ReTHINK FUKUOKA PROJECT イベントレポート03
アナバナではReTHINK FUKUOKA PROJECTの取材と発信のお手伝いをさせていただいています。
誰もが日々関わる「食」のシーン。その風景が変わろうとしています。ロボットがウエイトレスとして接客をしたり、それさえあれば他には何も食べずに生きていけるという完全食が販売されたりと、食は今まさに過渡期にあるのです。
「ReTHINK FUKUOKA PROJECT」第3回のトークイベントのテーマは「ミライの食を見つめる」。
ゲストは世界最速でミシュラン一つ星を獲得した「TIRPSE」オーナーのレストランプロデューサー大橋直誉さんと、筋肉紳士集団 「ALL OUT」のプロデュースなど全国で200名以上のマッチョ人材のキャスティング事業を行い、福岡を拠点に活動する小原明人さん。「時間と空間」「肉体と機能」という全く異なる切り口で食を捉える二人のトークを、TABI LABO代表の久志尚太郎さんと株式会社サイノウ 代表取締役の村上純志さんが引き出します。
「未来の新しい料理」は存在しない
久志 いま、食ってすごくおもしろくて。糖質制限とかグルテンフリーとか、身体をつくるということにフォーカスした考え方と、美食やエンターテイメントとして新しい食の形をさぐる考え方と、全く逆の方向にふれているんです。
村上 小原さんはどう食にこだわっているんですか?
小原 単純にタンパク質はしっかりとっていますね。炭水化物は殆ど摂取しなくて、ナッツを1日3〜4袋くらい、大量に食べてます。見せるからだをつくるのが目的ではあるんですけど、かつ健康でありたいとも思っているので、糖質制限もなるべく気をつけて食事を摂っていますね。自炊はできないんで、キッチンには大量のナッツと、冷蔵庫の中にはサプリメントと水しか入っていないです。
村上 これだけ食事に気を使っているのに、すべて外食でまかなっているって意外ですね。大橋さんはいかがですか?
大橋 僕のレストランは、1年間限定でデザートだけのランチをしているんですけど、肉や魚やパンも出さずにこれだけ人が来るとは驚きでした。僕は食事をしてもらうことに価値をつくるのが仕事なんですが、未来の食に関して言うと「新しい料理」ってないんですよ。
久志 ない? どういうことですか。
大橋 たとえば「エル・ブジ」という世界一予約のとれなかったレストランのシェフでさえ、クリエイトできないという理由で店を閉じてしまった。「宇宙から野菜がふってきたら新しい料理ができる」っていうぐらい、食材も調理法ももう考えつくされているんです。
久志 なるほど。
大橋 だからこそ、デザートランチのように、今までなかった体験を作ると、人は興味を持ってくれるんです。
久志 お二人は食の話をしていても全く違うことを言っていますよね。そんな風に「食」って今過渡期にきていて、大橋さんのデザートランチも小原さんの食事も、例えばおばあちゃんがみたらびっくりしますし、「バランスが悪い」って絶対怒りますよ。昔は考えられなかったような食のとらえ方をされている方がものすごく増えているように思います。
キーワードは“虫”と“発酵”
久志 さっき「これからの未来の食って何が一番とがってますか」ってお二人に質問をしたら、二人とも虫って言うんですよ。みなさん想像できますか?
