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ビールが飲める東京・下北沢の本屋さん『B&B』がただいま天神で開店準備中?

ビールが飲める東京・下北沢の本屋さん『B&B』がただいま天神で開店準備中?
2016.03.30(水)

ブック・コーディネーター 内沼晋太郎さんにお会いしました。

春も近づく3月のある日、アナバナ編集部が小耳にはさんだ素敵なうわさ……ビールが飲める下北沢の人気書店『B&B』による期間限定のプロジェクトが、福岡に上陸する? 情報が集まり、文化発信の拠点となる本屋さんが福岡の街にできるのは大歓迎だが、どうやらまだ謎に包まれている模様。新プロジェクト準備のため来福した『B&B』の共同オーナー・内沼晋太郎さんに、想いを聞いた。

内沼晋太郎(うちぬま・しんたろう)
1980年生まれ。numabooks代表。ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。一橋大学商学部商学科卒。某国際見本市主催会社に入社し、2ヶ月で退社。往来堂書店(東京・千駄木)に勤務する傍ら、2003年book pick orchestraを設立。2006年末まで代表をつとめたのち、numabooksを設立。2012年、下北沢に本屋「B&B」を、博報堂ケトルと協業で開業。2013年、著書『本の逆襲』を朝日出版社より刊行。「DOTPLACE」共同編集長。

本屋はメディア

『B&B』とは、Book & Beerのこと。1杯500円でおいしい生ビールが飲め、夜遅く(24時)まで開いている、まちの本屋さんだ。いつもざわざわと活気がある下北沢駅の南口を降りてすぐ、小道を入って2階に上がると、選び抜かれた新刊書が並ぶ空間が広がる。
特徴的なのは、ビールだけじゃない。最低でも1日1回、多いときは朝昼晩と1日3回も、イベントが行われている。平日の夜は、主に本の著者や編集者を招いたトークショー。朝や週末には、公開講座や語学スクールまで開かれる。“毎日何かが起こっている”、“行けば新しい何かに出会える”、そんな本屋さんとして、2012年のオープン以来、すっかり下北沢の街に定着している。
毎日イベントをやるのは、立ち上げ当初から大事にしてきたことのひとつ。そこには、「まちの本屋」に対する内沼さんの想いが込められている。

「本屋を、本の流通経路の末端として、読者に買ってもらう機会を待つ場所とだけ認識している人も、残念ながら多くいます。でも実際は、本屋には老若男女たくさんの人が訪れますし、そこで無意識のうちにたくさんの情報のやりとりが行われています。たとえばある本の著者が企業の経営者であるとき、入り口付近の目立つ場所にその本がたくさん陳列されていれば、それがその企業にとって広告的な効果をもたらすのは、わかりやすい例ですね。本屋を空間として捉えれば、そこで本以外にも何でも売ることもできるし、どんなイベントを開催することもできます。本がメディアであるのと同じように、その集合体である本屋自体も、まちの中にあるひとつのメディアとして、たくさんの可能性があるんですね。だから僕たちの仕事は、流通の末端としてただ本を売ることではなく、下北沢というまちにあって本屋をやっている、『B&B』の場としての価値をつくることなんです。『B&B』全体をひとつの商品ととらえる姿勢で、何ができるか毎日考えながら、営業しています」


ビールの売上も、大切な収入源のひとつ。こぼれて本がダメになるようなトラブルは、ほとんどないという。毎日行われているイベントは、ここでチェックできる。http://bookandbeer.com/event/

本と人の出会いをつくる仕事

『B&B』の経営者であり、ブック・コーディネーターとしてさまざまな空間の選書やオリジナルグッズの展開を手がけてきた内沼さん。どんな経緯でこの道を進むに至ったのだろう?

「本は昔から好きで、中学の頃は小説を読み耽ってました。高校ではなぜか参考書オタクになって、友人たちの参考書選びのアドバイスをしたり、大学では自分たちで雑誌も作り始めました。本好きの人には、よくあるパターンかもしれません。ただ、自作の雑誌を置いてもらうために本屋さんに話をしに行った頃から、考え方が少し変わりました。複雑な出版流通の問題を、その時初めて知ったんです。当時は”若者の活字離れ”というフレーズも頻繁に耳にしていて。ちょうどインターネットの普及期でもあり、デジタルメディアが既存の仕組みを変えていくのを目の当たりにしていたこともあって、自分は仕組みに近い部分、本を作るよりも本を届ける分野で、やるべきことがあると考えるようになりました」


