博多まちづくりミートアップ

和の博多! 伝統工芸を身近に楽しむ新たな一手〜ミートアップvol8レポート後編〜

異色の郷土玩具専門店・山響屋

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白石では本日のもう一人のゲストをご紹介します。山響屋(やまびこや)の瀬川さん、よろしくお願いします。

瀬川さん(以下、瀬川)みなさんこんばんは。福岡市天神の今泉で、郷土玩具の民芸品をやっています。お店では、全国の郷土玩具を400種類、約1500個を取り扱っています。

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瀬川さん

白石瀬川さんは、だるま絵師さんでもあるんですよね。

瀬川そうですね。絵は好きで描いてはいましたが、絵描きになろうとは思っていませんでした。それがある時ひょんなことから「だるまの絵付けをしてみないか」と言われて。

白石だるま絵師という言葉自体初めて聞く方も多いと思います。例えば博多人形の場合は作り手と彩色する方は同じですよね。だるまの場合は違うんですか?

瀬川はい。僕たちの場合は白いだるまを作っていただいて、それを元にお客さんと話し合ってデザインを決めて絵を付けるという流れです。

白石オーダーメイドだるまですね。だるま絵師だった瀬川さんが、どうして郷土玩具のお店を始められたのですか?

瀬川僕にとってだるまって選挙のイメージしかなかったんですよ。だけど絵付をはじめたことをきっかけに、だるまってそもそもどんな顔なんだろう……と思うようになって。だるまって、つるんとしていて目もまんまるでしょう。髪が伸びたり目をつぶったりするような、市松人形的な怖さがまるでない。その縁起の良さそうなところって、郷土玩具全般に通じているんですよね。そこに魅力を感じて、郷土玩具の世界にのめり込んでいったんです。

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瀬川さんが福岡市中央区今泉にある山響屋の店内には、九州各地の郷土玩具が所狭しと並ぶ

白石とはいえ、こんなにたくさんの郷土玩具が今泉の片隅に並んでいて、しかも店として成り立っている。さきほどの話に出てきましたが、逆風が吹く伝統工芸の世界で民芸品を扱っていてどうですか? クラフトというかオブジェというか、気軽な感覚で買うのかな?

瀬川気軽さは打ち出しているつもりです。「これはどこどこの誰々がつくった」というよりも、シンプルに見た目の可愛らしさとか、縁起物としての役割を知っていただいて、贈られた人が喜んでくれるんじゃないかというところまでを考えていただけるといいなあとお客さんと接しています。

白石なるほど。「伝統工芸品を買おう」という感じというよりは、「かわいいから買おう」という雑貨のような気軽さがあるわけですね。でもだるまってどんなときに買うんですか? 「さあ、今日はいいことあったからだるま買おう」とはならないじゃないですか(笑)。

瀬川同じことは、店をオープンする時に結構聞かれました。僕としては、誰かへのちょっとしたお祝い、福岡を離れる方へのお土産、新しいお店を開ける方への商売繁盛のお祝いとかがいいんじゃないかと思いますし、実際にそういう方が多いんじゃないかと思います。

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山響屋の店内には、瀬川さんが制作中のだるまも数多く並ぶ

白石瀬川さんが絵付するだるまはどうですか? どういう方が買いに来られるんですか?

瀬川自分たちの願いを叶えたいとか、お祝いをしたいというごく普通の気持ちがあって、縁起物としてのオリジナルのだるまが欲しいという方が多いですね。

白石ありがとうございます。

伝統工芸の”次の一手”とは?

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白石独特な世界で生きていらっしゃる瀬川さんですが、八田さんと太和田さんからみて、伝統工芸の”次の一手”を考えた時、こういった民芸品の方をどう思われますか?

