生産者を巻き込み、大分県の恵みを伝える

[出品者情報]

Oita Made
大分県

[商品]

  • 国東のしいたけ
  • 櫛野柚子ごしょう
  • 大分かぼすグミ
  • 姫島ひじき
  • 佐伯ごまだし
  • Oita Madeギフトセット3種

生産者を巻き込み、大分県の恵みを伝える

源泉数・湧出量ともに全国1位を誇る温泉地として有名な、大分県。しかし地中から湧き上がる豊穣のエネルギーは、温泉に留まらない。西側は阿蘇を控えた九重連山、東側は四国との境に広がる豊後水道、その間に広がる大分県は、気候も地理的条件も全く異なる地域が多数存在し、それぞれの土地で、自然の恵みが息づいている。

そんな大分県内で、土地の恵みを活かして生まれた産品を紹介しているのが、NPO法人BEPPU PROJECTが手がける「Oita Made」だ。64品全てにわたる共通点は、「主原料が大分県産であること」「生産者も大分県人であること」、そして「商品を通じてその土地の魅力が伝わること」。

今回取材した「佐伯ごまだし」は、そんなOita Madeの数ある商品の中でも、安定した人気を誇る一品。九州の最東端にある鶴見漁港から生まれたこの商品は、もともと豊後水道の豊かな漁場に面した佐伯の漁村町で、古くから食べられてきた郷土の味だ。漁師のお母さんたちが、えそなど一年中獲れる魚の身をほぐし、地元の醤油やごまを使って、こしらえてきた一品。万能調味料として、そのまま冷奴や菜っ葉と和えたり、お湯で溶いてうどんの出汁にするなどして、地元で長く愛されてきた。

手間がかかり、最近では家庭で作られることも少なくなっていたごまだしを、「漁村女性グループめばる」のお母さんたちが生産体制を整えて商品化。新鮮な魚を、漁港の隣にある加工場ですぐに加工できるメリットを生かして、素材の良さをそのままぎゅっとビンに詰め込んだ商品ができあがった。

「『佐伯の殿様、“浦”で持つ』と言うくらいに、この地方は昔から海の恵みに支えられてきたんよ。私らはこれで、いのちき(「暮らし」「生計」という意味の大分の方言)さしてもらってるんやから、少しでも多くの人に魚のおいしさを伝えていかんとね」と漁村女性グループめばる代表の桑原政子さんは言う。

13年前に細々と始まったごまだし作りも、実直な商品作りに着実にファンを増やし、現在では全国に年間3万本を出荷するまでに成長している。今回の「皿の上の九州」でも、Oita Madeを代表する商品の一つとして用意されるので、ぜひ味わってみてほしい。

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添加物は一切使わず、地元・佐伯で獲れる魚と醤油、ごま、みりん、砂糖だけを使って作るシンプルなごまだし。鮮度の高い魚をぜいたくに使えるからこそできる一品

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ごまだしの代表的な食べ方が、ごまだしうどん。湯がいたうどんにたっぷりのごまだしを乗せ、溶いて食べるシンプルなもの。農山漁村の郷土料理百選にも認定された料理で、忙しい漁師のお腹を満たしてきた定番メニュー

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漁村女性グループめばるの代表・桑原政子さん。地元の食文化を守りながら、世間で受け入れやすいようパッケージを改良したり販売戦略を考えたりと、守るだけでない攻めの姿勢で「ごまだし」を成功へと導いた、敏腕経営者でもある

地域と徹底的に向き合い思いや表現を伝える

現在「Oita Made」ブランドの運営を担当しているのは、NPO法人BEPPU PROJECTの熊谷周三さんだ。北海道・稚内の出身で、2013年よりBEPPU PROJECTのメンバーとして、大分県別府に暮らしている。地元・北海道や、その後に長く滞在していた東北地方と比べて、大分に来てからは、自然の恵みに圧倒されっぱなしだという。 「東北や北海道の自然は厳しく、それをどうなだめて、耐えるかが人と自然との付き合い方でした。でも大分では、自然が人間に豊かな恵みをもたらしています。各地方に特色があって、自然から生まれた産品の数々が、地域の豊かさを代表しているように思えます」と熊谷さんは言う。

