日々のてまひまの日々

ふくしの世界は変わるのでしょうか?日々のてまひまの1年間を、ふりかえりました。(後編)

前編:ふくしと’出会いなおす’1年
後編:求む! 出会いなおしのリアルな場

求む! 出会いなおしの’リアル’な場

「ふくしと出会いなおす」をコンセプトに、様々なプロジェクトを手がけた『ふくしごと』。次なる1年はどんなことを仕掛けていく予定なのでしょうか? これからの展望についてうかがいました。

まずは「できる」を一緒に探す

先崎さん(以下敬称略))チームとして連携できる施設を増やしながら、地道に商品を作っていかなければいけないなと常に感じています。自分たちが「施設の可能性」を少しずつ引き出しながら、成長につながる仕掛けをつくる。そして、そこから生まれるストーリーもちゃんと発信していきたいなと思いますね。

山内)ワープできないんですよね。すごい飛び道具をポンポン打って、福祉が一気に変わっていくみたいな簡単なはなしではなくて、問題は相当根深いんです。それは一般社会もそうだし、作業施設もそうだし、福祉業界もそう。障害のある利用者さん自身が18歳になるまでの教育の中で「自分たちにできることはこれくらいだ。これ以上はできないんだ。これをやっちゃダメなんだ」というのができあがってしまっているんです。

アナバナ)可能性を自分で限ってしまっているってことですか?

山内)そうです。だから「できることを一緒に探していく」っていうイメージなんですよね。できるかどうかの可能性っていうのは自分の中にモノみたいに固まってあるものではなくて、いくらでも伸び縮みするもの。障害のある人たちの「できること」を、一緒に探しながら地道にひきだしていくっていう感じです。徐々にやっていくうちに、少しずつ世の中も変わっていくのではないかと思うんです


クリエイティブディレクター 先崎哲進さん(テツシンデザインオフィス主宰)。主にグラフィックデザインを中心に、ブランディング、商品開発、空間アートワークを通して、福祉と社会を繋ぐデザインを手がけられています。

スイーツプランナ山口真理さんと提案した、福祉作業所でつくるラスク。手先が上手く動かなくても、長い時間集中できなくても、こんな模様だったら楽しく作業できるかも!と、一人ひとりの「できる」を手探りでさがしていくそうです。

ふくしごとの活動こそがクールだ!といわせる場づくりを

焼山さん(以下敬称略))僕は、主にWEB戦略担当としてふくしごとに関わっているんですが、「流通に弱い」「WEBでは売れない」っていうのが、この1年でわかった一番の収穫ですね。WEBっていうのはリアルでも人気があるものしか売れないんです。今、「人気がないんだ」っていうことをちゃんと認めないと、次の1年で限界を感じると思うんです。福祉施設の商品は、みんながみんないいものなんですよ、僕らにとっては。ただ、一般には浸透していない。そこで、ある程度リアルで売れている施設が先導して、「全国や全世界に福祉施設の商品を打ち出すにはどうすればよいか」を本気で考えなければいけないなと思うんです。


UXマネージャー 焼山慈康さん(株式会社ブリックハウス代表)。WEBサイトの企画・運営を中心に企業のCI、VI戦略を展開。長年培ったWEBのノウハウを生かし、福祉施設の商品流通やシステム開発を手がけられています

橋爪)先を走っている施設がもう一歩先に進んで、実績やマーケットを開拓していくという感じです。ふくしごとが、ベースの部分に位置する福祉施設の環境や商品にてこ入れしつつも、ひとつ抜きん出るリーダー的な施設や障害者を集めて、社会的な認知を上げるきっかけを投じていければと考えています。

先崎)「ふくしごとの活動こそがクールだ」とみなさんに感じてもらえるようになりたいですね。「商品が素敵だから買う」っていうのはもちろんありなんだけど、「日々てまや福祉施設の商品を買うことが、自分のステイタスを確実に上げている」という感覚を、一般の人にいかに持ってもらうかがポイントだと思うんです。


一般の方に福祉施設の商品をより知ってもらうべく、日々のてまひまが期間限定でパンマルシェを開催。福祉作業所でつくられているパンを販売しました。

山内)一般の人たちが福祉に関わるってすごくハードルが高いと思うんです。もちろん自然に出会って仲良くできればいいかもしれないけど、いきなり施設に行くのは怖いし、イベントに行ってもどう振る舞っていいのかわからない。よほど意識が高い人じゃないと関われないわけです。

アナバナ)なるほど。確かにそうかもしれません。

山内)そこにふくしごとが、「商品を買うことで、福祉と関わることができるんだ」というきっかけづくりをしていく。施設の商品を買うことがひとつの入口になって、商品の先にあるものに気づくきっかけになればと思うんです。「こういう施設があるんだ。福祉ってこうなのか。障害がある人ってこうなのか」っていうのが気づきとしてもたらされるような。

先崎)そのためには、やっぱりリアルな場が欲しいですね。たまに行われている限定的なマーケットじゃなくて「ここに行けばいつでも福祉施設の商品を購入できて、施設の職員や障害者とも出会えて一緒に何かを体験できる」みたいな。福祉施設と社会とのハザマのような場所が欲しいなと正直思います。そうしないとネットでいくらがんばっても、売れない状況は変わらない。


昨年の4月に行われたふくしごと主催のパーティ「Thank you! グラミンハウス」。障害のある人とない人が混じり合って交流する姿はまさに「日々のてまひま」が求める、福祉と社会の狭間のリアルな場そのもの

樋口)商業施設でのマーケットや、授産品ショップなどは行政が主導することが多いから、かき集めた感があったりして正直なところ全然おしゃれじゃないし、入りづらい雰囲気があったりするんだよね。

先崎)行政がサポートする場所はもちろん必要なんだけど、ふくしごとだからできる出会いなおしの場があるんじゃないかと。これをご覧になっている、テナントが空いているビルのオーナーさんや企業とかが「使っていいよ〜」って言ってくれるとありがたいんですけどね。

樋口)わかるわかる! 常に表現できる場があるといいよね。
障害のある人とない人が自然につながれる、それこそリアルな「出会いなおし」の場だよね。


今年2月に行われたカフェを巡るアート展「日々、描く」でのワークショップ。日々のてまひまが得意とする「アートを通じて社会と繋がる」イベントを積極的に展開しています。

アナバナ)今日はみなさんの熱い想いをたっぷりとありがとうございました。リアルな出会いなおしの場、ぜひ実現させてください! 楽しみにしています。

橋爪)今日の座談会、みんなの想いを改めて知るいい機会になりました。僕らもお互いに出会いなおした感じがします。これからの日々のてまひまにぜひご期待ください。

アナバナ)今後の展開といえば、障害のあるアーティストたちが描いた作品をWEB上で閲覧・使用できるシステムを開発中とのこと。こちらのお話もたっぷり伺いましたので、次回の特集「日々のてまひまの日々」にて紹介させていただきます。

次回の日々のてまひまの日々は…?!
障害のあるアーティストたちの作品を社会とつなげる「日々の芸術」とは?をお届けします。

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