穴バーレポート ACTIVITY

酪農から加工までを一貫して行う。宮崎県小林市「ダイワファーム」の手作りチーズ

2月の穴バーは、2019年秋に開催した「皿の上の九州」にもご出品くださった宮崎県小林市「ダイワファーム」さんのチーズを主役に開店しました。あっという間の満員御礼に、チーズの不動の人気ぷりを実感しました。しかしひと口にチーズといっても、世界には1000以上の種類があり、製法や素材によって味わいや用途も異なるからその魅力は無限に広がります。今回は、ダイワファームオリジナルの製法も風味も異なる8種のチーズを味わいながら、その奥深い魅力に触れていきました。

皿の上の九州のダイワファームさん紹介記事
https://anaba-na.com/saranoue/daiwafarm/

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チーズは、大きく分けて「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の2種類に分けられます。商品のラベルに記載されているので、目にしたことがあるのではないでしょうか。
ナチュラルチーズは、牛をはじめ山羊・羊・水牛などの生乳を原料とし、さらに生乳の種類や加工方法などによって、フレッシュタイプ、白カビタイプ、青カビタイプ、ウォッシュタイプ、シェーブルタイプ、セミハードタイプ、ハードタイプに分類されます。できあがってからも酵素や微生物の働きによって発酵が進むので、風味が徐々に変化していくのが特徴です。
プロセスチーズは、ナチュラルチーズに乳化剤などを加えて加熱して溶かし、再び成型したもの。加熱により菌が消滅するので、熟成が進むことがなく、保存性に優れたチーズです。

酪農からのチーズづくり
おいしさの決め手は自家製生乳

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宮崎県小林市の「ダイワファーム」は、酪農から加工に至るまでを一貫して自社で行うチーズ工房です。牛の生乳を使ったナチュラルチーズ10種類を、定番商品として作っています。今回ゲストとして登場くださった大窪誠朗さんは、社長である父の和利さんと共に酪農とチーズづくりを手掛ける若き担い手です。
「ダイワファームでは主にイタリア系のチーズをつくっています。フランスではそのままチーズを味わうのが主流ですが、イタリアでは料理に取り入れることが多いんです。クセがなくあっさりとした優しい味のものが多く、日本人の口にも合うと思います」
チーズの材料はいたってシンプル。生乳、乳酸菌、レンネットと呼ばれる凝乳酵素と塩のみで、生乳に対して約10分の1の量のチーズができるのだそう。材料がシンプルである分、素材の質が仕上がりを大きく左右します。「イタリアの職人さんも言っていたのですが、おいしいチーズの決め手は生乳が8割。あと2割が職人の技術です」と誠朗さん。乳脂肪分など生乳に含まれる成分によって風味が変わるといいます。

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搾乳は朝と夕方の1日2回。搾りたての生乳がそのまま工房へと運ばれるので、トラックなどでの輸送により振動で生乳の成分が壊れてしまう心配もありません

敷地内に牛舎と工房が隣接している「ダイワファーム」では、搾りたての新鮮な生乳を使ってチーズをつくることができます。また、チーズに適した成分の生乳を生産することも可能です。現在育てているのは30頭で、乳脂肪分が豊富で濃厚な乳を出すブラウンスイスと、全世界で広く乳用牛として飼われているホルスタイン。この2種の生乳を混ぜ合わせて、理想の成分に近づけているそう。
「チーズのための酪農なんです。成分の安定した生乳をつくるためには、牛のケアも大切。息遣いはどうか、食欲はあるか、ストレスを感じていないかなど、常に健康状態に気を遣って育てています」
酪農からのチーズづくり。2つの業務の並行は大変な労力を伴いますが、「良いものをつくるためには、必要なこと」と誠朗さんは話します。品質の追求に徹底した哲学を持ち、常に安定した品質を作り上げられるのは、生産者であり作り手だからこそ。日々の積み重ねがダイワファームのおいしさを育てているのです。

チーズを日本人にとって
もっと身近な食材にしたい

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写真中央が社長の大窪和利さん、右が息子の誠朗さん

先日、製造研修でイタリア中部のマルケ州を訪れたという誠朗さん。「気候もおだやかで、小林市と似ているなと感じました」。本場のチーズづくりを自分の目で見て学べたことはとても有意義だったそうですが、さらに印象に残ったことがあったそう。
「イタリア人の食生活にチーズが密接に関わっていることに、とても感動しました。ランチタイムや仕事終わりに専門店に立ち寄って、その日に食べる分のチーズを買って帰る。日本でいうと魚屋さんや豆腐屋さんのような感覚で利用しているんです」

確かに日本では、チーズと言えばまだどこか嗜好品という意識があり、毎日の食卓に当たり前に並ぶ食材ではないかもしれません。「チーズがもっと身近な存在になるように、僕たちも努力するべきだと思いました。日本には300ほどのチーズ工房があり、様々な商品がつくられています。その事を多くの人に知ってもらい、未体験のチーズにもチャレンジしてもらえるような機会を増やしていきたいですね」

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誠朗さんによると、店頭でチーズを購入する際にはお店の方にアドバイスをもらってみてほしいとのこと。「チーズによって適した調理法や相性のいい食材も異なるので、ぜひ相談してみてください。また、冷蔵保存したナチュラルチーズは食べる前に常温に戻し、寝ていた菌を起こしてあげるのが美味しく味わうポイントです」
「ダイワファーム」の商品はほぼ飲食店や企業へ卸しているため、なかなか一般では手に入りにくいのですが、直接電話で注文をすれば発送も可能です。今回参加できなかったみなさんも、産直チーズの魅力を味わってみてはいかがでしょう。

ダイワファームHP
http://www.daiwafarm.net/

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(取材:編集部、文:ライター/吉野友紀、写真:カメラマン/田村昌士)

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