異なる物語をもつ12の酒器

[出品者情報]

ARITA 地の盃
佐賀県
URL http://jinosakazuki.jp

[商品]

  • 有田焼の酒器

異なる物語をもつ12の酒器

有田焼が生まれて今年で400年。この記念すべき大きな節目に誕生したのが、酒器シリーズ「ARITA 地の盃」だ。伝統的な有田焼の技法に則って作られた作品はもちろん、独創的な技法から生まれた一風変わった作品まで、12の酒器が並ぶ。

コロンとした可愛らしさと、シュッとしたスタイリッシュなフォルムが対称的な「まるみ・そり」は、若い女性をターゲットにデザインされたシンプルな形。有田焼特有の白磁を基調に鍋島紋様「南天」の吉祥色である赤と緑を台に施すことで、「難を転じて活力ある毎日を送って欲しい」という思いが込められている。また色鮮やかな模様が目を惹く「探・遊び」は、佐賀が誇る名産品をデフォルメして描き、その答えを高台に隠すなど遊び心に溢れた作品だ。ほか、漆黒の夜空に満天の星を配した「月沙天目」や、ワイングラスのようでもありエッグスタンドのようでもあるユニークな形状の「純米和飲」など、どの酒器も個性が光る。

手にとって眺めるだけでも楽しいが、酒器に添えられている「合わせて飲みたい佐賀酒」と「使って欲しい人物」を交えた制作エピソードが、酒器の魅力をいっそう高めてくれるのが、「ARITA 地の盃」の醍醐味だ。味わえるのはつまり、名酒のみならず「器」×「酒」×「人」が生み出した、ただひとつの物語。この物語を肴に、旨い佐賀酒を楽しみたい。

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透き通るような白磁を追究し続ける老舗の窯元「畑萬陶苑」が依頼を受けて作陶した「まるみ・そり」。白磁に鍋島紋様「南天」の吉祥色が映える

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杯と受けの台が分かれたユニークな形状の「純米和飲」は、鎬(しのぎ)の技法を多く取り入れる「乃利陶窯」による作品。下絵にパールを吹いて柔らかな風合いに仕上がっている

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東京をはじめ、全国で展示会も開催している「地の盃」。作り手が選んだ佐賀酒も併せて展示しているところもまた楽しい

「器」×「酒」×「人」で、世界にただひとつの酒器をつくる

「ARITA 地の盃」を作るのは、佐賀のなかでも有田・伊万里・嬉野を拠点に焼き物を生産・販売している10の窯元。個人工房から、大規模な窯元、焼き物を取り扱う商社まで幅広く、卓越した技術を誇る職人が揃う。

作り手は、数ある佐賀酒の中から酒器に合わせた銘柄をひとつ選び、さらにその酒器を使って欲しい“人物”を設定した上で酒器をデザイン。どんな素材や形状の酒器が酒の味をより引き立てるのか、またどういったシチュエーションで酒を飲むことを想定するか、酒器にまつわるあらゆるイメージを結びつけながら、試行錯誤を繰り返して作陶を進めてきた。

女性から男性まで幅広い年齢層の作り手がターゲットに選んだのは、同じ町内の寿司屋の大将から、付き合いの長い本屋の店主、焼き物に造詣の深い古伊万里研究会のメンバーまで、顔ぶれもさまざま。合わせた佐賀酒も、純米吟醸など王道をはじめ、純米七割磨きや、リンゴ酵素を使用した珍しい銘柄まで、一点一点こだわりの製造方法を貫いたものばかりだ。

「窯元」「蔵元」「地元の人」の三者に共通するのは、あふれんばかりの郷土愛。まさに十人十色、郷土への想いが互いに触発し合いながら生まれたのが、これまでにない有田焼の酒器だ。

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さまざまな立場の“人”が多様に関わりを持つことで生まれた「地の盃」。左から、「地の盃」プロジェクトディレクターの鷹巣翼さん、窯元「畑萬陶苑」の畑石眞嗣社長、商社「匠」の鐘ヶ江昭彦さん。有田への愛に満ちた3人だ

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素材、形状、色合い、手に持ったときの馴染みやすさ、唇に当てたときの感触……細かなディテールにこだわりながら何度も試作を繰り返し、完成へと近づける

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窯元によっては各行程ごとに職人が担う酒器もある。写真は畑萬陶苑の絵付け行程。太い筆で輪郭線の中を塗りつぶす「濃み(ダミ)」の作業は繊細かつ思い切りのよさが要求され、有田では昔から女性が担ってきた

未来へとまた一歩踏み出した有田焼

江戸時代初期に朝鮮からの陶工・李参平が有田の地で磁石を発見したことにより、日本初の磁器が作られてから今年で丸400年。旧街道には今なお多くの窯元が建ち並び、焼き物の産地として世界に名を馳せるまでになった。

一方で、豊富な米を産出する佐賀平野をはじめ、江戸時代末期には鍋島家が酒造りを奨励した歴史も相まって、伝統的に見ても日本酒づくりが盛んな土地でもある有田。「辛口より甘口」の人気が高まりを見せる近年、味が濃く甘みの強い佐賀酒は改めて注目を集めつつある。

「上質な有田焼に、旨い酒。このふたつを切り離してはもったいない」とは、「ARITA 地の盃」のプロジェクトディレクター・鷹巣翼さんの言葉。「だからと言って「じゃあ作ろう」では、作る側の一方通行で終わるんです」と、作り手と買い手のズレに危機感を抱く。

そこで徹底したのは、「消費者起点に立ったブランド開発」だ。酒器のデザインを決定するまでにおよそ1年を費やし、日本酒の専門家やブランディングのエキスパートを招いてのセミナーや試飲会、酒蔵見学など、計8回におよぶ勉強会を実施。酒器を“商品”として世に問うために必要な“商品コンセプト”を明確にしていった。

こうして、作り手自らが地元の“酒”とそれを使う“人”を設定し、お酒を楽しむシチュエーションにいたるまで縦横無尽に想像をめぐらせながら、形になるまでに2年あまりを要した「ARITA 地の盃」。有田焼誕生400年を機にスタートしたこの新たなブランドを起爆剤に、有田焼はまた一歩未来へと踏み出す。

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鉄器のような質感が独創的な酒器「麟(Lin)」は「金照堂」によるもの。見る角度や光の当たり具合で色味が変化する平盃と徳利は全部で6色。佐賀酒には特別純米の「松浦一」(松浦一酒造)を合わせて

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歴史的建造物が数多く残る有田の旧市街には、今なお焼き物の店が軒を連ねる。誕生から400年を迎えた有田焼は、ほかにもさまざまな記念プロジェクトを進行中だ

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