一つひとつ言葉を選びながら、丁寧にお話いただいた内沼さん

そうして内沼さんは、本と本を取り巻く環境を独自の視点で捉え直した活動を始める。千駄木の往来堂書店で働き、書店の運営や本の流通を学びながら、選書や本にまつわる企画を行う「ブックピックオーケストラ」を始動。文庫本を中身が見えないようにクラフト紙で覆い、中の文章から引用した一文だけを記した「文庫本葉書」など、ユニークな活動を展開。これまでにない切り口で本と人との出会いを作る仕掛けが注目を集め、その後はブック・コーディーネーターとして、さまざまな空間の書棚づくりを任されるようになっていった。


内沼さんが初めて仕事として選書を担当した、原宿のセレクトショップ「TOKYO HIPSTERS CLUB」の棚(2005年にオープンし、2010年にクローズ)。「本棚に本を並べることで、その場に相応しい世界感を作ることができるという手応えを感じました。この仕事が自分に向いているかもしれないと、初めて思えた瞬間でしたね」

下北沢と福岡をつなぐ“どこでもドア”

いま日本では、年間約8万点、1日に換算するとなんと約200~300冊の本が発刊されている。そのほとんどは、存在すら知らないまま、私たちの前を通り過ぎていってしまう。そんな時、本との出会いを演出し、一期一会の機会を作ってくれる内沼さんの存在は、ありがたい。では、そんな内沼さんが選ぶ、究極の一冊とは? 気になって聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

「不特定多数の人に一冊の本を勧めるのは苦手なんですよ。一冊の本が、万人にとって素晴らしいということは、あり得ないと思うんです。いまのその人にとってぴったりの本が、人の数だけあるはずです」

なるほど、そうかもしれない。だとすれば、万人にぴったりの本がないように、万人にぴったりの本屋さんもないはず。街が変われば、本屋さんのあり方も変わる。福岡で展開されるというプロジェクトは、いったいどんな特色を持ったものになるのだろう。

「もちろん下北沢の『B&B』が基礎になるので、ビールを飲みながら本を選ぶことができ、イベントが日々開催されますが、一番違うのは、期間限定であるということです。ほとんどの本屋はずっとそこにあることを期待されるものですが、今回は期間限定ならではの面白さを追求したいと思っています。下北沢と福岡がつながる “どこでもドア”のような存在になるといいですね。あまり福岡に来ることのないゲストを招いたトークイベントなどを、積極的に展開していきます。また、福岡の皆さんにも活用していただけるような、開かれた場にしたいです」

「本屋はメディア」。店舗という空間ができれば、その場所を介して新しいコミュニケーションが生まれる。下北沢から持ち込まれるもの、福岡が持ち込むもの……それらが混じり合い、新しく生まれる何かを想像してみると、なんだかとても楽しそうだ。

福岡で本屋を立ち上げるヒントに

生まれは東北、育ちは東京で、福岡には縁もゆかりもないという内沼さん。福岡の書店シーンをどのように見ているのだろう。

「福岡市には、『ブックスキューブリック』をはじめとした個性的な書店がありますし、街と連動したブックイベントの先駆けとなった『ブックオカ』も毎回盛況で、独自のシーンを築いていますよね。初めて『ブックオカ』に呼んでいただいたときから、福岡が大好きになりました。コンパクトな街に、情報感度の高い人や、その人たちが集う店がまとまっている。ちょうどいま一緒に働くスタッフを募集中なのですが、この街の人たちと一緒に仕事ができることを、僕自身とても楽しみにしています。期間限定ではありますが、その経験から何かを得た福岡の人が、自分の本屋を福岡で立ち上げるようなことになれば、とても嬉しいですね」

将来、本にまつわる仕事がしたい人にとっては、かつてない書店の経営スタイルを真近で学ぶチャンスとも言える。スタッフとしてこの新しいプロジェクトで働いてみるのも、いいかもしれない。

そして、今回のプロジェクトだけの楽しみな特徴を、もうひとつ。それは、ビールだけでなく焼酎も呑めること!

「お酒には、ふっと心を開かせ、自分の関心を広げてくれる力がありますよね。人との距離を縮めてくれるように、本との距離も縮めてくれるはずです。一杯呑むだけでも、気軽に立ち寄れるお店にしたいと思いますので、福岡の皆さん、よろしくお願いします」

※現在、このプロジェクトで一緒に働いてくれるスタッフを募集しています。詳細は下記URLをご覧ください。
http://bookandbeer.com/news/bbfukuoka/


『B&B』で学んだこと生かして、他の地域に新しい書店を作った例がこちら。下北沢『B&B』で2年間働いたスタッフが、地元広島に戻って始めた書店「READAN DEAT」だ。「すでに、広島になくてはならない書店になっていますね」と内沼さん

店舗情報

詳細未定、6月オープンに向けて準備中
(4月中旬頃に概要を発表予定)


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