RethinkFUKUOKAProject

アートの力でミライを描こう! アーティストが見すえる、これからの日本

ReTHINK FUKUOKA  PROJECT レポートvol.13

アナバナではReTHINK FUKUOKA PROJECTの取材と発信をお手伝いしています。

 

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「今後10年で今ある仕事の半分がなくなる」そんな話を聞いたことがありませんか?
技術の革新により、多くの仕事がロボットに取って代わられると言われています。そうなった時、人間にしかできない仕事って、どんなものがあるのでしょうか?

今回は、その中の一つ「エガク(描く)」というクリエイティブな仕事についてReTHINKします。ゲストは、接着する=つなぐをテーマに、木工用ボンドを使ったアートで「医療」「地域」「世界」と様々なジャンルに取り組む冨永ボンドさん。リアルからデフォルメまで、現実世界を鮮やかに切り取る吉田佳寿美(Kathmi)さんのお二人。モデレーターは、ホワイトハッカー養成所Hackerz Lab.博多や子供向けプログラミング教室ITeensLab.(アイティーンズラボ)など多角的なプロジェクトを手がける近藤悟(DO)さん。そしてSAINOの設立者でもあり、現役大学生の松口健司さん。一癖も二癖もありそうな現代の仕事人達が繰り広げるセッションに会場の熱気も高まります。

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絵を描くだけじゃ、暮らしていけない!?
作家さんはこんな戦略的なセルフプロデュース考えてます!

松口 今日のメインテーマは「ミライの働くとは?」です。近い将来、多くの仕事がロボットに取って代わられると言われています。その中でも、人間にしかできない表現やアート、描くという創造的な行為はどうなっていくのか、皆さんのお話を聞きたいと思います。
まず一つ目のテーマは「描く働き方って?」です。そもそも、「描く」お仕事ってどんなものでしょう?

ボンド 私は、人が見ている前で絵を描くライブペインターとして活動しています。お客さんに見てもらう事で直接アピールできる。つまり、営業もできるんですね。あとはワークショップもやっています。

松口 僕の母、このあいだボンドさんのスマホケース付けてました!

近藤 僕一度ワークショップに参加してます!

ボンド ありがとうございます。結局、ワークショップもスマホケースも、冨永ボンドの宣伝につながっているんです。絵を描くだけではなく、売り方を考えていかないと。また、展覧会コミッショナー、キュレーター、ジャーナリストなど、絵に携わる職業の人とつながっていかなければアートの世界ってうまくいかない。でも、日本ではこの職種の人たちは圧倒的に少ないので、まずはここを開拓しないと。

松口 アートに携わる人を巻き込みながらやっていく事が大事なんですね。今まで作家さんは作品を作り上げるだけってイメージでした。

ボンド 分かる人だけ分かればいいって作家さんもいますが、僕は色々な人に想いを伝えたいし、人にとって絵を描く事自体が大事なんだと伝えたいですね。

近藤 Kathmiちゃんは、この道を選んだのはなぜ?
Kathmi 私にとっては描く事で誰かが喜んでくれるというのが動機です。でも、恥ずかしくて画家になる夢を高校生まで隠してました。大学生になってPixivとかブログとか、ネットで発表してみたら、受け入れてもらえて確信が持てました。

近藤 ネット上だと気軽ですが、実際のアート業界の方に出会うってなかなか難しいのでは?

Kathmi デッサンして技術を磨いて、一流の美術大学に進学して、賞を獲得して。卒業後は大手の美術館のパトロンが付いたり、出版社のお抱えになったり…。みたいなのがドリームですよね。

近藤 やっぱり企業やギャラリーに所属せずにフリーでやっていくのは難しいですかね?
ボンド 有名なところに所属すると、一枚の絵がいきなり何百万になるんですよ。でも作家の取り分は結構引かれるとか…。一回高く売れてしまうと、次から値下げできなくなるから、あえて値段を抑える作家さんもいるそうですよ。僕は原画の価値を上げるために、価格を高めに設定してもいいとは思います。その代わり、グッズはきちんとしたクオリティで作っていかないと。

Kathmi 原画の価値を上げて、グッズ展開をしていく。アーティストもビジネス的要素がないと厳しいと感じています。

松口 今、お金の集め方として、クラウドファウンディングという手段もありますよね。

ボンド 僕もクラウドファウンディングでパリのアートフェアに出展する企画を立ち上げて、80日で164万集まりました。ただ、これにはちょっとテクニックが必要ですね。

松口 テクニックですか?

ボンド アートの分野に関しては、共感してくれる人が圧倒的に少ないんですよね。僕も9割5分は知り合いに協力してもらいました。達成できなければ白紙で手数料も取られるから、かなりリスキーです。

Kathmi 私も個展を開こうと挑戦したのですが、開始数日で100%超えて、結果283%くらいになりました。出たてのアーティストにとってはありがたいかも。でも、結局は自分が頑張るしかないですよね。

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もしかして、芸術家ってイバラの道なの?
人の仕事が半分になった時、理屈じゃなくて感性が必要になる。

松口 次のテーマは「日本の美術教育について」。教育の現状と今後についてお聞きしたいと思います。では、現役美大生のKathmiさんから。

Kathmi 私は、武蔵野美術大学の3年生です。通称「武蔵美」と呼ばれ、日本の3大美術大学なのですが、ここに入るまでに九州産業大学を経由したんです。プラス絵を描いて、仕事をしています。ぶっちゃけますけど、私、もうすぐ大学辞めるんです。

松口・近藤・ボンド え〜!!

