3月の特別編として熊本県球磨郡山江村のみなさまと開店した「山菜ごろごろ炊き込みごはんの会」。山江村は、“やまえ栗”という高級ブランド栗の産地で知られていますが、今回は、地元で古くから親しまれてきた “山菜”が主役です。実は山江村は山菜の産地。この山菜のことをもっとたくさんの人に知ってもらいたい、との思いから、いま山江村では山菜を用いた新しい取り組みが始まっているそうです。
考えてみたら、山菜はよく口にしますが、その戻し方や調理法、食材の話など知らないことが多いことに気づきます。今回、山江村の山菜をたっぷり使ったおかずやごはんの品々を参加者のみなさんと一緒にいただき、山菜の魅力を再発見しました!
熊本県南部に位置する球磨郡山江村は、総面積121㎢のうち約9割が山林を占める山間の村で、林業と共に発展してきました。村人の高齢化が進み、後継者が段々と減ってきているのが現状ですが、その打開策として、いま村長さんをはじめ、生産者さんたちが新たに取り組み始めたのが、「山菜を特産品にしよう」というもの。
自然豊かな山江村はその地理条件から、ぜんまい、わらび、たけのこといった山菜の宝庫で、地元では、収穫された山菜を乾燥させて、保存食としても古くから重宝されてきました。乾燥山菜に限らず、生きくらげなども各家庭で日常的に親しまれています。この豊富な山の恵みを地域の活性化に役立てるべく、山江村の村長さん、生産者さん、役場の方たちがひとつになって、“山菜”を山江村の新しい魅力として発信しています。
ゴロゴロ、具だくさん!
山江村らしさが溢れる品々を試食
山江村の山菜のおいしさを知っていただきたい、ということで、その本来の美味しさを引き出すべく、お料理を担当してくださったのが、フードコーディネーターの本田淑子さん。山江村まで足を運び、その土地のこと、そこで育くまれる食材をみて、レシピを考えていただきました。
「きくらげ、わらび、たけのこ、しいたけ…と、山江村はとにかく山菜が豊富。料亭だったら薄くスライスするところですが、食感を楽しめるように大きめにカットして、ごろごろと贅沢に入れました」。今回のメインディッシュともいえる「山のごろごろ炊き込みご飯」は、具材はもちろんですが、山菜の戻し汁まで余すことなく、そのまま出汁に利かせています。
炊き込みごはんだけど、動物性の鶏肉は敢えて使わずに、山の幸だけで仕上げているところにも、山江村らしさを感じられます。そのほかにも、本田さん自身も初めてだったという生のきくらげを使った「山の恵みのおかず4種」や「わらびのそぼろご飯と宝袋」、伝統料理の「つぼん汁」、山江村の栗で作る「やまえ栗のほっくりパフェ」もご用意してくださいました。
山江村ならではの乾燥山菜の戻し方を実演!
自宅でもおいしくいただけますよ
山江村では、保存食品として古くから重宝されてきた乾燥山菜。私は普段の暮らしではあまり馴染みがないのですが、保存がきくからいつでも使えて便利そう! と感じました。地元ならではの戻し方があるそうなので、今回お母さんたちに実演していただきました。
干したけのこの戻し方。まずは水で一晩戻します。翌日、さっと洗ってから戻し汁で20分炊き、そのまま1晩置きます。そして3日目にもう一度炊いたらでき上がり。3日かかるけど、基本は放置するのみ。油でサッと炒める料理などがおすすめ
次は干しぜんまいの戻し方。沸騰したお湯にぜんまいを入れてサッと湯がきます。写真は、炊いた後のもの。灰汁(苦み)でお湯が茶色に! ぜんまいは炊きすぎるとドロドロになってしまうので、炊きすぎないことがポイント、なのだそう。ざるにあげて、水が透明になるまで、もみ洗いします
干したけのこは、戻すのに3日間と多少時間はかかりますが、「炊いて、ひと晩置く」の繰り返しなので、工程自体は実は至ってシンプルです。ポイントは戻し汁で炊くこと。芯が残らずおいしい仕上がりになるそうです。山菜には特有の苦みがありますが、特に灰汁の強いぜんまいなどは、灰汁抜きさえしっかりすれば、苦みがなくて食べやすくなります。これだけおさえられておけば、自宅でも上手においしく調理できそうですね。
1年中使える乾燥山菜、家に備えておけば料理のレパートリーが拡がるし、食卓がぐっと豊かになるなぁって思いました。山菜のえぐみや苦みには毒だし作用があり、とくにこれからの季節、冬に溜め込んだ毒素を排出するのにもいいそうですよ。
山江村の食卓で、代々大切にされてきた山菜。その魅力にすっかりハマってしまった私ですが、みなさんもお見掛けしたら、ぜひお試しあれ。
山江村のみなさん、フードコーディネーターの本田さん、そして当日お越しいただいた参加者のみなさま、ありがとうございました!ぜひ、また穴バーへご来店ください。
(文:編集部 門司智子、写真:末次優太)