イベントレポート

カンマームジークフェスティバル

12月13日(土)、福岡市中央区にあるあいれふホールで開催された『カンマームジークフェスティバル』。主催のNPO法人ドネルモさんが、音楽家と聴き手をつなぐ鑑賞の場として企画したもの。代表理事の山内さんはクラシックをこよなく愛する一人で、海外の演奏会へ足を運ばれるほどです。

そもそも、「クラシックのコンサート」と聞いてどう思いますか?クラシックの世界を「わかった」人たちが「おしゃれ」して出かけて、「今日の演奏は○○だね」「××ですわね」なんて高尚な意見を交わすような、庶民には簡単に手を出せない領域というイメージ、ありませんか??
KMP(カンマームジークプロジェクト)は「音楽をもっと身近に、プライベートなものに」というコンセプトのもと、福岡在住の演奏者と私たち聴き手との間をつなぐプロジェクト。
クラシックのコンサートに行ってみたいけどなんとなく敬遠してしまって行けない、行ったことのない初心者たちと演奏者側との数回にわたるワークショップにより意見を重ねあわせ、新しい試みを取り入れながら作り上げていったその集大成が『カンマームジークフェスティバル』なのです。

演奏者は、本業がピアノ教室の先生だったり、学校の音楽の先生だったり様々。福岡には楽器を演奏できる人がたくさんいるのに、その技術を持て余している現状なのだそう。客層も仕事帰りの男性、女性もいれば比較的若い人、子ども連れの家族などと、幅広い。会場は思った以上に天井が高く、広い会場にお迎えの音楽『皇帝円舞曲』が響き渡る。「意外と本格的…!」と思わず気を引き締めてしまいました。(入場料1,000円という良心的試みもありがたい)

席に着くとまず目に入ったのは、以前から聞いていた「寝る席」。

「クラシック聴いていると気持ちよくて眠くなる」。という意見をもとに、じゃあ寝てもいい席作っちゃおうよと作られた特別席。なかなか潔いと思いませんか?他にもクラシックを聴きながら読書できる「読書席」もありました。オープニングアクトは『天上の生活(マーラー:交響曲第4番第4楽章)』にのせて子どもたちによるダンスや詩の朗読などのパフォーマンス。 とってもかわいく、ここでまずググッと心をつかまれます。

そして、メインのマーラー交響曲第4番ト長調(室内楽版)が始まります。正直、地元の演奏者のコンサートと聞いて、こんなに本格的なものと思っていなかったので、(ごめんなさい!)最初は戸惑いましたが、だんだんと世界に引き込まれていきました。

演奏はとてもすばらしく、皆さん真剣に聴いておられました。ソプラノの壱岐さくらさんは今まさに音楽を学んでらっしゃる学生さんなんですって。

演奏後には後語りもあり、福岡の音楽事情や、練習での苦労、こういった活動がいかにアマチュアで音楽を続ける人にとって励みになっているかなど、舞台裏のお話も聞くことができました。こうした時間は聴き手と演奏者をつなぐのに良い機会。「プロの演奏を聴きに行く」のではない、応援したくなるようなきっかけにもなるのですよね。「音楽家は言葉より演奏で伝える」と、最後は急遽即興の演奏もありました。

クラシックが私に1歩近づいた、そんな一夜だったのでした。

オープニングアクトを企画、担当された中村さん。衣装がとってもキュートです
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おわりに このプロジェクトが始動するまでは 「楽器ができる人」も「潜在的聴き手」も点在している状態。 その点が少しずつつながり、結ばれ、もはや複雑な線や面となって絡まりあったKMP。 「次回はこんなことがしたい」。そんな声が演奏者側やスタッフから挙がっているそうです。新たな動きへの片鱗さえ垣間みることのできたこのコンサートでした。

(大田)

*室内楽…少人数の独奏楽器による合奏音楽。弦楽四重奏・ピアノ三重奏など多くの形態がある。元来は教会・音楽会場以外の宮廷の一室などで演奏された音楽をさし、声楽の入ることもあった。

 


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