イベントレポート

2020年までにごみをゼロにする宣言!徳島県上勝町の取り組みとは?トークイベントレポート


去る2月27日、アナバナ編集部にてひらかれたトークイベント『“ごみゼロ”の町、上勝町で感じた地域を巻き込む働き方暮らし方』のイベントレポートが、当日の進行役を務めた畠山千春さんより届きました。

ゲストの「NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー」理事長の坂野晶さんに、ごみゼロ宣言をした上勝町の取り組みについてお聞きし、ゴミを減らしていくために自分たちでできることを考えたトークイベント。さて、どんなアイデアが飛び出たのでしょう?

自分の暮らしをちょっとだけ見直してみる、よいきっかけになるかもしれませんね。
では、じっくりとご覧ください。

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地域のおばあちゃんが葉っぱを売る「葉っぱビジネス」で一躍有名となった四国で最も小さな町、徳島県上勝町をご存知ですか?
この地域でもう一つ、全国から注目されている取り組みがあります。それは、2020年までに町内から出る焼却・埋め立てのごみをゼロにすることを目標とした「ごみゼロ(ゼロ・ウエイスト)宣言」。この町には収集車によるごみの回収がなく、住人たちが自分たちでごみを34分別しているのだそう。家庭から出るごみを丁寧に分別した結果、今やごみの約7〜8割がリサイクルされるという驚きの成果を出しています。
このゼロ・ウェイストの活動を九州でも広めるべく、ごみゼロを推進する「NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー」理事長の坂野晶さんをゲストにお招きしたトークイベントが開催されました。進行は、福岡県糸島市で「暮らしを作る」をテーマに活動する畠山千春が務めます。


ゼロ・ウェイストの仕組み

まずは、上勝町が実施している「ゼロ・ウェイスト宣言」とは一体どういう取り組みなのでしょうか。まずはその宣言について、坂野さんに紹介していただきました。
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〜〜上勝町ゼロ・ウェイスト宣言〜〜
未来の子供たちにきれいな空気やおいしい水、豊かな大地を継承するため、2020年までに上勝町のゴミをゼロにすることを決意し、上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)を宣言します。
1) 地球を汚さない人づくりに努めます!
2) ごみの再利用・再資源化を進め、2020年までに焼却・埋め立て処分をなくす最善の努力をします。
3) 地球環境をよくするため世界中に多くの仲間をつくります!
この宣言を実現するべく、上勝町では様々な取り組みをスタートさせています。

○ごみ収集車はなく、町民がごみステーションに持ち込み
この町ではごみ収集車は走らず、町で唯一の日比ヶ谷ごみステーションに町民たちがごみを持ち込みます。また、隣には「くるくるショップ」が併設されており、各家庭で不要になってしまったものを交換する場所として町民に活発に利用されています。そのため、ここは単にごみを出す場所としてだけでなく町民同士のコミュニケーションの場所としても活用されているのだそう。
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○家庭の生ごみを堆肥化
町では生ごみの回収はしていません。生ごみ処理機の購入費補助制度を導入し、生ごみは各家庭で処理しているのです。全体のごみの約3割を占める生ごみを堆肥化させることで、家庭から出るごみを大幅に減少させることに成功しました。

○ごみは34分別(実質60分別)
ごみステーションのスタッフのサポートのもと、町民たちが自分で分別を行います。その結果、平成25年度の上勝町のリサイクル率は76.4%、全国平均20.6%の約3倍以上の数値となりました。1日1人当たりのごみ排出量も全国平均の半分以下となっており、ここからもごみの分別によって住人たちのごみ意識が高まっていることが読み取れます。
もし全く分別せず全てを焼却・埋め立てしていた場合、予想される支出合計は約2千万円。上勝町では分別によってその費用を実質約660万円でまかなっているのだとか。1千万円以上の節約は町にとっても大きなインパクトに違いありません。

○廃棄される鯉のぼりや着物などをリメイク作品にして販売する、くるくる工房
使わなくなったものを活用して新しいものを作り出すことも、ごみ削減につながります。「介護予防活動センターひだまり」では、上勝町のおばあちゃんたちが不要になったもののリメイク商品を作り販売。おばあちゃんたちのセンスが光る個性的でかわいらしい商品は視察に訪れる人たちからも大好評なのだそう。
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イベントでは鯉のぼりを使ったエプロンやトートバック、ネクタイなどの販売も行われ大盛況でした!

他にもリユース食器の貸し出しや活動を分かりやすくまとめた書籍や冊子の制作など、町全体でごみをゼロにすべく様々な活動に取り組んでいます。
また、今ではごみの量を減らすだけではなく、そもそものゴミを出さないプロダクトデザインを企業に提案したり、ゴミが出ないものを選んでもらえるよう人々の意識を変えていく、といったアプローチも行っているそうです。

 

坂野さんへ質問

トークの後半は、参加者からの質問タイム。トーク中には熱心にメモを取っている方の姿もあっただけに、あちこちから手が挙がりました。
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Q:上勝町の取り組みを別の地域でも取り組むためには、どうしたらいいでしょうか?

