博多まちづくりミートアップ

訪日観光客に選ばれる博多に!博多に暮らす・働く私たちがこれから取り組むべきことを考える 〜ミートアップvol.29レポート前編〜

藤城 昌人 Masato Fujishiro

有限会社フクオカ・ナウ 取締役・ゼネラルマネージャー
サーズ 恵美子 Emiko Szasz
福岡出身。九州福岡に関する情報やネットワークを英語ネイティブへ橋渡し。福岡を拠点に、九州を知る国際派としての視点で、情報発信と編集を得意とし、企画立案、プロデュース、プロジェクトの責任者としてマネジメントを担当している。
Fukuoka Nowでは、WEBサイトやSNSなどを活用し、在住&来福外国人などに向け国際人視点のシティ情報の発信を行っている。


「まずは乾杯しましょう!」

ゲストの朗らかな声とともに、参加者一同ワインを掲げて乾杯から始まった今回の「博多まちづくりミートアップ」。さまざまな事業を行う方をゲストに招き、その取り組みを通じて“博多のまち”について対話をしながら、「これからの博多のまちづくり」を考えるトークイベントです。今回29回目を迎えましたが、「乾杯」の掛け声で始まったのははじめてのこと。実は今回のゲスト、サーズ恵美子さんのアイデアです。


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サーズ恵美子さん(中央)と、インバウンド対応が多い企業・職場で働く皆さん。左から、キャナルシティ博多の河野雄亮さん、グランドハイアット福岡の関美由紀さん、博多駅総合案内の業務を担当するJR九州の武本由理さん、JR博多シティの鮓本敬太さん

恵美子さんは、有限会社フクオカ・ナウ取締役・ゼネラルマネージャー。在住&来福外国人の皆さんに向けて、国際人視点のシティ情報を発信する「Fukuoka Now」を運営しています。今回は恵美子さんを中心に、多くの訪日外国人と触れる現場で働くみなさんを交えながら、「博多のまちとインバウンド」について考えました。

上澄みではなく、本物の福岡を大切にしてくれる人へ発信する

岸本さん(以下、岸本):
みなさんこんばんは。司会進行の株式会社ダイスプロジェクト岸本です。今回は、「訪日観光客に選ばれる博多に」というテーマで恵美子さんをお招きしましたわけですけれども……。何回か事前に打ち合わせをした際に「私、インバウンドって言葉嫌いなのよね」とおっしゃられていて、衝撃を受けました。

恵美子さん(以下、恵美子):
私たち「フクオカ・ナウ」は、1998年からフリーペーパーを毎月発行し、オンラインにて情報発信していました。2020年5月からは主要メディアをWebに移行しましたが、紙媒体のころから心掛けていたのは、「フクオカ・ナウは、交流の場である」ということです。

「フクオカ・ナウ」は、もともと我々の編集長であるニック・サーズが「福岡ではみんなどこで遊んでいるの?どこで仲間と出会っているの?何を見たらそんな情報が手に入るの?」という思いがあってスタートさせたもの。単なる情報発信ではなく、「情報を求めてくれる人たちが集まる場・楽しんでくれるサービス」を提供してきました。

外国人視点での遊びの情報・おでかけ情報は紹介しますが、それを見て集まってくれるのは外国人だけじゃない。「訪日外国人」ではなく、「一緒に楽しんでくれる人たち」というカテゴライズで、私たちは「国際人」という言い方をしています。国際的な視点を持ち、まちを楽しくするため、集まってくる人の生活をちょっと魅力的にするための情報を発信し、サービスを紹介するのが「フクオカ・ナウ」です。

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一方で、福岡九州のニュースを国際人視点でタイムリーに発信するということも大切にしています。英字新聞や外国人向けのニュースメディアはありますが、九州の情報に特化してタイムリーに出してくれるところってないんです。そこで私たちが、住んでいるまちのリアルが分かる情報、つまり一般の日本人が見ているような九州のニュースを英語でタイムリーに発信しています。

みなさんの中には、訪日観光客のためにインフルエンサーを呼んで紹介してもらおうと思う方もいるかもしれません。その情報がきっかけとなって福岡に来てくれるのはもちろんいいんですけど、でもそれは日本語に長けていない人たちが、上澄みを拾って発信したもの。本当に博多・福岡のことを知っているかというとそうじゃない。地元の歴史・文化を知り、大切にしてくれる人たちに向けて配信したい。だから、「インバウンド」というマーケティングの流行に乗っかるのではなく、ちゃんと考えて、自分たちが好きなものを紹介していこうと我々は考えています。

