2015.09.25(金)
オンラインとオフラインで同時展開
和泉 作品を作るようになって、どこで発表していたんでしょう?
梅田 SNSの「mixi」ですね。僕は2006年にmixiを始めたんですが、最初は同級生とコメントをやり取りする程度の使い方でした。それから2~3年後に「スーツ姿の男性にグッとくる会」というコミュニティを知ったんですが、それがすごい人気で。今では10万人を超えるコミュニティになっています。
和泉 そんなに!
梅田 ええ。その中に「俺のスーツ姿にグッとこい」という、かっこよくスーツを着た男性が自撮り写真をアップするスレッドがあって、そこに僕も投稿したんです。正統派のかっこいいスーツ写真が並ぶ中で、僕の写真は異質だったので、何件かコメントをいただいて。
和泉 それから徐々に注目が集まっていったんですね。
梅田 作品を広めるためには、不特定多数の人の目に触れる場所に置くことが大切ですけど、ポンッとネット上に置いただけではなかなか話題になりませんよね。mixiのこのコミュニティは、スーツ好きの人が毎日たくさん見に来ている場所だったので、そこに投げ込めたのは大きいですね。理想的な置き場所でした。
和泉 そこから、オンライン上だけでなく、カフェなどでの個展にもつながっていくんですね。
今年の7月に「アートエリア asi-para(アジパラ)」で行われた個展。「九州の山間部に生息する、野生のサラリーマンの生態に迫る」という内容の写真展で、9日間で計170名の来場者があった。
梅田 ええ、オフラインでのプロモーションも大切ですよね。僕の場合は、知り合いが参加していたグループ展を見に行ったカフェで、オーナーさんと話していたら、僕の写真展もさせてもらえることになって。カフェだと写真目当てで来たわけじゃないお客さんにも見てもらえるので、広がりがあります。
和泉 テレビ出演の話はどういう経緯だったんですか?
梅田 もとは、大名にある水炊き屋さんのスタッフでイベントオーガナイザーをしている人がいて、その店で呑んでいた時に、ネット配信番組を作っている人と知り合いまして。一度ゲストでその番組に出させてもらいました。そこは、「ドォーモ」のディレクターが情報収集に来る場所でもあって、紹介されたんです。
和泉 なるほど。人の縁ですね。
梅田 ある日「ドォーモ」側から電話が来て、3日後にロケをして、その2日後にはもうオンエアという、すごいスピード感でした。地上波で流れたら、いろんな番組や放送局からも声がかかるようになって。FBSの「めんたいワイド」やTNCの「GeeBee」という番組にも出ました。「ドォーモ」のHPにも載ったことで、関東のローカル番組からもオファーがありましたよ。
テレビ出演後、友達申請が爆発的に増えた梅田さんのフェイスブック。タイトルはずばり、「梅田創介のページ」。「タイトルは最初に仮でつけたんですが、一気に「いいね!」の数が増えたら、変更できなくなっちゃいまして……」
2013年の半ば、最初のテレビ放映から3週間で、「いいね!」の数が600件を超えた。11月にまた出た時は、さらに1,000件。「テレビに出ると、カンフル剤のようにポンッと増えて、それからなだらかに下がっていきます。」
作品のクオリティを高めて、拡大展開したい
和泉 ちなみにTV番組に出た場合、出演料はあるんですか?
梅田 基本的には、無報酬ですね。
和泉 写真作品で稼いでいきたいという気持ちはあるんですか?
梅田 うーん。もちろんそれは理想ですけど、自分が実生活でサラリーマンとしてしんどい思いをしているからこそ、笑えるところもあると思うんですよね。金持ちになってからこれをやってても、単なるイヤミというか。
和泉 ああ、確かに。でも出版化の声はかかりそうですけど。
梅田 写真集は作りたいですね。ぜひお願いします!
和泉 先日は企業とのコラボレーションも実現したとか?
梅田 ええ。僕、南国のトロピカルなフルーツが大好きでして、先日、宮崎のライチ園に行って、ライチ摘み取り体験をしてきました。ここのライチが本当においしいんですよ!
和泉 槍を持って行ったんですか! 怪しまれませんでした?
梅田 受付のおばちゃんにだいぶ怪訝な顔をされたんですが、なんとか説得して。果物はプレッシャーをかけると甘くなると言われているので、槍でプレッシャーをかけてきました。
和泉 ははは。
梅田 途中、社長に出てきていただいたので、主旨を説明して。それで、感謝の気持ちを込めて、ライチ園の看板と一緒に撮影させてもらいました。
和泉 こんなふうにスポンサー活動ができたらいいですね。
梅田 どこまでシナジーが出せるかわかりませんけど、頑張ります!
和泉 今後の展開は?
梅田 まずは、「野生のサラリーマン」でまだ出していない作品がいくつかあるので、このコンセプトでもう1~2回展示をやりたいですね。それから、作品のクオリティは常に上げていきたいなと。
和泉 どんな努力をしてるんですか?
梅田 自分の動きのクオリティを上げるために、身体トレーニングの塾に通っています。34歳にして初めて、バク転ができるようになりました。
和泉 さすが、作品づくりに妥協しない梅田さんらしいですね! これからもご活躍、期待しています。本日はありがとうございました。
シリーズ「UMA展」より。UMAとは未確認生物のことで、これと午年をかけている。この躍動感!
会場ではこんな質問がありました
質問1 かぶりものシリーズのファンなのですが、またやってくれませんか?
梅田 いいかぶりものがあれば、いつでもやりますよ!
質問2 こんなに激しい動きをして、スーツが破れないんですか?
梅田 ジャンプしたときに、お尻がパリッと破けたことは何度かあります。天神のど真ん中で、スーツの股間が裂けた時の焦りといったらないですね。スーツのスポンサーになってくれる方、常に募集中です!
コトバナ編集後記
梅田さんの写真はどれも姿勢やポーズが美しく、それが作品のユーモアにも繋がっていると感じていましたが、身体を鍛える塾に通っていると聞いて納得。「いくらくだらないと思うことでも、やるかやらないかで大きく違う」とご本人もおっしゃっていましたし、やるならとことんやるからこそ、おかしみがあるのだと思います。また違ったコンセプトの作品も、いろいろと見てみたいなと思いました。(佐藤)