- 日田は、久大本線が走るJR日田駅と、道を挟んだ向かいにバスセンターがある。 JR日田駅にはレンタサイクルがあり、自転車でも街を散策できる。今回は原さんが車を出して下さったので、駐車できる日田駅に集合。
観光地の割に結構のんびりしていたJR日田駅。観光客はバスでやってくる方が多いみたい。
おはようございますーようこそ日田へ。
- 初日田です! 今日はよろしくお願いします。
それにしても日田も結構寒いんですね〜。 - 原さん そうなんです。盆地だから夏は暑いし冬は寒いですが、その分野菜が美味しく育つんですよ。今日はまず小鹿田焼の窯元に向かいましょう。ソガさん日田初めてなんですね。
- ソガ 実は随分昔に一度小鹿田焼の窯元へ行ったんですけど、 母に連れられて来たのであまり覚えてないし、その時は町にも立ち寄らなかったので日田のまちは全然知らないんです。
- 原さん そうなんですね。では豆田の古い建物を見るのも楽しめると思いますよ。後で寄りましょう。
- 小鹿田焼とは
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- 小鹿田の里までは日田市内から車で30分。
18世紀に入ってから開かれた窯で一子相伝を守り、当時から10ある窯に陶工が各2名というスタイルを変えていないし、作品に窯元名も入れない。10窯で一つの窯、技術や工程を守り伝える究極の民芸品。 - ソガ 素敵なところ〜!あら。なんだか音が聞こえますね、ゴットンゴットンって……。
- 原さん 小鹿田焼で使う土を砕いている音ですよ。 ここ下りてちょっと覗いてみましょう。
勾配の急な坂を下ったところにシートの掛かった小屋が。めくってみると……。唐臼がドスンドスンと土を突いている! 遠くからだと長閑に聞こえる音も、間近で見ると結構ゴーカイ。
- ソガ えー! これお皿に使う土? どこから来たんですか?
- 原さん この辺りの山から採掘してるんですよ。皿山っていう山とかから運ぶんですけど、小鹿田焼ってこの辺りで採れる材料を使って作ってるんです。
- 原さん この臼どうやって動いてるんですか?ザァザァ音が聞こえますけど、裏は川なのかな。
- 裏手に回ってみましょう。
- ソガ へ〜!川の水が臼を動かしてるんだ。エネルギーは自然の力だけ。循環してますねぇ。
- 原さん 昔から変わらずこうやって唐臼で土を砕いて、漉して生地を滑らかにしてっていう工程を守って素朴に作ってるんです。無駄もないし、風情がありますよね。
- 知り合いの窯があるので覗いてみましょうか。作業場が見られるかも。歩いてすぐですよ。
- ソガ はい!ぜひ!
集落はとてもコンパクト。入り口に車を停めたら窯全体をサクサク歩いて回ることができます。
渋い景色。ほんのちょっと歩く間にまた川が流れている。土を粉砕する小屋は、いくつもあるそうで、どこを歩いていても、どこからかゴットンゴットンという音が耳に届く。
また小さな坂を上る。まずは坂本さんの窯へ。軒先にはずらりと並ぶお皿。できた作品を乾かしているらしい。
わ〜素敵、お皿が整列してる!
- 原さん こんにちは〜原です、お疲れさまです。ちょっとお邪魔してもいいですか?
お、原くん。どうぞどうぞ。
- ソガ お邪魔します。あ、お皿作りの最中ですね!
窓から入る光が、作陶する手元を柔らかく照らしている!坂本さんが神々しく見えます……。
- ソガ ろくろも機械で回すんじゃないんですね。
- 原さん 蹴ろくろって言って、足で蹴るように回すんですよ。
- ソガ こちらでも作業されてるんですね。お皿に塗っている灰色のものはなんですか?
淡い赤茶の土が灰色に塗られている。
これは釉薬を塗っているんですよ。この灰色も焼くと透明になります。
- ソガ 焼くと透明に……。不思議ですよね。
- 原さん 小鹿田焼って注文したら作ってもらえるんですよ。
- ソガ え、そんな対応して頂けるんだ!