NPO法人BEPPU PROJECTは、別府市内で芸術祭を行うために組織されたNPOだ。「混浴温泉世界」を始めとする数々の芸術祭を成功させ、地方におけるアートプロジェクトの先駆的なモデルとなった。しかしなぜ、アートプロジェクトが地域の産品ブランドを手がけるようになったのだろう。

「地方におけるアートプロジェクトは、そこでしか生まれえない美術作品を作るために、地域と徹底的に向き合うことから始まります。その中で、地域の魅力や、課題も見えてきます。招いたアーティストと地域の魅力を掛け合わせるだけでなく、市井の人の思いや表現を紹介するのもまた僕らの仕事ではないか、そう考えたことがOita Madeの出発点となりました」と熊谷さん。

2013年10月にプロジェクトチームが立ち上がり、コンセプト作りから別府市内に店舗「Oita Made Shop」を構えるまで、約1年。フィールドワークに始まり、生産者を1軒ずつ訪ねて契約を結び、新商品の開発まで、足繁く現地に通って信頼関係を築きながら一品ずつ形にしてきた。現在そのラインナップは64品と、県内の市町村数の3倍以上に上り、今後もさらに増えていく予定だ。

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さまざまな地域に住み、関わってきた熊谷さんから見ても、別府には特別なオーラがあるという。移住してまだ3年ながら、街の魅力を詳細に案内してくれる熊谷さんは、もはや地元の人も顔負けの別府ツウ

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一つひとつの商品を、パネルと生産者の顔写真入りで紹介。モノを通じて大分県の魅力を感じられる場所

利益だけが優先ではないNPOだからできること

Oita Made Shopで働くスタッフは、月に一度、必ず生産者を訪ねて作業を手伝う。現地の風土を知り、働く人とあいさつを交わし、時には一緒に汗を流す。そうすることで、商品をオススメするときの熱量も変わってくるのだと、熊谷さんは言う。

「私たちは、単に商品の売買契約を結ぶだけではなく、生産者とパートナー契約を結んでいます。だから、商品が売れなくなったら終わりではなくて、生産者と一緒になって商品改良や次のアイデアを練っていくのが、私たちの仕事でもあります。利潤を追求するだけが優先課題ではないNPO法人だからこそ、存続していく価値や意義を常に考えて、長期的なサポートができるはずと考えています」

熊谷さんの話の通り、BEPPU PROJECTと生産者とのつながりは密接だ。前出の漁村女性グループめばる代表・桑原さんも、彼らの熱意には感心したという。 「彼らはものを作って売った経験のない人たちだったから、不安もあったんよ。でも、私たちをよく理解して定期的に佐伯まで来てくれるし、実際に販売数も伸びてよく注文も入るし。私たち生産者としても、彼らの力を借りて助かっている部分がたくさんあるね」

アートプロジェクトから派生した「Oita Made」は今、各地の生産者を巻き込み、大分県全体の恵みを伝えるプロジェクトへと、着実に成長してきている。

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2015年1月、別府銀座商店街内にオープンした「Oita Made Shop」。遊休物件を活用して中心市街地を活性化するプロジェクト「platform」の一環として、抜群の立地で開店できた

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商品としての魅力や使い方にとどまらず、生産時の様子や生産者の人柄までを丁寧に解説してくれる熊谷さん。生産者と密にコミュニケーションを取りながら商品作りを進めている証拠だ

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「佐伯ごまだし」の他、旨味と甘味の効いた味わいが評判の「三年完熟醤油」、料理のアクセントにも使える「南高梅の梅肉」などが入った詰め合わせ。今回のイベントには、他にも数種類の詰め合わせセットを用意している

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