で特集されていたのは、まさにこの周遊を外国人向けにどうつくっていくかという取り組みについてです。特に地方はこれから産業をつくっていかないといけないですし、その中でNIPPONIAは参考になる1つの可能性であると思っています。

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農家民泊は婚活にもつながる?
多くの人が関わって皆が語れる空間をつくる。


西塔 上毛町(福岡県築上郡)では最近増えているトライアルステイというのを4年前からやってまして、空き家の活用をしたのはそれが一番最初です。初め、山の中のすごくいいお家でお試し居住をやってはみたものの、インターネットがないところだったんですよ。結局はネット環境のある役場の隣のプレハブにたまることになっちゃったんです。これではもったいないということで、交流拠点をつくろうと。でも、普通の公共施設をつくるのと同じように入札をして誰かにつくってもらうと、思い描く空間ができないなっていうのが想像できました。だから学生向けの建築プログラムをつくることになったんです。

須賀 なるほど。

西塔 そのとき僕が在籍してたのが、役場の企画課なんですよ。本当はこういう交流拠点施設を役場がつくろうと思ったら、建設課の領域なんです。他の課でやると思いが伝わらないまま進んでしまうので、企画課でできるようにと教育プログラムの形で進めました。みんなで家を改修していると、地域の方がいろいろ手を出してくれるんですよね。木こりのおじさんがわざわざ「これを柱にしたらいい」と杉の丸太をもってきたり、庭師の方が勝手に家の前におっきな石をたてちゃったり。

鎌苅 すごいですね(笑)

西塔 学生たちもいろいろやってみたい建築があるし、設計士さんもたくさんいたし、それだけ多くの人が関わればセンスも思想もスキルもばらつきがありますから、なかなかうまくいかないところがある。一方で、皆が「どうしてこうなったか」っていうのを語れる空間ができあがりました。それの何がいいかというと、これから運営していく上でのコミュニティの核ができていったことです。今はワーキングステイの1期生をはじめとして10数組くらいの移住がおこっていて、農家民泊にも年間200から300人くらいの方が来られますね。民泊のとあるおじさんはお客さんと仲良くなっちゃって、結婚したんですよ!

星野 婚活にもつながってるんですね、すごい(笑)

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どんな人と一緒に暮らしたいか?
里の風景を一緒につくっていける人たちと暮らしたい。


鎌苅 僕たち福岡移住計画は「+WONDER(プラスワンダー)」という名前で、空き家や古民家の再生によるワークプレイス事業を始めています。今、全国に拠点が6カ所あって、最近福岡市の能古島に新しく拠点ができたのと、(長崎県)壱岐と(佐賀県)武雄市にも展開が決まっています。気分に応じて働ける場所が変えられたら面白いですし、旅をするようにそういう拠点を廻りながら働けたら、もっと楽しく働けるだろうと思うんです。

須賀 「+WONDER」は、そういうワークスタイルを提案する事業ですね。環境が変わることによって働き方も変わりますし、それが変わることによって成果も変わると思っています。

(ここで会場より質問)
会場A 田舎で皆さんのような事業を起こそうとしたときに、成功の見込みは何を見て判断されていますか?

須賀 見込みは全くなかったです。

会場 (笑)

須賀 最初は土の部分、つまり拠点の用意しかしていなくて、後は風のような人が種を運んでくるだろうという感じでしたね。

鎌苅 僕たちはいきなり大きくしないんですね。小さく始めて様子をみながら徐々に拡大していく。それが効率的かどうかはわかんないですけど、田舎だと誰がくるかもわからない中で、マーケット分析ができないっていうのが正直なところです。

須賀 拠点をつくったとしても、人をどうやって連れてくるのかという質問がありましたが、西塔さんはどんなふうに人を探されていますか?

西塔 人を探すのは大変ですよね。僕らのことがまだあまり知られていない状態でプロジェクトを始めたときは、いつもそう言ってた気がします。でも一方で、もう受け入れられませんってところまで人が来てる地域もあるんですよね。だから、田舎に暮らすことを求めている人はたくさんいるんですよ。それなのに何でこのまちに注目してくれないのかというのは、まず知られていないということと、まちに魅力を感じられるきっかけがないということ。だから、積極的に人を釣りにいくことですよね。

須賀 ヘンタイをですね?

西塔 はい(笑)。 ヘンタイと一緒に仕事をしたいと思って、ヘンタイを捕まえるしかけとしてのプロジェクトをやってきましたからね。最近はどんな人と一緒に暮らしたいかというのをよく考えていて、里の風景を一緒につくっていける人たちと暮らしたいな、と。そういう人たちとの暮らしをいかにつくっていくかということが、次に向けての考えです。

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さまざまなライフスタイルやワークスタイルの選択ができるようになり、暮らす場所の選択肢が広がっている今。素敵な古民家を起爆剤に地方に人を引き寄せるしかけを作っているゲストのみなさんのお話は、「こんなことまでできるの?」と、とてもワクワクさせられるものでした。
3人が紹介する古民家のビフォーアフターの写真は、会場から「おお〜」と声が聞こえるほどの変貌っぷり。姿を変えた素敵な古民家は、まさに地域の資産なのだと思わせられました。磨けば光る古民家を、身近な場所で探してみるのも楽しいかもしれません。

 

ReTHINK FUKUOKA PROJECTについて
コミュニケーションや働き方、ライフスタイルに大きな変化をもたらしている福岡。新しい産業やコミュニティ、文化が生まれるイノベーティブでエネルギッシュな街となっています。
そのチカラの根底には、この街に魅力を感じて、自らが発信源となっている企業や人がいます。
ReTHINK FUKUOKA PROJECTは、「ReTHINK FUKUOKA」をテーマに、まったく異なるジャンルで活躍する企業や人々が集い、有機的につながることで新しいこと・ものを生み出すプロジェクトです。


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