- 奥さん ここに作っているのも全部注文品なんです。
- 坂本さん 新しいものも作るんですが、手作業なんで量にも限りがありますからね。注文分から制作してます。
- ソガ 依頼して作ってもらえるってありがたいことですねぇ。
- 原さん お隣にもお邪魔してみましょう。
お邪魔しました〜
お隣でもお皿を乾かしていました。
- 原さん 坂本さんお邪魔しま〜す。
- ソガ こちらも坂本さんなんですね。
- 原さん 小鹿田には坂本窯が4件あるんですよ。
- ソガ ピッチャーの柄もモダンですね〜。
モダンって言うけど、昔からある柄よ。
- ソガ ほぅ〜小鹿田焼は洒落てますねぇ。
イベントなどの情報交換を始めるお隣の坂本さんとその息子さんと原さん。 窯が身近でないと陶工の方というのは特別な仕事のように感じますが、日田に住む仲間同士、こんな風に和気あいあいと過ごされているようです。
- 原さん 坂本さん、個展とか開かないんですか?
- 坂本 工さん うーん、開きたいけどね。これまであんまりやってこなかったから一から企画しなくちゃいけないしね。(息子さんに対して)ひとまずのところこいつが個展するんよ、今度福岡で。
- ソガ どちらでなさるんですか!?福岡ならぜひ行きたいです。
ガッシュっていうところで予定してます。詳細はこれからなんですけど。
- ソガ じゃ日程とかWebでチェックしてみます。楽しみです〜。
- Gouache [ガッシュ] ⇒ ︎□http://apartofapart.blog25.fc2.com
- せっかくなので・・・福岡の素敵なお店ということでご案内
(創さんの個展日は未定です) 沢山ではないけれど、各窯元には商品が展示されていて購入する事ができる。 キズものなどは安く販売して貰えるので、自宅用に持ち帰りたいところ。
- ソガ 原さんに案内してもらうと色んな窯元の方のお話が聞けて楽しいですね。
- 原さん 日田は僕の地元だし、長く通ってると色んな人とも知り合うし、小鹿田には同級生もいますからね!ちょっと同級生の窯にも寄ってみましょうか。
原さんの同級生の窯にもお邪魔しました。 一緒に写っている男の子はお隣の窯のお子さん。作業場で遊びながら、お父さんやご近所の作陶の様子を見て育つんですから、将来有望です。
- 原さん お疲れさまですー。
- 黒木さん お〜原くん。今日はどうしたの?
- 原さん 今日は日田を案内して回ってるんですよ。あ、こちら二人とも高校の時の同級生です笑。
- ソガ お二人とも!?なんだかお知り合いが多くて楽しいですね。今されている作業は器に模様を入れられてるんですか?
