イベントレポート

まち、ひと、ほん。と、サンロード魚町商店街。

本ってやっぱりいいですね。北九州市小倉の商店街でひらかれた、本をテーマにしたイベント「まち、ひと、ほん。」へ行ってきました。

2015年にアーケードが撤去され、青空の見える商店街へと生まれ変わる『魚町サンロード商店街』。「まち、ひと、ほん」は、街の風景が変わっていく前に、アーケードのある商店街をもっと楽しもうという「 Fantastic Arcade Project 」で企画されたイベントです。そして、会場のひとつであり、かつては北九州市出身の松本清張さんも通ったという古本屋「アタゴ書店」へのオマージュ企画でもありました。

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写真左はFantastic Arcade Project を企画するペピン結構設計石神さん。1月、3月に続き、今年3回目となる今回のイベント。3月に開催した「旅する商店街ツアー」と題した体験型アートイベントでは、アーケードの上を歩くという大胆なコースも。どんな景色が広がっているのだろう。

主催の北九州家守舎さんは、「リノベーションによる地域課題の解決」を目指し、2011年から開催されている「リノベーションスクール」の企画・運営をされています。

この「まち、ひと、ほん。」は、“ まちを使い倒す ” をテーマにした「リノベ祭り2014/夏」のイベントのひとつとして開催されたのでした。リノベーションスクールの取り組みや今回の「リノベ祭り」ついては、レポートや動画などもあがっていますので、ぜひウェブサイトをご覧ください。動画から伝わる会場の熱気もすごいです。

□  リノベーションスクール http://renovationschool.net/

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案内役にbook pick orchestraの川上さんを迎えての、ワークショップと3夜連続のトークセッション。私が足を運んだのは2日目の夜でした。

ユニークなトークゲストの共通点は「まちに人の居場所をつくる人、本にまつわる活動をする人」。2夜目は、誰でも一箱分の古本屋さんになれる「とほほん市」を主宰する岩本史緒さんと、小倉の台所、旦過市場のピクルス屋「はしご屋」を営む後藤大悟さんのお二人がゲストです。 とほほん? はしご屋? と、もうネーミングから気になるでしょう?

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そして、案内役のbook pick orchestraの川上さんは、ブックセレクターの活動や、目線を変えた本の魅力に出会えるような場づくりなどをされている方。参加して気づいたのですが、2年ほど前に大分県の湯布院で立ち寄ったcafe&gallery CREEKSさんで、book pick orchestraの商品を手に取ったことがあるのを思い出しました。本の表紙が絵画のように切り取られていて、裏面の出版年や装幀の作家名などから本の中身を想像する「文庫本画廊」という商品です。本ってこんな選び方もあるのね、と新鮮な感覚になったのを覚えています。

目の前を普通に歩行者や自転車が通り過ぎる中、”本”が共通項の3人が商店街であたり前にトークを繰り広げる光景がまた楽しくて。会話がまちの音に何度もかき消されながらも、トークはぐいぐいと進んでいきました。

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トークは、ゲストのお二人が選んできた“1冊の本”にまつわるエピソードを軸に展開。「どうしてこれを1冊に選んだの?」という問いに、ゲストそれぞれが本を解説します。すると、本の説明を聞いているうちに、その人のお人柄や大切にしていることとか、関心事とか、そんなことまで想像できてしまうんですねえ。「本棚から1冊だけ、人に紹介する本を選ぶ」という行為には、自然とその周辺の思い入れやエピソードがくっついてくるんですね。本が人と人をつなぐ、本のある場所に人が集まる、そんなお話になるほどと、共感できる時間でした。

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実は今回、もう一つの仕掛けがありました。

会場は「古書アタゴ書店、久光家、新薬堂」と、渋い名前が並ぶのですが、民家でもある「久光家」にエディター、デザイナー、ライターが集まり、イベントをリアルタイムで編集、最終日にZINE(小冊子)を完成させるというもの。

トーク中も、設置されたモニターには、本の台割が更新されていくさまや写真の加工、デザインなど、ZINEづくりの現場が映し出されます。商店街の日常が淡々と過ぎて行く中でのトークの臨場感と、実況生中継のテレビを観ている感覚を同時に味わっているような、妙な距離感がおもしろく、2時間はあっという間に過ぎていきました。3日間のイベントの空気感までたっぷりつまったLIVE ZINEは、限定100部、メルカート三番街に8/25に開店した『ナツメ書店』に置いているそう。トークセッションの内容も丁寧に記録されておりましたよ。ぜひそちらで、じっくりお楽しみください。

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小倉で出会った変な人シリーズのひとり、東郷さんの粋なはからいにより、博多までZINEが届けられました。本当は現地で手にとって完結!なのでしょうが……東郷さんありがとうございました。また参ります!

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ZINEを制作するスタッフのみなさん。3日間、6名でこのボリュームを編集して製本までしてしまうんだから、すごいな。

これまで正直、あまり足を運んでいなかった小倉のまちだけど、この頃は、最近何やってるかなって、情報をチェックするようになりました。同じ目的を持つもの同士がシンプルに集まって、話ができる場があるって良いですよね。2人でも3人でも、こうやって新しい人の巡りが生まれると思うと、ワクワクもしますし。なぜか毎回、素敵な人、変な人に出会えるから、それも小倉に足を運ぶ楽しみの一つになっています。それにしても、今回初めてお会いしたbook pick orchestra川上さんは、本好きっぷりが熱すぎた。イベント終了後も川上さんの本ばなしは盛り上がる一方。おもしろい。

今回の小倉もまた、変な人との出会いがありました。また来ます。

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右から、後藤さん、岩本さん、川上さん。後藤さんの野菜の品種の話も興味深かった。岩本さんのとほほん市は10月に開催されるそう、ぜひまたお話をうかがう機会をつくりたいな。

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持参した本にブックカバーとしおりをつけてくれるというおまけつき。模様は商店街のタイルから。美術作家塩井一孝さんの作品です。カバーをかけてくれたのは「ナツメ書店」店長の倉内さん。この日はまだオープン前だったナツメ書店にも行かなくちゃ。

[関連する情報]

□  ゲスト岩本さんのとほほん市 http://tohohon.jugem.jp/

□  ゲスト後藤さんのはしご屋  https://www.facebook.com/Hashigoya

□  book pick orchestra http://www.bookpickorchestra.com/

□  ファンタスティック・アーケード・プロジェクト http://uo-sun.or.jp/fap/

□  ペピン結構設計 http://pepin.jp/top.html

□  北九州家守舎 http://www.yamorisha.com/

□  リノベーションスクール http://renovationschool.net/

□  ナツメ書店 http://natumeshoten.tumblr.com/

 (編集部 曽我)


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