制約を乗り越える発想から生まれた、立体的にひらかれた公園空間
岸本:
ここまでがPark-PFIの制度についてでしたが、ここからは明治公園の具体的な計画について伺っていきます。
北川:
こちら(パース①)が全体のイメージパースになります。右奥が博多駅で、その手前に見えているのが、今回整備される店舗棟です。この建物と連動する「立体園路」と呼んでいる動線を設けることで、都市の限られたスペースの中に緑や居場所を増やしていく。そこが今回の大きなポイントなんです。
コンセプトは「ゲートウェイパーク」。博多駅は利便性の高い場所ではありますが、腰を据えて過ごす場所は多くありません。本来、公園はそうした滞在のための役割もあるため、明治公園がその役割を担えればと考えています。
岸本:
最初にこのパースを見たときは、かなりインパクトがありました。ここまで立体的な公園になるのかと驚いたのを覚えています。
北川:
大阪・関西万博の「大屋根リング」や、太宰府天満宮の仮殿などを手がけられている建築家の藤本壮介さんにデザインしていただいています。最初にご相談した段階で描いていただいたスケッチが、ほぼそのまま今の形につながっているんです。
まだ事業性の検討に入る前、「こういう公園ができたらいいな」というイメージとして提案いただいたもの。つまり、採算性や条件が固まる前の、かなり初期のアイデアに近い段階だったんですが、それがほぼそのままの形で実現に向かっている。そういう意味でも、非常に象徴的なプロセスだったと思います。
岸本:
そこから実際に進んでいく中で、「本当に実現できるのか」という不安もあったのではないでしょうか
北川:
もちろんありました。たとえば、公園内には地下鉄七隈線の換気塔や地下駐輪場など地下に構造物が存在しており、うまく建物を配置することができない状況でした。
そのため、建物だけを配置すると「建物と広場が分断される」ような構成になってしまう。これを避けて、公園全体を一体の空間として見せるために考えたのが、立体的に回遊できる構成です。公園そのものが持ち上がり、建物と連続していくようなイメージで、空間をつないでいくことを意識しています。
通りから見たときの見え方も意識していて、視線が自然と公園の中に入っていくような構成に。機能としてだけでなく、見え方も含めて、我々なりにこの場所で新しい都市公園の姿としてどうあればいいかを考えた結果、この形に辿り着いたのです。
「一本裏」の立地を価値に変える。公園を起点に広がる街の可能性
北川:
明治公園は、通りから一本裏に入った位置にあります。一般的には、大通り沿いに賑わいが集中しやすく、一本裏に入ると人の流れが途切れてしまうことも多いのですが、今回はこの「裏手」であることを逆に活かしています。明治公園があることで人の流れが大通りからにじみ出し、面的に街が広がっていく。そのきっかけになる場所として、この立地はむしろ意味があると考えています。
岸本:
まさに、面的に街を広げていくという観点ですね。大通りだけでなく、その周辺まで人の流れが生まれるというのは、まちづくりにおいても重要なポイントだと思います。
今回の計画は、4階建ての建物を公園内に整備するという点でも新しい試みです。まだ完成前ではありますが、すでに多くの関心が集まっていて、今後の運営や活用も含めて期待されているプロジェクトになっていますが、店舗棟はどのような構成になる予定でしょうか。
北川:
1〜2階は、主に飲食を中心としたテナントが入る予定です。テナントの詳細情報は今後順次発表されますが、6区画で構成され、地元福岡のお店を中心に構成していく予定です。
3〜4階には健康増進施設として温浴施設を計画。あわせてジム機能も設けることで、公園内の回遊や運動と連動した使い方ができるようにしています。
岸本:
ところで、東京建物がどうして福岡で、Park-PFI事業に取り組むことを決めたのでしょうか。
北川:
今回、当社がこのプロジェクトに取り組む理由は大きく3つあります。
まずは、博多駅前という立地です。九州の玄関口であり、人の流れも多い場所で公園事業に関われるという点は、非常に大きな魅力です。
次に、福岡における当社のブランド形成です。福岡は当社にとって重要なエリアであり、この場所でのプロジェクトを通じて認知を高めていきたいと考えています。