- “飛びかんな”って言って、この道具を器に当てると跳ねてチョンチョンって模様が入るんです。
- ソガ かっこいい。作業が早いですね、一つの器にチョチョチョチョンって一瞬で模様が入っちゃうんですね。よく見ようと思っても、ろくろの回るスピードに付いて行けない……。
- ▼目にも留まらぬ早さ! チョンチョンの瞬間はこちら
作陶するときの道具も手作りだそう。作り手が使いやすいように、全部ちょっとずつ仕様が違う道具たち。 こちらの道具は別の窯元で撮影させて頂きました。
その後二人は共同窯を見物したり・・・
濾過器で土を混ぜてみたりしました。濾過層で漉されてより粒子が細かくなった土は、四角く形成して乾燥させます。
窯を見学した後は、陶芸館で小鹿田焼の復習です。
- 原さん 今日は完成前の器を窯でたっぷり見ましたけど、陶芸館では古い作品も含めた完成品を見られますよ。
- ソガ おじゃましまーす。
口のついた壷もあります。
- ソガ わ〜いいですねぇ、野趣溢れるっていうか。デザインもサイズも結構バリエーションがありますね。あの口のついた壷は何に使うんだろう。
- 原さん あれは醤油とかお酒を入れる瓶のようなものです。時代に応じて用途が変わって来てるんですね〜、最近はこういうの作ってないみたいです。 例えば昔は玄関も大きかったから、そこに飾るための壷や皿も大きく作ってたんでしょうね。ほら、昔は木彫りの熊やたぬきの置物とか、あったでしょ(笑)
- ソガ それにしてもこんな素敵な民芸品なのに、窯で見たお皿は値段も求めやすかったですね。
- 原さん 民芸運動が盛んな時代に、プロダクトデザイナーの柳宗理さんのお父さんの柳宗悦さんだったり、バーナードリーチとかが小鹿田焼素敵だぞって世に広めたんですけど、柳さんは当時から、一時の人気に翻弄されちゃダメだ、伝統を堅く守りなさいって陶工さん達に話してたそうです。民芸品は日々使って楽しむ物だから、高級になり過ぎちゃうと民芸品じゃなくなっちゃいますもんね。
- ソガ ふうん、実直経営ですね。今日会った息子さんの方の陶工さんも今度個展されるって話されてましたけど、若い陶工さんの作品も見てみたいですねぇ。
- 日田小ネタ
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- 小鹿田焼窯からの帰り道にも民家の脇に水路が流れていた。壁には下りる穴が空いていて水路に出られるようになっている。
原さんによると川に迫り出した石段のスペースは汲場(くんば)といって、日田の町中でも川沿いに点在している。
昔はここで水汲みしたり、野菜を洗ったりしたらしい。舟形に石が組んである部分は、洗濯する場所だったのかも。
- ちょっと気持ちが引き締まるいいところがあるそうで、立ち寄ってみる事にしました。
- 原さん お昼の前に、いい神社があるんでちょっと拝んで行きましょう。
- ソガ この辺も紅葉が奇麗ですねぇ。
大原八幡宮、通称大原神社というそうです。
- 原さん 日田で一番大きな八幡様です。ほら、お堂の奥に鏡がありますよ。
- ソガ あ、本当だ。
- 原さん 鏡に自分が映るでしょう? それが、「あなたの心の中に神様がいるかもしれない」っていう風にも考えられます。八百万の神って言いますけど、神様はいつも側にいてくれるっていう教えなのかな。そういうところが僕が神社を好きな理由の一つです。
- ソガ なるほど〜。日本独特な考え方ですよねぇ。
- 次は本堂にも行ってみたいなぁ。
- 原さん すごく山の奥にありますが、機会があればぜひ、ご案内しますよ。
- ではお昼ご飯にしましょうか。今日はお弁当ですよ。
- ソガ お腹空きましたね。楽しみです!
- すっかり空いたお腹で向かったのは、地元の人で賑わうJR日田駅前の寳屋さん。ここで素敵なお弁当が手に入るらしい。
使い勝手が良く、いつも地元の人で賑わっているようです。 4階建てで広いお店は、大き過ぎて全貌が写真に収まりませんでした。
あ、「きこりめし」のポスターが張ってある!とってもキュートな男性ですね。
満面の笑みを浮かべる男性
- そのポスターの男性も僕の同級生です 笑 きこりめしは、林業を守る為に作ったお弁当なんですよ。
僕や佐々木さんもメンバーで活動してて……
- きこりめしとは
- 日田の林業を守り、町を活性化する目的で発足した会“ヤブクグリ”が、林業PRと活動資金の蓄えにつなげようと開発したお弁当。しかし美味しさを追求したため材料費がかかり、なかなか活動資金は貯まらないらしい。
寳屋の佐々木さんはメンバーの中で、きこりめしを作る係なのだ。 原くん、きこりめし作っといたよ。
- 原さん ありがとうございます!
