イベントレポート

一貴山「満生邸」歴史散歩

「感動する日本人の生き方」満生(みついき)邸 歴史散歩&講演会 に参加しました。 糸島市、一貴山駅近くにある満生邸は明治29年前後の建築物と推測される明治を代表する古民家。 先代のお母様が亡くなられたのをきっかけに、現在、その家を守っている満生幸子さん(65)が、「満生邸の魅力を活かした活用法ができないか」ということで今回のイベントが開催される運びとなりました。

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農家だった近世から、明治にかけて大地主となった満生家。広さ約500平方メートル、木造一部2階建ての満生邸は農家の典型の間取りなのだそうです。 玄関を入ると広々とした三和土(たたき)があり、荒神(こうじん)様を祭る飾りかまどが目を引きます。あがりかまちも高く、普段の生活の中でも自然と運動量が多くなる造りになっています。おかげで満生家は代々長生きなのだそうで、先日93歳亡くなったお母様も、亡くなる直前まで自力で動いておられたそうです。 そんな風に先祖代々、元気に長生きできたのはこの家とともに昔ながらの生活してきたからなんだと満生さんはおっしゃっていました。

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今回のイベントは2部構成になっていて、 1部の「満生邸周辺散歩・満生邸公開」では、古代の遺産である「一貴山銚子塚古墳」と、近代の遺産である「満生邸」を中心に、神在(かみあり)・田中集落を糸島ふるさとガイドの方達のナビゲーションで散策しました。

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まずは満生邸すぐ隣りにある、国指定史跡 一貴山銚子塚古墳へ。玄界灘沿岸では最大の全方後円墳です。もともとはこの古墳も満生さんの土地だったと言います。昔は古墳のある森でお弁当を食べたり、木登りをしたりと自然とともに過ごした思い出の場所なのだそうです。kofun02 林を抜けると遠くに二丈岳、そして電線の無い里山の風景には日本の原風景を見る事ができます。また土塁や堀で村を囲んでいる風景も残っています。村を外敵から防御した中世の名残だそうです。

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参加者は地元のご家族、近所の住職さん、糸島に嫁いできたお母さんと赤ちゃん、福岡市内からこられた老夫婦や会社員などなど、世代を超えたおしゃべりに華が咲きながらの散策です。

熊野の神社

熊野の神社

街道沿いの風景は、かつて唐津藩主が参勤交代に使った唐津街道。この周辺には未だ、街道の風景が残っています。

約2時間近くの散策も糸島ふるさとガイドの方達の楽しいお話を聞きながらだとあっという間でした。 散策の後は、2部の「白駒妃登美歴史講演会」博多の歴女、白駒妃登美さんの歴史にまつわるお話です。

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女性ならではの視点で語られる歴史の話は、日本人のDNAから乳母の云われ、邪馬台国糸島説まで多岐に渡ります。研究者じゃない白駒さんならではの発想で引き出される歴史の話に、参加者達は熱心に耳を傾けていました。

 

今回のイベントを企画運営した油機エンジニアリング(株)代表取締役 牧田隆社長は、「地域の財産である建築物を、自然や地域に根ざしたイベントの場として体験してもらう事で、今後の活用方法に繋がれば」と語っていました。大きな民家は個人での維持が困難なことから放置されたり、解体されて失われていく場合が多いのだそうです。 油機エンジニアリング(株)は建物の解体に関わる事業を行っており、解体現場より焼却処分される梁や柱、板や建具などを手入れして販売している会社です。前原商店街の築約110年の町屋の解体依頼を契機に、壊さずに活かす方向へと事業は変化したそうです。(その町家は現在「古材の森」という飲食店として油機エンジニアリング(株)が運営しています)満生邸でのイベントを通して日本人の生き方、歴史が体感出来る活用法への気づきにもなればとの想いも語ってくださいました。

今回の満生邸周辺は、豊前中津領と幕府直轄領、対馬領が複雑に入り組んでいた場所であり、古代から近代の歴史的景観が残る貴重な場所。広大な田園地帯、電線一本も見えない里山の風景など、景観の移り変わりを感じていただける素晴らしい地域でもあります。そんな立地にある満生邸を、様々な方の力で良い方向へと活用できたら、と油機エンジニアリング(株)の社員であり、イベントの運営を担当されていた有田和樹さんがお話されていました。
建物にだけ注目するのではなく、周辺環境を知ることが地域の財産として建物を生かすことになる。そしてその建物が地域のシンボルとなり、人と人を、今と昔を紡いでゆく場所へと成長していくのだと感じました。今回のように地元企業がバックアップする事で、土地の歴史、自然、人々、様々な地域の財産を掘り起こすきっかけにもなります。 福岡の中心街、天神から電車で約40分たらずの一貴山駅、今ある風景と歴史を感じさせる建物を通して、地域や人との関わり方を考える、ちょっとした小旅行のような一日になりました。

(とよだ)


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