たくさんのチーズ好きの皆様で満員御礼となった「今宵あなたとチーズバー」。会場に到着したお客様からは、チーズとの新たな出会いに期待する声が多く聞かれました。「ワインのおつまみとしてよく食べているんですけど、もっと料理での活用法が知りたくて」「つい同じチーズばかり買ってしまうので、新しい味に出会いたい」。そんな要望に応え、多彩なチーズ料理を手掛けてくださったのは、スイーツプランナーの山口真理さんです。
山口さんは、<見た目にもおいしくて、幸せを感じられる料理>をテーマに、スイーツを中心とした商品開発やフードコーディネートを手掛けていらっしゃいます。2018年に開催した「かぶバー」でも、可愛らしく華やかなかぶ料理の数々を披露してくださいました。
「今回は、チーズの固定概念にとらわれない食べ方を提案したくて、さまざまなアレンジを試みました」。その言葉どおり、メニューには新しい味わい方を発見できそうな料理がラインナップ。その中からいくつかピックアップしてご紹介します!
食べるだけじゃない、新発想の「飲むチーズ」で乾杯!
「クリーミーなおいしさを飲んで楽しむのも面白いと思って」と、ウェルカムドリンクにはスープ仕立ての「飲むチーズ」が登場。クリームタイプのチーズにブイヨンを入れて溶かし、とろとろの食感を味わいます。乳酸菌だけで作ったクリームチーズは、搾り立ての生乳の風味と酸味が特徴。ヨーグルトみたいなサッパリとした味わいが食欲を刺激してくれる、スタートにふさわしい1品でした。
テーブルにはこの日使用する「ダイワファーム」の8種類のチーズが並べられ、そのままの状態でテイスティングを楽しみました。「まずは素材そのものを知っていただき、これが料理になるとどう変化するかも実感してもらえたら、とご用意しました」。クリームチーズ、スモークチーズ、トーマダイワ、ロビダイワ、ジンゼ、モッツアレラチーズ、ハロウミ、リコッタ……初めて目にした種類もあり、ひとつひとつ味わいながら自分の好みを模索します。製造方法や味の違いについて、生産者「ダイワファーム」の大窪誠朗さんへの質問も活発に飛び交っていました。
「焼き」料理もひと工夫。2種使いグラタン&ベークドチーズ
続いて熱々のグラタンがお目見え。グラタンと言えばチーズ料理の定番ですが、「今回は2種類のチーズを使って濃厚に仕上げました。ウォッシュタイプでやわらかな『ロビダイワ』はカットしてソースの具材と混ぜ込み、ハード系で味がしっかりめの『トーマダイワ』は表面にたっぷりとすりおろしてふりかけています」。チーズの旨みを全面に押し出した、贅沢グラタン。食感の異なるタイプのチーズを組み合わせる技は、自宅でも真似してみたくなります。
スライスした「ハロウミ」チーズをフライパンで焼き上げ、チリコンカンの上にトッピングしたのがこちら。「ハロウミは熱を加えても溶けにくく、焼いて食べるのが基本だと聞きました。味は主張せず弾力を楽しむ名脇役なので、何を組み合わせるのがいいか迷いましたが、ピリッと辛いチリコンカンならおつまみにも最適な一品になります」。シンプルにサルサソースやドレッシングで前菜として楽しむもよし、焼きチーズ、活用できそうです。
見事な手さばきに感嘆の声。モッツアレラチーズづくり実演
この日は特別に、ゲストとして登場くださった大窪誠朗さんが、参加者の目の前でモッツアレラチーズづくりを実演してくださいました。しかも、出来たてをすぐに味わえるという嬉しい特典つき!
まず取り出したのは、「カード」と呼ばれる白いかたまりです。これは、生乳に乳酸菌と酵素を加えてかき混ぜ、水分(ホエー)を取り除いたもの。続いて大きな鍋にカードを入れて細かくし、2%の塩を加えたお湯をかけて溶かしながら棒でかきまぜていくと、あら不思議! カードがみるみる繊維状に変化していきます。繊維状にすることで、モッツァレラ独特の弾力感が生まれるのだとか。
それをひとつにまとめて手でちぎって丸めれば、あっという間につやつやモッツァレラのできあがり。誠朗さんの見事な手さばきに、会場からは拍手や感嘆の声があがりました。
飽きたなんて言わせない。チーズのふり幅は想像以上!
このほか、パスタやデザートも含めて全8品。すべてにたっぷりとチーズが使われていましたが、ちっとも飽きがこなかったのは、チーズそれぞれの特徴をいかして味覚や食感を変化させていたから。山口さんは「最後まで新鮮に味わっていただけるよう、全体のバランスを考えて、さっぱり・こってり・甘味・辛味といった味の緩急をつけました。『ダイワファーム』さんのチーズは、比較的あっさりしていて料理にも合わせやすいのが特長だから、アレンジもしやすかったです」と、すっかりダイワファームのチーズファンになったようです。
作り手の誠朗さんも、「普段は牛舎や工房に籠って仕事をしているので、こうして目の前で自分が作ったチーズを食べてもらえるのが嬉しかったです。いろんなチーズに興味を持っていただけたので、僕もさらにいいものが作れるように頑張ります」と意欲を見せてくださいました。
初めての味覚や新しいレシピなど、チーズ好きにとっても発見がいっぱいだった夜。会場で販売したチーズもほぼ完売となり、参加者のみなさんは引き続き自宅でチーズバーを楽しまれたのではないでしょうか。これを機に、チーズのある食卓が日常となることを願っています。
(取材:編集部、文:ライター/吉野友紀、写真:カメラマン/末次優太)