A:上勝町がここまで取り組んでこれたのは、”危機感”と”想いを持った人がいる”、ということだったと思います。
葉っぱビジネスがスタートしたのも、その前まで上勝の一番の産業だったみかん栽培が冷害によって壊滅的なダメージを受けてしまったからなんですね。その中から生まれた新しいビジネスのアイディアなんです。ゼロ・ウェイストの取り組みも、焼却炉が使えなくなってしまって燃やす以外の解決策を探したからこそ実現できたことだと思います。
ですから、何か問題が起きてしまったときに、諦めずクリエイティブに取り組める人たちが市役所の人たちや地域の人たちの中にいた、ということが大切なのだと思います。また上勝には、役場で働こうが畑を耕そうが「全員が一地域の住人である」という意識があります。小さなコミュニティだからこそ人との距離が近く、立場を超えて話し合っていける。社会を変えていくなら小さな場所から、なのかなと思います。
だからといって大きいコミュニティだからできない、ということではなく、アプローチが変わってくるのだと思います。それぞれその場所にあった進め方をしてくのがいいかもしれないですね。


Q:続けていく上での課題は何かありますか?

A:人が入れ替わっていくことですね。町長も変わりましたし、ゼロ・ウェイストを一番最初に始めた人からの世代交代がありました。作られたものを続けていく、想いを受け継いでいく、という感覚から、次の世代がさらにクリエイティブになっていくのが難しいタイミングに来ているかもしれないですね。ずっと続けるには新しい挑戦をし続けていくことが大切だと思うのですが、その一歩がなかなか踏み出せないことが課題かもしれません。

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Q:坂野さんは、モンゴルにてNGO代表、フィリピンにて国際物流企業の営業マネージャーを経るなどグローバルで活躍されていた中で、なぜ徳島県上勝町という地方へ行かれたのでしょうか?

A:世界中で起こっている出来事は、行ってしまえばどこでもローカルの問題なんです。フィリピンにいても、モンゴルにいても、上勝にいても、自分の中での感覚はあまり変わらないですね。新しい地域やプロジェクトによそ者として入っていき、それをいかに自分ごととしてやっていけるかどうかだと思うんです。
海外でよりコミュニケーションが取りづらい人たちと一緒にできた力が今活きているなと思いますが、場所はあまり関係ないと思います。それよりは、誰と、何のために、何をやるのか、が大事だと思います。どこへ行っても一番いい場所なんてなかなか巡り会えないと思うので、自分が行きたい場所は自分で作るのがいいな、と思っています。


ワールドカフェ

トーク後は、ここ福岡でゴミを減らしていくために自分たちでできることを考えよう!ということで、上勝町の「ごみゼロ宣言」にならって「あなたの〇〇宣言!」というテーマのワールドカフェを行いました。
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自分の暮らしの中で「ちょっとだけ」ごみのことを考えてみる、「ちょっとだけ」暮らしを変えてみることで、社会が変わっていくんじゃないかな……そんなアイディアを話し合ったところ、それぞれグループからユニークな宣言が生まれました。

まず「MY傘袋を持つ宣言!」
デパートなどを見る間だけ、たった少しの時間で使い捨てされてしまう傘を包むビニール袋。デパートやカフェなどで見かけるたびに気になっていたのだそう。MY傘袋を持つことで無駄遣いを減らしていきたい、と宣言されていました。かわいい傘袋があれば、雨の日のお出かけも楽しくなりそうですよね。
それから「食べ残しゼロ宣言!」「ラップなどの消耗品を使わない宣言!」、「まずは自分の住むコミュニティーから取り組む宣言!」など前向きな宣言がいくつも飛び出しました。
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ゲストの坂野さんが掲げたのは「福岡でゼロ・ウェイストの取り組みをスタート!宣言」。この会がきっかけに、福岡でもこの取り組みが広げていきたいですね。


次回、上勝町へ!

活かせば財産、分ければ資源。上勝町のごみステーションに掲げてあった言葉です。私たちの暮らしの中でごみだと思っていたものも、自分たちの考え方や取り組み次第でいくらでも活かしていけるのだな、ということをこの活動から学びました。
ごみ34分別という高いハードルを飛び越え、実践し続ける上勝町の原動力の秘密は一体何なのでしょうか。その答えを探すために、次回は実際に上勝町へ行ってレポートする予定です!
お楽しみに。

■ゲスト:坂野晶(さかのあきら)さん
関西学院大学総合政策学部卒業。
モンゴルにてNGO代表、フィリピンにて国際物流企業の営業マネージャーを経る傍ら、日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った、徳島県の上勝町にて合同会社RDND(アール・デ・ナイデ)を大学時代からの友人と共同設立、広報マネージャーとして活動。
□活動のウェブサイトはこちら

■進行:畠山千春(はたけやまちはる)さん
新米猟師。3.11をきっかけに大量生産大量消費の暮らしに危機感を感じ、自分の暮らしを自分で作るべく活動中。2011年から動物の解体を学び、鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩りを始めながら、獲物の皮なめしなども行う。
現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちで作る「いとしまシェアハウス」を運営。2014年に木楽舎より『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』を出版。
□ブログちはるの森

 


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