インタビュー

映画『よみがえりのレシピ』と在来作物〜渡辺監督に会いました。(前編)

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イベントレポート映画『よみがえりのレシピ』と在来作物(前編)

在来作物を守りよみがえらせようとする人々と、日本の農業の原風景をテーマに、2011年に公開された映画『よみがえりのレシピ』
4月某日、渡辺監督をお招きし「在来種の作物」をテーマにしたトークイベントが開催された。
小さなコミュニティで、大切なものを守りながら日々を暮らす人々。
その生き方や想いを、静かなやさしいまなざしで見つめ続ける渡辺監督。
思わず自分の「食」への姿勢を見つめ直すような、貴重なお話に耳をすませてきた。

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実はもともと「食」には疎かったし農業経験もありません

「食べる」を考える映画をつくった渡辺監督だが、実は、もともと「食」には疎かった。なぜ今回の映画を創ろうと思ったのだろう。
「山形を出て東京で映像の仕事をしていた時、毒入り餃子事件(2008年)がありました。皆が騒ぎ始めて、『いのちの食べ方』とか、「食」に関する映画が作らました。私自身も色々と調べ、「食べ方」を変えたらいいんだ、ということは分かったけど、実際どう変えていくの?って。
安心・安全なものを消費者目線でお金を払って購入するというだけで済む問題なのかな、と疑問がありました。健康志向は間違っていませんが、「食」の問題の捉え方としては個人的・一方的すぎる。
もっと農業の原風景に立ち帰ってみたいと調べていくうち、「在来作物(在来種)」にたどり着いたんです。これは、これから世の中にとりあげられていく、と思いました」

そこで「在来作物(在来種)の映画を撮りたい!」と、つくった企画書のタイトルが『よみがえりのレシピ』だったのだそう。

在来作物(在来種)って?この国古来の感性であり文化です

普通スーパーに売っている90%くらいの野菜は耐性や味、栽培の利便性などのために品種改良された雑種(F1品種と呼ばれる)だ。一方、在来種は品種をかけあわせず、その土地でずっと守り育てられてきたものを指す。
簡単に比較すると、

F1(エフワン)品種
・改良された種を農家が買い育てる(毎年種を購入する必要あり)
・安定していて大規模に出来る
・誰でも食べやすい味、風味

在来(ざいらい)種
・種を農家で自家栽培
・管理が大変で小規模にしか出来ない
・独自の味や風味(個体差も大きい)
・「種」の多くが失われつつある

こうして比較すると、効率性という点からも「じゃあもう、在来作物でなくても」となりそうだ。
しかし、渡辺監督はこのように話す。

「撮っている段階ではまだ本当の意味では分かっていなかったのですが、理屈とか科学的根拠とかではないんです。種を自家採取して受け継いでいくということは、その地域、家々の感性みたいなものなんですね。そこには先人の知恵が宿っているんです。それぞれの地域、家で味が違う。これはもう文化ですよね。

今の時代に広く受け入れられているからといって、それだけを残していくというのは間違っていると思います。味というのは、幼い頃の食体験や育って行く過程の環境などによっても変わる主観的なものです。ですから、美味しいものしか残さないとなってしまうと食べ物の個性もどんどんなくなってしまう。 人々が大事に守ってきたこと。それ自体に意味があるんです。編集しながらやっとそれが分かってきました。 これからは味や食ということに限らないんですが、そういった価値をいかに伝えていくのかが大切になってくるのかな、と思います」

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映画にみずみずしく登場する魅力的な山形・庄内の在来作物たち

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映画の中で登場するのは、農薬を使わない焼き畑農業でつくられる「藤沢カブ」や徹底的な自家採取で各家の女性が味を残してきた「だだちゃ豆」、生産者がたった一人になってしまった幻の「外内島きゅうり」といった山形の在来作物たち。
大切にこれらを受け継ぎ、作りつづける農家の人々、ひとつひとつ素材と向き合い、ソースを使わないオリジナルの絶品料理で在来作物のあたらしい価値を生み出す一流シェフなど、『よみがえりのレシピ』は、失われつつある「在来作物」を守る人々の記録だ。

豊かな畑の緑、見た事もない創作料理、美味しそうに「食べる」シーンに予告版を観るだけでもお腹がぐ〜っ。個性豊かな野菜たちをほおばりたくなってくる。

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