こんにちは。編集部の天野です。10月21日にハカタリノベーションカフェにて、HOME’S総研所長の島原万丈さんによる「”官能都市”とは」をテーマにしたトークイベントが行われました。全国134の都市を対象に行われた調査結果。官能都市とは何なのか? 福岡の結果はどうだったのか? 立ち見の出るほど大盛況だったこのイベントをレポートします。
島原さんは、不動産ポータルサイトHOME’Sで有名な、株式会社ネクストの中にあるHOME’S総研というところで、都市に関する研究をされています。全国134の都市を対象に都市の魅力を測る調査を行い、先日「センシュアスシティランキング」を発表されました。
イベントでは、気になる福岡の結果も含め約1時間、島原さんのトークで「官能都市とは?」が解説されていきました。
都市の本当の魅力を可視化するものさしをつくりたい
センシュアスシティランキングの「センシュアス」とは、「官能的である」とか、「五感に訴える」または「感覚を楽しませる」という意味があるようです。島原さんはなぜ都市の“センシュアス度”をはかろうと思ったのでしょうか?
魅力や住みよさなどを指標にまちにランキングがつけられるとき、そこに何がどれくらいあるかという名詞や数字でもってはかられることが多いといいます。例えば新しい住宅ができているかや、大型小売店鋪の面積がどれくらいあるかなど。
でも、それはまちの魅力の基準として本当にリアルなものなのか?
確かに日常的に暮らしていて、このまちはあのまちより新しい住宅が多いから魅力的だ、なんて考えたことはありません。本当の魅力を測って、都市に対する新しいものさしを提案しようとつくられたのが、このセンシュアスシティランキングのようです。
考えてみれば、私たちはまちの何に対して、どんな時に魅力を感じているのでしょう? 島原さんは実際に感じるまちの魅力と、従来のランキングの指標になっている魅力とにギャップを感じ、この調査を始められたそうです。
動詞で都市を評価する
そもそも、魅力的なまちとはどんなまちでしょうか。
都市計画には、まず建築、そして空間というように「”何をつくるか”が先にある」のではなく、「どういう行動や生活が起こるか」というアクティビティを先に考えることが大事だと島原さんは言います。
まちとは、そこに住む人が五感で感じて身体で動く場所。だから都市を動詞で評価しようという考え方です。自分の日常生活や経験と、より結びつけて考えられる指標をつくろうということでしょうか。
まちの中でも都市という場所に限って考えてみると、都市とは不特定多数の人が集まって暮らしている場所であり、一方田舎や農村とは、生まれた時から顔なじみの人ばかりが周りで暮らしているような場所です。島原さんのおっしゃるように「隣の人は親戚のおじちゃんとかおじちゃんの兄妹とか、そんなまちで暮らしている」わけです。
しかし都市では、知らない人たちとの関係性の中で暮らしていきます。そして自分の身体が、ネットやゲームの中ではなく都市の中にあり、都市の中で物事を感じて暮らしています。そんな「関係性」と「身体性」という大きな2つの要素から、各4指標ずつ合計8指標32項目をアンケートで質問したそうです。
例えば知らない人との関係性の中でどういう行動や生活が起こっているかという関係性については、「共同体に帰属している」「匿名性がある」「ロマンスがある」「機会がある」という4つの指標があり、なんとその中には「不倫のデートをした」という項目も!
これは「匿名性がある」かというところで、何をしても筒抜けのまちでは暮らしにくいよね、ということのようです。そのまちに身体をおくことでどう感じ、どんな行動をしているかという身体性に関する質問の中には、「食文化が豊か」「自然を感じる」「街を感じる」「歩ける」の4指標があります。私がいいなあと思ったのは、「遠回り、寄り道していつもは歩かない道を歩いた」という項目です。同じまちの中でも自分がそのまちを楽しむ姿勢がなければ、まちに感じる魅力や愛着って生まれてこないなあと思いました。
福岡市の官能度やいかに
さて、お待たせいたしました。福岡市は全国134都市の中で何位にランクインしているのでしょうか。20位までがこちらです。
1位 東京都文京区
2位 大阪市北区
3位 武蔵野区
4位 東京都目黒区
5位 大阪市西区
6位 東京都台東区
7位 大阪市中央区
8位 金沢市
9位 東京都品川区
10位 東京都港区
11位 東京都千代田区
12位 静岡市
13位 横浜市保土ヶ谷区
14位 盛岡市
15位 東京都渋谷区
16位 東京都荒川区
★17位 福岡市
18位 仙台市
19位 那覇市
20位 大阪市都島区
じゃん! 福岡市は仙台市と那覇市の上、17位にランクインしていました。
かなりの好成績だと思われますが、東京や大阪など意外と都会なところが多く上位にいるなあと感じるのは私だけでしょうか。港区や渋谷区など東京の都心のエリアに共通するのは、匿名性とロマンスと機会があるという3つの指標のポイントが高いからだそうです。
比較からそれぞれの都市の様々な性格が見えてきます。
文京区や武蔵野市など、東京で上位の都市には全体的にバランスの良さがありながら、どこかずば抜けた強みがあるとか。地方都市にはバランスの他に、食文化が豊かという項目が特徴であるとか。
しかし! 福岡市の食文化の項目は、思ったより弱いようです。九州の他の都市と比べると全体的には強いですが、食文化でリードしているとは言えません。
これはなぜかというと、福岡の食文化が豊かではないということではなく、福岡市に住む人がそれを意識していない、自覚的に食べたり飲んだりしていないということが影響しているということのよう。
「食文化があること」という指標の中には、
1.庶民的な店でうまい料理やお酒を楽しんだ 2.地元でとれる食材を使った料理を食べた 3.地酒・地ビールなど地元で作られる酒を飲んだ 4.ミシュランや食べログの評価の高いレストランで食事した
の4つがありますが、皆さんはどう感じたでしょうか?
「自分のまちの官能度というものが自分の中にもすごく入っているということを想像してほしい」
この結果を受けて、私たちはどうしたら、もっとまちを官能的に楽しんで暮らせるのでしょう?
島原さんは、センスを磨くことと、言葉にしてみんなで共有することをすすめています。この調査では、センシュアス度が高い都市ほどそこに住んでいる人が満足しており、幸福を実感しているということが言えるそうです。
自分のセンスがあればまちを感じられ、素敵なものに気づいて幸せを感じることができる。新しくモノをつくることでまちの魅力を高めるという話ではなく、自分の感受性をまちに対してオープンにすること。そんな自分の意識のあり方が、まちの魅力そのものとつながっているのですね。
「自分のセンサーのたて方次第でもっとまちは素敵に見えるんです」と笑顔で語る島原さん。まちに魅力を感じて日常を楽しんでいる人は、その人自身も魅力的に見えるなあ、なんて思った素敵なトークナイトでありました。地元や気になるあのまちのこと、もっと詳しいこの調査のこと、ぜひご覧になられて下さい。
■「Sensuous City[官能都市]」の調査レポートは全ページこちらでダウンロードが可能です。
http://www.homes.co.jp/souken/report/201509/
(編集部 天野)