RethinkFUKUOKAProject

ゲストハウスはまちのフロントだ! さまざまな機能を担うゲストハウスの新しい価値観と未来とは?

ReTHINK FUKUOKA PROJECT レポートvol.28

アナバナではReTHINK FUKUOKA PROJECTの取材と発信をお手伝いしています。

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ゲストハウスのイメージって、バックパッカーのための素泊まり宿?そんな印象さえ持たれていたゲストハウスが、ここ数年で大きな変化を見せています。旅行者のためだけのものではなく、さまざまな人の入り交じる新たなまちの交流拠点として、また地域に開いた発信の場として、ゲストハウスはあらゆる機能を果たします。

ReTHINK FUKUOKA PROJECT28回目のゲストは、東京原宿のシェアハウス「THE・SHARE」や金沢のゲストハウス「HATCHi(ハッチ)」を手掛けた株式会社tono・小野司さんと、今秋9月に福岡市六本松に中央区唯一のゲストハウスをオープンさせた「SEN&CO.HOSTEL」の濱口仙太郎さん。福岡テンジン大学副理事長・山路祐一郎さんをモデレーターに、今ゲストハウスで生まれている新しい価値観と私たちの暮らしの未来とをReTHINKします。

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物質ではなく「価値」を共有する
ゲストハウスに流れるシェアの本質

山路 今日のテーマは「なぜ、ゲストハウスはこんなにも変わったのか?」ということなんですけれども、会場のみなさんで最近のゲストハウスに泊まったことがある人ってどのくらいいらっしゃいますか?

(会場 10人ほどが手を挙げる)

山路 半分弱くらいですかねえ。ありがとうございます。では、まずはゲストが手掛けたゲストハウスについて聞いていきましょう。小野さんからお願いします。

小野 はい。僕は少し前までリビタという東京のリノベーションの会社に9年くらい在籍していて、そこで軸としてやってきたのがシェアハウスです。始めたのは8年くらい前なんですけども。最初はシェアハウスって“物質”のシェアをすることだって考えていたんです。お金とか賃料を節約するために場所やものをシェアするというんですね。だけど、どうやらやってみると、これは「価値」のシェアなんだなと。一緒に過ごす時間とか経験とか、そこから発生する人脈とかですね。人生におけるいろんな気づきとか学びをシェアしてるっていう。このことこそが実はすごいことなんじゃないのかって気づき始めて。以来「価値のシェアができる」ということを意識的にやってきました。

山路 なるほど。

小野 ただ、東京だからできるんでしょってよく言われるんですね。確かに物質とか場所のシェアだったら、やっぱり賃料の高い東京でやるのがすごく有利なんですけど、僕らが発見したことってそういうことじゃない、もっと先にある価値なんです。このシェアの知見を地方で何かに展開させたいなと。それでつくったのが金沢のゲストハウス「HACTHi(ハッチ)」です。

山路 3月にできたばかりなんですよね。

小野 はい。ハッチは漢字で書くと出発の地。北陸の旅を楽しむための、そこから楽しい旅が始まる出発の地点ということをイメージしてます。ただ泊まって金沢楽しかったねって帰るんじゃなくて、金沢っていう入り口からその先を旅する。もしくはその周りのローカルの人たちがそこに集まって何かをする、そういう拠点にしたいなと。地元の人と旅行者が混ざって価値をシェアする、そのために宿泊というのは最適な機能だということで、ゲストハウスを立ち上げるに至りました。

山路 小野さんがリビタ時代に手掛けたシェアハウスと、ゲストハウスハッチに込めた思いはつながってるんですね。

小野 そうですね。どちらも「シェアの本質は価値観である」という思いから生まれています。

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ゲストハウスはまちのフロント
小さな宿でもまちにもたらす価値は大きい

濱口 僕は9月にゲストハウスをオープンさせまして。福岡の六本松というところでひっそりとやっています。もともと家業が賃貸をやっていて、築40年くらいの3階建ての建物を改装したところから今日の話のゲストハウスにつながっていきます。「SEN&CO.HOSTEL」は10人部屋と4人部屋の14床なんですけど、ハッチさんは何床くらいあるんですか?

小野 96人泊まれます。

山路 96人!

濱口 すごいですね。それに比べるとうちは小さいですけど、小さい宿ならではのことをやっていこうという思いがあります。

山路 仙太郎さんは「こんな人に来てほしい」っていうイメージはありましたか?

濱口 まだまだ日本だとゲストハウスを知らない方が多いですけど、そんな人に自分ちみたいに使ってほしいっていう思いがありますね。今度イベントで落語をやるんですけど、店の前に落語をやりますよって看板を置いてると、ご年配の方が店が開いてなくても入ってきたりしてですね(笑)それでどんどん席が埋まっていっちゃって。そうやってまちの高齢者の人が、突然まちにできた宿に足を踏み入れるきっかけになったというのはすごくよかったなと。小さい宿なんで、まちの人に普段使いしてもらえるような感じになっていけばいいなと思っています。

山路 なるほど。「まちにひらく」って1つのキーワードかなと思うんですが、ここに泊まった人にまち全体を楽しんでもらうための、まちをみる目線というのはあったりしますか?