小原 僕は昆虫食って可能性がかなり高いと思います。筋肉に必要なのはもちろんですけど、髪の毛も内蔵もお肌も全部タンパク質でつくられているので、生きていく中でタンパク質って絶対必要なんですね。虫はタンパク質と、ビタミンとミネラルも豊富に含んでいて栄養満点です。しかも「虫」という食材ができあがるまでの期間がすごく短い。虫って2—3ヶ月でできあがるので、大量生産できるんです。本当に、虫の問題は見栄えだけですからね。
久志 身体をつくるという観点からだけはなくて、食料危機の解決手段としても考えられますよね。食の業界を俯瞰して見たときに、食料をまかなっていくという観点はすごく重要なポイントだと思います。僕は実際に昆虫を食べたことがあるんですが、めちゃくちゃ美味しかったですよ。
大橋 素材としても面白いですよね。海外のレストランは、虫を食材として使うことに結構積極的です。虫は僕も嫌いなんで掘り下げたことはないですけど、世界料理学会という世界中のシェフたちが集まって発表する場のテーマのひとつには、虫があります。それと、発酵。
村上 発酵はきてますね。
大橋 はい。海外の人たちはすごく興味を持ってるんですけど、日本人にとっては当たり前すぎて気がつかないです。日本酒なんて、「並行複発酵」といって糖分をつくりながら発酵させる日本だけの技術を使ってできてるんですよ。
久志 発酵って日本やアジアの独特の観点を持っていて、腐っているということを「そこに新たな命が生まれている」ってとらえているんですよね。それが今になって改めて注目されていますね。虫もそうで、どう見せていくか、どう概念をくつがえしていくかっていうのはポイントなのかもしれませんね。
福岡の食は世界で一番と言っていい!
村上 今日はなかなか組み合わさることのないお二人がゲストに来ていただいていますけど、ここで終わらずに今後も何か一緒にやりたいですね。福岡の食文化を背景にして、食と筋肉のコラボレーションってできないですか?
小原 僕は「マッスルカフェ」といって、ALL OUTの筋肉紳士集団が女性をもてなすイベントを福岡でやっていますけど、1回で120〜130人の方が来てくれます。グランピングの中でヨガをするパッケージツアーみたいなものもやろうと思っているところなんですが、例えば糸島はすごくぴったりな場所だと思いますね。
大橋 糸島は食も自然もお酒もあって、全部をその土地のものでまかなえるすごく豊かな土地なんですよ。あんなに食材があって、ハーブも花も野菜もファーマーもあるところ、なかなかないんです。糸島で朝の集合から夜のディナーまでを、食事と運動でしっかり合宿みたいに組むなんてどうですか?
久志 いいですね。みんなで糸島を走って、ゲットした食材をグランピングみたいなおしゃれなキャンプの場所に持っていって、料理して食べる。ぜひやりましょう!こんなふうに今まではなかった新しいものを生み出す方法って、全く異なるものを組み合わせることしかないと僕は思うんですよ。このReTHINK FUKUOKA PROJECTでそんな新しいことがどんどん生まれてくればいいなと思ってます。今日は虫と発酵と筋肉の話ばっかりだったんで、最後に福岡の食のすごさについて話したいですね。大橋 福岡の人は当たり前すぎてみんな価値を感じていないんですけど、福岡の食って、レベルが高すぎて僕は出店できないです。お店一つとっても、刺身も焼き鳥もラーメンもデザートもあるじゃないですか。しかも全部美味しいって、もうやりたい放題です。
久志 福岡は本当にすごい。世界で一番って言ったほうがいいですよ。
大橋 言っていいです。いくらまちの自然や景観が良くても、食べ物が美味しくないと人は行かないですよ。しかも福岡って、このクオリティを予約いっぱいで並ぶこともなく、今すぐに味わえる。こんなところってないですよ。もっと福岡は盛り上がったほうがいいです!
いかがでしたか?肉体と機能、そして時間と空間という異なる切り口で食を見つめるゲストのおふたり。まさにその組合せのように、異なるものの掛け合わせから未来の食や福岡にも新しい価値が生まれてくるはず。まずは福岡に住む私たちが、今ある当たり前をRethinkすること。そしてその可能性に気づくことで、未来のクリエイティブは生み出せるのかもしれません。福岡の食のシーンは、これからもっともっと面白くなっていきそうです。
ReTHINK FUKUOKA PROJECTについて
コミュニケーションや働き方、ライフスタイルに大きな変化をもたらしている福岡。新しい産業やコミュニティ、文化が生まれるイノベーティブでエネルギッシュな街となっています。
そのチカラの根底には、この街に魅力を感じて、自らが発信源となっている企業や人がいます。
ReTHINK FUKUOKA PROJECTは、「ReTHINK FUKUOKA」をテーマに、まったく異なるジャンルで活躍する企業や人々が集い、有機的につながることで新しいこと・ものを生み出すプロジェクトです。