すこやかな“麦どころ“が育む麺文化

[出品者情報]

うきは地域総合商社
福岡県うきは市

[商品]

  • ラーメン仮面(トンコツ)
  • くまがえのクラウン(うどん乾麺)
  • 福岡のとまとラーメン
  • 博多中華そば

福岡県と佐賀県とをまたぐ筑紫平野。日本一の二毛作穀倉地帯が広がり、稲作とともに小麦の栽培が盛んな地域だ。国内における小麦の収穫高は、北海道が全国1位で、福岡県、佐賀県が後に続く。つまり、全国2位、3位の小麦収穫高を支えているのが、筑紫平野なのである。 2県に渡って広がる筑紫平野は、その広大さゆえに、佐賀側、福岡側でそれぞれに名称があり、福岡側は「筑後平野」と呼ばれている。この筑後平野の東に位置する「うきは市」こそ、福岡の小麦生産量を支える一大産地。うきは市の北側を流れる一級河川・筑後川がもたらす豊かな水が、大地を潤し、古くから小麦のすこやかな成長を育む。 小麦に愛される街・うきは市は、長崎県・島原、佐賀県・神崎と並ぶ“九州三大麺どころ”とも呼ばれている。今回、そんなうきは市から「うきは地域総合商社」として「皿の上の九州」に出展するのが「麺」をテーマにしたブースだ。 麺どころ・うきはの原動力となった製粉会社、そして製麺所の現場を訪ねる。

顧客の理想にマッチする小麦粉を追求する。

最初に訪れたのは、麺の原料である小麦を製粉する「鳥越製粉」だ。 「鳥越製粉」はうきは市で明治10年に創業。その後、原料である小麦の取扱い上の利便性、製品の物流拠点の必要性などの理由から、博多湾に面した箱崎ふ頭に工場を構え、本社も博多区に移す。福岡工場を訪問すると、まさに博多湾の目と鼻の先に佇んでいて、大いに驚いた。

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うきは産のラー麦を加工した小麦粉。これから製麺所、または自家製麺をする店舗へと出荷されていく。

創業の地・うきはにある工場は、今も大麦の加工を行い稼働しているが、麺どころ・うきはの原動力となった麺用の小麦は、現在は、福岡工場にて加工(製粉)されている。工場毎での役割分担がなされているようだ。なお、この福岡工場では、同社が手掛ける300銘柄以上ある小麦粉のほとんどのものが製造可能で、先に紹介した「栗木商店」の麺関連の商品に使用されているうきは市周辺で栽培されたラー麦もこの工場で粉に加工されている。

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工場長の森脇剛さんは製造チームの取りまとめ役を務めている。三位一体でのサポートを円滑に進めるため、常に研究チームと連携し、魅力ある製品づくりに臨んでいる。

工場長・森脇剛さんは「『得意先の繁栄は我が社の繁栄』をモットーに取り組んでいます。300銘柄以上の小麦粉はそれぞれの背後に顔の見えるお客様が存在しています。作りっぱなしではなく、使い方の提案、商品開発のサポートも手掛けているんです」と笑顔を見せる。製造チーム、研究開発チーム、営業チームが三位一体となり、お客の求める理想像を追求。例えば、あるうどん店の店主は「開業時から何度も小麦粉を変えてきました。鳥越さんを選んだ決め手は、小麦粉の鮮度にまで気を配った丁寧な品質管理です。相談した結果、今の粉は製粉後、1、2カ月のものを納品していただいています。クラフトの袋の封を切ると、ふわりと広がる香りがフレッシュで、粉を掴むとフカフカ。なんとも言えない気持ち良さです」と目を細める。

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鳥越製粉で製粉されたラー麦は上記のような商品などに利用されている。

今では小麦そのものの栽培にも着手する「鳥越製粉」。移り変わる時代の中で、変わらず、顧客を支え続ける。

油の力に頼らない独自のそうめん製麺技術

続いて訪れたのは、うきは市内の製麺所だ。現在、うきは市で製麺所を営んでいるのは5社。その中で最も老舗とされるのが「長尾製麺」だ。創業は江戸時代、積み上げてきた歴史は200年を優に超えている。