Kathmi 九産大も武蔵美もすごくいい大学なんです。でも、美術系大学は学費も高いので、バイトしながら通うと時間がもったいない。それなら、スズメの涙くらいの収入でも、絵を描きながら暮らした方がいいと思って。

松口 学費はかなりのハードルですよね。

ボンド そんな高額な学費を払っても、画家として食べていける人は一握りです。

Kathmi デザイン関係の仕事に就ける人は3割と聞いてます。あとは飲食とか。

ボンド 美大に入るためにデッサン頑張るじゃないですか。そのデッサンを教えているのは、美大の卒業生。画家として食えなかった、でも絵を描きたい人が教育側に回るんです。日本の美術教育って、この循環な気がする。アメリカなんかは、道に絵を並べて、それで生計を立てている人がたくさんいます。アートのイベントも多いし、買う人も多い。そんな土壌を日本も作らないと。

近藤 アートって身近じゃないですもんね。

ボンド アメリカやヨーロッパは起業する時に、その何%かは、アートを取り入れなければならないという法律があるんです。文化を作っていくために国が後押しするんです。

Kathmi 海外ドラマとかで、オフィスに絵が飾られているシーンとか、よく見ますよね。
ボンド 人の仕事が半分になった時、理屈じゃなくて感性が必要になると思うんですよ。それって、アートの仕事ですよね。

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アート×医療、アート×IT、アート×〇〇
想像力との化学反応が新たな可能性を生み出す

松口 3つ目のテーマですが、「アート×〇〇で何をする?」ボンドさんはすでに医療や地域活性などの活動でアートを取り入れてますよね?今後はどんな展開を考えてますか?

ボンド 僕は作家として精神医療を変えたいんです。芸術には、「技術力」と「純粋さ」が大切だと考えているんですが、精神に障がいを持つ方は子どもの時に誰もが持っていた純粋な心をずっと持ち続けている。彼らの仕事こそ、絵を描くことなんじゃないかと。日本で彼らの絵が売れて、生活ができるようになる。僕はそのプロデュースをしたい。さらに、集中力が研ぎ澄まされるし、完成したら達成感も味わえる。絵を描くこと自体が精神医療になるんです。ヨーロッパではアートセラピストは国家資格なんですが、日本でもより分かりやすく、気軽にできればと思って、大学で先生や学生さんと協力しています。
Kathmi 私は、アート×ITですね。私は今22歳ですが、生まれた時から身近にパソコンがあったんです。今では便利なアプリもたくさん出ています。これからIT化されて仕事が無くなると言われていますが、私は逆だと思う。ITを使って、色んなことができるようになりますよ。魔法みたいに。

近藤 これからアートに掛け合わせたいものってあります?
ボンド 佐賀県の多久市にアトリエを開いているのですが、町おこしで多久駅の周辺などに壁画やシャッターアートを14か所描いたんですよ。関東からも有名なペインターさんも呼んで。壁画を見るためにたくさんの人に来てもらって、回遊してくれたら、地域も盛り上がるはず。アートと地域おこしは相性がいいんですよ。

Kathmi 私も大名のアートイベントに参加しました。楽しかったけど結構難しいところもありますよね。

ボンド 最初、建物のオーナーさんが奇抜なアートは見たくないって反対されていたんですが、1、2件描くと、うちにも描いてって(笑)。これから頑張って100か所くらいに増やしたい。

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ボンドさんとKathmiさんの赤裸々な話に衝撃を受けたり、地に足の付いた発想に感心したり、最後まで考えさせられた今回のReTHINK FUKUOKA Project。
日本の芸術環境はまだまだ厳しい状況ですが、それでも社会情勢や技術の進歩を的確にとらえ、様々な可能性を導き出しているお二人。そこにはアートと向き合ってきた人ならではの想像力と感性、そして何よりも描くことへの情熱が原動力となっているようです。
その姿勢こそが「ミライの働く」への大きなヒントなのかもしれません。
来るべきロボット時代に不安になる前に、まずは心に響くアートの力を借りて、明るいミライを描いてみませんか?

 

ReTHINK FUKUOKA PROJECTについて
コミュニケーションや働き方、ライフスタイルに大きな変化をもたらしている福岡。新しい産業やコミュニティ、文化が生まれるイノベーティブでエネルギッシュな街となっています。
そのチカラの根底には、この街に魅力を感じて、自らが発信源となっている企業や人がいます。
ReTHINK FUKUOKA PROJECTは、「ReTHINK FUKUOKA」をテーマに、まったく異なるジャンルで活躍する企業や人々が集い、有機的につながることで新しいこと・ものを生み出すプロジェクトです。


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