イベントレポート

修正鬼会へ行ってきました!

大分県北部に位置する国東半島(くにさきはんとう)。 九州の北部から瀬戸内海へ「にゅっ」と突き出る拳のような形をしたこの半島に、1200年ほど続くとも言われるお祭りがあります。 「修正鬼会」(しゅじょうおにえ)です。

これは旧正月に行われる火祭りで、もともとは大晦日に行われる追儺式(厄払いのお祭り)が変化した鬼祭りなのだそうです。節分のようなものですね。節分は「鬼は外、福は内」ですが、このお祭りでは鬼を内に招きいれることで力をもらいます。お坊さんが鬼の力を借りて鬼に変化することで、村の人々に福を招くのがこのお祭りです。 「鬼は内!福も内!」

国東半島にはたくさんのお寺があり、昔々は全ての地域で鬼会を開催していたのだそうですが、現在は天念寺が毎年、成仏寺と岩戸寺が隔年で開催しています。 場所によってやり方も異なり、天念寺では鬼はお寺の本堂で存分に暴れまわりますが、成仏寺・岩戸寺では、本堂の中だけではなく、集落の家々を鬼たちがひとつひとつまわって、その家の人にお接待を受けるのだそうです。 人々は家に鬼を招き、もてなすことで鬼のパワーと福をもらいます。まさに「鬼は内!福も内!」。 今回は天念寺をレポートします!

天念寺の修正鬼会は15時ごろ、お坊さんが講堂に集まってお経を読む「勤行」から始まります。 お祭りには、長さ5mを超える大松明が3本用意され、それを運ぶ「タイレシ」と呼ばれる男性らが、川で身を清める儀式(19時ごろ、ふんどしだけで川に入るので、見ているこちらもすごく寒い)や、大松明に火をつけて燃えているものを運び、松明同士を激しくぶつけたり、お堂の正面で松明を左右三回、上下三回と振る(というよりも、石段に叩き付ける感じ)動作をしたり、さまざまな行程があります。 私はお祭りが盛り上がってくる20時ごろに到着しました。 大雪が降ったせいか、人も少なく落ち着いた雰囲気の今年。しかし、祭りはとても激しく、熱いものでした。

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火のついた松明を運ぶタイレシと呼ばれる男達

天念寺の修正鬼会は15時ごろ、お坊さんが講堂に集まってお経を読む「勤行」から始まります。 お祭りには、長さ5mを超える大松明が3本用意され、それを運ぶ「タイレシ」と呼ばれる男性らが、川で身を清める儀式(19時ごろ、ふんどしだけで川に入るので、見ているこちらもすごく寒い)や、大松明に火をつけて燃えているものを運び、松明同士を激しくぶつけたり、お堂の正面で松明を左右三回、上下三回と振る(というよりも、石段に叩き付ける感じ)動作をしたり、さまざまな行程があります。 私はお祭りが盛り上がってくる20時ごろに到着しました。 大雪が降ったせいか、人も少なく落ち着いた雰囲気の今年。しかし、祭りはとても激しく、熱いものでした。

火のついた松明を本堂の両脇から運んできてぶつけ合う。運んでいるのがタイレシ。

「どーん!」この火の粉こそが、厄よけの縁起物

松明が振られるたびに、火の粉が舞い上がり、観客は煙にいぶされ、ふりかかる火の粉を払いながら見学します。

松明の行程の後は、煙にいぶされた本堂の中で、お坊さんの勤行が始まります。しかし先ほどの松明のおかげで本堂の中もしばらくは煙だらけで目が開けられませんでした・・。

香水棒(こうずいぼう)を捧げての舞や、四方固めの儀式、二名の僧侶がお面をかぶり「鈴鬼」になって、鬼を招きいれるための舞を舞っていきます。

香水棒の舞

鈴鬼の舞は、ぴょんぴょんと跳ねるようなユーモラスなものなのですが、どことなく怖い気がしてしまうのは、「鬼を招き入れる舞」だからでしょうか。

鈴鬼がひとしきり舞ったあと、いよいよ鬼の格好をしたお坊さんが登場し、お面をつけられ、鬼になっていきます。

床に火のついた松明が置いてありますが、ここは木造のお堂の中です。

鬼は祖先の霊であるともいわれ、角がありません。

鬼になったお坊さんは、まわりにいたタイレシと一緒に火のついた松明を持ち、お堂を暴れまわります。 松明を柱やお堂の壁にバシバシバシバシ叩き付けるので、叩く度に火の粉が舞うし、燃えた松明の破片まで飛んできて、来た人は煤まみれ・火の粉まみれになり、大変です。 化学繊維でできた服を着てきたりすると、丸く穴があいたりもします。 知らぬうちにフードの中が燃えていて「ちょっと!燃えてるわよ!!」と慌てて近くの人が叩き消すような場面も・・。 この祭りに行くときは、化学繊維の服は着ていかないことが鉄則です。 白い服も、焦げ目が付くので絶対に駄目です。 悲鳴と笑い声が多数起こる、不思議な光景がここにありました。

火の粉と煙が舞う堂内。ここ、外ではありません。お堂の中なのに火のついた松明を振り回しています。

最後には、観客がお堂の中に集められ、松明(火はくすぶっている程度)でバシっと鬼さんにお尻や背中を叩いてもらい、今年一年の厄を払い、福を祈ります。 そしてお坊さんが「鬼の目」といわれる小さなお餅を投げるのを拾って、お祭りは終了です。

一年のはじめにこれだけたくさん厄払いをしてもらえたので、今年もきっと良い年になるだろうと思います。 なんといっても鬼の力!強力です!帰りはみんな煤だらけ。 車の中もしばらく煙の匂いがとれませんでした。

別の日に成仏寺も行きましたが、天念寺よりもこじんまりとした印象の成仏寺は、本当に地元でやっているお祭りという風情で、素晴らしいものでした。 お坊さんも酔っぱらっていて時々お経を間違えたり、踊りを間違えたりして、皆が笑って和む場面もありました。 お時間が許せば、天念寺と他の寺と2箇所巡ってみるのもよいかもしれません。 同じ修正鬼会でも、地域ごとの良さを感じられると思います。

国東半島には本当にたくさんのお寺があり、お祭りもあります。 この半島には神仏習合の名残が強く残っていて、今も家の中には仏壇と神棚が横並びで作られていたり、お寺のすぐ近くに神社があったりします。 しかし実は仏教と神道だけではなく、修験道や民間の山岳信仰などもまじり、昔から独特の信仰を形づくってきた場所なのです。 お祭り以外にも、ふとした所に信仰の形が見えます。

昔から今へ変わらず伝えられていること、そしてそれをこれからも繋いでいこうとする人が居ることは、地域の希望です。 もちろん新しい歴史を刻むことも必要です。 さまざまなものが、この場所で混ざり合い、豊に広がっていけばよいなと思います。 みなさんもぜひこれから、国東半島を覗いてみてください! (写真/文 小山冴子)

===後日談====
家に帰ってから気づく、祭りのあと。
ナイロンでできた私のカメラケースも、穴がぽっこりあいてしまいました・・。当日着ていた赤い上着も、焦げ目がついたので、今年から修正鬼会専用にすることに。これも良い思い出です。

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