RethinkFUKUOKAProject

お気に入りは「買う」より「作る」時代へ 3人の匠が誘う「モノづくり」の世界へ飛び込もう!


ReTHINK FUKUOKA PROJECT レポートvol.33

アナバナではReTHINK FUKUOKA PROJECTの取材と発信をお手伝いしています。

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欲しいデザインがあっても条件に合うモノが見つからない時、大事な人への贈り物を選ぶ時、「いっそ自分で作れたらいいのに」と思う事はありませんか?
ひと昔前なら、初心者が始めるにはハードルが高かったハンドメイドの世界も、今では便利な道具や施設も増え、気軽にチャレンジできる環境が整ってきているのです。

そこで今回は、3Dプリンターやレーザーカッターなどを備えたデジタル工房「ファブラボ博多」の森本太郎さん、数多くのアイデアをビジネス転換につなげるクラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」取締役の坊垣佳奈さん、シルクスクリーン印刷のプロとしてワークショップやパフォーマンスも手がける「OIL MOUNT PRINTERS」代表の日高太一さんをお招きして、福岡のプロダクト事情についてお話をお聞きします。司会は、最近モノづくりに目覚めつつある「福岡テンジン大学」副理事長の山路祐一郎さん。

自分には無理と思っていた人も、明日から「何を作ろう」とワクワクしてしまう、モノづくりの世界をのぞいてみましょう!

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気軽に使えるデジタル工作機械工房で
福岡のDIY環境がもっと便利になってきた!

山路 今回のテーマは「2017年をあなたのモノづくり元年にしよう」です。ゲストのお三方が提案するモノづくりについて聞いてみましょう。まずは森本さんからお願いします。

森本 今年3月にレーザーカッターや3Dプリンターなどのデジタル工作機械が使えるシェアリング工房「ファブラボ博多」を設立しました。今までのDIYと違い、パソコンで作ったデータを元に機械が作業してくれるという感じですね。まだ認知度が低いので、ワークショップを毎週企画、いろんなアーティストの輪を繋ごうと、コラボ企画も始めました。箱崎のワッパ(博多曲げ物)を使ってコースターを作ったり、LED付きのスピーカーを作ったり…。

山路 このデザイン(※1)、プロっぽいのですが、素人にもできるんですか?

森本 できます! モノづくりの面白さを広めたいと考えていますので、ワークショップにもどこかにオリジナリティを付けることで「自分が作った」と言えるものを考えているんですよ。また、スタッフは専門知識を持つデザイナーで構成されているので、初心者の方の相談にも乗る事も多いです。福岡のDIYはまだまだこれからですが、今後はクリエイターにとって活動しやすい環境ができてくるのではと期待しています。

(※1)スライドで紹介されたLED付きスピーカーのデザイン。こんな感じのデザインです【オリジナルキューブスピーカーをつくろう!】

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世界とつながるクラウドファンディングと
人とつながるワークショップの魅力とは…。

山路 なるほど。では次に坊垣さんのお仕事を教えてください。

坊垣 私は、もともと携わっていたインターネットの利便性とスピード感を使って他の分野を変えられないかと思って、その時にクラウドファンディング(※1)に出会い、「Makuake」を立ち上げました。このサイトの仕組みは、お金を出してくれた人に対して、モノや権利で返す事。例えば、最近増えているのは飲食店の開業。1万出してもらえば、開業後半年間何度来てもビールがタダみたいな返し方をするんです。これだと、お店ができる前からお客さんがいる状態、そこからプロモーションマーケティングの支援もできます。また、個人だと量産化には予算がかかるし、銀行はお金貸してくれない。クラウドファンディングだと、集まった額で需要も分かるし、お金を出してくれたのがどんな人か分析できます。銀行で融資を受けられなくても、クラウドファンディングで実績を残せば、その後にお金を借りやすくなるんです。あと、「Makuake」は、誰でも閲覧できるので、百貨店のバイヤーさんなど流通関係の人もチェックしているんです。新しいモノが常にアップされていて、どんなアイデアがどのくらい支持されているかも分かるので。なので、クラウドファンディングで成功するとバイヤーの目に止まって売れる場所が確保しやすくなる事も多いです。後は、お金が集まった分だけ作ればいいので、作りすぎて在庫を抱えるリスクも減ります。

山路 なるほど! それは魅力的ですね。

坊垣 「Makuake」はビジネスやモノづくりに寄せたのがよかったのか、開設して3年目で一番大きいサイトに成長しました。一プロジェクトの平均の調達額も平均100万を超えています。もちろん、立ち上げ後は担当スタッフが必ず付いてサポート。私が元々PRに携わっていた事もあり、マスコミ関係の方にもツテは多いのでプロモーションが得意なんです。Web記事は月に400件上がっていますし。

山路 「Makuake」は基本国内ベースなんですよね。どんな事例があるのですか?

坊垣 例えば、「白熱球に見えるLED電球」。ここは達成率900%超えで、うまくいきすぎて会社のメイン事業になったそうです。しかも、最初は法人向けを想定していたのですが、フタを開けてみると個人客のニーズが多いという事が分かったんですね。最近話題の「この世界の片隅に」という映画も、最初は制作費も配給先も全く決まっていない状態からスタートされて、「Makuake」で4000万円集めて配給先が決まったんです。映画自体もとても良いのですが、エンドロールに資金を出した2000人の名前が一斉に流れて、それがまた感動するんですよ。

山路 そのお金を出した人がまた映画を見に行くんですね。今までにない切り口を考えた時、身の回りの人には反対されたとしても、世界に発信した時に受け入れてくれる人がたくさんいるかもしれない。

坊垣 そうなんです。共感を得られない事もあるけど、それはどこか改善すべき点があるんですよ。大事なのはまず世の中に出す事。そのファーストステップですね。

山路 ちなみに、九州進出の予定は?

