穴バーレポート ACTIVITY

つくり手との縁によって生まれた、私たちの新たな役割。 「皿の上の九州」にまつわるストーリーと想い。

10月の穴バーは、福岡市天神の商業施設「イムズ」で開催された九州のおいしい食、うれしい道具の見本市「皿の上の九州」との連動企画として、スペシャルバージョンで開店しました。「皿の上の九州」に出品いただいた12の生産者が届けてくださった食材を、イタリアンレストラン「リストランテKubotsu」の窪津朋生シェフがアレンジするという試み。ゲストの生産者の方々と参加者のみなさんを合わせて約70名が集い、一夜限りの特別な宴を楽しみました。

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テーマとなった「皿の上の九州」は、2016年にスタートし、今年で5回目を迎えたプロジェクトです。私たちアナバナ編集部スタッフが企画を担い、このイベントを運営する背景には、穴バーでの活動が起点となっています。今回は特別編として、「皿の上の九州」にまつわるストーリーや想いについてお話したいと思います。

伝え手と作り手の接点をより広く、深くする場を目指す

2013年にスタートした、月に一度のイベント「穴バー」の開催を通じて、私たち編集部スタッフは、さまざまなつくり手の方々との出逢いに恵まれてきました。私たちが出会い、惚れ込んだ食材や商品を紹介することで、参加者にとって新たな、つくり手にもあらたな気づきや発見につなげていただける場を、同じ目線に立つことを大事にしながら進めています。

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福岡市の中心部にあるイムズで開催した「皿の上の九州」の展示風景

一方で、「もっと広く、もっと深く、つくり手のサポートをすることはできないか」という想いも芽生えてきました。「穴バーに参加したことがない方にも関心を持っていただきたいし、食に携わる仕事の方々にも商品の魅力をご紹介していきたい。私たちがつくり手と使い手の間の役割を担い、生産者の販路拡大につながるお手伝いができたらいいなと思って」と、ディレクターの都甲はいいます。

その考えを形にしたのが2016年春に始まった「皿の上の九州」です。福岡市の中心に位置する商業施設という開かれたスペースで、商品が食卓にのぼるまでの背景を紹介する展示や販売を行い、たまたま立ち寄った方にも目に留めていただけるように。そして、農産・水産物や加工品、食にまつわる道具などのつくり手と、料理研究家や、カフェ、レストランなどのシェフ、飲食店オーナーといった伝え手をつなぐ試食会&商談会の場を設けました。

実際に、このイベントを通じて新たな取引やプロジェクトが生まれたり、出品者同士の繋がりができたり、つくり手のみなさんに「活動の幅が広がった」と言っていただけることがあります。皿の上の九州の出品者の方に、穴バーのゲストとして登場いただく機会も増えました。

応援したいと思う生産者がいて、そこに喜びが生まれることが私たちも楽しい。広く、深い繋がりを大切にしたいと思っています。

シェフとの共感によって生まれた初の試みのポップアップレストラン

5回目を迎えた今年、新しい試みとして開催したのがこのポップアップレストランです。参加者のみなさんが、生産者の方々と直接話をしながら食材を味わうという穴バーの魅力を、皿の上の九州バージョンで提供しようというもの。とはいえ、普段は一つの食材にフォーカスしている穴バー。今回は12組もの生産者がラインナップされているとあり、挑戦的な企画となりました。

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12の生産者の食材を使うという高いハードルに応えてくださる料理人として、「リストランテKubotsu」の窪津シェフに依頼をしたのは、料理に定評があるのはもちろんのこと、窪津シェフが大事にしている「料理を通じて生産者を広く知ってもらいたい」という考え方が、穴バーや皿の上の九州と共通していたから。

お店でも地産地消を徹底し、九州の食材のみを使用。自ら産地に出向いてその食材が生まれる背景を確認するという窪津シェフ。「僕が興味があるのは旬のもの、その土地でしか作れない意味のある食材です。そして、素晴らしい食材はほかのシェフたちにも積極的に紹介しています」

生産者との継続的な繋がりも大切にされています。使った食材の生産者へ料理の写真を必ず送るようにし、時間ができれば生産者に会いに行くそう。料理を通じてつくり手を応援し、地域を元気にしたいという想いを実践している窪津シェフだからこそ、今回の企画にも楽しく挑んでいただけたようです。参加者や生産者の方々からも「たくさんの発見や驚きがあった」という声をいただいた料理の数々は、次回のレポートで詳しくご紹介します!

地元の人で地元を元気に九州の魅力を全国へ伝えたい

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手探りながら、少しずつ活動の幅を広げている穴バーと皿の上の九州。まだまだ模索中ですが、人の輪が広がっている手応えは感じています。
「私たちの活動を通じて、もっと多くの人が自然と関わりたくなるような場のデザインを実践していきたい」と編集長の曽我は話します。

今後も活動を継続しながら、九州の魅力を全国にも発信できるよう、例えば皿の上の九州を関東や関西などの都市圏で開催するなども目論んでいます。

背景を知ることで見えてくる豊な九州の食。視点を変えることで生まれる価値を、これからもどんどん掘り起こしてまいります。参加されるみなさんも一緒に、掘り起こしていけるような活動に広がっていくといいなと思っています。

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(取材・文:ライター 吉野友紀・編集部、写真:勝村祐紀)

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