岸本:
日本人もそうですよね。少し前までは大手の旅行情報誌を見て、旅を楽しんでいたけれど、現代はそういった旅行は飽きられている。フクオカナウは外国人向け観光パンフレットみたいなものとは、根本スタンスが違う。福岡の本物を発信することで、福岡の魅力にちゃんと触れていただくきっかけになるっていう思想そのものが強いんだと感じました。

押しボタン信号機が分からない…。外国人にとって現状は「生活に困るまち」

恵美子:
日々現場で何がおきていて、私たちはどう対処していけばいいのでしょうか。特に博多駅の観光案内所に勤務する武本さんは、日々たくさんの外国人のお客さまがご相談に来られると思います。どのようなお問い合わせが多いですか。

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武本:
立地柄、駅構内のお尋ねはもちろん多くあります。案内サインがわかりにくいのか、大きく掲示しているのにもかかわらず案内所にいらっしゃる方は多いです。もっと英語表記を大きくするなど、日本語が読めない人にも伝える工夫をする必要があるのかなと感じています。

恵美子:
例えばトイレに入って、日本語が読めない人はどのボタンを押したら水が流れるか分からないですよね。TVやエアコンのリモコンも全部日本語で書いてあるから分からない。以前、出社した際に夏なのに暖房が入っていた時があったんです。外国人スタッフが、日本語が読めずに間違えて暖房を入れていたんです。それこそ、日本語だけのまちのサインとなったら分からず迷うし、生活もすごく困るというのが日本の状態だと思います。

キャナルイーストの近くに信号機がある横断歩道があるんですが、ときどき人が立ち止まって溜まっているんです。実は、そこの信号機はボタンを押さないと青にならない押しボタン式。でも押しボタン式信号機に慣れていない外国人旅行者は、そこで信号が変わるのをじっと待っているんです。

私たちにとっては日常なので気づかないけれど、よく観察してみると「あそこが分からないのか」みたいな盲点があって、その案内が足りていないから、観光案内所に問い合わせがあるんですよね。ホテルではどうですか。

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関:
お部屋にあるテレビのリモコンのサインやエスプレッソマシーンの使い方は、以前は日本語と英語表記だけでした。館内や客室内の細々したものに対して、韓国語、中国語をはじめとする言語対応を今までよりさらに拡充するっていうことが必要になってきています。

またお客さまのお問い合わせ内容自体が、基本的な問い合わせ内容だったものが、ニッチなところに広がっていると感じます。例えば地元のレストランなども、ときに我々スタッフよりもご存知で、予約をしてお越しになる海外のお客さまはとても多いです。福岡市内だけでなく、福岡からどこかに足を伸ばす方も多く、レンタカーの御用命も多いです。

外国語が分からないから消極的に。「カジュアルさ」が、もっとあってもいい

岸本:
商業施設で多いお問い合わせの内容はお買い物に関することでしょうか。

河野:
さまざまですね。キャナルシティ博多は、複雑な構造になっているので、館内案内に関するお尋ねは多いです。残念ながらお叱りを受けることもいっぱいあります。案内所だけでなく、各ショップのスタッフの対応力が必要なシーンがたくさんあり、我々としても課題を感じることはあります。

岸本:
あれだけお店があると、全店舗に外国語ができるスタッフはいませんよね。どう対応されているのですか。

河野:
正直なところ、外国語を話せるインフォメーションの方に頑張っていただいているのが現状です。でも、そういった人材の確保も大変ですね。

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鮓本:
JR博多シティは駅併設の商業施設なので、公共交通機関に関する質問や観光地へのアクセスなどの問い合わせが多いですね。特に改札に近い低層階のショップは、インフォメーションセンターに行くより近いということで、お問い合わせを受けることが多くあります。そこで、よくあるご質問については回答をまとめてラミネート加工したものを店舗に置いていただき、お問い合わせがあった際はそちらをお見せいただくようにしています。

恵美子:
ちょっと前にヨーロッパを旅行していたとき、大学生らしき若い女の子たちが、広場で臨時のインフォメーションブースを作っていたんです。地図が置いてあって、行くと何か教えてくれる。オフィシャルな雰囲気もあるんですけど、そんなにきちっとしていない、でも地元の女の子たちから楽しく話が聞けるっていう。そういうカジュアルさみたいなのも、まちにはあっていいのかなと思いました。

岸本:
気軽さが足りていないのかな。日本人同士で道を聞かれた時は、間違えたら「あ、ごめん」で済むのに、外国人に聞かれたら「ちゃんと伝える自信がないから、無理」って思っている人が多い気がします。「通じないけど、まあいいや」っていうくらいでコミュニケーションができるようになったほうが、ハッピーじゃないかなって思います。

 

 

後編へ続く >>


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