「江戸時代の中期、この地に五庄屋と呼ばれる5人の庄屋がいました。彼らの力で治水工事が進められ、大石堰が完成し、用水路によって水田が潤ったのです。それから米の裏作として麦の生産が活発になっていきました」。専務取締役・長尾洋介さんはそう言って、うきは市と小麦との関係、そこに至るまでの歴史について丁寧に教えてくれた。

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7代目・長尾洋介さん。自身の考える美味しいうどんを追求するために「うどん屋 井戸」(日曜のみ営業)を立ち上げる熱い情熱と枯渇することのないアイデアの持ち主。

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長尾製麺のすぐ横を流れる南新川。五庄屋によって造られた水路で、筑後川からの豊かな水は、この水路を流れてうきはの地にもたらされている。

長尾製麺のルーツはそうめん。寒暖差があるうきは市はそうめん作りに適した気候であること、そうめんは乾麺であり、保存が効くという点から、生産量も年々増えていった。

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職人たちの手仕事によって、1本1本、そうめんがその形となっていく。手延べゆえに、微妙な力の加減で出来栄えが大きく左右される。職人たちはいずれも真剣な表情だった。

ただし、長尾製麺のそうめんは、同地域で製造されている他の製麺所のそれとは一線を画す。「うちのそうめんは油を一切使っていないんです。油と水というように、そもそも混じり合わないもの同士です。そして健康的な観点からも油は使わないに越したことはない。うちでは水回し、生地の熟成、伸ばしといった製造工程を一つひとつ徹底的に研究し、油未使用の製麺技術を確立しました」と長尾さんは言う。この製麺所の代表作「吉井素麺」は、熟練の職人が打ち粉を駆使し、手作業によって心を込めながら一本ずつ、造り上げられている。

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取材時、特別に洋介さんがそうめんをご馳走してくれた。「そうめんを湯がく時はできるだけ大きな鍋が良いですよ。たっぷりの湯だと麺が泳ぎ、おいしく茹で上がるんです」。写真下は完成したそうめんに輪切りの柚子を添えて。つゆは家庭でも簡単に作れるレシピで作っていただいた。後ろにあるのは、里芋と柚子胡椒を合わせ、仕上げに柚子の皮を削って振りかけた一品。ツユに浸しながら食べると上品な里芋の旨味と柚子胡椒の爽やかさが口に広がった。

そうめん作りにおいて常識とされていた油の存在。その根本を疑い、己が考える“良い”に対して忠実に突き進む姿勢こそ、長年、培ってこられた長尾製麺の本領だ。

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ラーメンも大好きだという洋介さんが手掛けた袋ラーメンをはじめ、長尾製麺の代名詞ともいうべき吉井素麺などを出品。袋ラーメン「ラーメン仮面」のパッケージは洋介さんが自ら手掛けた。

無添加・無化調による袋ラーメンが代名詞

大正7年創業の「鳥志商店」が手掛ける袋ラーメン「博多中華そばシリーズ」。豚骨、味噌、醤油から始まり、鶏味、塩味、さらに冷やし中華のカボス味、レモン味も展開。現在10種をラインナップする。

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とんこつから醤油、塩、味噌、ごましょうゆとバラエティ豊か。そのまま水炊きにもできる鶏味は、これから寒くなる時期にもってこいの一品だ。パッと目をひくパッケージデザインも秀逸。

一見すると何の変哲もない袋ラーメンのようだが、実は斬新なコンセプトによって生まれた商品だ。 「昭和57、58年くらいにお土産用ラーメンに主軸をシフトしたのですが、大手が参入してくると、途端に売れなくなってしまい、その活路として他が真似できない無添加ラーメン作りにチャレンジするようになったんです」と言う4代目・鳥越久義さん。

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無添加、無化調のラーメン作りにおいて、麺のみならず、最も重要なスープの味におけるディレクションまでもこなす4代目・鳥越久義さん。

近年、健康志向が広がり、ラーメン業界において無添加・無化調がちらほらと言われるようになってきたが、なんと20年も前から、しかもインスタントラーメンにおいて、現在の最先端ともいうべき無化調・無添加ラーメンを追求し、しかも商品化していた。 すでに商品完成から20年というロングセラー商品。その事実を知って卒倒しそうになった。それくらいの偉業をやってのけているのだ。