八田一般的な民工芸品は、作家がだるまの絵柄を変えるようなことをしないんですね。創作張子をされる方もいますが、基本的なデザインは決まっています。でも作家自身も次の新しい一手を考える必要があるとは思いますし、瀬川さんの活動はまさにそこを見据えておられるんじゃないでしょうか。でないと、すでに一体持っている方が「もう一体欲しい」とは思わないんですね。そう思わせるためには、こちら側が仕掛ける必要がありますから。瀬川さんは、工芸館でも作品を販売してくださっているんですが、作家さんのモチベーションが上がっているのを感じています。うちは”だるまフリーク”のお客さんも多いですし、特に若い方は刺激を受けているようです。

白石あとは入り口の広さを考える。例えばだるま屋さんに行ったところで同じデザインのものばかりだと身構えちゃいますが、あれだけ色々なデザインがあると、どれにしようかなと楽しみたくなる。

太和田瀬川さんの作品はアートですよ。彼の作品が欲しいという方はたくさんいるでしょう。博多の人形師さんにも、個々の個性を出して注目を集めるような方がいればいいですけれども、そう簡単にはいかないですからね。瀬川さんの才能にはみなさん嫉妬しているんじゃないですか(笑)。

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瀬川さんの絵付けによるだるま。岩田屋での展示販売の様子

白石(笑)。とはいえ、博多人形もそれなりに進化してきた歴史があるわけですよね。時代の節目節目には攻めのデザイン性を感じますしね。それを進化と捉えて、目に見える形であるとすれば、瀬川さんのような形なんじゃないかという気がしています。

太和田山響屋さんには外国人のお客さんもいらっしゃいますか?

瀬川はい、今日もフランスの方が来ていましたし、とくに最近増えてきています。

白石インバウンド面で言うと、海外の人にその土地の良さを伝えようとするとき、その土地が持つ文化や魅力を掘り起こして再確認する作業が必要になると思います。それもまた、工芸品をあらためて認識できる良い機会になると思います。

会場も交えて

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〈ミートアップの後半には、参加者が4〜5人ほどのグループに分かれてのディスカッションを行いました。テーマは「2020年、東京オリンピックの年に来訪予定の外国人の数は実に4000万人。その時、福岡の伝統工芸が外国人により受け入れられる可能性のあるアイデアを考える」。こういう伝統工芸品がこんな風になっていたら面白いな、こんな動きがあったらいいなということを話し合っていただきました。次々に飛び出したユニークかつ戦略的なアイデアの一部を以下に紹介します〉

*行政が補助金を出して作家の育成にも取り組む
*SNSを用いて伝統工芸そのものの認知度を高める
*作家同士のコラボレートや、伝統工芸をコーディネートできる人材を集める
*真面目に向き合うのは大事だが、あまり気負わない姿勢をつくりたい。ふらっと店や展示に来た人が、その日の気分で工芸品を買うなどの気軽さも欲しい
*外に向けた広報活動だけじはなく、まずは地元の人が福岡の伝統工芸を好きになることで、より外国人に伝えられるのでは
*玄関や居間に飾るだけの博多人形ではなく、持ち歩いたりできるような多様性も今後大事になってくるのでは
*ドラマや漫画で伝統工芸のことを取り上げる
*福岡の街に来たら、どこに行っても目に付くようなものとして位置付けていく

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最後に

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白石本日は大変興味深いお話をありがとうございました。最後に一言ずつお願いします。

八田ありがとうございました。みなさんの色々なご意見と同時に、こんなに興味をもってくださる方がおられるということが嬉しかったです。今後も福岡のまちを共に盛り上げていく人たちを増やしていきたいと思いますので、ご協力お願いします。

太和田福岡の工芸品って海外ではあまり知られていないので、今後は博多の伝統工芸品をどのように広げていくか、その新しい”売り方”を考えていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。

瀬川民芸品、伝統工芸品の認知度をどう高めるかということを自分なりに考えて見ますと、まずは自分がどの工芸品のどんなところが好きなのかということをきちんと知って、そのポイントを地道に少しずつ広げていくのがいいんじゃないかと思っております。僕自身、絵付や店舗を通して、今後も民工芸品の魅力を少しでも多くの人たちに伝えていきたいと思います。今日はありがとうございました。

白石みなさん、ありがとうございました。

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