イベントレポート

冷泉荘『フクオカハランベvol,2』

博多区川端商店街にある冷泉荘で行われた「フクオカハランベvol,2」にお邪魔しました。

「フクオカハランベ」と題されたこちらのイベントは、アフリカケニア在住のフリーライター早川千晶さんが、アフリカンミュージシャンと共に全国各地を巡るトークライブです。ゲストには、、写真集「100人の母たち〜“原発”のない世界へ。私は子どもを守りたい〜」の著書でありカメラマンの亀山ののこさんが招かれていました。

ところで、この「ハランベ harambee」とはスワヒリ語で「みんなで助けあう/支え合う/築き上げる」という意味を表した言葉だそう。早川さんが支援しているアフリカのストリートチルドレンのお話を軸に、東日本大震災の3月11日以後、脱原発のメッセージを込めた母と子のポートレイト撮影についても、お話を聞く事ができました。

会場の冷泉荘は、「ひと」「まち」「文化」をキーワードに築55年になるアパートを「リノベーションミュージアム冷泉荘」として再生した場所です。博多川端の商人街の片隅で昭和の香り漂を漂わせたレトロな建物です。冷泉荘の5階にフォトスタジオを構える「テトラグラフ写真室」の雨宮さんが今回のイベントを主催されています。雨宮さんもまた、人と人とのつながりを大切にしたアルバム作りなどをされているとても素敵なカメラマンさんです。

会場では黒猫堂さんのパンやディレディレターリーさんのカレー、アフリカの雑貨を扱う雑貨屋次郎さんも出店されていました。平日の夜にも関わらず、会場はわいわいとにぎわっておりました。

バックパッカーとして世界各地を放浪していた早川さんは、25年前にケニアに移住されたそう。現在はフリーライターをしながら、ストリートチルドレンの保護・支援活動を通じて、アフリカの抱える問題や現状を発信し続けています。ケニア・ナイロビ最大級のスラム・キベラでストリートチルドレンのための学校「マゴゾスクール」の運営にも携わっているとのこと。

早川さんがサポートする「マゴソ給食募金」

元々、アフリカの人々は大自然とともに生きてきた豊かな文化を持つ民族ですが、貧困問題の隣で、いつしか生きる場所を無くしている人達が溢れているというのが現実。その象徴がストリートチルドレンです。日本で生活している私達には、想像しにくい境遇を生きてきた子ども達と生活している早川さんは、そうした触れ合いの中から学ぶことも数多くあるといいます。世界で起きている様々な問題、歴史や経済の仕組みなど、子ども達を通して見えてくるのだそうです。

早川さんが日本全国を回っているのは、そんなマゴゾスクールの子ども達を通してアフリカの現状を知ってもらいたい。そして子ども達の生きる力を感じて欲しいとの思いからです。「どんなに傷ついた命でも時間をかけて愛情を込めてせっすることで心は再生する。その過程がとても美しいんです」と早川さんは言います。「私の暮らしている地球がひとつの大きなおうちになったらいな」そんな思いも口にされました。
アフリカでは、貧しくとも家族で集まって食事をし、懸命に働き、学ぶ、そして歌い祈ることで毎日を楽しく過ごしているのだそうです。
“ハランべ”という言葉のように、貧富の差や人種、環境の違いは関係なく、お互いを認め合い、助け合うことで心豊かな生活が送れるのではないでしょうか。

この日のゲスト、亀山ののこさんのお話は、雨宮さんと対談形式で行われました。
著書「100人の母たち」には、母と子、そしてこれから母になる妊婦さんの姿が映し出されています。家族の何気ない写真だけど、それが心にしみる写真集、だと雨宮さんは言います。
2011年3月に起こった福島原発事故を機に、”原発はいりません” という意思を、自分のフィールドである写真を通して伝え始めた亀山さん。
母親が一番美しい瞬間は、やっぱり子どもと一緒にいる時なのだと言います。
“母たち”にカメラを向ける心境を、「たまたま私が撮っているけど、神様や他の誰かに撮らされている気がします」と表現されるののこさん。写真集を手にすると、そこに写し出されている温かくも生々しい生命が放つ不思議な輝きを感じます。原発がもたらす未来を想像し、この手の中にある美しい命を脅かす原発の是非を考えずにはいられない作品になっています。

主催の雨宮さん自身もカメラマンであり、母でもあります。不安な社会だけど、少しでも楽しく世の中を良くしていきたい、そんな想いから、これからも親子でも楽しめるイベントを多数主催していきたいと、力強いお話も。福岡に移住してきた亀山さんにスタジオを貸し、サポートしてきた雨宮さんは、そんな亀山さんの活動を通して「ひとつの想いを形にしていくを過程を見せてもらった」と話します。

トークの後はミュージックタイムです。
近藤ヒロミさんの柔らかく美しい民族楽器に合わせた歌声に身をゆだねて心地い時間を過ごした後は、大西匡哉によるアフリカの太鼓「ンゴマ」演奏。

会場は先ほどの真剣な空気とは一変し、大人も子どもも楽しく踊り、博多川端はさながらミニアフリカのような雰囲気になりました。

肩肘張ることなく、境遇の違う方々の活動を見聞でき、未来について自然と思いを巡らせ、楽しく参加することができた今回のイベント。
早川さんは、「「つながり」「助け合い」という言葉を難しく考える必要はない」とおっしゃいます。例えば今回のイベントに参加してみたということでも良いし、何気ないしぐさや行動、ほんの小さなアクションが、大きな助け合いの一歩だと。当たり前だけど忘れがちな大切なことを、このイベントを通して感じた夜でした。

(とよだあやこ)


□ 早川千晶 ウェブサイト / http://www.maisha-raha.com/
□ 亀山ののこ ウェブサイト / http://nonoko-foto.com/
□ TETRA+GRAPH / http://www.tetragraph.com/
□ 冷泉荘 / http://www.reizensou.com/


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