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写真左は先代夫妻。自らに厳しいハードルを設けながらも、体にやさしい即席麺作りを代々続けてきた鳥越家。その表情は温和で、モノづくりに対する愛情が自然と伝わってきた。

商品開発において最も大切にしてきたのは“味”。鳥越さんは「一般的なイメージでは、体に良いものは味が薄い傾向にあり、美味しさという観点が希薄です。美味しくないものは売りたくないという気持ちを常に持ち、商品の改良を重ねてきました。小さなお子さんのいる家庭でも食べてほしいですね」と力を込める。

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「博多中華そばシリーズ」の麺は元々、鳥志商店で使っていた素麺用の製麺機で麺を製造する。そのため、麺の一本一本が一般的なものよりも長い。それをうまく袋に収めるため、M字型に曲げており、「鳥志がけ」という名称を付けた。M字状のため、乾燥しにくいが、3日かけて除湿することによって、熟成効果も生まれるのだという。

オリジナル商品の開発に活路を見出す。

「栗木商店」のルーツは、明治30年に開業した米穀仲買業。その後、昭和12年〜14年にかけて精麦、製粉加工設備を操業し、今日につながる土台が築かれる。転機は昭和49年。この年、現・本社所在地にとうもろこし二種混工場を新設。同時に工場見学もスタートし、現在の形となった。

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インスタントラーメンの製造ラインの様子。栗木商店では、インスタント麺を製造する際、国産ラード100%を使用。この揚げ方は国内でも珍しいそうだ。

「栗木商店」が製造するのは、大きく区分すると乾麺、生めん、即席麺の3つ。そして、これらの業務用、販促用、販売用としてのオリジナル商品の開発にも力を入れている。

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「アイデアを形にするお手伝いをしたい」と力強く語る4代目・栗木良祐さん。同社が得意とする袋ラーメンの製造は、九州内でも5社しかない。小ロット対応の製麺業社に向けられる視線は年々熱くなっている。

「私たちには製麺のための設備と、形にする技術とアイデアがあります。この強みを生かし、小ロットでのオリジナル商品開発にも柔軟に対応してきました」と、これまでの歩みを振り返る4代目・栗木良祐さん。その言葉通り、即席麺5000食、生麺300食、乾麺100kgという、ひと昔前には考えられない少量生産によって商品開発のハードルを引き下げ、アイデア、そして原料を持つ人をサポートしている。栗木さんは「麺に合わせたスープ作りから包材に関するアドバイス、また、ビジネスパートナーのマッチングまで、新商品開発における川上から川下までトータルで担えるのが強みです」と自信を見せた。 その言葉を受けて商品を俯瞰してみると、驚くほどのバリエーション。アイデアの数だけ可能性があり、それらが形になることで、パワーを伴うという事実に胸が高鳴った。

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工場見学にも随時対応している「栗木商店」の工場内は整理整頓、清掃が行き渡っていて、見ていて清々しい気持ちになった。

製麺工場とはアイデアが形になる場所。単純に商品を製造する場所だというイメージは、今や過去の話なのかもしれない。

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同社が手掛ける生麺、即席麺などの商品は併設する直売所で購入できる。また、この直売所はレストランでもあり、うきは産のラー麦を使った中華麺がイートインできる。

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麦秋の時期、麦の穂が実ると、耳納連山を背景に一面黄金色の美しい光景に出会う。(画像提供:うきは市ブランド推進課)


鳥越製粉 torigoeseifun
住所 福岡市博多区比恵町5-1
電話 092-477-7110

長尾製麺 nagaoseimen
住所 福岡県うきは市吉井町927
電話 0943-75-3155
営業 8:00~17:00(併設する「うどん屋井戸」は12:00~15:00)
定休日 不定(うどん屋井戸は日曜のみ営業)

鳥志商店 torishishoten
住所 福岡県うきは市吉井町220-3
電話 0943-75-2214
営業 8:00~17:00
定休日 土日祝

栗木商店 kurikishoten
住所 福岡県うきは市吉井町191-3
電話 0943-75-2153
営業 10:00~17:00(工場見学は要予約)

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