博多まちづくりミートアップ

お土産からみる博多の魅力〜ミートアップvol20レポート前編〜

鐘ヶ江理恵 Rie Kanegae

JR九州リテール株式会社 常務取締役執行役員
鐘ヶ江理恵 Rie Kanegae

1997年にJR九州に入社。財務、経営企画(新規事業、グループ会社経営管理)を担当後、2018年からJR九州リテール株式会社へ出向。取締役常務執行役員として博多銘品蔵博多口店のプレミアムコーナーの新設、全国各地の有名メーカーとのコラボ商品など新たな挑戦を続けている。

礼 Rei Ike

博多菓子工房二鶴堂 営業三課次長
礼 Rei Ike

北九州エリア、直営店担当を経て、現在は博多駅・小倉駅を中心に九州・西日本エリアの主要各駅売店の営業を担当。近年は商品企画も行っており、地域や企業とのコラボ商品、プライベートブランド商品など多数商品の発売を手がけている。


20回目となる博多まちづくりミートアップのテーマは「お土産からみる博多の魅力」。年間2000万人を超える観光客が訪れる福岡市。人口減少が予測されるこれからのまちづくりにおいて交流人口増加につながる“観光”は重要な鍵を握っています。昨今の観光市場の拡大やSNS等の流行を受け、お土産業界も多様性と盛り上がりを見せています。観光客に支持されている博多のお土産とは?お土産のトレンドとその消費動向からみる博多の魅力について、お土産ショップとお菓子メーカーの方をゲストに招き、語り合います。


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モデレーターの白石氏

白石さん(以下、白石)みなさんこんばんは。司会進行の株式会社ダイスプロジェクト白石です。今回の博多まちづくりミートアップは、博多×お土産をテーマに、いろいろお話をうかがっていけたらと思います。

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会場で配布された二鶴堂の銘菓「博多の女」

白石と、その前に、私の方で簡単に調べたお土産事情をお話させていただけたらと思います。福岡市は、観光客の数がどんどん増えていっておりまして、2016年以降は、毎年2000万人以上もの人が訪れています。その中で訪日外国人に絞って見てみると、1番お金を使っているのが「買い物」、その中でも「お菓子」に特にお金を使っているという統計が出ています。さらに、近年のお菓子業界の動向としては、地域と組んだ商品開発や異業種からの参入なども多く、その新しさから爆発的な人気につながっているといった例が見られます。そんな中で、創業100年を超えるような老舗のお菓子メーカーも数多く存在する博多のお土産事情は、どうなっているのか?そのあたりを探っていけたらと思います。

福岡ならではのお土産の魅力

白石ではさっそくですが、福岡を代表する老舗メーカーのひとつ、博多菓子工房二鶴堂の池さんにお話をおうかがいしたいと思います。

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博多菓子工房二鶴堂の池さん

池さん(以下、池)博多菓子工房二鶴堂の池と申します。本日はどうぞよろしくお願いします。弊社は、もともと千鳥屋で働いておりました創業者の橋本富市が「消費者の方に喜んでいただける、お菓子屋をつくりたい」と、昭和27年に中洲で創業いたしました。代表作は今みなさまのお手元にございます「博多の女」です。昭和47年に発売し、その3年後の昭和50年、山陽新幹線が博多まで開通したのを機に爆発的にヒットいたしました。そして、平成8年に「はかたポテト」、平成22年に「博多バームスティック」を発売しました。この3アイテムが弊社の主力商品となっておりまして、ほぼ同等の売上となっております。

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近年力を入れているのが、CMキャラクターと商品をリンクさせることです。「博多の女」は『ももち浜ストア』のうどんMAPでお馴染みの岡澤アキラさん、「博多ぽてと」はパパイヤ鈴木さん、「博多バームスティック」は福岡県出身の女優・福田愛依さんを起用しています。

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そのほか、名探偵コナンなどのアニメ、乗り物や観光地など、さまざまなコラボ商品も開発しています。

白石二鶴堂さんの取り組みについてもうかがってもよろしいですか?

