レポート

3人姉妹が営むお菓子屋さんの隠れた物語。久留米のケーキショップ「森のわすれもの」へ

福岡市内から車を走らせること約1時間。久留米市の住宅地にひっそり佇むお菓子屋「森のわすれもの」さんにやってきました。

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住宅地の路地にひときわ目を惹く赤い看板が目印。お店はこの奥にあります。

 本日のお目当ては、「晴れの日のお菓子ロッシェ」。

雨の日に来てしまったけど大丈夫かな…という一抹の不安が頭をよぎりつつも店内に足を踏み入れると……。

ありましたありました!

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軽くてサックサクのロッシェ。口に入れると舌のうえでシュワ~っととろけます。ほどよくミックスされたスライスアーモンドの風味と芳醇なキャラメルの香りもたまりません。ちなみに「ロッシェ」とは、フランス語で「岩」。

アーモンドメレンゲ、こと「晴れの日のお菓子ロッシェ」。不思議なネーミングのこのお菓子は、「森のわすれもの」のパティシエ・小川智美さんが、大好きなメレンゲをアレンジして生まれたそうです。

地元・久留米産のたまごを使ったメレンゲをオーブンでじっくり長時間かけて焼き、乾燥させることで、芯までサクサクの仕上がりに。湿度にはめっぽう弱いため、こんな雨の日は苦手だそうです。ぜひ晴れた日に食べたいお菓子です。

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焼き菓子の種類も豊富。一枚一枚異なるラベルは手描きのイラストをコピーして、両面テープで貼ったもの!「あえて手作りを大切にしています」と智美さん。

智美さんは3人姉妹の真ん中。「森のわすれもの」は姉妹でオープンしてから18年を迎えます。当時、九州大学の学生だった智美さん。大学を退学してまでお菓子の道に進もうと思ったその背景には、ずっと応援してくれていたお母さまの存在があったといいます。小さい頃からお母さんの手づくりお菓子を食べて育った智美さんは、小学生の頃から、いつのまにか自分でままごとのようにお菓子を作るようになっていたのだそうです。

しかし大学生のときにお母様が病床に伏し、そのまま帰らぬ人に……。「森のわすれもの」オープン準備中だった智美さんたちは、一旦は開店を諦めかけたそうですが、最愛のお母様が残してくれた想いを実現するために再スタート。その年の冬には無事オープンしたのだとか。そこには、想像を絶する悲しみを乗り越えるためにひとつになった、姉妹3人の“使命感”みたいなものがあったのだろうなあ……。

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お店の名前は姉の友里さんが名付け親。「森の忘れ者」とはアイヌ語で「エゾリス」のこと。冬に備えて埋めておいた土の下の食料も、“忘れ”られることで春に芽を出し、森を豊かに育ててくれる。地元に根付き地域を豊かに育てていきたいという3人の想いを込めて。

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3人姉妹で店を切り盛りしながら、地元に愛される店となった「森のわすれもの」。焼き菓子のほか、ケーキも販売されています。

その後、オリジナルのレシピ本を出版したり、テレビでお菓子作りのコーナーを担当するなど、パティシエとして引っ張りだこの智美さん。現在は2児の母となり、お菓子作りは実践でも大活躍です。

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小さい頃から、いつも手元にあったのはお菓子作りの本だったという智美さん。「かんたんで失敗しないお菓子作りを伝えたい」という想いから、これまでに4冊のレシピ本を出版!

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大好きな「ロッシェ」のレシピももちろん掲載。本人によるイラストやキャッチコピー満載で、個性豊かなお菓子作りの本に仕上がった。

「ただ食べて美味しい。で終わるんじゃなくて、お菓子を作るプロセスや、そこにある人の想いも味わって欲しいです」と語る智美さん。その笑顔の裏には、さまざまな物語が隠されていました。

はちきれんばかりの笑顔が印象的な3人姉妹が営む「森のわすれもの」。一度訪れた人にとっては、忘れられない店になること間違いなしです!

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左から、姉の友里さん、智美さん、妹の優佳さん。3人のそれぞれ違う個性がひとつになった名店でした。

(堀尾真理)

【店舗情報】

森のわすれもの

福岡県久留米市津福本町1702-63

 (0942)37-5302

HP◻︎http://morinowasuremono.web.fc2.com/

FB◻︎https://www.facebook.com/pages/森のわすれもの/494456004019821?fref=nf


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