「規格外」が生まれ変わる 山鹿メイドの保存食

[出品者情報]

山鹿つちんこ
熊本県

[商品]

  • ドレッシングピクルス(椎茸・アスパラ・きゅうり・インゲン・なす)[農産加工品]
  • 干し野菜(アスパラ・インゲン・しいたけ)[農産加工品]
  • 季節のやさい(岡山農園)(小春農園)(北原FC)[青果]
  • 新米(      )[穀類]

「規格外」が生まれ変わる 山鹿メイドの保存食

ひと口かぶりつくと、目の覚めるような酸っぱさ。ピリッとスパイシーながらも、後味はすっきり。アスパラ独自のシャキシャキ感も味わえる。『山鹿土んこ』のピクルスは、ついつい「もう1口」とやみつきになる味わいだ。

農業が盛んな山鹿市では、アスパラやいんげん、しいたけ、きゅうりなど多種多様な農作物が作られている。それらの収穫物の1〜2割を占めるのが、小さ過ぎたり曲がっていたりして市場に出せない「規格外」の作物だ。といっても、おいしさに変わりはない。どうにか生かす手はないかと、山鹿の若手生産者グループ『山鹿土んこ』のメンバーたちが2年にもおよぶ歳月を経て開発したのが、「ドレッシングピクルス」と「干し野菜」だ。

「ドレッシングピクルス」は添加物や保存料は一切使わず、たっぷりのリンゴ酢と9種ものスパイスとハーブを使用した、パンチの効いたつけ液が特徴。殺菌作用や保存効果もしっかり期待できるという。素材を加熱せずに漬け込むこともポイントのひとつ。はじめはシャキシャキ、長く漬けるほどにとろんとした食感に変化していく。パンにのせたり、サラダに入れても味付けがいらないほどに存在感たっぷり。細かく刻んでマヨネーズと和えれば、爽やかなタルタルソースができあがる。

袋を開けた瞬間に芳ばしさが漂う「干し野菜」は、インゲンやアスパラの鮮やかな緑色に目を奪われる。野菜100%。そのまま使えるようにと、千切りにカットしてからカラッと乾燥させる。口に入れると、サクッとほんのり甘い。干すことで野菜の水分が抜け、糖度が上がり旨味が凝縮されるという。戻せば5〜6倍に膨らみ、こりこりっとした歯ごたえに。しっかり噛めば噛むほどに野菜のおいしさが口いっぱいにひろがる。

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「ドレッシングピクルス」という名前のとおり、つけ液をそのままサラダに使うもよし、お好みの野菜でもう一度漬けてもよし、最後の一滴まで余すことなく楽しめる

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干し野菜は昔ながらの便利素材。夜、水を張った鍋にだしと干し野菜をぽんっと入れて冷蔵庫で寝かせておけば、翌朝は豆腐を加えて火にかけるだけで旨味たっぷりのみそ汁に

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親木の足元で、ふかふかの土の中からひょっこり顔を出したアスパラ。規格外のものは単価が下がるため、細いものはピクルスに、太すぎや曲がっているものは干し野菜に加工される

採れたての美味しさ そのままに

『山鹿土んこ』のメンバーは、山鹿市内で農業を営む7名の若者たち。全国農業青年クラブ連絡協議会(通称4Hクラブ)で知り合い、農業の悩みや喜びを分かち合ってきた同士だ。「6次産業(※)」の取り組みのひとつとして、リーダーである岡山さんのアイディアが採用されたことをきっかけに結成された。 「いろんな品目があった方がお客さんも嬉しかでしょ」ということで、すいかにアスパラ、いんげん、しいたけ、みかんなど多様な作物を手がける生産者が集まった。『山鹿土んこ』とは、「山鹿の土から生まれた子どもたち」という意味。野菜はもちろん、メンバーも山鹿の子どもたちだ。

ピクルスや干し野菜に使われている素材は、すべてメンバーの農園で収穫された規格外の野菜たち。各自でピクルス液を保管し、採れたてをその日のうちに漬け込んでいく。「新鮮なうちに漬けたピクルスは味が全然違う。収穫したその日に加工することを徹底しています」と岡山さん。おいしい時期を逃さない、生産者だからこそできる特権だ。