濱口 そうですね。うちは1階がカフェになってますが、コーヒー屋さんにもしたくなかったし和食がおいしい店みたいな感じにもしたくなくて。実はどんどん宿の外に出てほしいんです。だからコーヒーも、2〜3分歩いたところにものすごく美味しいコーヒー屋さんがあるから、このコーヒーじゃ満足できなかったらそこに行くといいよってすすめるとか。宿の周辺にないものは遠方でもできるだけ紹介して、できるだけ外に出向いてもらおうと思っています。

山路 そんな機能がゲストハウスにあったら、たとえ初めて福岡に来たとしても美味しいところや面白いところに案内してもらえそうですね。

濱口 そうですね。ホテルのフロントのように、ゲストハウスがまちそのもののフロントになればいいなと思っています。

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ゲストハウスはターミナルにもなる?
これからのゲストハウスが担う役割とは

(ここからは参加者のみなさんも交えてトークが進められました)

参加者Aさん 僕はまだゲストハウスを利用したことがなくて、利用してみたいなという思いはありながらも、勇気をもって行かないとなじめないんじゃないかという不安があるんです。

濱口 いやもう皆さん同じことをおっしゃるんですよ。例えばどんなことが不安ですか?

参加者Aさん ゲストハウスにいる人との、最初の打ち解け方が不安なんです。

濱口 なるほど。別にコミュニケーションをとる必要はないですよ。

小野 うんうん。

濱口 やっぱり一人で旅する方は一人で旅する理由がそれぞれにあるので、話しかけられたくない方もいらっしゃるし。そんなに気張らずに行っていいんじゃないかなと思います。

小野 僕もねえそういう場所にいるの結構苦手で、話しかけないでオーラをすっごい出すんです(笑)。でも話し始めちゃうと結構楽しいんですよね。別になんか話したいからそこに行っているわけじゃなくて、その場所にいたいから行っているわけで。部屋で勉強するのとカフェで勉強する違いみたいな感じで、自然に行けばいいと思いますよ。ゲストハウスをつくる側からしても、しゃべんなきゃいけない状況って絶対につくっちゃいけないと思います。

山路 なるほど。お二人が描く、ゲストハウスの未来像ってありますか?

小野 僕が大型のシェアハウスなんかをつくってきていて思うのは、まちにお返しをするというか、ちょっと社会的な視点も同時に考えなきゃと思ってて。ハッチみたいな大きな物件は一人勝ちするためにあるんじゃなくて、例えばその周りに空き家がいっぱいあるわけですよね。で、今は民泊でそんな空き家が活用できるような社会になってきてるんですけど、鍵の受け渡しとかが結構大変なわけですよ。そのために一人が1日のうち何時間か手間をしなきゃいけないんですけど、ハッチの場合だと近くにたまたま知り合いの民泊の宿があったんで、そこの鍵の受け渡し窓口をやり始めたんです。そうするとその空き家だったものが、生きて宿泊場所に変わるんですね。それが10軒くらいあったとしても大した手間じゃないんです。そういうふうにゲストハウスがターミナル化することで、周りの空き家が生き返ってまちが元気になるっていうことはあると思いますね。

濱口 そうですね。ターミナルや案内所となるゲストハウスがまち単位で1つあると、ものすごくまち自体の価値があがっていくと思います。

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さまざまな体験ができるゲストハウスは、もはや泊まるという1つの機能を越えてまちに溶け込み、旅行者だけではない多様な人と人との化学変化を起こしています。

「誰かにすすめたくなる宿が、これからまちに必ず1つあるような状況になっていくんじゃないかなと思っている」と濱口さん。まちの魅力を掘り越こして発信し、エリアの価値を高めてくれるゲストハウスがさまざまな場所にできることで、あらゆるまちでの日常や旅がすごく楽しくなるのではないかと思います。知らないまちのゲストハウスをめがけて出かけ、行き当たりばったりのローカル旅に身を任せるのも楽しいかもしれません。

次回のトークイベントも楽しみにされていてくださいね。

 

ReTHINK FUKUOKA PROJECTについて
コミュニケーションや働き方、ライフスタイルに大きな変化をもたらしている福岡。新しい産業やコミュニティ、文化が生まれるイノベーティブでエネルギッシュな街となっています。
そのチカラの根底には、この街に魅力を感じて、自らが発信源となっている企業や人がいます。
ReTHINK FUKUOKA PROJECTは、「ReTHINK FUKUOKA」をテーマに、まったく異なるジャンルで活躍する企業や人々が集い、有機的につながることで新しいこと・ものを生み出すプロジェクトです。


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