お客様のニーズをつかむこと、そして販売促進に力を入れています。“ニーズをつかむ”とひと口にいっても、時代の流れが早い昨今では決して容易なことではないんです。“いくらくらい”の“どんなもの”を“誰に”買うのかをお客様にアンケートをとって調査しているのですが、昔だったら旅行や出張にでかけたら、ご近所さんや会社にお土産を買うというのは当たり前のことでしたよね。最近では、会社にお土産を買わない、はたまた、自分用の土産を買うといった新たなお土産文化が生まれてきているんです。それらを察知し“何個入り”で“どういった包装”で“いくらくらい”の商品がいいのか、というのを考えなければなりません。また、これは完全に私の主観なのですが、味が濃く、甘いか辛いかがハッキリしているものが好まれる傾向にある気がしております。

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次に、販売促進でいうと、CMキャラクターにプラスして、駅の広告や看板広告、ウェブ広告、デジタルサイネージなどにも取り組んでいます。そのほかコラボ商品などでも知名度アップを図っています。せっかく新商品を開発しても、知ってもらえなければ意味がないですからね。先程白石さんがおっしゃっていたように、福岡には老舗のお菓子メーカーが数多く存在します。他県に営業に行っても「福岡には銘菓と呼ばれる商品がたくさんあって、本当にすごいですね」って言われるほどなんです。だからこそ、どのメーカーも工夫をこらして努力しているんです。それが博多のお土産の魅力のひとつになっていますよね。

顧客ニーズを分析し売上をアップ

白石お土産を生み出している側の視点として、池さんからお話をうかがいました。続いて、お土産屋さん側からの視点ということで、鐘ヶ江さんにお話をうかがいたいと思います。

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JR九州リテール株式会社の鐘ヶ江さん

鐘ヶ江さん(以下、鐘ヶ江)JR九州リテール株式会社の鐘ヶ江と申します。私、実はJR九州からの出向でして1年半前までは財務部という硬い仕事をしておりました。その前は経営企画…そんな畑を20年歩んできて、突然このポジションにつきました。だから今日はどこでボロが出るか、自分で自分を試してみたいと思います(笑)。

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鐘ヶ江私がおりますJR九州リテールは、JR九州グループの100%子会社です。事業としては、ファミリーマート北部九州でエリアフランチャイザーとして店舗展開をしているほか、お客様と九州をつなぐお土産セレクトショップ「銘品蔵」や、博多座の中のお店「博多座 雅」、九州の駅構内で小型店の「ユニクロ」の運営、自動販売機の設置運営、ファッション・コスメ事業など、幅広く手がけております。本日はその中から「銘品蔵」についてのお話をさせていただければと思っております。

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鐘ヶ江銘品蔵は九州に17店舗を展開しておりまして、主に博多地区に集中しております。取扱商品の内訳は、お菓子が7割、食品が2割、雑貨や鉄道グッズ、駅弁、飲料などを扱っています。博多駅内には6店舗ございまして、博多口店が敷地も1番広く旗艦店となっております。そのほか、10坪ほどの小さなものが2店舗、デイトスの中に2店舗、新幹線改札内に1店舗です。それぞれお店ごとに性質がございまして10坪ほどの店舗は、急いでお土産を買ってサッと列車に乗りたい方向けの売り場で、商品を厳選して販売しております。デイトスの店舗は若者向けにポップでインスタ映えするようなアイテムを、新幹線改札内の店舗もわりとこじんまりしておりまして、定番商品を中心としたランナップになっております。

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鐘ヶ江博多口店はもともとキヨスクでした。駅内にコンビニも当たり前の時代になってきたしキヨスクから脱皮して「もっと九州のお土産を売っていくのが我々の使命なんじゃないか」と考えて、お土産セレクトショップに変えようという話になったわけですね。そのため、おにぎりやパンなどの販売をなくしてお土産を重点的に販売するように変えました。そして、バラバラに配置されたレジを真ん中に集中させ、買い回りしやすいように通路幅を広げました。それが2015年のお話です。

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鐘ヶ江その後、私が銘品蔵の担当になってから、1番目立つところに人気の商品を定番に置くのをやめて、1ヶ月ごとに商品を変えていこうという方針になったんです。それが、「お、商品が変わっているぞ」と、立ち止まっていただくきっかけになっているようです。

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鐘ヶ江そして、観光のお客さまだけでなく地元のお客様にご利用いただいているのだろうか?と、いう疑問から、買い回りの際にスルーされがちな柱周りの場所のターゲットを思い切って変更したんです。大切な方へのお手土産、親しいご友人への贈り物、家族でのお祝いのおとも、自分へのご褒美…というのを想定し「プレミアムコーナー」と名付けて打ち出すことにしました。鹿児島の梅月堂のラムドラや、松屋利右衛門の鶏卵素麺、IMURIのチーズケーキなど、博多駅から足を伸ばさないと買えないものを集めました。また甘いお菓子だけではなく、おもたせにもぴったりな漬物やおつまみもそろえました。


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