「野菜って捨てるところがないんですよ」と話すのは、アスパラガスの栽培を手がける北原さん。農園で採れたばかりの規格外のアスパラを食べさせてもらう。塩茹でのアスパラが驚くほどやわらかく瑞々しい! 今年のアスパラは間もなく終了するそうだが、収穫時期を過ぎても、ピクルスや干し野菜という形で旬のおいしさをいただけるのはありがたい。

椎茸を生のまま漬け込んだピクルスは、とろりとした珍しい食感。使用されるのは「小さすぎて市場に出せない」椎茸だが、そのサイズ感がちょうどいい。小春農園の小原さんは、「原木しいたけ」を栽培する数少ない生産者だ。クヌギの木を使い、自然に最も近い状態で2年もの月日をかけて育てられた椎茸は、味、香り、歯ごたえすべてが絶品だ。旨味がぎゅっと濃縮された干し椎茸は、「干し野菜」のエース的存在になるに違いない。

(※)生産者が作ったものを自らが加工販売するしくみのこと。1次産業と2次産業と3次産業を足して6次産業となる。

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各メンバーが加工したピクルスや干し野菜は、定期的に2〜3人のメンバーが集まって袋詰めの作業をする

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『山鹿土んこ』のリーダー岡山祐大さんは、スイカやメロンなどを生産されている3代目。収穫したすいかを干して、ドライスイカとして販売している。その技術を生かそうと「干し野菜」の商品開発を企画し、採用された

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北原さんは、プロサッカーのテストを受けるほどの実力の持ち主。「ゆくゆくは子ども達とクラブチームを作って、‘食べること’と’体を動かすこと’の大切さをおしえたい」と夢を語ってくれた

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足がすくむほど急斜面の大自然を生かし、果樹や栗、椎茸、たけのこなど多品種の作物を生産する小原さん。海藻や魚骨を肥料に使うなど、実に研究熱心だ。太陽をたっぷり浴びて旬を迎えた極早生みかんが会場に登場予定。お楽しみに!

新しい農業の モデルケースになりたい

『山鹿土んこ』の挑戦はまだはじまったばかり。2年にもおよぶ試行錯誤の商品開発が終わり、この秋、いよいよ「ドレッシングピクルス」と「干し野菜」がデビューする。 「まずは、ピクルスと干し野菜をしっかり成功させて、軌道に乗せていきたい。販売していくうちに改良せなんとこも出てくると思うけど、まずはみなさんに認知してもらわんと」と岡山さん。ゆくゆくは「土んこブランド」として直売店に並べてもらうのが目標だという。

全国的にも問題になっている「農家の高齢化による生産力の低下」は、山鹿も例外ではない。「若い世代と高齢者の間、特に40〜50代の農業従事者がぽっかり空いている」と北原さん。幸いなことに祖父母の家業を継いで農業に従事する若者が、少しずつだが増えてきているという。「僕たちの活動が、農業に興味を持ったり、参入したりするきっかけになってくれたらいい」。山鹿の土で育った子どもたちが、今、山鹿に新しい風を巻き起こしている。

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今年6月にデビュー前の試食も兼ねて、福岡で月1回開店している「穴バー」に登場。ピクルスを使ったカナッペやサラダなどを披露した。参加者からの「おいしい」の声が、一番の励みになったという

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栗の生産量「西日本一」を誇る山鹿市。今年の栗は玉太りしていて、甘さもしっかりあるそう。小春農園のつやつや大ぶりの栗が、皿の上の九州に秋を届けてくれる

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『山鹿土んこ』メンバーたちが生産した旬野菜も並ぶ『道の駅鹿北 小栗郷』。名前からも想像できるように、栗の品揃えは熊本NO1だ。ほっくほくの「栗ご飯」や「びっくり(栗)だご汁」、「栗ピザ」は食べる価値あり! 栗拾いも楽しめる

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