最後は、博多のまちづくりへの貢献です。この公園ができることで、街全体の賑わいにつながっていく。その一端を担えればと考えています。また、今回の特徴の一つが、地元企業との連携です。建設会社や出店する飲食店など福岡の企業とチームを組んでいます。公園という公共性の高い空間だからこそ、地域との関係性を重視した体制になっています。
岸本:
この計画、そもそも事業として成り立つのか、というのは気になるところですよね。
北川:
事業として取り組む以上一定の収益水準は確保していますが、一般的な商業開発と比べて収益性が高くいとは言えません。そのため、イベントの開催などさらに賑わいを生んで収益性を高めていく工夫が必要になってきます。加えて今回は、収益性だけでなく、拠点としての役割を重視。東京建物として福岡での存在感を示す場として、しっかりとした施設をつくることに意味があると考えています。また、地域との関係づくりも重視しています。
「博多駅のすぐそばに、こういう役割を持つ公園をつくった」と示すことは事業に与える影響が大きいと思います。東京建物にとって、 “名刺代わり”のようなプロジェクトでもあるわけです。
民間と行政はどう役割を分担?事業として成立させるためのリアル
岸本:
それでは、ここで参加者の皆さんの質疑応答のお時間に入りたいと思います。
参加者①:
今回のような立体的でデザイン性の高い公園は、どこまでが民間で、どこまでが行政の役割なのでしょうか。
北川:
今回のケースでいうと、実はかなり民間側の負担が大きいです。福岡市が整備しているのは一部の公園施設のみで、それ以外の大部分は我々のコンソーシアムで整備しています。そのため、事業として成立するかという点では、正直かなり難易度は高いです。一般的な開発と同じ考え方ではなかなか成立しませんし、ある程度のリスクを取る必要があります。
一方で、この事業が実現した背景には福岡市のスタンスも大きいと感じています。Park-PFIの面白い点でもありますが、福岡市はみどり豊かなまちづくりを推進される立場として良い公園にしようというその1点において同じ方向を向いてくださっています。その結果として、民間側としても計画や事業性を確保できている。こうした行政と民間のバランスがあって、初めて成り立っている事業だと思います。
参加者②:
同様のプロジェクトは、他のエリアでも成り立つものなのでしょうか。それとも、この博多駅前という立地だからこその意味があるのでしょうか。
北川:
やはりこの立地は大きいと思います。博多駅前は、九州の玄関口であり、国内外から多くの人が訪れる場所です。その中で、公園というオープンな形で人が滞在できる場所をつくることには、単なる商業施設を設備すること以上の意味があると考えています。
また、先ほども少しお話ししましたが、駅前の大通りだけでなく、周辺エリアへと人の流れを広げていく。その起点としての役割も期待しています。そういった意味で、この場所だからこそ成立する部分は大きいと思います。
岸本:
最後に、開業時期やテナントの情報については、今後どのようなスケジュールで発表される予定かを教えてください。
北川:
テナントについては、5月頃にリリースできる見込みです。開業時期についても、まもなく正式に発表予定ですので、ぜひ続報をお待ちいただければと思います。
岸本:
詳細な情報の発表を楽しみにしつつ、開業そのものも大きな注目ポイントになりそうですね。
福岡市では、明治公園のほか、東平尾公園、清流公園などの公園活用の取り組みも進んでおり、今後さらにその動きが広がっていくことが期待されます。一市民としても、またまちづくりに関わる立場としても、引き続き注目していきたいと思います。
ゲストプロフィール
東京建物株式会社
新規事業開発部インフラ・PPP推進グループ
北川 雄大さん
東京建物入社後、住宅賃貸事業部にて、賃貸マンションの開発・AM・売却を担当。その後、新規事業開発部 インフラ・PPPグループにて、新秩父宮ラグビー場(仮称)整備・運営等事業、有明アーバンスポーツパーク整備運営事業などPPP・PFI事業を中心とした新規案件の取得と開発推進業務を担当。現在は博多駅前の明治公園整備・管理運営事業の開発推進に携わる。