坊垣 次に出すなら九州、博多ですね。半年後か一年後。福岡はIOT(※2)に力が入っているから、相性が良い。飲食店や産業も多いので、お問い合わせも北に比べると圧倒的に多いんですよ。

山路 なるほど。期待ですね! 次は日高さんのお仕事を教えてください。

日高 先の二人に比べると、すごくアナログなのですが、シルクスクリーン印刷をやっています。例えば、Tシャツやバッグ、紙袋とか、木なんかにも印刷可能。いろんな場所でワークショップをやっていますよ。印刷ができたら終わりではなく、例えば刺繍作家さんと組んで、印刷したトートバッグに刺繍の方法を教えるなど、企画も携わってます。この間は原付バイクに道具を乗せて山口でワークショップツアーをやりましたよ。

山路 え〜! これ凄いね!

日高 最高200kmを走破しました。途中に立ち寄ったゲストハウスで急遽開催した事もありますよ。何にでもどこでも印刷できるから、印刷するモノ、デザイン、インクに意味を込めて、縦横無尽に面白い事をしたいと思っています。

山路 日高さんのワークショップは、印刷自体よりも、皆を巻き込んでいくというやり方が今っぽい。

日高 まさに。基本的に印刷を勉強してもらうというより、印刷体験を通してコミュニケーションを取ってもらう。リピートするうちに仲良くなって、興味を深めてもらいたいと思います。

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モノづくりはより簡単に、より楽しく。
3つの壁を乗り越えて、踏み出すなら今!

山路 では最後に、未来の作り手、つまり、僕たちのこれからについて考えてみましょう。森本さんはファブラボ博多と同時にAirbnb(※3)もやっていますよね。その二つに共通するものはあるんでしょうか?

森本 Airbnbの新サービスでは宿だけではなく、体験も提供できるようになりました。ちょうどファブラボ博多でも、モノづくりの楽しい体験にフォーカスを当てているので、その二つをつなげて、ローカルだけではなく、旅人も福岡に滞在しながら体験をするような展開を考えています。自分で手作りするモノには特別な思いもあるし、体験も価値もある。そこが今後伸びていくと嬉しいですね。

坊垣 自分が作れないという人は、自分ではない誰かが実現してくれるというクラウドファンディングもあります。

山路 Makuakeを見ていると、「待ってました!」みたいな企画ありますよね(笑)

坊垣 そうですね。出資したら、自分も参加した気になれるんです。サイトのコミュニケーションページや、購入者を集めてのパーティーを開いて、リアルに感想を聞くところもありますよ。

山路 そうですよね。Makuakeで手に入れるのは量産前の試作品。その感想を伝えるだけでもモノづくりに参加している事になる。

森本 モノづくりを通して出会いが生まれたり、コミュニケーションを深めたりというのがいいですよね。うちでワークショップを企画した作り手さんとマンツーマンで手伝ったファブラボのスタッフとの間に恋が生まれた話もあるんですよ。

山路 え! 素敵な話! 趣味から一歩踏み出すプラットホームにもなっているんですね。

日高 僕はモノづくりをする人に3つの壁があると思うんです。まずはやるか、やらないか、次に人に見せるか、見せないか、そしてプロとして食べていけるかいけないか。今日来られた方は、まず一つ目の壁を突破している訳です。せっかくなので、どんどん挑戦してほしいなと思います。

山路 3つの壁を超えるのは難しいかもしれませんが、一つ越えると違う世界が広がっているはず。皆さんもぜひ一歩を踏み出して見てください。

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子どもと一緒に何か作りたいという保育士さんや、脱サラして広告制作の世界に飛び込んだ方など、会場の皆さんの「何か作りたい」という気概がムンムンに溢れていた今日の会場。森本さん、坊垣さん、日高さんの話を聞いて、盛り上がりも最高潮!多分、この熱気がクリエイターとしての行動力の源になってくれるはず。実際に何かを作るとしても、作る人と関わる事から始めるとしても、2017年をあなたのモノづくり元年にしませんか?

ファブラボ博多…http://fablabhakata.com
Makuake…https://www.makuake.com
OIL MOUNT PRINTERS…https://www.facebook.com/pg/oilmountprinters/photos/

(※1)群衆( crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語。自らのアイデアをネット上でプレゼンテーションすることで、 そのアイデアへの賛同者を集められる仕組み。
(※2)Internet of Thingsの略。世の中に存在する様々なモノに情報・通信機能を持たせ、インターネットに接続、相互に通信させる事。それにより自動認識や自動制御、遠隔計測などが可能となる。
(※3)宿泊施設・民宿を貸し出す人向けのウェブサイト。

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ReTHINK FUKUOKA PROJECTについて
コミュニケーションや働き方、ライフスタイルに大きな変化をもたらしている福岡。新しい産業やコミュニティ、文化が生まれるイノベーティブでエネルギッシュな街となっています。
そのチカラの根底には、この街に魅力を感じて、自らが発信源となっている企業や人がいます。
ReTHINK FUKUOKA PROJECTは、「ReTHINK FUKUOKA」をテーマに、まったく異なるジャンルで活躍する企業や人々が集い、有機的につながることで新しいこと・ものを生み出すプロジェクトです。

 


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