うちの上で食べたらお味噌汁出すよ。
- 原さん あぁ……あったまりたいんですけど、せっかく晴れたし、三隈川見ながらピクニックしようと思って。
…原くん、外は寒いよ……。
- 原さん ですよね!笑 まぁ、じゃあ、寒かったらまた戻ってきますんで……。
- 寳屋代表佐々木さん うん、おいで。とりあえずいってらっしゃい。笑
いってきます!
素敵なパッケージのきこりめしを受け取って、川べりに向かいます。
- 筑後川の上流三隈川は、とにかく太くてごうごうと豪快に流れています。
日田の人は、みんなこの音を聞いて育ったそうなので、ソウルリバーといったところでしょうか。 豆田町に続き、また高校生を発見。今度は自転車で橋を渡っています。
- ソガ ここ、広場になってるんですね。
- 原さん アーティストのライブなんかも開催されることがあるんですよ。川の側まで降りてみましょう。
- 気になる案内板を発見。夜間ここで釣りをすると釣り具を没収されるらしい。罰金よりダメージが大きいかも知らない。日田漁業協同組合はやり手です。
- ソガ ピクニッククロス持ってきたので、広げてみましょうか。
……やっぱ寒いですね。
- ソガ そうですね……せっかくピクニック気分だったので、お弁当だけ広げてみましょうか!
じゃーん、これがきこりめし。わっぱは日田杉で作られていて、日田杉をイメージしたごぼうがドカンと入っています。付属の木製ノコギリで、ギコギコとごぼうを切って食べます。ごぼうは太くて、とってもホクホクしていました。
- ソガ まー!かわいくておいしそう!何となくですけどピクニック気分は味わえましたね。
……じゃあ、寳屋さんに戻りましょうか。
ちょっと寒過ぎましたね……。
- 子どもの遠足ならもう少し寒さを我慢できるところかも知れないが、車もあるし、寒さは身体に堪えるし。ということで楽しいはず(?)のピクニックを放棄し、二人は暖かい屋内、寳屋さんへあっさり退散。
- 日田小ネタ
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(左)水が満ち満ちているはずの三隈川に穴があいている! そして人が歩いている!
なんでも昔は川の中に土手があったそうで、川の水量を減らして調査をしているらしい。
(右)半世紀ぶりの土手出現で、観覧席が設けられていた。
すっかり体の冷えた二人はきこりめし弁当を持って寳屋さんの2階へ。
- ソガ お店の前に、チャンポンって幟が立ってましたね。寳屋さんって、チャンポンがおいしいんですか?
- 原さん すごくうまいですよ。味も種類があって。佐々木さん中華出身だから。
ふうん……。チャンポン、食べたいな。
- 原さん 僕もちゃんぽんでも良いなって思っていたところです。あ、きこりめしお土産にして、チャンポン食べちゃいます?体もあったまりそうだし。
- ソガ いいですか!?せっかく寳屋さんに来て、おすすめがあるならそれも食べたいですもん。 きこりめしは、持って帰って美味しく頂きます!
- 原さん じゃあ僕は味噌チャンポンにしようかな。小でもかなりボリュームがありますよ。
そしてふたりはチャンポンを注文。とっても嬉しそうです。
- ソガ それにしても寳屋さん、メニューが豊富ですねぇ。お寿司も握ってくれるんですね。
- 原さん 鮎料理も出してくれるし、いいお店なんですよ。1Fはすっと立ち寄れる定食屋さんって感じだけど、僕2Fが好きでヤブクグリのメンバーと集まったりしてます。部活の集まりで学生もきてますよ。その上は宴会場だし、集まれる場所があるって意味で日田の人にとってはありがたいお店です。
コーヒーまで出して頂いて、すっかり寛ぐ二人。
- ソガ はーおいしかった!
- 原さん 次は日田の建物を色々見て回りましょう!
- 焼き物の里をディープに楽しんでお腹も満たした二人はいよいよ本領ならぬ天領発揮! なスポットを巡ります。
でも天領っていうけれど、他の町とどう違うんでしょうね。旅の後半次は大正6年に建てられた蔵を改装したカフェからスタート。